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どうする、子宮頚がんワクチン
2013年12月12日(木)
インフルにせよ、頚がんワクチンにせよ、効果と副作用についての議論が続いている。
ワクチン行政に素人の私だが、オープンな議論を期待している。(以下、MRICから転載)
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子宮頸がんワクチン問題にみる公衆衛生学的課題
山形大学大学院医学系研究科公衆衛生学講座
准教授 成松 宏人
2013年12月4日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
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●子宮頸がんワクチンの安全性
子宮頸がんワクチンの安全性が問題になっている。特に複合性局所症候群といった慢性の痛みを伴う事例がマスメディアにて大きく報じられ、広くその問題が認識されるようになった。厚生労働省は2013年6月に緊急で専門家による検討を行い、定期接種としては継続するものの、接種の勧奨はしないという玉虫色の暫定的な措置をとり、11月現在まで継続している。
副反応がなかばセンセーショナルに報道されたこともあり、ワクチンに対する逆風は強い。しかし、筆者は子宮頸がんワクチンを「A類疾病の定期接種」として続けることが現時点では妥当だと考える。がんを予防するというその期待される効果も大きいためだ。
副作用のない薬剤は存在しない。それは、ワクチンでも同様である。必要なのはリスクを定量化し、その効果に見合うだけのものかを比較することである。特に、ワクチン接種をどうするかは、個人個人の医療というだけではなく社会全体の公衆衛生学的な視点からの検討が非常に重要である。筆者は、公衆衛生学研究に取り組むがんの専門医である。本稿では、その視点からこの問題を考えたい。
●なんのためにワクチンをうつのか
子宮頸がんの予防で大きな役割を担うのは子宮頸がん検診である。検診により子宮頸がんの早期の細胞の異常である上皮内新生物の状態で見つけ出し、早期に治療することことができる。子宮頸がん検診は進行がんを防ぎ死亡を減らす効果が証明されており、多くの先進国では、ほぼ例外なく検診が行われている。日本においても同様に検診受診が推奨されている。
一方では、子宮頸がんワクチンは子宮頸がんの発がんに関与するヒトパピローマウイルス(HPV)の予防することで子宮頸がんの発症を防ぐものである。そのHPVの感染予防することによる上皮内新生物発症抑制の効果が、無作為割り付けを行った大規模臨床試験にて証明され、2009年に接種が開始された。ただ、予防できる感染はウイルスの一部であることもあり、検診の受診は引き続き必要になる。
このワクチンは「A類疾病の定期接種」となっている。これは予防接種法に基づき市町村が接種対象者やその保護者に対して接種を受けるように勧奨しなければならないものである。定期接種で引き起こされた副反応に対しては法に基づく補償を受けられるようになっている。このようなスキームをとるのは予防接種を多くの人が受けることは「社会を守ること」につながるからである。(厚生労働省ホームページ) 言い換えれば、公衆衛生上必要と判断されているからである。
●難しい副反応の検証
今回問題になっている副反応は子宮頸がんワクチンと因果関係があるのか?ワクチンの安全性を評価する際には特有の難しさがある。今回報道された複合性局所疼痛症候群の頻度は約860万回接種に1回(厚生労働省ホームページ)とかなりまれである。前出の大規模無作為試験での接種回数はワクチン群(サーバリックス)、対照群(A型肝炎ワクチン)それぞれ、約9,000人、3回接種して、「わずか」約18,000回である。ちなみに、この臨床試験において重篤な副作用の発生頻度は子宮頸癌ワクチンであるサーバリックスと対象群であるA型肝炎ワクチンで差はないと結論づけているが、これは、多く見積もっても数千回に一度の副反応の評価しかできていないと推測される。もし、複合性局所疼痛症候群の頻度はをこの種の試験で扱うとするならば、少なくとも片群1,000万人以上の規模が必要であると考えられ、このような規模で無作為に割り付ける試験を実施することは不可能であろう。これは、大多数の接種するため、極めてまれであるが重大な副反応を評価する必要のあるワクチン接種の安全性評価の難しさである。
●なにを基準に決めるべきか
