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現実を伝えないのはマスコミの怠慢
2013年06月07日(金)
そう、彼も言っているように、マスコミは真実は絶対に伝えない。
だから、自分の頭で考えて、賢い患者を目指すしかない。
現実を伝えないのはマスコミの怠慢-
村上智彦・医療法人ささえる医療研究所
理事長◆Vol.5
医療を変えるのは医療者でなく住民のニーズ
2013年6月5日 聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長)
――では、改めてお聞きしますが、これからの医療、医師の役割をどうお考えですか。
日本の医療は世界一高いレベルなので、高齢社会を支えるように少しシフトすればいいだけです。そうすれば、日本は十分に高齢化に対応できて、世界のモデルになる。
――そこをもう少し、ブレークダウンしてお聞きしたいのですが、今、大学病院や急性期病院から在宅医療まで、さまざまな立場、役割を担う医師がいますが、例えば、高度急性期を担う専門医の先生方がどう変わればいいのか。
どう変われば、じゃない。税金を払っている人が支えている仕組みなのだから、住民の方が声を出して変えていかなければならない。それなのに皆が「医療が」「医者が」と言いすぎ。それ自体が間違っている。住民が、「専門医療だけじゃなくて、もっと家庭医や総合医が必要」と言えば、変わる。それを医療側に求めていること自体、昔の「戦う医療」の発想。本当に地域を守りたいのだったら、一人で何役もできる総合医がいた方がいいに決まっている。
「最近は、僕らがマスコミをやればいいのかな、と思うようになりましたね。つながりを持って、ネットで発信していく」(村上智彦氏)。
高齢社会で今までのやり方でやっていると、専門病院は嫌でも飽和して壊れてしまう。自然に変わってくる。年に170万人が死亡する時代になれば、病院で死ねなくなってくる。「医療が何とかしろ」「政治が何とかしろ」というのは逃げ。「死に場所として、病院を選んでいたら、やっていけませんよ」とはっきり言うべき。ベッドを増やして、借金を作ったら、払えないでしょう。自分の子どもや孫に払わせるつもりか。それをはっきり付きつけないと。
感情論で言ってはダメ。人は100%の確率でいずれ死ぬ。どこで死ぬかを覚悟しなさい、ということ。
――自分の死に場所をきちんと決めなさいと。
最後は哲学の問題。だから教育に行きつく。今の教育に死生感を取り入れることが必要。けれど、住民の意識が変わるまでには時間がかかる。今を乗り越えるためには、取りあえず医療者がもう少し支える形で乗り越えるしかない。
でも僕は解決できると思う。十分に吸収していけるし、世界一長生きのままキープできると思う。
――明るい未来を描かれている。
いずれ永森(編集部注:ささえる医療クリニック岩見沢副院長副の永森克志氏)のような実績を作った人が都会に行かないと、大変。住民も、家族も参加する。そうした仕組みを作れば、東京でも十分にやっていけると僕は思っているのです。他に方法があるのなら、教えてもらいたい。世の中、批判する人が多いのは分かっている。批判するなら、代案を出してほしい。代案を出してくれれば、僕もディスカッションができるから。
――そうしたら、先生方が変える余地もある。
東京の東新宿に、高齢化率が50%くらいの団地がある。北海道の岩見沢よりも人口も多い。秋山さん(編集部注:訪問看護などを手掛ける、ケアーズ白十字訪問看護ステーション代表取締役)は住民を支えることで、問題解決をしようとしている。彼女も、薬剤師、PT、OTのほか、いろいろなカウンセラーを呼んでやっていますよね。これは、住民意識の改革。少しでもいろいろな職種を集めることで、カウンセリングをして、住民の不安を解消している。立場は違うけれど、医療を守ったり、限られている資源を有効利用しようとする点では、僕と一緒でしょう。
――ある意味、発想を変えないと、今のドクターも気の毒。もう少し広い視野を持てば解決できることもある。
そう。医療は、社会の中の一分野であるということを自覚しないと。学校の先生もそうですが、「先生」と言われる人は、「お山の大将」になってしまう。そうではなく、「先生」も社会の一員。「1カ月に病院に行った人は、住民のうちの4分の1、25%くらい」という論文があるでしょう。残りの人たちは普通に生活をしている。そちらが社会の大部分(編集部注:JAMA.2005;48:163-16
7.『総合医が必要な四つの理由』を参照)。
――医師が接しているのは、住民のうちわずか一握りにすぎない。
その人たちを中心に考えている。面白い話があるのですが、最近、在宅に取り組む若い先生方が増えていますが、ある若い真面目な先生が、SNSで「在宅医療を始めました」と言って、「街全体を病棟にしてしまえばいい」と書いた。それで、僕が、“壊れている”ことを向こうも知っているから、「俺は嫌だ。そんな街に僕は住みたくない」と書きこんでしまった(笑)。それは、間違っていると。
――時々、在宅やられている先生から聞かれるコメントです。
「安心に住める」と、真面目に言っている。冗談じゃない。それは医者、医療からの発想で、医療人が理解するプレゼンテーション。一般人にとっては、住まいが病棟で、いつも看護師さんが来るなんて、嫌だよね。それは間違っている。
そういう人は、入院を1週間してみたらいい。あれだけ不便な生活をしたら、うんざりする。この前、やはりSNSに「とろみ食」の書き込みをした栄養士さんがいた。やっている本人は誤嚥を防ぐために一生懸命。けれども、食べてくれないらしい。それに対して、「朝、昼、晩、1週間、とろみ食を食べたら、普通の人は気がおかしくなる」と書いた人がいた。もっともなこと。高齢者がおかゆを食べて、詰まらせて死んだら、それは仕方がない。
北海道では、お寿司を食べることはすごく大事なこと。卒業式とか、お祭りの時などにはお寿司を食べる習慣がある。以前、夕張の介護老人保健施設で、「寿司を食いに行こう」となった。真面目な看護師が「詰まらせたら、どうする」と言う。その時に、「寿司を詰まらせて、死んだら、幸せだよね」と言うのが、医者の役割だと思う。
――それは30代の患者さんに言っているわけではなく、80代、90代の方に言っている。
そう。介護の人とか、医師がかかわっていたけれど、詰まらせてしまったら、それは仕方がないね、と言えたらいいいでしょう。何か、そんな気がしません?
