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医師法21条改正の議論
2014年05月02日(金)
国会で医師法21条改正に関する議論が始まっている。
いわゆる医療事故を医師法21状の対象とするかどうか。
これは今後の医療の在り方にとって、最大級に重要な議論である。
いわゆる医療事故を医師法21状の対象とするかどうか。
これは今後の医療の在り方にとって、最大級に重要な議論である。
一般の人には、なんのことか全く分からないであろう。
しかし最重要課題なのだ。
医療事故=警察介入のようになっているが、それは医師法21条が根拠。
医師法(ウィキペディア)
しかし、私はそれ自体が間違っている!と思う。
以下は、よほど時間のある人しか読めない議論。
この中には、「終末期」の話も出てくる。
たとえば、こんな議論を積み重ねながら、医療はどこに向かう。
可能であれば、多くの人と共有したい。
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
第8回医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会 議事録
医政局総務課医療安全推進室
●日時
平成24年10月26日(金)
●場所
厚生労働省省議室(9階)
核心部分から
●山本座長
本日は医事課長にも御出席いただいておりますので、適宜御発言、あるいは御説明をいただければと思います。
この点については、かなり御意見というか、御議論、これまでも既にあったところとは思いますが、本日は、このまとまった形で議題、論点とさせていただいておりますので、御自由に御発言をいただければと思います。どなたからでもお願いいたします。
どうぞ、有賀構成員。
●有賀構成員
どちらかというと素人っぽい質問で申しわけないのですけれども、この21条に従って届け出たこともある、そのような経験がありますので、私たちの会議の目的は、原因の究明と、それをもとにしてより質の高い安全な医療をつくっていこうという話ですね。そのことと、それから、この医師法21条の直接的な関係というのは、論理的には多分ないとは思うのですけれども、歴史的に、法医学会や、その後だと思うのですけれども、厚生労働省がこういう診療に関連した死亡なども届け出るべきだという見解に至ったものの考え方といいますか、そこら辺が歴史的にどういうことだったのか、ちょっと教えていただきたいなと思います。
私たちの議論は、そもそもそういうものだという中で議論したことはいっぱいあるのですけれども、ここでの議論は、より質の高い医療をつくっていこうねという話のときに、捜査機関は同時進行で私たちに振りかかる厳しいテーマでありますから、問題にすることはもちろんやぶさかではないのですが、どうしてそうなってしまったのか、ちょっと聞いてもいいですか。お願いします。
●田原医事課長
医事課長でございます。
まず、参考資料2をごらんいただければと思います。医師法21条では、「医師は、死体又は妊娠四月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは、二十四時間以内に警察署に届け出なければいけない」というものでございまして、その犯罪の痕跡をとどめている場合があるということで、こういった届出義務を規定したというものでございます。
今、有賀先生のほうから御質問がありましたけれども、厚生労働省が診療関連死について届け出るべきだというようなことを申し上げたことはないと思っております。この法律と、ここに書いてある解釈をお示ししているということで、診療関連死というのが何を示すのかというのはちょっといろいろありますが、明示的にそれを届け出なさいということを申し上げてはいないのではないかと思います。
関連して、法医学的な異状を意味するということが書かれておりますけれども、この法医学的異状を判断する際に法医学会のガイドラインも参考にしてくださいというようなことは申し上げておりますけれども、それを参考にして、最終的には検案した医師が、異状であるかどうかということを判断していただくというものでございます。
●有賀構成員
一般の病院に向かってその手の話を発信されなかったということはそうだと思うのですけれども、もし僕の記憶に間違いがなければ、国立病院にはそうなさいませということを配信したというか、意見を国立病院の病院長にはおっしゃったということはあるのではないですか。多分、それを一般の病院が皆まねしたのではないかと思うのですけれども、そこら辺をちょっと教えてください。
●田原医事課長
今、御指摘いただきました、国立病院のほうに対して、リスクマネジメントマニュアル作成指針ということで、そこには、警察への届出として、医療過誤によって死亡または障害が発生した場合、またはその疑いがある場合には、施設長は速やかに所轄警察署に届出を行うというような内容がございます。平成12年だったかと思いますけれども、それについては、これはあくまでも国立病院などに対してお示ししたものでありまして、国立病院のほうで実際にいろんな対応する際の参考になるように指針を示しているということで、ほかの医療機関について、こういうことをしなさいと言っているわけではないと考えております。
