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保育士と風疹

2013年12月06日(金)

先日、風疹ワクチンの啓発記事について書いたが、今日も
保育士さんと風疹に関する記事(MRICから転載)を紹介したい。もう1本も追加する。
先天性風疹症候群の子供さんの母親である西村さんの声に耳を傾けて欲しい。
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保育士の予防接種歴及び抗体価確認を行うことの重要性

 

風疹をなくそうの会『hand in hand』共同代表

西村 麻依子

 

2013126日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

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昨年10月、第二子となる長女を出産した。ある日胎動がなくなり、6週間早く帝王切開で産まれた。妊娠7週目に風疹に罹ったため、胎児発育遅延があり、出生時の体重は1582g、身長40.2cmと標準より小さかった。咽頭拭い液と尿から風疹ウイルスが検出され、先天性風疹症候群(CRS)と診断された。出生直後は一過性の血小板減少症・動脈管開存症、貧血、脳室拡大と脳の一部石灰化等があったが、今はそのほとんどが回復し、現時点では大きな障がいは見つかっていない。しかし、医師からは、脳室拡大の影響により今後発達障害が出る可能性があるといわれている。

 

実は、長男の妊娠中に風疹の抗体価が低いと指摘されていた。しかし、「授乳中にワクチン接種はしてはいけない」と思い込んでいたこと、どこで打てるものか分からなかったこと、妊娠中に風疹にかかってはいけない理由も充分に知らなかったこともあし、未接種のまま長女を妊娠。そして、風疹に罹った。

 

風疹を発症した時、仕事先の保育園で保育士として働いていた。もちろん確定診断をされてからは休職したが、発症した時点で既にウイルスの排泄は始まっていたはずだ。幸い、その後、職員や園児に発症した人はいなかった。

 

出産後、全国のCRS患者の家族や当事者とワクチン接種の啓発活動を始め、6月と9月に厚労省へ臨時接種を求める要望書の提出を行った。

6月の要望書提出の後、バッシングがあった。その多くは「おまえがワクチンを打っていなかったから子どもを障がい児にさせただけなのに、なんで国を訴えているんだ」といった、要望書の内容とは違うものだったが、ひどく落ち込んだ。しかし、その中に「子どもを預かる仕事のくせに接種していなかったのか」といったものがあり、はっとした。

 

確かに、私はこれまで1度もワクチン接種歴について確認をされたことは無かった。これは風疹に限らず、全てのワクチンについてである。感染症に罹るリスクが高い仕事であることは理解していたが、自分が予防をしなかった為に感染源になり、多くの園児や保護者、同僚にうつしてしまうリスクについては、あまり考えていなかったことに気づいた。

 

この状況を何とかしたいと思い、まず、看護師の世界ではどのような対策をされているかを伺った。看護師の多くは養成課程への入学時、病院等での実習前、入職時に抗体検査を行い、学校や実習先の病院に結果を提出しているとのことだった。それは、各学校や病院が患者安全のために独自にしていることで、制度化されたものではないと知った。

 

9月の要望書提出の際に、厚労省の方に保育士と看護師の現状の違いを説明し相談した。後日、10月の『第二回風疹に関する小委員会』で発言する機会を頂いた。そこで保育士養成校の入学時、実習時、入職時の予防接種歴及び抗体検査の実施の必要性と、保育士の職業倫理として感染症にかかりやすいリスクをカリキュラムに入れて学習し、自分を守るため、園児・保護者・同僚を守り、集団感染しないためにワクチン接種歴を確認、必要な場合は接種を勧奨する重要性を発表した。また、保育士は試験だけでも取れる資格のため、試験内容に盛り込むなどをすること、保育所が現在、職員や実習生に対してどのような予防接種の対応をしているかの実態調査についても提案した。なぜならば、厚生労働省からはすでに「保育所の感染症対策ガイドライン」が出ており、その中で保育者の責任として、予防接種を含めた自身の健康管理についても明記されているからである。せっかくの指針があっても実行できなければ子どもたちの健康や命を守ることにはつながらない。

 

現時点で、厚労省からこれに対する具体的な対策は出ていない。しかし、相談したある園の園長が働きかけてくださり、神戸市の保健所は9月、私立保育園園長に対し、保育士の接種歴の確認(MRワクチン2回)、及び今後妊娠を希望する職員へ啓発を行うよう通知を出した。この素早い対応には感謝している。今後、より踏み込んで、監査時の項目に入れるなど、より確実に保育園の経営者が保育士の健康管理を支援してもらいたいと思っている。この動きが全国的になり、子どもや保護者、保育士自身が安心して過ごせる環境になることを願っている。