子宮頸がんワクチンとの因果関係はあるのか、そして、あるとしたらどのような機序で起こるのか?これを解明するためには、相当数の副反応事例を集めて、詳細な臨床経過の検討が必要になるが、現時点では結論を出すに値するだけの医学的な証拠が圧倒的に不足している。なので、現状で有効か否か、安全か否かの議論をすれば、神学論争になりやすい。ひとたび副反応が自分や家族に起これば、当事者にとっては100%危険になる。もちろん、健康な方がワクチン接種を契機に日常生活にも支障のでるような障害がおこってしまうのは、悲劇以外の何物でも無いし、そのような状態になられて苦しまれている方やそのご家族には言葉もない。一方で、子宮頸がんでは年間3,000人ほど亡くなっており、特に若くしてこの病気でこの世を去ることもまた悲劇である。もし、それらを少しでも防ぐことができるかもしれない手段があったのならなおさらである。結局は、公衆衛生学的問題としてワクチン接種のリスクとベネフィットにはかりをかけて、いいかえれば社会全体の問題として決めるしかない。
●ワクチンにおける判断の難しさ
すべてのクスリには副作用がある。それはワクチンも同様である。しかし、ワクチンは疾患の治療のための薬剤とは違った基準で判断しなければいけない。たとえば、抗がん剤の場合とワクチンの場合では副作用リスクの許容できる基準が違う。ワクチンは、健常人に投与すため、がん患者の場合よりも副作用の許容できる範囲は必然的に狭くなる。また、定期接種となれば、膨大な数の接種を行う事になる。そのため、極めてまれな副作用事例も報告され、今回の様に、その事例が重大であれば、たとえまれであったとしても、安全性の評価に重大な影響を及ぼすことも多い。
子宮頸がんワクチンを「A類疾病の定期接種」として続けるかどうか、難しい判断になるだろう。副反応がなかばセンセーショナルに報道されたこともあり、ワクチンに対して逆風がふいているように思う。筆者は子宮頸がんワクチンを「A類疾病の定期接種」として続けることが現時点では妥当だと考える。がんを予防するというその期待される効果も大きいためだ。その上で、その迅速にかつ手厚く保障する制度を運用すること、副反応報告の収集をつづけ、安全性情報の開示を続けることが必要だ。そして、もっとも必要なのは、専門家がオープンな場で議論をつづけることが必要である。「ワクチン反対派」、「ワクチン推進派」とレッテルを貼るのは不毛だろう。
今後副反応の情報も集積していくにつれて、ワクチン接種の運用についてもことなる判断が必要になる場面も出てくるかもしれない。専門家のオープンな議論は、子宮頸がんに限らず、さまざまなワクチンに関する課題を解決することにつながると筆者は考えている。その意味でも、筆者を含む公衆衛生に携わる者の責任と使命は重い。
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子宮頸がん予防のHPVワクチン接種の今後の展望について
公益社団法人 日本産科婦人科学会
理事長 小西 郁生
2013年12月14日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
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厚生労働省からHPVワクチン接種勧奨の一時中止勧告がなされてから約6ヶ月が経過した。この間、厚生労働省の予防接種に関する合同部会等で、ワクチン接種後の副反応に関するデータ収集が行われるとともに、国民の注目する「慢性疼痛」に対して専門的に対応する17の医療機関が設定された。厚労省および検討にあたられている専門家に深甚なる敬意を表したい。一方、世界の趨勢をみると、この地球上から近い将来に子宮頸がんの発症を消滅させることを目的として、本ワクチン接種が粛々と進行している。また、世界保健機構(WHO)や世界産科婦人科連合(FIGO)からは、HPVワクチンの効果と安全性を再確認するとともに、日本の状況を非常に危惧する声明がなされている。本ワクチン接種の勧奨中止が現状のまま継続されることになれば、十数年後には世界の中で日本だけが子宮頸がん罹患率の高い国となる可能性が懸念されるところである。
しかしながら、この間、ワクチン接種後に慢性疼痛等で苦しむ少女の映像がメデイアで広く報道された結果、たとえ接種勧奨が再開されたとしても、接種率がただちに回復する状況にないことは明らかである。したがって、私たちには、副反応を発症する可能性のある女子と同じ目線に立ちながら、「中学1年生~高校1年生の女子が安心して接種を受けることができる」状況を改めて確立していくことが強く求められている。
そのために、第一には、副反応に関する情報の公開が最も重要である。現在、厚労省で収集されているデータの解析結果、すなわち、ワクチン接種の副反応としての慢性疼痛の正確な発生頻度、詳細な症状とその後の経過、ワクチンとの因果関係の有無等が客観的なデータとして公開され、広く国民に周知されることが大切である。またワクチンを供給する製薬会社には、個々の医療機関に対して、副反応に関する周知徹底を行うことが強く求められる。
第二は、慢性疼痛に対処できる医療ネットワークの形成が必要である。副反応としての頻度はきわめて稀であるとしても、もしも疼痛が慢性化する場合、ただちに専門機関へ紹介し、早期診断・早期治療を行うシステムを構築することがきわめて重要である。この間、さまざまの研究会等で慢性疼痛に関する議論がなされ、これはワクチン接種だけでなく採血だけでも起こりうること、早期に専門的に対処すればほとんど治癒することが判明している。本会は、日本産婦人科医会等とも連携ながら、副反応にただちに対処するネットワークを形成し、「安心してワクチン接種を受ける」状況を構築したいと考える。
