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徘徊にも意味がある
2013年05月04日(土)
今朝の産経新聞兵庫版の認知症ケアシリーズ第7回は、徘徊について述べた。
よく周辺症状とか問題行動なんて言ってしまうが、なんと上から目線の言葉か。
自戒を込めて、周辺症状の本質、意味について考えてみた。産経新聞から転載。
認知症ケアシリーズ第7回 周辺症状の本質
徘徊にもちゃんと意味がある
認知症の症状には2つの側面があるといわれています。近い記憶が失われるという中核症状と、徘徊や暴言に代表される周辺症状です。たとえ記憶や認知能力が多少損なわれても、それを助けてくれる人さえいれば自宅でなんとか生活できます。一方、一般的に徘徊や暴言などの周辺症状があるからこそ在宅療養は難しいと判断され、施設や病院に入れられがちです。しかし果たして周辺症状は、そんなに困った事なのでしょうか?そもそも、どうして周辺症状が起こるのでしょうか?また何か意味があるのでしょうか?今日はこの周辺症状について考えみたいと思います。
「徘徊」という言葉を辞書で引くと「目的も無くうろつき回ること」と書いてあります。しかし徘徊にはちゃんと意味があるのです。目的があるのです。あるいは「ここは自分の場所ではない」と感じているからうろつくのです。自宅であろうが施設であろうが徘徊に対して昼間から鍵をかけて閉じ込めることはよくありません。必ず元気がなくなります。
徘徊には3つのタイプがあります。1)確信を持って出て行くタイプ。トイレに行こうとする、あるいは昼と夜を間違えて仕事に行こうとしているのです。これは本人の気持ちを受け入れて、共感する態度を示すことで落ち着かれます。2)不安そうにウロウロするタイプ。これは生活そのものになかに原因があることが多い。3)実はブラブラ散歩をしているだけというタイプ。これは介護者が黙って見守るか、一緒に散歩をすればいいだけです。余談になりますが、徘徊に共通する特徴は左に曲がる人が多いのです。夕暮れ症候群という言葉があります。帰宅願望ともいいます。これは夕暮れ時になると、「帰る、帰る」を連発することです。介護職員には問題行動と記録されます。しかし帰宅願望は、介護現場を否定しているわけではなく、介護されている自分自身を拒否している姿なのです。介護には上下関係があります。介護する側と介護される側です。しかし人間にはプライドもあります。その関係性から逃れたいと感じることは自然なことだと思いませんか?ですから介護者は「帰るところなんてない!」と叱るのではなく、「ここにいてもいいんだよ!」という安心感を与えるような工夫をすることが大切です。いずれにせよ、徘徊を見たら「この人はどのタイプで、一体何をしようとしているのか?」と考えてみましょう。
認知症の人の行動には意味があるのです。「周辺症状」や「問題行動」という烙印を押してハイ終わり、ではなく周辺症状の意味やその周辺を想像する態度が大切です。時に介護だけでは対処できず、抗精神薬というお薬を要することも現実には少なからずあります。しかしできるだけ最小限の量で最小限の期間に留めるべきです。またマイルドな鎮静作用がある「抑肝散」という漢方薬をベースにするべきです。抗精神薬の種類や量が多いと、眠気のため1日中寝ていたり、転倒の危険が高くなります。
以上、周辺症状の裏に隠された意味を想像し、それに上手く寄り添えるケアを目指しましょう。私自身、周辺症状から学ぶことがとても多いです。GWはいかがお過ごしですか?私は久しぶりの読書を楽しんでいます。
キーワード 抗精神薬
主に統合失調症や躁状態に承認されている薬。それ以外にも幅広い精神疾患に使用される。エビリファイ、ジプレキサ、セロクエル、リスパダールなどの多剤大量処方の注意喚起がなされている。
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この記事へのコメント
先生の仰るとおりだと思います。「ぼけたら勝ち」などという人がいますが、私は認知症の人自身は決して楽ではないと考えています。
Posted by 異端者 at 2013年05月05日 07:03 | 返信
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