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バラバラ・グルグル方式

2014年04月26日(土)

この4月から、サービス付き高齢者向け住宅の診療報酬が4分の1に減額された。
それを不服とする在宅医たちが、厚労省にブーイングを起した。
それを受けた厚労省は、新たな「奇策」を在宅医に提示した。
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その奇策は、「バラバラ・グルグル方式」と呼ぶらしい。

従来のまま月2回訪問診療していると、収入は4分の1に。
しかし「バラバラ・グルグル方式」を採用すると従来のままの報酬がもらえるという餌が撒かれた。

今、大半の在宅医はこの「グルグル・バラバラ方式」を採用していると聞く。

この「グルグルバラバラ方式」とは何なのか?

30人が入居する老人マンションがあるとしよう。

従来は、2週間ごとに在宅医が訪問診療していた。
4月1日と4月15日に、という具合に、月2回。
しかしそれだと収入が、4分の1に激減。

そこで厚労省が出した、「奇策」とは、
4月1日には、30人まとめて診察してもいいが、
2回目は、30人全員、日にちを変えて訪問すれば従来の収入をあげますよ、とのこと。


つまり、
Aさんは、4月1日と、2日の2回。
Bさんは、4月1日と、3日の2回。
Cさんは、4月1日と、4日の2回
・・・・・・
Zさんは、4月1日と、30日の2回、といった風に、
2回目の訪問を、バラバラの日付けにして、グルグル何度も施設に通えば、
従来どうりの収入が得られるので、よろしければそうして下さいね、との提案らしい。

実は、この提案は、極めて巧妙だと思う。

今までは、月に2回しか行かなかったのに、毎日のように来てくれるので
施設側は、安心できるという。

在宅医は、収入の確保ができるので安定経営できる。
ただし、毎日、その建物に行くので労力はかかる。
遠方からの在宅専門医なら、かなりの負担となる。

一方、患者側から見てみよう。

Aさんは、4月1日に診てもらったのに、4月2日にも診てもらわないと、いけない。
何故?と聞かれても、上手に答えることは不可能だろう。

同様に、Zさんは、4月30日に診てもらったばかりなのに、
5月1に、また診てもらわないといけない羽目になる。

なにより、患者さんの負担金もグルグル・バラバラ方式だと4倍に跳ね上がる。


まとめると、
バラバラ・グルグル方式は、
在宅医は、めんど臭いが、収入が安定して助かる。
施設も医者が毎日出入りして、大歓迎。
しかし患者さんから見たら、2日連続で診られて、医療費は4倍になる。

地域包括ケアの観点からは、在宅専門クリニックはバラバラグルグル方式しか
旨みは無いが、遠くから毎日行くのは、それだけでかなりコストがかかってしまう。
長期的には、施設に近い医療機関のほうが有利になってくる。
すなわち、地域包括ケアの方向性と合っている。

噂に聞くと、大半の医療機関は、バラバラ・グルグル方式を採用しているという。
私はよく知らなかったので、今のところ従来のままで、、4分の1に甘んじている。

というのも、施設や患者さんにどう説明すればいいのか、自信が無いからだ。
まさか「この方が医療機関は儲かるので」なんて言えないし。

幸か不幸か、サ高住の在宅はほとんど頼まれない。
こんなことを書いている危ない医者には不動産屋は絶対近づかない。

一方、いくつか頼まれている、グループホームが悩ましい。
頻回に呼ばれて、毎日のように訪問することは多々あるが。

2年後に、バラバラ・グルグル方式が無くなった時は、みんなどうするんだろう?
それこそ週刊朝日に、「バラバラ・グルグル方式を辞めた医者」として公表されたりして。

なんだが、医者の良心が試されているようなとっても悩ましい規定だと思う。
また、一括して診ること=悪、という誤った思い込みがあるように思う。

集団検診はいけないのか?
学校検診もいけないのか?
ビュッフスタイルの朝食は良くないのか?

ならば、やまいの人を集めてまとめて診る=病院という発想も変えたほうがいい
一括化や効率化は、質も担保できるという発想がない政策だと思う。


それにしても、厚労省は、ヘンな変化球を投げたものだと思う。
在宅医は、今、まさに試されている。

そもそも、「在宅患者紹介ビジネス」に手を染めた悪徳医が事の発端だ。
しかし悪徳在宅医を退治するために、こんなヘンな変化球は必要ないのに・・・

長い目で見れば、外来患者さんと在宅患者さんの診療報酬は現在より少なくなるはず。
今回は、サ高住であったが、次は一般在宅だろう。

しかしすぐ近くの医療機関から訪問していれば、それほどの負担ではなくなる。
近くの医療機関が近くの施設を診るのは極めて自然で、まさに「地縁」だと思う。


学校医や産業医のように、地域医療として必須の活動となろう。
それこそが真の意味での地域包括ケアではないのか。

今回の改定は、公式には、地域包括ケア改定。
しかし内容は本音でいえば、トンチンカン改定。

しかし目指すところは、やはり地域包括ケア改定。
誉めているのか、けなしているのか自分でも分からない。

医療の縦割りの象徴が、厚労省の縦割り、トンチンカンでもある。
すなわち縦割り医療と、縦割り政策は、まさに”フラクタル”な関係になるだけの話。

それを是正できるのが政治の力。
しかし前回の選挙で、愚民は、優秀な議員を落として、状況をさらに悪化させた。

しかし、そもそも、医療とはボランテイア。

しかし職員がいるので、経営はとりあえず安定させておかなと。
貧すれば鈍する、のは目に見えているし。

そんなところだろうか。
細かいところは適当に見過ごして、もっと大きな夢を診たいものだ。

それは、統合医療であり、全人医療であり、
セルフケアを啓発する医療、である。








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この記事へのコメント

厚生省のやる事って、病気の人も、お医者さんも、愚民扱いしてますね。
やる気がなくなりますね。
世の中が、暗くなる。
気の弱い人々の、自殺が増えると思います。

Posted by 匿名 at 2014年04月27日 03:08 | 返信

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