●有賀構成員
そうしますと、国立病院でない病院については、そのようなマニュアルになさいませということが届いていなければ、違うマニュアルがあってもよろしいと、こういう話ですね。
●田原医事課長
それはそれぞれ、検案した医師が第一義的には判断するものだと考えております。
●山本座長
それでは、どうぞ、中澤構成員。
●中澤構成員
そうすると、今の議論は、要するにこれは検死の段階の話であって、医療関連死とは関係がないという解釈でよろしいでしょうか。
●田原医事課長
「ケンシ」というのと検案というのはちょっと違いますので、お亡くなりになって、検案を医師がしたときに警察に届け出るかどうかということが論点だと思っております。「ケンシ」という意味合いが、いろんな字がありますので、少し限定して御質問いただければと思います。
●中澤構成員
検案というのは、普通は医療が関係しないところで起きた事例について、医師が必ず検証を行わなければいけないという状況の中で検死が行われるという考えで私はいるのですけれども、これは検死にもかなり幅が広いという感じにはなるのですか。
●田原医事課長
検案は外表を見て判断するとなっておりますけれども、その亡くなられた死体があって、死体の外表を見たドクターが検案して、そのときに異状だと考える場合は警察署に届け出てくださいということだと考えております。
●中澤構成員
それは、外表を見てということは、外表だけで判断されるということでよろしいわけですね。
●田原医事課長
基本的には外表を見て判断するということですけれども、外表を見るときに、そのドクターはいろんな情報を知っている場合もありますので、それを考慮に入れて外表を見られると思います。ここで書かれているのは、あくまでも、検案をして、死体の外表を見て、異状があるという場合に警察署のほうに届け出るということでございます。これは診療関連死であるかないかにかかわらないと考えております。
●中澤構成員
そうすると、外表では判断できないものは出さなくていいという考えですか。
●田原医事課長
ですから、検案ということ自体が外表を検査するということでございますので、その時点で異状とその検案した医師が判断できるかどうかということだと考えています。
●中澤構成員
判断できなければ出さなくていいですね。
●田原医事課長
それは、もしそういう判断できないということであれば届出の必要はないということになると思います。
●中澤構成員
私は、最初からこの法律の内容は医療事故死というのを意識してない時代にできていると思います。ですから、これを現代の非常に複雑化した死亡ということに適用するのは難しい面があるだろうなと思っておりましたので、今のお考えをはっきり聞きましたので、そういうことかということで理解させていただきます。
●山本座長
よろしいでしょうか。
それでは、飯田構成員。
●飯田構成員
大体同じことを言おうと思っていたのですが、非常にはっきりしていると思います。私も全く同じで、医師法21条の立法の趣旨とは、今の解釈がかなり変わっている、変わってきたというのが実態で、大野病院事件以来、またそれが少し揺り戻しがあった。それで、きょうの参考資料2は極めて重要な資料で、医師法に関してはこの四角のとおりでいいのですが、下の、立法の趣旨がきちんと書いてありますので、やはりこれは厳密にやっていただかなければ困ります。私も(厚生労働省の国立病院に対する)ガイドラインが混乱の発端だと思いますけれども、今までが厳密に解釈していなかったのが問題であって、きょうこの場でそれが明らかになったということは極めて重要だと思います。本当にありがたいと思います。
以上です。
●山本座長
どうぞ、宮澤構成員。
●宮澤構成員
法律というものについてちょっとお話をしておかなければいけないのかなと思います。法律というのは時代に普遍的に適用されるものなのですね。したがって、立法された当時に何を対象にしたかということと、その後の社会的な変化によって何が変わっていくのかということに対応しなければいけない。法律は常に変わらないものですけれども、もちろん、ある一定限度、社会的な情勢の変化があれば変わる時期というのはあるかと思いますけれども、法律そのものは、立法の趣旨というか、その当時の立法の目的で文書ができていくのですけれども、文章そのものがその立法の目的を限定的に書いていない以上は、その文章の中でどのように解釈されていくかということに変わっていきます。法律というのは社会の変化に伴って変わっていく必要があるので、ある一定の立法の目的があったからといって、その目的どおりに常にそこだけに限定されるというわけではないと考えるのが法律だと思います。
そうしないと、恐らく法律というのは社会の変化に対応できないというものになってしまうので、法律そのものの性格ということから考えると、医師法21条もそうなのですけれども、基本的には、立法当時に考えられたことと、法文そのものが現代になってどういうところまでカバーする形になってしまったのかというのは変化していると考えなければいけないと思います。