第三は、ワクチン接種におけるインフォームド・コンセントの徹底である。もしも接種勧奨が再開された場合には、改めて、接種現場における詳細な説明と同意、すなわち、子宮頸がんという悪性疾患に関する説明とともに、ワクチン接種のリスクとベネフィットが接種希望者に対して詳しく説明される必要がある。またより安全で疼痛を感じることの少ない筋肉注射法が周知徹底されることも求められる。これらの点についても、本会が主導してワクチン接種医療機関への指導と周知を行っていきたいと考える。
わが国において、子宮頸がんは20~30歳代の若い女性において、その罹患数、死亡数ともに増加傾向にある。したがって、その発症を予防し、たとえ発症しても早期発見・早期治療によって若い女性の妊孕能、そしてその生命を守っていくために、HPVワクチン接種と子宮頸がん検診という予防の二本柱がとても大切である。今後も、本会は子宮頸がん予防のための対策を総合的に講じていきたいと考える。
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この記事へのコメント
昨日のニュースです。
『子宮頸がんワクチン接種1795人回答 45%が体調不良訴え』http://www.tokyonp.co.jp/article/kanagawa/20131212/CK2013121202000115.html
Posted by 匿名 at 2013年12月12日 01:38 | 返信
子宮頚がんワクチンについては、さっぱり分かりません。
子宮頚がんも、性感染症の一つと考えるなら、他にもエイズとか沢山病気はありますから、子宮頚がんワクチンで、副作用の出る人達の数が多ければ、本人の自由意思に任せるしかないのではと考えます。
ところで、話が違いますが、12日(木)に、長尾先生のご紹介して下さった、特定非営利活動法人つどい場さくらちゃん主催の「認知症の方に対する摂食.嚥下リハ」と言う、勉強会に行ってきました。
講師は大阪大学歯学部付属病院 顎口腔機能治療部 医長の野原幹司さんでした。
2時間半みっちりのお話は大変興味深いお話で、ケアマネジャー協議会での勉強会より面白く、高度で、臨床的なおはなしでした。
昔、中国で、「一専多能」という言葉がありましたが、まさに歯科医療という専門分野で患者の精神と身体を診るというか、医療全体を観る思いでした。
短い症例報告の数例の最後の圧巻は、75歳の小脳梗塞、右顔面麻痺、胃がんの術後回復療養の嚥下困難の症例でした。見るからに末期症状で、野原さんも「いつ何が起きても仕方が無い」と家族に宣言して、家族も承知で、嚥下困難の治療を考えたのですが、思いきって投薬をすべて中止したら、野原さんの言葉でいうところの「ただの爺さんになった」と言う状態で、元気で元気で、ひたすら食事がおいしくてたまらないという様子の好々爺と言う感じで、聴講していた人達も、大笑いでした。
まあ野原さんの自慢の患者さんであるとお見受けしました。
いや実に、面白かったです。
ホームページは“「口から食べること」介護.支援”だそうです。
書籍は、南山堂の出版で、「認知症患者の摂食.嚥下リハビリテーション」野原幹司編集 ¥2,625です。
帰途、阪神西宮駅で、電車を待っていると、人身事故で、急行がストップして、普通で、今津駅に向かう事になりました。キオスクのおばさんに、「人身事故なん?」と聞くと「ふん、そうらしい。もう亡くなったので病院やのうて、警察病院で解剖されるらしい。かわいそうにね」と言っていました。アメリカ発の世界大恐慌で、自殺者が多発しています。
Posted by 大谷佳子 at 2013年12月13日 02:35 | 返信
済みません。夜中にメールしたので、肝心の事を申し上げていませんでした。
野原幹司さんは、何度も「治療は医師を中心としたチームケアですから、患者さんの症状で、思いついた事は、ファックスでも良いから、報告して、お薬などの治療は医師の指示を仰いで下さい」と仰っていました。
お話の中に出てくる、嚥下困難で末期症状だった患者さんの投薬を一時的に休んでみたのも、勿論医師の指導を元に遂行したと仰っていました。
野原さんは医長さんと言うと、錚そうたる中年のおっさんのように思いますが、実際は紅顔の美少年です。
患者さんも、少し頭の禿げたお爺さんですが、お菓子やお料理を食べる事に夢中のお爺さんなので、その二人が動画に仲良く映ってる図が何とも可笑しいでした。
夜中にメールしましたので、肝心の野原さんのメッセージが抜けていたので、お詫びして、追加させて頂きます。
Posted by 大谷佳子 at 2013年12月15日 11:10 | 返信
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