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今夜の報道ステーション

2013年05月21日(火)

今夜の報道ステーションは、「平穏死」の特集だった。
敬愛する石飛幸三先生の特別養護老人ホームが、看取りの舞台だった。
凄い反響のようだが間違った報道であることはハッキリ指摘しておきたい。
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知り合いから、今夜、「平穏死」をやるらしい、
との連絡を受けて、楽しみに待って見た。

しかし、内容は「平穏死」とはほど遠く、
点数をつけるなら、マイナス30点だった。

というか、これは、誤報道じゃないのかな。
マイナスとは、悪影響の方を懸念している。


胃ろうを拒否した人が、経鼻栄養になり、1日300Kcalの人工栄養中。

もうこの時点で、私の頭は????

なんじゃこりゃ、という感じ。

あり得ない!

石飛先生の特養で、鼻からチューブ?
胃ろう反対とは、鼻からチューブ、って意味だったの???

私から見れば、意味不明。
まあ、それはおいておいて。


そして、亡くなる3時間前に、その管を抜いた!

それが平穏死???????????????

亡くなってから抜くものを、ただ亡くなるる直前に抜いただけなのに。

この際、はっきり言わせていただくと、あれは、ただの延命死です。

それを管を抜いたら楽になって、3時間で死ねた、との解説が入る。

素人を騙すには、これで充分かもしれない。

ツイッターでも番組への賛美の嵐のようだ。
私が一番驚いたのは、そのカラクリに気が付いたひとが一人もいないこと。

いかに終末期のことを国民が知らないのかが、よく分かった。
「これは違うじゃないか!」と怒る人が、一人でもいて欲しい。

私に言わせれば、この報道内容は、論理的に矛盾している。

延命死を、敢えて平穏死として美化して、あるいは偽装して
美談仕立てで報道していた。


まあ一般の方には、私の言っている意味がさっぱり分からないだろうな。

つまり、あのおばあちゃんは、管を抜いたから死んだのではない!
管を抜かなくても、間違いなく、3時間後に死んでいたのだ。

要は死ぬ直前の石飛先生の優しさが、
テレビ的には絵になった、のが救いだった。

繰り返すが、あれは平穏死ではなく、ただの延命死。
その証拠に、亡くなる直前まで苦しそうにされていた。

表情が楽になったのは、管を抜いたせいも少しはあるだろうが、
偶然にもそのタイミングと、死前喘鳴による意識レベル低下が重なっただけ。

通常、死んでから抜く管を、死ぬ直前に抜いただけ。

私がなぜこんなことを書くのかといえば、「経管チューブを抜くと
3時間で死ぬ」と、あれを見たひとが一斉に誤解することを懸念するから。

夜中に胃管が抜けた時、「今すぐ来い!」と怒鳴るモンスターファミリーが
ますます増加するのではないかと、背筋がぞーっとした。

本当は、翌朝に再挿入すれば充分だ。
通常、夜中に、寝ているうちに食べる人はいないし。

しかし今日の映像を見た人は、管が抜ける=死、とインプットされただろう。

実際、安定している人は3時間なんかでは、到底死なない。
1週間は生きる。

こした間違った刷りこみは、医療を破壊する。
平穏死を銘打ったメデイア報道にしては、内容があまりにもお粗末だった。

ようは、ただの延命死を、平穏死や尊厳死と偽装して報道しているだけ。
一般市民は騙されて、誤解してインプットされるので副作用の方が大きいと思った。

その結果、ますます、家族がモンスター化し、在宅医療は普及しない。
老人施設内ですらそうなのだから在宅でのリスクは推して知るべしだ。

あまりにも安易で誤解を招く報道内容に、がっかり。

平穏死という言葉が、広く知られるのは嬉しいが、あんな誤解を生むニセ平穏死報道
は困ったものだ。

ツイッターを見る限り、視聴者は感動したそうだ。
単に人の死がテレビに映ることに感動したからだろう。
テレビ的には、それを放映すること自体に意味があるのだ。

しかし皆さんどうして泣いているのか分かっていないだろう。
普段、死を考えないひとが、死を見て、自分の身内を想像し、素直に感動した。
ただそれだけに思えた。

それにしても、あれが平穏死だというなら、石飛先生も不本意ではないのかな。

彼の本や講演の内容とは、真逆の経過を、「これぞ平穏死」として報道されて
「あれ?これは違うぞ」、と思われないのかな?

