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「近藤誠現象」は検証の必要あり
2013年12月19日(木)
3回目の記事では「近藤誠現象は検証の必要あり」だと語った。
「がんもどき理論に基づくがん放置療法」は一部の人に当てはまる仮説だが、近藤誠現象は
それとは別にちゃんと検証し、患者さんに支持される医療界に変革しなければと訴えている。
「近藤誠現象」は検証の必要あり
- 長尾和宏・長尾クリニック院長に聞く◆Vol.3
2013年12月3日(火) 聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長)
――「医療否定本」は、医学の進歩の否定につながり、患者は恩恵を受けられなくなる。
そうです。遺伝子検査による、オーダーメイド抗がん剤治療。乳癌の分子標的薬トラスツズマブは、「HER2陽性の乳癌」の治療です。臓器別ではなく、遺伝子別の抗がん治療が行われるようになっています。がんだけでなく、アルツハイマー病など多くの病気の原因遺伝子が簡単に分かる時代です。
長尾和宏氏は、「近藤誠現象から見えるもの、学ぶもの」に関心があると言い、Amazonに書かれている近藤誠氏の本の読者のレビューを一読することを勧める。 |
各種疾患の発症が予測できるようになりつつある今、、遺伝子カウンセリングに対応できるのか、という問題も生じてくる。こうした情報が、がん登録や各種疾患データベースに登録されていく。単に遺伝子検査を行うだけでなく、情報をどう管理し、いかに利用するかに関する議論が必要な時代なのです。しかし、医療自体をを否定していたのでは、こうした医学の進歩に伴い生じる諸問題を解決していくのも極めて難しくなります。
こうした問題は避けては通れない。なぜなら、米国では遺伝子検査がかなり普及してきているからです。医療機関を介さずに、一般の方がダイレクトに民間の検査会社に申し込んで、実施できる。保険会社による管理医療や、優生思想に結び付く可能性も十分ある。
――生殖補助医療が代表例ですが、医学が進歩すれば、倫理的な問題が生じ得る。
個々人のがんの遺伝子に応じた、抗がん剤を選択できるようになり、「一か八か」、あるいは「宝くじ」的な時代から、オーダーメイドの医療ができるようになっているわけです。遺伝子医療時代の功罪を踏まえ、議論していくことこそが問題の本質なのです。
――医療者だけでなく、患者さんも交えて、こうした新しい課題にどう対応していくべきかを考える必要がある。それなのに、「医療を全否定」されると、思考停止に陥ってしまう。
その通りです。
――『「医療否定本」に殺されないための48の真実』を上梓されて約3カ月ですが、反響がいかがでしょうか。
知り合いからは、「良く書いてくれたな」などと、時々言われますが、医師には僕の本はほとんど読まれていないですから、反応は少ないですね。またがんセンターの先生方が無反応なので、正直、がっかりしています。まあ、どうでもいいのでしょうね。
週刊誌の記者たちも、本のタイトルだけ見て、僕のところに来る。本の内容は読んでいない。それで、「(近藤先生の主張は)何が間違っているのか」と聞く。理解してもらいたいという気持ちはあるので、記者たちには何回も何回も説明していますが。僕が書いていることを本当に知りたいのであれば、僕の最近の本をぜひ何冊か読んでいただきたい。
――メディアや患者さんに正しい情報を伝えるためには、医療者がいろいろなところで主張していく以外にない。
近藤先生は、故中村勘三郎氏の医療も批判しています。彼は食道がんでしたが、手術や抗がん剤治療は成功した。けれども、その後、肺炎になり、それが悪化し、死亡している。食道がんへの抗がん剤と手術は、彼の免疫能を低下させ間接的には影響を及ぼしたのかもしれませんが、直接の死因は違う。誤嚥性肺炎で亡くなっています。では、同じ食道がんで、食道切除をした桑田佳祐氏はどうなのか。彼は、コンサートをやるまで復活している。
医療は不確実。手術は成功したけれど、術後、MRSAで死亡することもある。それを手術しなければよかった、というのは、「後出しジャンケン」。がんもどき理論から、がん放置療法という仮説には、論理の飛躍が多すぎる。
患者さんに正しい情報を繰り返し伝え、「近藤理論」には断固として反対しなければいけませんが、同時に「近藤誠現象」に対しては、素直に受け止めて、検証しなければいけない、というが私の意見です。
僕は、「近藤誠現象から見えるもの、学ぶべきもの」に興味があるのです。彼の本は、がんで家族を失った家族の心情を救った。現代医療への批判であり、それらは謙虚に受け止めないと、より良い医療を築いていくことはできません。繰り返しになりますが、Amazonに書かれている近藤先生の本の読者のレビュー、患者の慟哭、現代医療への大きなクレームを、がん医療に携われる方はぜひ一読すべきでしょう。
一方で、『医者に殺されないための47の真実』は、ミリオンセラーになりましたが、多くの患者さんは抗がん剤治療を続けている。この現状をどう考えるのかも問いたい。
僕自身は、町医者であり、予防と早期発見、そして終末期医療が本業。『「医療否定本」に殺されないための48の真実』には、データはあえて入れていません。僕自身、エビデンスを作る側でもない。1995年に開業して以来、在宅で看取った患者さんは700人以上に上り、臨床経験では負けないという自負があります。臨床経験に基づいた正しい情報を患者さんに伝える取り組みを続けていきます。
今回の週刊誌報道は、まだ発端と感じた。「近藤誠理論」の間違った部分はちゃんと否定しなければいけない。しかし、本屋の店頭にはあまりにも「医療否定本」が多い。それに対して正しい情報を提供するのが私の勤め。今はその第一段階の作業をしているわけです。今後も、難しいことを、やさしく分かりやすく、伝えていきたい。
また、この9月には、これまでの思い、今の全精力を込めて、『抗がん剤 10の「やめどき」~あなたの治療、延命ですか? 縮命ですか?』(ブックマン社)を上梓しています。本業である終末期医療の一環で、抗がん剤治療の在り方なども一緒に考えてほしいと願います。
【掲載スケジュール】
Vol.1◆『「医療否定本」に殺されないための48の真実』上梓のわけ
返り血を浴びても、間違いは正す
Vol.2◆医学の進歩の否定につながる懸念
「患者はもっと賢くなってほしい」との思い
Vol.3◆「近藤誠現象」は検証の必要あり
臨床経験に基づく情報発信を続ける
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