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「憎い嫁」が「おかあちゃん」に変わる理由

2013年07月07日(日)

産経新聞兵庫版、認知症ケアシリーズも第14話になりそろそろ大詰め。
昨日の朝刊には、「憎い嫁」が「おかあちゃん」に変わる理由を書いた。
赤ちゃん返りすることだから、ありのままを受け入れることが大切だと。
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産経新聞・認知症ケアシリーズ第14話  あるがままを受け入れる

              「憎い嫁」が「おかあちゃん」に変わる理由

 

 私は外来診察室で、中高年の女性に声をかける時に「おかあさん」と呼ぶくせがあります。すると、「私はあなたのお母さんではありません」と真顔で怒った人が何人かいました。そこで「奥さん」に変えてみましたが、今度は看護師に「いやらしい」と不評で、これも止めてしまいました。冗談はさておき、認知症の高齢者と介護者の関係は、介護者が家族であってもなくても、だんだん母子関係に近づいていきます。自分の娘のことを、「お母さん」と呼ぶ場合をよく見ます。また、さんざんいじめ倒してきた「憎きお嫁さん」のことを「母ちゃん」と呼んでいる高齢女性を何度も見てきました。呼ばれている当のお嫁さんは、戸惑い顔です。なぜ、そんなことが起こるのでしょうか?

 
 生まれたての赤ちゃんは、お乳を与えてくれるお母さんを全面的に頼っています。その母親の顔が見えないと、不安で大声で泣きだします。母親は赤ちゃんに精神的安心を与えています。それと同じことが認知症の人の頭の中でも起こるのです。認知症ケアの中でもよくあることなのです。施設の職員を「お母ちゃん」と呼んでいるのを見たことがあります。さらには男性職員を「お母ちゃん」と呼んだ人もいました。認知症の方は、最終的に自分を介護してくれる人を「母性」として受け止めていることがよく分かります。その母性とは、「無条件で受け入れるてくれる人」とか、「あるがままを受け入れてくれる人」という意味になるかと思います。

 
 さて認知症ケアのポイントとは、以下の3つです。1 口から食べること、2 トイレで排泄すること、3 これまでどおりのお風呂に入ること、です。これら食事、排泄、入浴は三大介護とも呼ばれています。どれも一見、当たり前のことに思えることかもしれません。しかし認知症が進行すると、3つとも困難になりがち。その結果、口から食べることを早々に諦め、経管栄養や胃ろう栄養に置き換わることが多い。また、オムツをつけて介護の手間を省略している人も多い。さらに施設では、機械で特殊浴場に入れるか、プールのように広い大浴場に入れるかのどちらかに分かれてしまいました。しかし本人にとって一番嬉しいのは、今まで入っていた家庭用の普通のお風呂での「個浴」なのです。一番入り易く、一番気持ちが落ち着くのが「個浴」であり、介護する側もやり易いのです。

 
 こうした普通の生活を保つケアを行えば、大声を出したり激しい妄想に襲われたりの周辺症状は徐々に出にくくなります。すなわち、介護する側の心がけひとつで、認知症の人の全身状態、そして運命が大きく変わってくるのです。

 
 先週、西宮市のNPO法人「つどい場さくらちゃん」が主催して認知症の人とその介護者、約30人が毎年恒例の2泊3日の北海道旅行に行かれました。私が診ている認知症で寝たきりの98歳の女性も娘さんと北海道を満喫して無事に帰ってこられました。認知症があっても、寝たきりでも車椅子に乗れさえすれば、飛行機を使って北海道旅行でもその気になれば楽しむことができるのです。そう、普通の人と同じようにあるがままに生活することが大切です。

 

キーワード 機械浴

ストレッチャー浴やリフト浴などのことで、特殊浴槽ともいう。1970~80年代、まだ各家にお風呂が無い時代に、埋め込み式の大浴場が施設での機械浴が流行した。

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