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周辺症状を理解しよう

2013年06月20日(木)

産経新聞に連載中の、認知症ケアシリーズ第13話は、周辺症状について書いた。
葛藤、回帰、遊離の3パターンがあることを知れば、理解しやすくなる。
6月15日の兵庫版から転載させていただく。
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産経新聞認知症ケアシリーズ第13話  周辺症状を理解しよう

                   葛藤、回帰、遊離の3パターン

 

 認知症になったら在宅療養は大変だ、と多くの市民は信じています。暴言や妄想や徘徊といった、いわゆる周辺症状(BPSD)にどう対処したらいいのか分からないので、そのような認識になりがちです。しかし、それは大きな誤解。周辺症状には必ず理由があるのです。周辺症状が現れる仕組みを知ることで、対処法が見えてくることがよくあります。

 
 まず「俺(私)をバカにしているのか!」と怒るタイプは、エリート官僚、学校の先生、医師など社会的にエリートと呼ばれている方によく見られます。女性であればキャリアウーマン。このタイプの周辺症状は「葛藤型」とも呼ばれています。自分のあるべき姿と、老いてしまった現実の自分の姿があまりにもかけ離れてしまったので、なんとかあるべき姿を取り戻そうと葛藤している姿なのです。しかしいくら昔の自分に戻りたくても戻れません。そこで葛藤が起き、怒りに発展するのです。自分の老いを見せつけられると、暴力をふるったり、被害妄想で否定しようとします。異食や弄便、何度も介護者を呼びつける行為も同様です。そうならないためには、その人らしい役割をつくり、プライドをしっかり満たしたケアを心がけます。私は認知症のお医者さんや学校の先生を診察する時は、必ず「先生!」と呼びかけます。すると、すごく喜んでくれます。このようにその人の人生の功績をねぎらう言葉を敢えて使い、誉めるとずいぶんと場が和んでいきます。

 
 次に、「家に帰る!」という人です。こうした帰宅願望は、「回帰型」と呼ばれます。夕暮れになると多いので、夕暮れ症候群とも呼ばれます。ここで帰ろうとする「家」とは、小さい頃や幸せだった頃の家のことです。その人の人生が最も輝いていた時代。男性であれば、会社でバリバリ働いていた時代、女性であれば育児や家事に没頭していた時代の「家」なのです。あるいは「会社に行く」という男性も多くおられます。医学的には、見当識障害といいます。そうした「回帰型」の周辺症状に直面した場合、本人の切迫感に話を合わせることが何よりも大切です。徘徊に付き合う時は、必ず会話をしましょう。また居室を私物で満たして環境を変えない工夫も大切。意外に効果があるのが、法事です。すでに亡くなった人のお墓に行って一緒にお線香を上げる作業は、見当識障害を和らげます。

 
 3つ目は、「無為、自閉」です。自分の世界に閉じこもるタイプ。これは「遊離型」と呼ばれています。つらい現実から逃避しているのです。大人しくて素直な人、これまで自己主張をしてこなかった人が陥り易い周辺症状です。お風呂にも入らない、食事た会話も拒否する人は、この遊離型だと思ってください。このタイプには、五感に訴えかける働きかけが有効です。握手やハグなどのスキンシップ、風船を使ったバレーボール、音楽などで、かなり表情が和らぎます。このタイプは、大人しく誰かを困らせるわけではないので放置されがちです。しかしちゃんとした対応をしないと、さらに元気が無くなってしまします。

 
 以上、「葛藤型」、「回帰型」、「遊離型」の3つのタイプを知っているだけでも、認知症ケアは楽しいものになります。さらにこの3つが移りゆく「移行型」や、混じり合う「混合型」もあるのです。

 

キーワード 見当識障害

人物や周囲の状況、時間、場所など自分自身が置かれている状況が正しく認識できない状態。脳血管障害、アルツハイマー病、統合失調症の患者さんなどに見られる精神的機能障害の一つ。認知症の主要な障害である。

 

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この記事へのコメント

長尾先生、認知症専門医の河野先生をご存知ですか?
私は老人ホームでナースをしているのですが、暴力行為の激しい入居者様の対応をネットで調べていて、「コウノメソッド」に出会いました。目から鱗!ですので、ご存じなければお勧めしたいです。
お薬の力で、その人らしさが少しでも保たれるのならという希望の持てるメソッドです。

Posted by しん at 2013年06月20日 11:58 | 返信

特養に居る私の母はコウノメソッドが推奨している○○○○○○というサプリメントで生きています。○○○○○○が無ければ食べれず飲み込めずやせ細って今年3月頃には死んでいたでしょう。
コウノメソッド登録医師が比較的近隣にできたので、特養に頼み込んで認知症についてのみ、コウノメソッド登録医師に診てもらう許可を得ました。その医師のおかげで、特養施設医が処方していたテトラミドを中止させることができました。テトラミドはレビーには毒薬ですがそれを知らない医者がたくさんいます。
便秘薬と昇圧剤は服用していますが、精神薬は一切処方無く○○○○○○だけで生きています。トロミ食ですが口から食べて生きています。レビーですのでいつも何か別の世界が見えているようですが、美味しい不味いはわかりますし、家族も介護スタッフも認識できています。時には笑顔が出ます。ちょっと込み入った話になると無理ですが簡単な意思疎通はできます。
コウノメソッド登録医師が勇気を持って特養へ往診に来てくださったおかげです。
もしコウノメソッド登録医師が来てくれずにテトラミドを飲まされ続け○○○○○○を飲めない状況なら、私の母はしんどい、だるい、きつい、と言いながらうなされ続け苦しみ続けて死んでいったことでしょう。
近頃、○○○○○○は延命薬かもしれない、と思ったりして、私は母を延命しているのだろうか、と悩んだりします。でも、母は何もできなくとも口から食べて味をわかっているのでまさしく生きているのだと思います。
私は河野和彦医師の崇拝者ではありませんしコウノメソッドが万能であるとも思いません。しかし、認知症治療に関わる医師にはあまねくコウノメソッドを学習していただきたいと思います。長尾先生がご存知の岩手の松嶋大医師もコウノメソッドの登録医ですが何も登録医にならなくて良いのです。一歩引いて謙虚な心でコウノメソッドを学習していただきたい。長尾先生はプライドが許さないかもしれませんが、なにとぞお願い申し上げます。

Posted by komachi at 2013年06月21日 02:04 | 返信

私は、自分の母がアリセプトと、メマリーを服用して、初めて、譫妄状態(夜中じゅう起きて、トイレの掃除や、物置納戸の掃除をしたり、日頃言わない、奇妙奇天烈な苦情を言ったりしました)になって、困っていたら、ケアマネジャー学会の大阪大会で、丸善書籍と淳久書店が合併した書店の出張した買台で河野先生の「ピック病の症状と治療」と言う本にアリセプトとメマリーに強く反応する認知症として載っていて、興奮しました。
komachiさんが、この当時「コウノメソッド」と仰って居た時は何のことか分かりませんでした。
医事新報からも、介護職も勉強できる書籍「コウノメソッドでみる認知症診療」も出版されて購入はしているのですが、なかなか難しくて、棚上げしています。
私の母も、最近親身になって下さる、脳神経外科が見つかり、内科の先生の紹介状も書いて貰ったのに、恐がって受診していませんので、未だ結論は出ていません。
「暖かくなったら、一度専門の先生にみてもらおうね」と言ってみたら、「そうだね、一度見て貰った方がいいね」とは言っていますが。

Posted by 大谷佳子 at 2014年02月18日 02:05 | 返信

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