もちろん石飛先生は、なにも悪くない。
おかしいのはミスリードするメデイアの姿勢。

わざわざ老年医学会のガイドラインを出しておきながら、
「非開始」にも、「中止」にも全く関係のない内容だったが、
それに気が付いたひとがいたのだろうか。

くどいが、あれは決して「中止」ではない!!
あれは、石飛先生の想いやり、だった。

市民のみなさんは、どうか誤解しないで欲しい。


私は、問題の本質を分かりやすく伝えることが報道の使命だと思う。

しかし今夜のテレビ朝日の報道は、論理のすり替え、ダマシであり、
お涙ちょうだい方式で視聴率を取るだけ、むしろ誤解を生むだけであろう。

今日の番組を見て、それを見抜いた市民が、全国に何人いたのだろうか。
おそらく、ゼロ、に近いのだろう。

一方、在宅医であれば、すぐに気が付いただろう。
あれは、平穏死ではないことに。

でも、それでいいのかもしれない。
日本人みんなが感動したのなら、こんな理屈などどうでもいいのかもしれない・・・

しかし、あれは、可哀そうな終末期を強いられた方の
最後の様子を記録した映像にすぎないことだけは指摘しておきたい。

いちばん収穫だったは、あの石飛先生の施設、日本一先進的な介護施設でさえ
あれあだけ多くの人工栄養患者がいて、家族もスタッフも苦慮しているという現実だ。

もちろん、それらの患者さんは、石飛先生の施設で造られたわけではない。
たまたま、そこに流れてきただけだ。

どんどん上から流れてくる人工栄養患者さんに、石飛先生たちは悩んでおられるのだろう。
そう考えれば少しは納得がいくかもしれない、と思いなおしている。

そい見ても、平穏死の特集ではなかった。
平穏死できない介護施設の実態を描いた番組だった。

石飛先生も、今夜の内容は、さぞかし無念だったのではないか。
次にお会いする機会に是非とも聞いてみたい。

あれは、平穏死ではない!


本当は、延命治療を続々と「開始」している現場、
あるいは、尊厳を守るために家族の同意を得て「中止」をしている現場にこそ、
平穏死問題の真実がある。

しかし、そうした本質は絶対に報道されない。
必ず美談にすり替えられるのが報道の宿命。

いつか、議論の核心に迫ってくれるジャーナリズムを期待している。
でもテレビでは、あれが限界なのかな。

まあ、当面、無理だろうな・・・
報道されないまま、TPPで平穏死しかできない日本に移行する可能性が高い。

これ以上知りたい方は、よろしければ、講演会等で質問してください。




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この記事へのコメント

長尾先生の「平穏死」と、石飛先生の「平穏死」の、仰っている意味が違うのですか?
私は、TVを見ても、分かりませんでした。
長尾先生は在宅での平穏死だから、100%平穏死なんでしょうけど、石飛先生は有料老人ホームの嘱託医でいらっしゃるから、放映された、経鼻カテーテルを抜く事を、「平穏死」と仰っているのかもしれません。
やはり、「医療の現場」って難しいですね。
それはそうと、長尾先生のご結婚、おめでとうございます。末長く、お幸せに、お過ごし下さい。

Posted by 大谷佳子 at 2013年05月22日 01:38 | 返信

鼻の管を抜くところから偶然見ました。???でした!
介護者の方は喜ばれていました。私ならTV出演お断りします。万が一あの状況で出るような場合はシツコク説明するでしょうが、多分放送されないか、都合の良いところだけ切り取られるんじゃないかなと思います。
マスコミさんは常に上から目線で、自社の撮りたい見せたい方向性は最初から決まっているということと、ディレクターさんの理解できていない事は決して映像化されないということをよく理解する必要がありますよね。
先生も時々TV出演されていますが、いつも私の存じ上げている2割くらいでしか放送されてないと不満に思っています。
自己責任で2ちゃん覗いてる方が役に立ったりしてと思う今日この頃。
それにしても最近は終末期の介護や看取りの特集がふえてきましたね。
性格悪いなぁ~と思いつつも、「この局はこう出るか?」と斜め上から見てしまいます。