その意味では、立法のそもそもの目的から現在の医師法21条の適用の仕方というのは確かにずれてきています。しかし、法文そのものから言って、その適用の仕方が明らかに現代的な適用の仕方であって、法律そのものが変わってきているわけではないです。法文そのものはそのとおりなのですけれども、その適用範囲が社会の状態によって変わっていると考えるべきではないかと思っています。
●中澤構成員
そういうことですと、これは拡大解釈ということになるのですけれども、それは許されるという御意見ですか。
●宮澤構成員
拡大解釈と言っているわけではないのですね。解釈の中身がどのような形なのか、文章に書いてないことを拡大的に解釈することは許されないです。文章に書いてある中身をどのように現代的に解釈すべきなのか、解釈論の中での問題なので、拡大解釈というのとは次元が異なっていると考えています。
●中澤構成員
今、文章の中と書いてあるのですが、実際この文面に書いてある事態については、現代の医療の内容の中で頻繁にあることなのです。ただ、医療事故、あるいは診療に関係する死亡は別で、これだと2つ意味を持つということになるので、一つの法律で2つのことを意味つけるというのはかなり乱暴な議論だと私は思うのです。
●宮澤構成員
ここの中で「刑事犯罪に関連する」という文言が入っていれば確かにそのとおりなのですけれども、この文言の中にはそれが入っていません。したがって、刑事犯罪だけに関連すると考えるのが解釈の限界だというのは、私は誤りだと思っています。
●山本座長
どうぞ、里見構成員。
●里見構成員
医師法21条の解釈に関して、参考資料2というのが、多分、皆さんが大体考えていることだと思うのですけれども、ただ、私は、先ほどの厚労省のお話をお聞きしていて、厚労省、逆に一歩踏み込んだことを、たとえ一部の国立病院にしろ、やったのかなという気がしたのですけれども、その辺についてはどうお考えでしょう。要するに、診療に関することに関しても警察に届けるべきだという示唆を与えたというので、これが全国にかなり大きな影響を与えたと思いますけれども、現在でもそういう考え方は余り変わっていないのですか。
●田原医事課長
私が答えるのがいいのかどうかわかりませんが、あくまでも、先ほどのリスクマネジメントマニュアル作成指針というのは国立病院に対してお示しをしているので、国立病院では、その医師法21条もあるけれども、そういった事態が発生した場合は警察署に届出をする、相談するということをお示ししたわけであって、そのほかの医療関係者がこれに拘束される理由はないと思います。
●里見構成員
でも、それは非常に不思議な考え方だと思いますね。厚労省がそういう明確な意見を持っていて提示したのであれば、かなり大きな影響力があると私は考えるので。今でもそう思います。
●山本座長
どうぞ、宮澤構成員。
●宮澤構成員
今のお答えというのは、例えば国立大学のほうに示しましたと。ただ、一つの条文を一つの解釈の仕方で示したということになると、基本的にはその解釈は全体に広がると考えるべきだと思います。それは、やはり国立大学だけ特別とか、民間とは違うという理由がないからなのですね。国立大学に示した基準であれば、それは一般の民間の病院、診療所にも同じように当てはまると考えるのが、一つの条文を基本にする限りは当然の帰結ではないかなと思います。
●田原医事課長
もう一つ補足いたしますと、今申し上げましたリスクマネジメントマニュアル指針というのは、これは医師法21条についてのみ解釈を示して、これに従ってくださいと言ったわけではなくて、標準的な医療事故防止の手順書という形で出してあって、その中の一部に今申し上げたようなことが書いてあるだけですから、そこの部分だけ取り上げて云々するというのはどうかなというのはありますけれども、その全体を見ていただくのが重要ではないかと思っております。
●山本座長
山口構成員。
●山口(徹)構成員
ちょっと今のお話の中でもう一つ出てきた話として、参考資料2の中に、「『異状』とは病理学的の異状ではなくて法医学的のそれを意味する」と。そのところに法医学会のガイドラインというのが出てきましたけれども、ぜひ宮澤構成員に教えていただきたいのですが、こういう法医学会のガイドラインというものはどういう位置づけになるのでしょうか。
●宮澤構成員
ガイドラインというのは法律そのものではありませんから、一つの社会的なルールとして定着する可能性はあるかと思います。ただ、ガイドラインが幾つも重なって、だんだんそのガイドラインが普通のことだということになってくると、それがいわゆる社会的相当性という違法性を限定づける基礎になり得るので、それが一般の社会的意識と同一のところになると、だんだんそのガイドラインが社会的相当性の基礎になってくるという可能性はあります。
ただし、今のところは、ガイドラインというのはあくまでも社会的な中でのルール、法律は絶対的なルールになりますけれども、それに至る前のルールと考えざるを得ないと思います。
