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ALSの在宅医療と平穏死

2013年12月06日(金)

昨日は、芦屋市と伊丹市で講演。
芦屋市は市民病院に勤務していたし、伊丹市は小中高と育った土地。
特に芦屋市では、珍しく神経難病の在宅療養と平穏死についてお話をさせて頂いた。
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ALS患者さんの在宅医療

 

昨日は「神経難の在宅医療と終末期ケア」について
兵庫県芦屋市で医療・福祉関係者に講演をさせて頂きました。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 

 

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は神経難病の代表的疾患です。
徳州会病院の徳田虎雄さんが闘病されている病気。
全身の筋肉が萎縮し、呼吸や食事ができなくなります。

 

神経難病にはALS以外に、パーキンソン病、脊髄小脳変性症、多系統委縮症、ミトコンドリア脳筋症、クロイツフェルトヤコブ病など
たくさんの病気があり、現在それぞれを在宅で診ています。

 

人工呼吸器や胃ろうにという選択を迫られることがあります。
その場合の人工呼吸器や胃ろうは、延命治療ではありません。
車椅子と同様福祉用具なのですが、それらを拒否される方もおられます。

 

当院でも数えてみると過去に神経難病を数十人診て、
現在も10数人の神経難病の方の在宅医療を担当しています。
胃ろうと人工呼吸器が付いたALSの方は、3人診ています。

 

普段、神経難病を特に区別せず診ています。
がんも認知症も脳梗塞も神経難病も、自分の頭の中では
特別意識せずに、普通に、同等に在宅医療を行っています。

 

ただ、気管切開をすると痰の吸引が必要になってきます。
しかし資格を持ったヘルパーさんしか痰の吸引ができません。
現在急ピッチで痰の吸引の研修会が開かれているようです。

 

ALSの患者さんの在宅療養は、看護や介護が大変です。
2カ所のステーションから訪問看護が入ることもあります。
ホームヘルパーさんと医療の連携も大切です。

 

ALSの方は、人工呼吸器や胃ろうを付けたらいつまでも生きれるかと
言えば、もちろん、そんなことはありません。
必ずいつか終末期が訪れますが、そこからが延命治療です。

 

その時(意識が無くなったときなど)は、延命治療を中止して
欲しいと文章で表明される人もおられます。
そのような希望を「リビングウイル(LW)」といいます。

 

胃ろうや人工呼吸器を付けずに自然な形で旅立たれる方もおられます。
尊厳死です。

ALSの方が、人工呼吸器を付ける割合は日本では23割。
昨日講演した芦屋市では1割、当院では5割程度です。

 

私はALSの方には結構しつこく人工呼吸器や胃ろうを勧めます。
それらは延命処置ではなく福祉用具であることを何度も説明します。

拒否される場合は、地上げ屋さんではないが朝がけ、
夜がけで説得に伺います。

 

最初は拒否していた方も、いったん呼吸器を付けて慣れたら
それなりに楽しんで生活されていて、私たちも癒されます。
当院の宴会に来ていただき、一緒に楽しむこともあります。

 

実は、ALSの方でリビングウイルを表明され、終末期になったら
尊厳死を希望している方は沢山おられます。
(社)日本尊厳死協会の会員さんの中にもおられます。

 

尊厳死というと、メデイア的にはALS協会と尊厳死協会が
敵対関係のように書かれることが多いですが実際はまったく違います。
私自身、10名のALSの人と楽しく関わってきました。

 

ALS以外の神経難病の方にも関わっています。
また多くの障害者とも関わっています。
先日も、日本障害者現術団の設立に関わったばかりです。

 

難病の患者会からは、何度か平穏死の講演を頼まれました。
それらの活動は医師として当たり前だし、楽しいものです。

しかしメデイアは、なぜか尊厳死と難病や障害者団体を
対立構図で描くのが大好きなのです。

 

旅立った患者さんのご家族さんとは、その後も付き合っています。
呼吸器を付けずに尊厳死された方、付けて生きて亡くなられた方、
それぞれおられますが、いろんな物語があり、
関係はその後も持続しています。

 

私は神経難病も、がんも認知症も同じようにLWが尊重される世の中に
なって欲しいとお話ししました。
あくまで終末期の話です。

 

