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医療・介護保険制度は持続できるか

2013年12月28日(土)

医療・介護保険制度は持続できるのか。
難しいテーマだが、週刊医療タイムスの11月号の連載には
多剤投薬とモラルハザードの視点jから書かせて頂いた。
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医療タイムス11月号  医療・介護保険制度は持続できるか 長尾和宏

 

 雑誌や新聞では、我が国の医療・介護保険制度の危機が論じられています。下町の開業医をしていると、いろんな不都合な(?)現実が見えてきます。誤解を恐れずにいえば、下町で起きている現実を直視しない限り、医療介護保険制度は持続できないのではと思います。現場にはあまりに理不尽な事例が多くあります。単に無駄を省くだけではなく、制度の“統合・再編”という手法で制度の隙間を埋める作業をしないと社会保障制度は破綻が見えています。しかしまだやれることが沢山あります。工夫次第で充分に持続可能であると思っています。今回は2点書きます。

 
 まずは多剤投薬です。病院から開業医への逆紹介が進んでいます。しかしその投薬数の多さに閉口することが多い。高齢者は2~3種類までであってほしいが、10種類以上の薬を手提げ袋に入れて病院から紹介されると複雑な思いになります。それぞれにそれぞれの理由、理屈があります。臓器別縦割りの診療体系で、それぞれの医学会のガイドラインに従うと多剤投薬になるのは当然かも。むしろそれを“統合”できないのが問題。


 あるグル―プホーム(GH)で、前医からの処方数を平均4分の1に減らしただけで入所者さんのADLが上がり明らかに元気になりました。訪問診療に行くたびにGHの看護師さんと訪問薬剤師さんに削除可能なお薬に優先順位をつけてもらったのです。こうした成功体験からも高齢者への多在投薬への対応は待ったなしであると確信します。薬を減らすことは今日からでもできます。そのためにも「家庭医、総合医」の養成も急がれます。研修医だけでなく、既存の勤務医・開業医の再教育も併せて行ってほしい。その思想は、外来診療に限らず在宅医療においても役立つはずです。医療の高度化に伴う必然に逆らうには相当なエネルギーが必要でしょう。日本老年医学会に期待するところもとても大きい。


 もうひとつは、モラルハザードです。8月から10月にかけて朝日新聞に「患者紹介ビジネス」と題して在宅医療の闇が報道されました。初回の紙面で私は「こうした行為で在宅医療がおとしめられるのは残念だ」とコメントしました。大半の医師は真面目にやっているのに、ごく一部の医師の行動だけで在宅医療全体が誤解されることを懸念しました。実際、「あれ以来、やりにくくなった」と愚痴る在宅医がいます。正義の報道で正直者がとばっちりを受けては、本末転倒です。厚労省は「違法とはいえないが、厳しく調査する」としていますが、真面目な在宅医療に影響が及ばないように工夫して欲しいと願います。


 とはいえ、報道されているように相当な医療・介護費が紹介者にキックバックされているのは現実のようです。社会保障費という視点から見ると相当な無駄があるということは確か。私は在宅医への講義で、「介護業者に引っ張られる形での在宅医療は問題」という話を必ずします。悪徳介護保険業者は様々な誘惑を仕掛けてきます。医師はそれを嗅ぎわける能力が必要です。医学教育の中で「医の倫理・モラル」をもっとしっかり扱うべきだと思います。医療・介護保険制度の持続は、このような、目の前の当たり前のことからでも始めることができるのではと感じています。

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