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右脳と五感に働きかける認知症ケア
2013年04月20日(土)
今朝の産経新聞兵庫版の認知症ケアシリーズ第5回は、右脳と五感ケアに着いて書いた。
以下、産経新聞からの転載。
http://www.drnagao.com/pdf/media/sankei/sankei130420.pdf
認知症ケアシリーズ第5回 快・不快、好き嫌いは分かる
右脳と五感に働きかけるケアを
「認知症になったら全てが分からなくなるのでしょう?認知症って怖い病気ですね」。ある研修医が大真面目にそう質問してきました。私は「認知症になっても決して全てが失われる訳ではないよ。快・不快や好き嫌いはよく分かるんだ。むしろ普通のひとよりずっと敏感になるからね」。このように答えてきました。どうも認知症=人格の崩壊・喪失、のように誤解している人がいまだに多いように感じます。研修医でもそうですから、一般の人は認知症という病気を誤解しているひとがさぞかし多いことかと想像します。「人格がすべて崩壊するので、早めに施設に入れておこう。それが認知症のためにもいいはず」。その想いで、週末ごとに施設探しに奔走している子供世代が沢山おられます。本人はいたって呑気に生活されているのですが・・・
認知症という病気の本質は何だろう?そんなことを考えながら、毎日、外来診療と在宅医療をしています。歳を重ねると記憶力や理解力が低下することは、ある意味、人間の必然です。そのため認知症の初期・中期は、「不安」で一杯になります。認知症研究の第一人者であり、長谷川式テストで有名な長谷川和夫先生は、一枚の絵を用いて認知症の本質を示されました。その油絵には、暗闇の中、自分の足元だけにスポットライトが当たりたたずむ老人の姿が描かれていました。前も後ろも右も左も見えないが、足元(=現在)だけは見える。それが認知症の本質、だというのです。私たちは太陽の光や蛍光灯で周囲が見えるから安心して歩けます。しかし自分の足元しか見えなければ、不安で一杯になり、上手く歩けません。認知症とはそんなイメージだそうです。川島英五さんの「酒と泪と男と女」という名曲は、「忘れてしまいたいことやー」で始まります。人間は嫌な記憶を忘れることができないので酒を飲むという歌です。しかし認知症になれば、嫌な記憶からも自然に解放されるのでストレスが減るという、いい側面もあるのではないでしょうか。
認知症は相対的に右脳優位になっていると、長谷川先生から教えて頂きました。左脳とは理屈の脳、右脳とは感性の脳。人間は左脳と右脳のバランスを上手く取りながら生活しています。記憶や認知機能は、主に左脳の機能です。認知症とは、左脳機能の低下ですから、相対的に右脳が優位な状態になることです。すなわち難しい理屈は分からないが、快・不快や直感的な好き嫌いはむしろ普通の人より敏感になるのです。そういえば、認知症の人は動物的に、こちらの心理状態をいち早く察知されますね。自分が好きな人には、即座に寄っていきます。味覚障害や嗅覚障害は、認知症の初発症状として有名です。しかし認知症になれば、味が全く分からないかといえばそんなことはありません。認知症の人を不味いレストランに連れていくとあまり食べず、美味しいレストランでは沢山食べます。快・不快と同様、味もしっかり分かっているのです。またその場の雰囲気も右脳がしっかりキャッチします。認知症の人と接する場合、そのように右脳を意識することが大切です。認知症の人の右脳に働きかけるケア、五感に働きかけるケアをもっと意識したいと思います。
キーワード 長谷川式テスト
長谷川和夫先生が発案された認知症の簡易知能評価スケール。年齢、日時や場所の見当識、簡単な計算など9つの質問項目からなり約10分でできる。30点満点で20点以下だと認知症が疑われる。
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この記事へのコメント
長尾様
初めて投稿致します。今、介護職員初任者研修を受けており講義内でも五感について話しがあり検索したところ貴殿のブログが検索されました。
私は、介護について全く知識無く両親の認知症に関わりはじめそれを機に勉強を始めました。
認知症ケアシリーズ第5回に書かれているように相対的に右脳優位になり理屈は分からないが直観的な感性は敏感になるとの知見は、まさに父親の状態その物でびっくりしました。
過去のブログも見せて頂きます。
ありがとうございます。
Posted by 金丸隆司 at 2014年01月27日 03:15 | 返信
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