車の上にいる海江田も、れんほうも、辻本清美も声をからしていた。
梅村は最後の力を振り絞った。

「政治家は強くなければいけない」

彼は泣いていた。
秘書も泣いていた。

海江田も泣いていた。
聴衆も泣いていた。

もちろん、私も泣きながら彼の最後の演説を聴いた。

政治は非常だ。

一人の政治家を育て、再選させることがこれほど大変なことなのか、思い知った。
それも優秀で絶対残したい政治家であるからなんとかしたい思いは強くなるだけ。

彼が大阪最後の議席を確保するかどうかで、日本の厚生労働行政は天と地くらい違ってくる。
もちろん、日本国民にとって天と地くらいなのだ。

しかし、大阪の有権者がそのことをどれくらい知っているのか。
未来予想図が見える私には、どうすることもできないもどかしさだけが残る。

道頓堀川に飛び込んだら、彼の票になるのなら
飛び込んだだろう。

いや、彼が飛び込んで見せれば良かったのか。
そんな想いで、彼の最後の言葉をかみしめていた。

午前零時で、すべての選挙活動が終わる。
長かった１７日間を振り返っている。

法善寺に彼の勝利を祈願した。
水かけ菩薩に生まれてはじめて水をかけて、お願いをした。

法善寺前で、西山先生と少し酒を飲んだ。
梅村さんが２月２０日に国会で７５分間した尊厳死議論を観てもらいながら、ともに祈った。

帰りがけに、２件の往診依頼があった。
死の淵から這い上がってきた若き患者を励ました。

頑張って生きよう、と激励したら
笑ってくれた。