在宅でのALS患者さんは、人工呼吸器や胃ろうなどの医療処置が
沢山あって、かたときも気を抜けません。
そろそろ年末年始用の物品を用意していくべき時期。

 

在宅現場では、多くの難病や障害者と楽しむ日々であるし、
呼吸器の装着の有無に関わらず終末期の看取りも沢山やっているのに、
中央では常に対立構図で描かれてばかり。

 

我が国における尊厳死議論が進まないのは、こうした意味の無い
デッチあげのような対立構図も一因ではないのか。
メデイアは常に対立構図を好むが、実は終末期問題の本質はそこではない。

 

終末期の見極め、判定が本質だと思う。
私は「延命と縮命の分水嶺」と題しても講演している。

しかしメデイアは常に団体と団体の対立に置き換えて報じて、
高見の見物を決め込む。

 

そんな不毛で意味不明な論説はやめて、そろそろ尊厳死議論の本質に
迫る時期だと思うというか、世界的な議論からみれば、
日本国内の議論が完全にガラパゴス化していることから始めて欲しい。

 


その後、自分が育ち、現在も母親が住む

兵庫県伊丹市で介護職に講演しました。

伊丹市では、2回目の講演。

 

演題は「本当の認知症ケアとは何か?」。

ちょっとたいそな演題をつけてしまった。

少し後悔しながら認知症ケアの話をした。

 

食べること、移動すること、を中心に話したら、

あっという間に2時間が経過してしまいました。

もっともっと話したかった。

 

自分の中に貯まったものがあるのです。

言いたいことがいっぱいあるのです。

喋りながら、いろんなことを感じました。

 

伊丹市は、野球のマー君の出身地。

小さい頃、自分も野球をやっていたので

昔の野球グランドを見て懐かしく思いました。

 

聴衆は若い介護職ばかり。

私の本を読んだという人は、200人中、

たった3人だけでした。

 

これから数えきれないくらい、認知症の話を

する予定になっています。

今日のデキはイマイチでしたが気分は最高でした。

 


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※本ブログは転載・引用を固くお断りいたします。

この記事へのコメント

お世話になっております。
12月5日に伊丹市の研修でお世話になりました樽井です(司会をさせていただきました)。
秘書の廣岡様には長尾先生宛に昨日お礼文を送らせていただきましたが、書ききれないこともありましたので再度こちらに送られていただきます。
パソコン・プロジェクターの件は申し訳ありませんでした。
今回の研修では参加者から、親がなくなるとき、どうだったかと自分のこととして死を振り返ったり、脱水の話は干し柿を例にして分かりやさすかったとの意見を聞きました。また、牢屋を例にとって話をされ、分かりやすかったと言われていました。市民病院からの何名か看護師さんがきており、この研修の内容を病院の先生に伝えたいと言われていました。時間があっという間に過ぎ、まだまだ聞きたかったとの意見も多く、参加者に良い影響を与え、今後に活かせれる研修となりましたので、来ていただいてとても感謝しております。
来年もまた是非お願いしたいと考えております。私自身は、今年5月に長尾クリニック主催の研修に参加させていただき、自分は全然分かっていなかったとの反省と共に先生から学ぶ点が多く、認知症の研修を行うにあたり、医療と介護と両方の話ができる人は先生しかおられないと思い、お願いしました。
お忙しい中、ありがとうございました。また、先生の研修に、伺わせていただきます。
                                    樽井 裕子

Posted by 樽井 裕子 at 2013年12月07日 08:56 | 返信

先輩 こんど伊丹に来る事あれば お寄りください。
僕も天小・天中 出身です。(笑)

Posted by 通りすがり at 2013年12月09日 06:08 | 返信

研修ありがとうございました。遅ればせながら
先生の著書4冊慌ててネットで購入、本日届きました。
上司に「長尾先生のお話は良いから、是非行ってきなさい」
と、勧められて参加しました。今までの在宅でのターミナルケアで
ケア側の死への恐れにより、ご本人の平穏死の希望に添うことが出来なかったと
振り返りました。医療へ依存してたのは、ケア側の無知と弱さと反省しました。
先生と出会い、もやもやが晴れた気がします。
先生の本を勉強して、職場のスタッフに研修報告したいと思います。
また、参加させてください。

Posted by スーパーヘルパー at 2013年12月11日 08:59 | 返信

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