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私が抗がん剤の本を書いた理由

2013年09月25日(水)

私が抗がん剤の本を書いた理由を知って欲しい。
過去も現在も抗がん剤治療中の患者さんに深く関わっているうちに、
一番大切なことに患者さんも医師も気がついていないことが分かったからだ。
 

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『抗がん剤 10の「やめどき」』が発売されて、一週間が経過した。

この本は、30分や一時間で読める本ではない。

ましてやよほど脚力があって、ずうずうしい人間でないと、
書店で立ち読みなどできないだろう。

それくらい骨と筋肉のある本だと著者は思う。
時間のある時にゆっくり読んで頂ければ幸いだ。

 

ようやく今日あたりから、少しずつ感想を頂いている。

出版社にも読者ハガキが数枚届いたとの連絡を受けた。

どれもとても素敵な言葉が並んでいた。
この本を書いてよかった!と嬉しかった。

気合を入れて売ってくださってる本屋さんもあるそうで、

全国の知人が親切にも写メを送ってくれて本当に有難い。

全国の書店の皆さま、良い場所に拙書を置いてくださり、
本当にありがとうございまーす!

 

私が本書を、『平穏死 10の「条件」』と同じ版元から
出版したのには理由がある。

それは、前書きを読んでいただければ明らかなのだが、

前著は、

『胃ろう、抗がん剤、延命治療いつやめますか? 平穏死10の条件』

が正式なタイトルだ(長くてスンマセン)。

すると、読者からたくさんこんな声が届いた。

 

「今やっている抗がん剤治療、いつやめればいいのですか?」

「自分からやめたい、と申し出てもいいのですか?」

 

これは、講演会でいつも必ず訊かれる質問だ。

私はこう答える。

 

「ご自分から「やめたい」と言われなければ

 抗がん剤治療がずっと続く可能性がありますよ」

 

すると、多くの方が、目を丸くする。 

「ええっ!やめたいと言ってもいいんですか!?」と。

 

今治療の真っ最中の人は、〝やめどき〟を模索している。
一度始めたものは、そう簡単には終われないと思っている。

一日でも治療を続けてほしいという家族の想いもある。
大病院の思惑もある。

 

人の顔色を伺いすぎてなかなか自己決定できないのが
日本人の美学であり、弱点でもあると私は考える。 
  

そういう自己決定できない患者さんの迷いを受け止めるのが、
町医者である私の仕事なのだ。

一緒に模索をし、いろんな提案をし、〝いつやめるか?〟は
やはりご本人に決めていただく。

 

「そんな大切なことを、患者本人に決めさせるのか?」

 

という人ほど、この本をちゃんと読んでほしい。

大切なことだから、自分しか決められないのは、当たり前だ。

家族であれ、医者であれ、自分以外の「ほかの誰かが決めた考え」

に従うのは、何よりも楽な生き方である。

そして、人として成熟していない証だ。


それが失敗だと感じたときに、「自分ではない、誰か」の
せいにできるのだから。


たとえばこれを、「結婚」や「就職」に置き換えれば、
しっくりとくる人も多いのではないか。

 

「あの人が結婚しようと言ったから結婚してみたが、大失敗だった」

 

「大学の先生がこの会社がいいと言ったから就職したのに、
 俺の人生が狂った」

 

 

そんなことを、40歳にも50歳にもなって言い続ける人間がいたのなら、
残念ながらそのご本人の問題である。

 

医療だけが例外であると、誰が決めたのか。

 

たくさんの情報を仕入れ、勉強し、自分の頭で吟味し、

自分の人生観と照らし合わせ、何が自分にとってベストかを決めること。

 

それを患者さんに寄り添い、提案することが私の仕事でもある。

これは、町医者の私だからこそ書けるのだ。

ある人のがんを発見し、その日からがん患者さんとなった方に、
ボクサーのセコンドのごとく寄り添い
積極的な治療から、
緩和医療となり、在宅でいかに穏やかな最期を迎えるかまでかかわる。

まさに、川の上流から、海へと流れ出るところまで。

 