 

厚労省への要望書提出(9月)http://www.kobe-np.co.jp/news/iryou/201309/0006329758.shtml

第2回風疹に関する小委員会 【資料3】

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/0000026990.html

CRS患者会 「風疹をなくそうの会『hand in hand』ブログ」

http://ameblo.jp/tonokunn/entry-11601683987.html

保育所における感染症ガイドライン

http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/pdf/hoiku02.pdf

西村麻依子ブログ『COTO*HANAぶろぐ』

http://ameblo.jp/boo-to-cotton/

 

【略歴】西村 麻依子(にしむら まいこ)

1982年生。兵庫県在住。短大を卒業後、保育士として働く。20123月、第二子妊娠判明。妊娠7週目に風疹に罹る。同10月、緊急帝王切開で女児出産。先天性風疹症候群と診断される。20133月、NHKに取り上げられたのをきっかけに啓発活動を開始。8月に患者会「風疹をなくそうの会『hand in hand』」設立。共同代表の1人。

 

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願い

 

風疹をなくそうの会『hand in hand』共同代表

可児 佳代

 

2013129日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp

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私は、今から31年前に風疹に罹った直後に妊娠しました。娘が産まれて1ヶ月後に目、耳、心臓の障害と病気が告げられました。先天性風疹症候群(CRS)です。目は生後5ヶ月と7ヶ月に白内障の手術をしました。耳は1歳の時から聴覚訓練所へ通いました。心臓病は5歳のときに動脈開存症の手術をしましたが、合併症の肺高血圧症が残りました。

 

一つ一つの障害に向きあい過ごす時間はとても大変でしたが、それは娘と過ごした大切な宝物の時間でした。何故ならそんな時間は18年しか続かなかったからです。心臓病の悪化であっと言う間に旅立ってしまいました。

娘を亡くしてから、私は何をしていいのか分かりませんでしたが、亡くなった娘が生きていた証を残そう、娘の20歳の誕生日にHPを開設しました。そのHPに「風疹の予防接種のお願い」のページを作り啓発活動を始めました。

 

その直後の2004年に風疹が流行。10人のCRS児が産まれました。その年に厚労省の研究班が「緊急提言」を出しましたが、2006年の小児へのMRワクチンの2度接種が始まっただけで、提言の中で指摘されていた大人の感受性者には何の対策もないまま放置され、今回の流行に繋がりました。

 

今年になってすでに24人の先天性風疹症候群のお子さんが確認されています。昨年の4人を併せると28人です。せめて昨年、大人の間で流行していると分かった時点で、何故手を打ってもらえなかったのか、その時対策をしてもらっていたら今CRSで生まれてきた赤ちゃんは守れたと思うと切ないです。そんな思いを抱えている私に、行政に詳しい方が教えてくださいました。自治体は、本当は助成したくなかった、国に対しても積極的に働きかけをしなかった何も対応して欲しくなかったというのが本音だったようです。

 

今年の3月くらいから、私のHPには、31年前に私が苦しんだのと同じように、感染した妊婦さんなどから相談のメッセージが相次いで入るようになりました。不顕性感染で赤ちゃんに障害が出たという母親からの不安な声が幾つも届いています。

生後8ヶ月で白内障を発症し、両眼の手術が必要になった赤ちゃん。低体重児で生まれて心臓病のため転院して調べたらCRSと確認された赤ちゃん。妊娠中ご主人が風疹にかかり、妊娠初期の血液検査で抗体が1024と高かったにも関わらず、母親には症状がなかったため大丈夫と言われ、32週で出産、心臓などに疾患が見つかりCRSと診断された赤ちゃん。

妊娠中に風疹の症状が出た何組かの20代初めの若い夫婦は、CRSの赤ちゃんが生まれるかもしれないと分かっても、授かった命を無しにはできなかったと言ってくれました。国が対応してくれていたら…この赤ちゃんたちの障害は防ぐことができたはずなのです。

 

今年8月にCRS児の母親や当事者と共に患者会に立ち上げました。【風疹をなくそうの会『hand in hand』】です。

二度と風疹を流行らせないために、悲しむ母親と産まれてきたCRS児に対する支援を早急に望みます。皆がワクチンの接種することで風疹の根絶を目指しています。流行が下火になったからといって、これで終わったことにしたら、また、流行は繰り返します。

 