●中澤構成員
今のお話を聞いていると、法律は解釈が可変であるというような問題と、それから、最初の時点で書かれたものはほかの解釈に使われてもいいという、すごく曖昧で、それに拘束される立場から言うと、一体これはどうやって動けばいいのだというような感覚を持つのですけれども、法律というのがそういうものだとすると、最後は最高裁ということになって、大体今の世の中全部そうなのですけれども、医療機関でもそうですが、要するに、はっきりしたルールがないから上の話を聞こうという形に全部なっていくのですね。ですから、みんな非常に細かいことまで上の意見を聞くという、医療としては本当にこれでいいのかという非常に危ない風潮になっていくので、何がルールなのかということは、法律家の方が、こうだと言っていただかないと、それに従うほうは非常に混乱を招いて、今もそうだと思います。その辺についてもう一回。
●宮澤構成員
何か全国の法律家の代表みたいになってしまいましたけれども、確かに、今おっしゃられること、よくわかるのです。いわゆる処罰規定のある規定、刑法規定ですね。処罰規定のある規定というのは明確性の原則というのがあって、それは絶対に明確でなければいけないというのが根底にあるのですね。もう一つ法律の特徴というのがありまして、どうしても解釈の枠内ということがあるのですけれども、時代とともに変化しなければいけないというところもあります。
ただ、絶対的な解釈と、こう分かれる道があるので、今言われたような、例えば終末期どうするかという問題も、実は法律不備なのですね。法律というのは常に社会を先行してルールをつくっていくのではなくて、社会の後追いで、何かがあったときにその抑制をしていく。例えばねずみ講があった後に、連鎖販売の防止に対する法律ができてくるように、どうしても後追いになる。ですから、先生のおっしゃられるのは、ここの部分ははっきりしないではないかという部分はどうしても出てきています。だからこそ、今、法律の解釈をはっきりさせておくことと、それから、今後どうしていくかと立法政策的な部分というのもやはり考えなければいけない部分というのは医療はたくさんあるのではないかと思っています。
終末期もその一つの代表例だと思っています。終末期が何なのか、どうなのか、これはそこの議論ではありませんけれども、法律というのは常に後追いの性質を持っているので、今の状況を常に先行的に全部解釈できるというわけではないというのが法律の特徴だと思わなければいけないと思います。
ただ、その範囲内でできる限り明確であるということは必要なことなので、この文章から明確にできる範囲というのは考えておく必要があると思います。
●山本座長
私も法律家ですので一言申し上げさせていただきますと、法律の解釈適用について最終的な権限を持っているのは、日本においては司法権なので、そして司法権の頂点にあるのが最高裁判所ですから、最高裁判所が例えばこの医師法21条に対して一定の解釈を示したとすれば、それはもちろん判例が変更されるということは論理的にあり得ますけれども、基本的にはそれは日本国の中で、この医師法21条はそのように解釈されるということを明らかにするということになるというのが日本の国の仕組みですので、上に従うとかそのような話では基本的にはないということだと思います。
ですから、この医師法21条について、私の理解している限りでは、最高裁判所、一定の判断を示しているのではないかという気もするのですけれども。
●田原医事課長
医師法21条につきましては、最高裁で判示されて平成16年に出されておりますが、医師法21条にいう死体の検案とは、医師が死因等を判定するために死体の外表を検査すること、といっております。また、当該死体が自己の診療していた患者のものであるか否かを問わないと解するのが相当であり、これと同旨の原判断という高裁の判断は正当として是認できるといったようなことが示されております。
●中澤構成員
済みません。簡単にこういうことだと言っていただければありがたいのですけれども。
●田原医事課長
簡単には、先ほど少し御説明しました、検案というのは、医師が死因を判定する際に、死体の外表を見て検査するということをいっていますということであって、死体が診療中の患者さんなのかそうでないか、そういったものとは関係はないといっているということです。
●中澤構成員
ということは、医療関連死はこの関係からは省かれるという考えでよろしいのですね。
●田原医事課長
そういうことではなくて、いわゆる、ここでいろいろ議論されている医療関連死であっても、医師が死因を判断するために外表を見て、異状がある場合は警察に届け出なければならないということです。
●山本座長
どうぞ。
●岩井構成員
現在、異状死として警察に届けられたものについて検死が行われて、そして、犯罪の疑いがないもの、そして、犯罪の疑いがあるかどうかわからないものにスクリーニングされ、さらに犯罪による死亡の疑いがあるものは刑事訴訟法上の検視に付されて非犯罪死体と犯罪の疑いのある死体に分けられて後者は司法解剖といいますか、検死に付されるとなっているので、行政解剖の対象になるようなものも異状死の概念に入るわけですね。ですから、届出があって、それから、そういう判別が検死によって行われるわけですね。ですから、ここの「犯罪の痕跡をとどめている場合があるので、司法警察上の便宜のために」という解釈はちょっと狭過ぎると思います。