――家族に対しても、いい意味で言い訳を与える。
マスコミの力は非常に大きいのに、そうした現実を書かないのはマスコミの怠慢。海堂さんは売れっ子の作家として、情報発信している。Ai(死亡時画像診断)などについても問題提起していた。冷静な問題提起で、死因も分からない。要するに何で死亡しているかが分からないで、医療が正しかったのかどうか、評価できないと言って、Aiの必要性を訴えた。
これまで、いろいろな取材を受けていて、分かったのは、結構、新聞社の人も、雑誌の人も問題を理解している。ところが、夕張時代もそうだったけれど、デスクに行くとはねられる(笑)。
マスコミの役割は大きい。感情論で皆やっている。科学的な事実と感情と、きちんと分けて考えなければいけない。これは哲学と教育の問題ですよ。僕は身を持って知っているけれど、自殺やいじめも、救急車を呼んだらごまかせる。
昔からの“たかり”の体質は、大なり、小なり、誰でも持っている。それがそのままだったら、破たんする、と証明してくれたのが夕張。いい前例ができたでしょう。逆に言うと、マスコミはそれをちゃんと書かないと。「国の政策が悪い」ではなく、たかりの体質を残していたら、つぶれるという事実を書かないとダメ。
最近は僕らがマスコミをやればいいのかな、と思うようになりましたよね。つながりを作って、ネットで発信していく。僕のtwitterやブログなどを見ているのは皆、問題意識を持っている人。僕を嫌っている人も、ある意味、僕のファンなんです(笑)。
――破たんした夕張には、先生ご自身が率先して行かれたわけです。
マッチ、導火線は必要で、僕はその役割が終われば、さっさと出て行く。そう最初から公言しています。支えるのは地元の人間。地元の人間が立ちあがるようになったら、僕はいなくなるだけ。
――先生ご自身が変革のモチベーションを常に持ち続けられるのは。
それは北海道が好きだから。好きでもない人に、「ちょっかい」を出さないでしょう(笑)。僕は、北海道がいいと思っているから。いずれは北海道を独立させるのが夢だから。なんとかしたいと思っている。「北海道独立構想」(笑)。
――道州制などではなく。
北海道は、食糧自給率は200%なので、独立国家にできます。軍隊も持って徴兵制にする。内地(本州)の人にはビザを発行する。北海道に貢献する人には、最優先に発行する。東京には電気を売る、食糧なども輸出する(笑)。
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村上氏とは会ったこともないが、どこまでも似ている。
このブログの読者であれば、村上氏の言っていることが
正論であることをすぐに理解できるだろう。
どっかで彼と会ったら、抱き合いたい。 長尾拝
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この記事へのコメント
お二人は、そういえば、似ていらっしゃいますね。(笑)
Posted by koneko at 2013年06月07日 07:37 | 返信
おすすめのサイト
公益財団法人医療科学研究所
www.iken.org/
医療の社会科学的研究促進を設立目的とする医療科学研究所のホームページ。機関誌『医療と社会』、シンポジウム、研究会、委託研究の情報を提供し、最新の研究動向を紹介。研究助成、研究者支援などの研究サポート事業も案内。
Posted by 坂下恒明 at 2013年06月07日 08:42 | 返信
「寿司を詰まらせて、死んだら、幸せだよね」・・
私の父は、海軍で病気になり自宅に帰され、もう駄目だと言われたそうで、
兄が「それなら大好きな餅を食べさせてやれ」と。
ところが元気になり、その後私が生まれました。
駄目だったとしても、お餅が食べれて幸せだったろうと思います。
Posted by ゆり母 at 2013年06月07日 08:48 | 返信
現実を伝えないのはマスコミの怠慢ではなく、報道しない権利、を何かしらの目的で行使しているだけです。
Posted by まる at 2013年06月07日 09:11 | 返信
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