Posted by チズ at 2013年05月22日 03:27 | 返信

遅ればせながら、コメントさせていただきます。
あの報道の中のおばあさまは平穏死ではありませんでした。私はTVに向かって何でやねん!とつぶやいていました。おばあさまは苦しそうにしておられました・・・番組は、経鼻もすばらしい、そして最後に管を抜くことことが平穏死ですよ~言ってるようでとてもがっかりしました。
私は、母の看取りに接し、長尾先生の著書を読み、長尾先生に説明を受けたにもかかわらず、土壇場で母を病院に連れて行き、母を平穏死させることができなかった後悔を持つ者です。
いくら平穏死の本を読んだつもりでも私のように理解力の悪い者もいますから・・・一足飛びに平穏死を一般市民が理解することは大変で、もう少し時間がかかるのでしょうね。今は過渡期なので、報道ステーションのような誤報もまだあることと思います。終末期の方を見たことがない製作者が、患者さんがワーワー騒いで死亡していないから、あれが平穏死なんだ!誤解したのでしょう。もっと責任を持って報道するできで残念でした。
しかし、長尾先生の超過密スケジュールの講演活動や、寝る間を惜しんでの執筆のご努力のお陰で、ゆっくりとですが、「平穏死」は理解されるようになってきていると思います。あの番組を視て、解ってらっしゃる方々も沢山いらっしゃいます。
お医者さまはいつも受け身であるから、番組の中で意に反し、患者の家族の希望に沿わざるをえない石飛先生の困っていらっしゃるお顔が印象的でした。
どこかに、気概のあるジャーナリストはいないのかしら?長尾先生の著書をよく読み、長尾先生に、数時間ではなく週単位で密着していただけたら、それを正しく撮っていただけたら、そしてたっぷり時間をかけて番組を作っていただければ、平穏死はす~っと一般市民に理解されると思います。百聞は一見にしかずです。人間は産まれて死んでいくのは自然なことです。平穏死された患者さんの安らかなお顔もぼかしを入れないで撮って欲しいなと思います(無理かな)

Posted by isshy at 2013年05月23日 11:55 | 返信

人情物が受ける世界も有るということでしょう。長尾先生のお住まいの地域では笑いが重要なはずです。面白みのある笑いは現実的、論理的、知的発想が根底になければ発生しません。落語家が自分が癌であることから話し始めてもあっけらかんと笑いを取れる世界もあれば、そんなことは隠さなければならない世界も在るようです。人情話が好まれる世界はもちろん後者です。

Posted by 異端者 at 2013年05月23日 05:27 | 返信

このコメントは、載せないで下さい。
もしかして、長尾先生の奥さまは、おめでたですか?一番大事な時ですし、平常と違って、神経質になるので、そっとしておいておあげになった方が良いと思います。
初めての妊娠、初めての出産は女性にとって生まれるまで、心配です。
生まれてしまえば、安心ですけど、それまでは、奥様の御実家のお母様に来て頂くとか、安心感が持てるようにしてあげたらどうでしょう。それができないのなら、ちゃんとした見識のある看護婦さんか、へるぱーさんか、相談にのって貰えるような年上の女性に手伝ってもらってはどうでしょうか?
奥さまも、きっと長尾先生を尊敬して、お仕事を手伝いたいとおもっていらっしゃるのでしょうけど、身体がしんどいし、長尾先生は日本全国を掛けずり回っていらっしゃるので、相談できないし、ストレスが溜まっているのではと思います。
十月十日辛抱して、お子様が生まれたら、長尾先生の後継ぎになられるお子様ですから、ちょっと辛抱無さって下さい。
世の男性方は麻雀とか、パチンコでごまかすのでしょうけど、長尾先生は真面目だから、ついコメントや講演会のお話に本音が出ています。奥様もきっと真面目なお方なんでしょう。
結婚された方は誰でも、突き当る時期なんじゃないですか?
違っていたら、ごめんなさい。

Posted by 大谷佳子 at 2013年05月26日 02:31 | 返信

今頃になって、やっと長尾先生が、のろけていらっしゃるのに、気が尽きました。
どーも、ごちそうさま!!

Posted by 大谷佳子 at 2013年05月28日 02:39 | 返信

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