本書には、「がんの治し方」は書いていない。
残念ながら、多くの進行がんは、治らない。

どう向き合って、いかに長時間にわたって楽しい時間を過ごすか、
という生き方の提案をしている。

それには、やはり、抗がん剤をやめるタイミングが大切である。

その考えを基に、何度も夜を徹し、書いては直したのがこの本だ。

がん患者に向かって楽しい時間を過ごせなんて、悠長なことを言いやがって、と仰る方は、他の病気に冒された方の最期を見たことがない人だろう。


抗がん剤のやめどきさえ間違えなければ、

最期の最期まで自分らしい有意義な時間を過ごせる可能性を秘めている
のが、
「がん」という病なのだ。 


今日も先日お看取りさせて頂いた患者さんのご家族が2組も来られた。
「お陰さまでいい最期を送れました。」と、お礼を言っていただいた。

 
自分がやっていることは間違っていない。

亡くなられてからの家族のお礼と、
先週出た本の感想文を読むたびに、そんな思いを強くしている。


いま、抗がん剤治療を続けている方、 
そして、いつやめるべきかわからない方と、
そのご家族のみなさんにこの本を届けたい。

 

ストーリーの中には、抗がん剤治療以外にも、たくさんの情報を
可能な限り、盛り込んだ。

 
がん患者の就労問題、治療費の話、ジェネリックのこと、
在宅への切り替え方の話などなど・・・

これまでの私の集大成とも言える、この「抗がん剤10のやめどき」。


言いたいこと聞きたいことがあるぞ、という方は、ぜひ、
本に挟んである読者ハガキで出版社宛に
お問い合わせください。

 

本書にかかわる内容であれば、

私がお答えできる範囲で、これまでどうり可能な限り
個別に返事をしていきたい。

ただ毎日、全国から何百通ものメールや手紙を頂戴する身。

仕事で朝から深夜までパソコンを開けないときもあるので、
全部読めないし、返事を書けないことがあるかもしれない。
 

また残念ながら、匿名の方にお返事するほど暇ではない。

真剣に読んでくださり、実名でお手紙をいただいた方には
真剣に返信をしたいと考えています。

そのためならば、私はまた、夜を徹する所存です。

 
これまでのご厚情に、この場をお借りして感謝いたします。

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※本ブログは転載・引用を固くお断りいたします。

この記事へのコメント

自分の偉さを示したくて仕様がなくて自分の考えに従ってもらわないと気がすまない人が大勢います。この様な人は常に「みんなが言っている事だ」とか「あの偉い人が言っている」とか自分以外の何かを根拠にしながら自分の考えに従わせようとします。自分自身に対してもこのやり方を採ります。従った人がうまくいっていると「従わせた自分の考えがすばらしいから」と自分の手柄ですし、従った人がうまくいかなかったら「従った意見は自分の言った事ではない」と責任逃れをします。この種の人は常に手柄は手にしますが損だけはしないのです(死が相手のときはこの手法は通用しません。死の顔色を伺っても何も返ってきません。死を凌駕する権威も存在しません。死はそこにあるだけです。)。このような人がごく普通ですので人の顔色を伺いながら生きる人格はごく自然な適応のように感じます。自分の考えに従わせたい人も人の顔色を伺う人もどちらも楽な生き方を求めている点で同一です。もし人の顔色を伺わずに生きたら四方八方から攻撃を受け続けるでしょう。非常に生き難くなるわけです。成熟できる人は強い人です。損を引き受けることのできる人だからです。そしてこの人は死も引き受けるでしょう。

Posted by 異端者 at 2013年09月25日 03:56 | 返信

あなたの人生。
でもあなただけの命ではない。

人が人と関わりあって生きていく。大小のストーリーを持ちながら。

せっかくだから、選ぶ自由と選ぶ責任は、最後まで「自分」にあって欲しいと思います。
「いい人生だった」と思えるように。

長尾先生、いつもありがとうございます‼︎

Posted by 甲斐 at 2013年09月26日 01:21 | 返信

抗癌剤を止めると言っても、がん治療が終わる訳でない事に注意、啓蒙が必要です

緩和目的の放射線治療が必要となることもあるだろうし、疼痛などの苦痛を軽減する薬や、支援の必要はあります

抗癌剤が、がん治療の最後まで行われることは、確かに現実的ではありませんが、止めた方が良いのか、やらないと苦しみが増すのかは、個別の難しい判断になりますが、早く諦め過ぎる人が増えるとすると残念なことになります

Posted by 放射線治療医 at 2013年09月26日 04:55 | 返信

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