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認知症の個人タクシー

2013年04月07日(日)

最近、3回続けて、認知症の人が運転する個人タクシーに乗った。
3回とも結構な目に遭った。
そういえば外来で、軽度の認知症の人から「タクシーを運転していいか」と質問された。
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ある地方都市のホテルの前から、A市の市民会館を告げて、タクシーに乗った。
しかし着いたのは、全然違うB市の市民会館だった。
A市とB市は、名前も全く違うし、通常なら間違いようがないはず。

不審を感じた私は何度も途中で、A市に行くことを確認したが
その都度、「大丈夫!」といいながら、猛スピードで走った。
結局、B市の市民会館に着いてから、それがA市では無いことを認めてくれた。

慌てて、A市に車を向かわせるも、今度は途中で迷子になった。
何度も方向転換を繰り返すが、その操作自体が危ない。
心配になり、開けていたパソコンを閉じた。

「これで本当にいいのですか?」と念を押すと
「いいと思います」と言ってまた何度も方向転換を繰り返す。
結局、自分がいまどこにいるのか全く分からないようだ。

その時点で、「ああ、この人は100%認知症だな」、と気が付いて
降りようとするが今度は降ろしてくれない。
「大丈夫、大丈夫」、というものの、一向にA市に向かう気配が無い。

田舎なので、途中で降りてもタクシーは1台も走っていない。
いわば軟禁状態になってしまった。

講演時間が迫っているので焦るが、運転手さんは相変わらずだ。
結局、通常予定していた時間の倍以上、料金も倍以上かかった。

結局、講演の1分前に到着。
講演は上手くいかなかった。

帰りも何故か個人タクシーだった。
行きと同じく、どう見ても80歳代に見える。
もしかしたら90歳代かな?

この運転手さんは、一方通行の進入禁止を堂々と入って行った。
向こうから来る車が、ライトをチカチカさせて怒っているが一向に気にしない。

気にしないどころか、やたらとスピードを出す。
冗談ではなく、行きも帰りも、本当に死ぬかと思った。


3台目の個人タクシーは、飯を食べながらの運転だ。
助手席に、食べかけのお弁当と、お茶が置いてある。
普通なら隠すと思うのだが、堂々と広げたままだ。

直前まで、タバコを吸っていたようだ。
お弁当の匂いとタバコの匂いと加齢臭の3つがブレンドされた
なんとも言えない異様な匂いが狭い車内に充満していた。

その車は走り方があまりにも異常だったので途中で降りた・・・・


先日、軽度認知症の方が、「個人タクシーを再開してもいいか?」と
家族を伴って相談に来られた。

当然、「止めて下さい」よと言ったら、本人に
「なぜいけないのですか?」と質問され、困った。

家族も日銭を稼いで欲しそう。
私は悪者になっていた。

運転免許の更新時に認知症のテストがあるようだが、
一旦パスしたあとは、事実上、ノーチェックだ。

認知症になっても、できる仕事はいくらでもあるだろう。
掃除や簡単な作業など。

しかし、タクシーの運転だけは、どうかと思う。
生活があるのだろうが、重大事故につながる可能性がある。

認知症の個人タクシーに当たった日は、何かいいことがあった後に多い。
もしくは、何かいいことがある前のこともある。

自分自身もいつか認知症になるだろう。
もうなっているのかもしれない。

そう考えると、運転手さんを責める気にもなれないが困ったものだ。
急いでいるときは、高齢者の個人タクシーは避けるべきだと思った。



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この記事へのコメント

もの凄い、スリルがありますね。

Posted by まの  さよ at 2013年04月08日 03:29 | 返信

先生、おつかれさまでした。
私にとっても、この内容は他人事ではない状況にあるため、考え深いものでした。

申し訳ないことですが、やはり、お医者様から「車の運転はダメ」と言ってもらうのが一番だと私は思います。

家族が言っても、絶対に聞きません。。。
とはいえ、家族がそれを望むのは、ちょっと・・・問題だと思いますが。

私が住む、同じマンションの方は、だんな様が70歳になったとき、行政に車の運転免許書を返してもらったと、話されていました。 お孫さんの野球チームへの送り迎えや、家族で出かけるのに車を使われていたことを知っていたので、その判断を素敵だと思いました。

不便になっても、平凡な生活を大切にする。
都会だからできることかもしれませんが、これからの時代、車がなくても快適な生活が送れるように、皆が工夫していかなければならないのだと思います。

Posted by よしみ at 2013年04月08日 01:01 | 返信

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