どうか皆さん、まだ風疹のワクチンを打っていなければ、打って下さい。自分のためにも、未来の赤ちゃんのためにも。

そして医療関係者の方々。インフルエンザの予防接種をしにきた大人たちに、MRワクチンも接種するように、勧めて下さい。お願いします。

 

この少子化の時代に、なぜ風疹対策が進まないのか不思議でなりせん。取るべき対策は明らかなのに、他の先進国でできることが、なぜ日本ではできないのでしょうか?このままでは、私たちと同じように苦しむ母親と赤ちゃんが増え続けてしまいます。二度と同じ事を繰り返さないために、旗振りでなく有効な対策の実行を望みます。

 

【略歴】可児 佳代(かに かよ)

1954年生まれ。1976年結婚。1982年妊娠中に風疹に罹患11月長女妙子出産。先天性風疹症候群(CRS)20012月妙子没。200211HP「カニサンハウスたえこのへや」開設。啓発活動開始。20134change.org.で風疹の署名活動開始。8CRS児の母親と当事者達と共に患者会【風疹をなくそうの会「hand in hand」】設立。共同代表の1人となる。

 

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ご覧になる環境により、文字化けを起こすことがあります。その際はHPより原稿をご覧いただけますのでご確認ください。

MRIC by 医療ガバナンス学会 http://medg.jp

 

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この記事へのコメント

拝啓

最近の長尾先生のご活躍なによりです。
文藝春秋社から近藤誠氏の特集号が発刊されました。私は近藤親派ではありませんし、まだ特集号を全部読んだわけではないのですが世論の動向は次第に近藤氏の主張に重なろうとしているようです。
この増刊号がかなりの発行部数を記録するであろうことは近藤氏のこれまでのマーケッティングをみても予想されます。
長尾先生の「48の真実」は注目を浴びましたがどちらかといえばご自身の経験が骨子を成しておりややインパクトに欠けるように感じます。
今後ある水準以上の知識層「特に医師以外」を唸らせる重量級の反論をどこかのメディアで発信しないと今後患者とのフリクションが増えることになり多くの病院、診療所で必要な医療行為が必ず滞ります。
私は近藤氏とは対談でなくてもいいと思います。誌上で充分論陣を張ることはできます。
今正面から突破する覚悟をお持ちの医師は西先生か長尾先生しかいないのではないでしょうか。
とりあえず日本医事新報「私も20年以上愛読」次号の近藤反論に対する再反論という手段でも構わないと思います。そしてそれを一般向けに再発信すれば衝撃度は大です。
先の大阪府成人病センターのEGCの論文だけでなく反証論文を揃え対素人でなくそれなりのインテリ層に照準を当てた反論でなければ泥仕合になるだけだと痛感します。
文春特集号はジャーナリストや有名人を飛車角に添えています。この出来レースにストップをかけるためには医師という狭いグループの中だけで近藤批判を続行しても多勢に無勢で落城はできないように思います。
有無を言わせぬデータを添えた重量級の、近藤親派が凍りつくような反論こそが今絶対に必要だと思います。
チェックメイトのため先生の次の一手を期待しています。

敬具

Posted by 大野 将人 at 2013年12月06日 07:34 | 返信

そういえば、BSプレミアムで,アガサクリスティの映画を放映していましたが、風疹がテーマの映画でした。
ネタバレなんで、詳しい内容は言えませんけど、イギリスや、世界中で風疹の問題が深刻な問題になっているのだなあと思いました。
私自身は子供時代に麻疹に罹って、20歳代に風疹に罹ったので、重病でした。
でも、このブログを読むと、妊婦さんや子供に接する機会のある人は、予防接種をした方が良いなあと思いました。

Posted by 匿名 at 2013年12月07日 03:36 | 返信

小さなこともがいて保育園でお世話になっているので、保育士さんが病気になることなどは理解できますし、大変であろうと思います。

一般企業で仕事をする私にとっては、学校や園で予防接種をしてくれれば、その時に一緒に先生方にもしてもらえれば感染防止においても、子供を病院に連れてゆくために有休を取るための調整においてもいいのになぁ、などと勝手に思っていました。

しかしながら学校現場においては、子供の集団における予防接種で問題が起こった経験があり、教師に対して予防接種を勧めることは難しいと聞きました。

確かに、予防接種を嫌がる人を私も何人も知っています。 逆に、私も含め、予防接種は受けたいと考えている人もいます。

様々な考え方があり、選択肢があることは、悪いことではありませんが、受け取りが側が選ぶだけの知識や考え方が必要ですね。

Posted by よしみ at 2013年12月08日 06:10 | 返信

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