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胃ろうを巡るデイベート

2013年06月06日(木)

昨日は、日本老年医学会に胃ろうを巡るデイベートの演者として呼んで頂きました。
いつもは市民にしている胃ろうのお話を昨日は、全国の偉いお医者さんにしました。
今日は午前中は取材、午後は日本ケアマネッジメント学会で、終末期の講演です。
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以下、今朝の朝日新聞アピタルn原稿から転載です。

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昨日は、大阪で開催中の日本老年医学会で講演しました。

講演、といっても、ちょっと変わった形式でした。

デイベート、というセッションです。

 

テーマは、胃ろうの功罪。

胃ろう賛成派と反対派をそれぞれ演じてもらうという企画。

私は、「反対派」として「胃ろうの罪」の方を講演しました。

 

胃ろうとは、お腹に穴を空けて、もうひとつの口を造ること。

内視鏡を使えば、わずか15分で簡単に作成できます。

そして、今回の議論の対象は、老衰と認知症終末期のみです。

 

胃ろう賛成派の医師と、お互いに質問し合いました。

私は、敢えて結構な話もしたかと思います。

もちろん、2人がそれぞれの役割を演じ切るたです。

 

昨年は、別の研究会で、胃ろうの寸劇をしました。

その時私は「胃ろうを勧めるなにわ総合病院の内科部長」

の役を演じました。

 

今回は、その反対の役を演じたわけです。

 

私は「胃ろうという選択、しない選択 平穏死から考える

胃ろうの功と罪」という本を書いているのでどちらでも可。

今回も短い時間でしたが言いたいことの8割は言えました。

 

胃ろうがいいとは悪いとか、ではありません。

胃ろうは単なる、数センチのプラスチックでできた管です。

問題は、それを命のためにどう使うかなのです。

 

したがって、「胃ろうの功罪」ではなく、「胃ろうに関わる

医療スタッフの功罪」というべきなのです。

そして、アンハッピーな胃ろうがあるのも現実なのです。

 

本当は、胃ろうを入れる前に充分な説明が必要です。

しかし有無をいわずに入れられる胃ろうもあるようです。

また、入れた瞬間から、食べさせない医療者が多いです。

 

食べられるのに食べさせない、ヘンな医療。

食べたら肺炎を起こして死ぬぞと脅迫する医療。

嚥下リハビリや口腔ケアが無い、胃ろう生活。

 

すべて「胃ろうスタッフの罪」だと私は思います。

さらにアンケートを取ると9割の医師は自分自身

には胃ろうは希望しない、と答えています。

 

しかし、患者には胃ろうを付けています。

小さい時、人からされてイヤなことをするなと教わりました。

医者になれば、普通にそれをしている現実をどう考えるのか。

 

日本老年医学会のガイドラインでは、本人の人生のために

ならない胃ろうは中止しても構わないと書かれています。

しかし家族の希望で中止すると警察に捕まる可能性がある。

 

従って、一旦、始まった胃ろうは誰も中止できないのも現実。

リビングウイルを書いても、家族が反対すると中止できない。

親の年金をあてに生活している子供達が、少なくありません。

 

この2~3年の胃ろうの報道によって、何が変わったのか?

 

この1年、新たに胃ろうを造設するひとは減っています。

しかし、鼻から管や、中心静脈栄養は増えています。

それらより格段に優れている栄養法が胃ろうなのですが・・・

 

なんのことは無い、昔に逆行しているだけなのです。

正確には、逆行というより、退行です。

メデイアも我々も、胃ろうについて正しく伝えていないのです。

 

先日、TVで胃ろうに反対している医師の施設が報道されました。

その施設では、なんとみんな鼻から管を入れての人工栄養でした。

たしかに胃ろうは無いのかもしれないが、鼻から管とは・・・

 

呆れてしまいました。

市民には、胃ろう=悪、と刷り込まれてしまったようです。

もちろんこれは間違い、ハッピーな胃ろうが沢山あります。

 

ただし、末期がんには胃ろうは造りません。

しかし、非がんの終末期には、胃ろうという選択、

しない選択に必ずといっていいくらい迫られます。

 

胃ろうと聞いても自分とは関係ないと思う人がほとんどです。

しかし現実には、2人に1人が、選択を迫られるのです。

それを想定しない人があまりにも多いことも、心配です。

 

すなわち、リビングウイルです。

 

しかしリビングウイルを口にしただけで、それを攻撃してくる

メデイアが多いのことにも、うんざりです。昨日もそうでした。

しかし今朝も貴重な時間を割いてメデイア取材に応じています。

 

リビングウイルについて詳しく知りたい方は、6月9日(日)

の午後に開催される第1回日本リビングウイル研究会に是非

来てください。第二部は、私が司会をしています。

http://www.drnagao.com/pdf/lecture/20130609livwill.pdf

 

胃ろうに関する混乱は、まだまだ続いています。

 

しかも課題が増えて、複雑化しています。

介護士が栄養剤を注入できる時代にはまだ時間がかかります。

みなさんも、是非、胃ろうについて勉強しておいてください。

 

今日の午後は日本ケアマネッジメント学会で講演しています。

全国のケアマネさんに、終末期医療についてのお話をします。

昨夜は、全国のおもしろケアマネさんと、交流していました。

 

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