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産経新聞検診シリーズ第3話　　　胃がん検診は何がいい？
　　　　　　　　　　　　　　　　可能ならば、内視鏡検査委で

　胃がんはかつて日本人に最も多いがんでした。しかし現在は、肺がんと大腸がんに抜かれ第三位に。年間５万人もの人が胃がんで亡くなっています。さて、「胃がん検診を受けたいけど、胃透視と胃カメラ（内視鏡）のどちらがいいか？」とよく質問されます。私は内視鏡も胃透視も沢山やってきましたが、どちら？と聞かれたら「内視鏡」と答えています。胃痛などの症状のある人には最初から内視鏡が一般的ですが、無症状の人に行う胃がん検診は胃透視が一般的です。厚労省は現在もそう推奨しています。しかしもし可能なら胃がん検診も内視鏡でやったほうがいいと私は思います。しかし全部、胃カメラで行うと沢山の人が受けられないという事情もあります。胃透視と内視鏡では単位時間に受けられる人数が違います。胃透視は放射線技師さんでもできますが、胃内視鏡は医師しか行えない検査です。

　胃がんの症状としては、上腹部痛や不快感、体重減少、嘔吐・悪心、吐血・下血、食欲不振などがあります。しかし多くの胃がんは早期には症状がないので、中高年者は胃がんの検診を受けることをお勧めしています。胃がんの検診法には、胃透視と内視鏡検査の他に血液検査で行うペプシノーゲン法というものがあります。胃透視は最も普及している検診法ですが、異常を認めた場合にはさらに内視鏡で精密検査を行うことになります。内視鏡は胃透視より小さな胃がんの発見が可能です。一方、血清ペプシノーゲン検査は胃がんの高リスク群である萎縮性胃炎の診断に有用であることから、血清ペプシノーゲン値を測定し胃がんの高リスク群と判定された人に内視鏡検査を行う検診法も行われています。つまり、無差別に検診を行うより、高リスクの人に重点的に行ったほうが効率がいいという考えです。あくまで「血液検査で胃がんがありそうな人を絞り込める」という意味でしかないことを理解して上手に受けて下さい。

　検診で胃がんが発見された人は、症状が出てから医療機関を受診して胃がんが発見された人に比較して５年生存率が高いことが報告され、胃がん検診の有用性が確かめられています。しかし、胃がんの検診を受けている人がまだまだ少ないのが現状です。一方、書店に行けば「検診は意味が無い」という内容の本が並んでいますが、間違っています。胃がんは早期発見したほうが、命が助かる率が上がることは科学的に充分検証された事実です。だから公費を投じて検診が推奨されています。もちろん年齢や健康状態により検診の意味が異なってきます。私は中高年の元気な方にはできるだけ胃がん検診をお勧めしています。

　２月に「ばあちゃん、介護施設を間違えたらもっとボケるで！」（ブックマン社）という本が出ました。数日で重版され、現在、介護、高齢者部門で１位だそうです。急速に増えている認知症の医療・介護に興味がある方は是非読んでください。私は、胃がんで死なずに、長生きして認知症で死にたいと願っています。しかも地鶏のように最期まで自分の足で動いて自分で食べていたいと願っています。そのためにも、しばらくご無沙汰している胃がん検診を、そろそろまた受けようかなと思っているところです。

キーワード　胃内視鏡検査

従来、胃内視鏡検査は口からであったが、最近は鼻からの内視鏡が普及した。経鼻内視鏡は口からに比べて苦痛が少なく好評であるが、鼻が詰まっている人には行えない場合がある。口からの場合は鎮静剤を用いるなど、苦痛の少ない胃内視鏡検査が工夫されている。