法医学会が出したガイドラインというのは非常に広くて、基本的には、「病気になり、診療を受けつつ、診断されているその病気で死亡することが普通の死であり、これ以外は異状死と考えられる」という非常に広い概念でとらえるというガイドラインを法医学会は出しているわけですね。それに対してほかの医学会は非常に反発しまして、もっと、純然たる病死でない状況が死体に存する一切の場合を異状死というのはおかしいといいますか、その診療に関連しないものでも、自然に病死するという場合があるので、そういうものまで異状死に含めるのはおかしいという抗議をしているわけですね。平成17年の日本学術会議の提言では、第3者の医師の見解を求め、死因の説明の合理性に疑義をはさむ場合は異状死とすべきとしています。
ただ、私は、この医療事故関係の届出件数の推移というのを見ましても、平成9年から非常に上がっていて、だんだんまた下がってきているとか、それから、立件送致数の推移というのも非常に平成9年から変動していますね。最高裁の判決というのは、医療関連死だってこの異状死の概念の中から外れるものではないのだという見解を示したものだと思うのですけれども、それまでは余り送致がなされてこなかったのが、医療過誤で非常に問題になったケース、それを医師が届けなかったというので刑事事件になったケースがありますね。この21条違反、届出義務違反。そういうものがあってから届出件数も多くなって、そしてまた立件送致数も多くなっているのではないかなあと私は思うのですけれども、そうではないでしょうか。
●山本座長
どうぞ。
●田原医事課長
そこの因果関係はちょっとわかりませんけれども、事実としては、平成11年にそういった医師法21条違反のことについて疑義が生じるような事案があって、それが裁判で争われて、平成16年に最高裁の判決が出たということですから、そのころと少し時期は一致しているのかなとは思います。
●山本座長
どうぞ。
●高杉構成員
したがって、今、宮澤先生が言われた法の解釈、それは時代によって変わるのかもしれませんけれども、現場で結局法医学のガイドラインが出、国立病院の診療ガイドラインが出、あやふやなままにいったのが現在の混乱を起こしているのですね。だから、そのためにこの調査のあり方、検討委員会も行われているのであって、そこがはっきりしない限りは前に進まない。あるいは、これはこうなのだと決めていただければそれはそこで対処できる。
しかし、自律的な取り組みの中で我々は努力しようと言って、その肝心のところがころころ変わったのではやれませんね。だから、そこをきちんとしなくて、そういう国立病院への指令が出たり、法医学のガイドラインで、我々、一生懸命応えても、また解釈が変わるということでは困るわけですね。
だから、医療関連死というのは犯罪でしょうかと。犯罪ではないですね。医療過誤で届けないのは犯罪かもしれません。それは患者さんにきちんと説明するプロセスをきちんと我々やりましょうと提案しているわけです。それは明らかな過誤のことはもちろんですけれども、そうでないケースもある。説明がなかなか院内の事故調査委員会でも説明できない。これをどのように処理しましょうかと、どのように患者さんに納得してもらいましょうかということの話し合いが大切なのです。
だから、そこの基本が、どうも提言がぐらぐらするようではこれは前に進まない。我々は、何をしているのですかねということにもなりますし、今後の医療をどのようにするかという視点でやはり進めなければいけない。そうすると、法律家の先生方の御意見も大切だけれども、そこをきちんと示してくださいよというのが本当に現場の意見ですね。
●有賀構成員
また厚生省の方に聞いてしまうので嫌がられてしまうかもしれませんけれども、リスクマネジメントに関する手順書全体のあり方を示唆した中で本件についての部分が入っているという御説明ですね。ここの会議では、何か困ったことが起こったときに、その原因をきちんと見極めて、そして、医療安全に資する形で利用しようではないかという話で、まさにそれはリスクマネジメントそのものなのですが、リスクマネジメントについて、極めて広く、いわゆるクライシスマネジメントというか、訴訟とか、そのような観点まで含めて広く考えるという考え方でいくと、患者さんが警察に駆け込むというふうな状況をマネージするためにも、先に警察へ届けておけと。そのような感じでリスクマネジメントに関する手順書の中にお入れになったのですか。
そもそも医療安全をしていこうということと警察に届け出るということとは論理的には全くの独立事象ですね。つまり、私たちがいい医療をしようと思うことと警察に届け出るということは、今、僕がちょっと触れたリスクマネジメント、ペイシェントセーフティのことを考えた上で、究極の向こうにある訴訟とかそのようなことまで入れれば、場合によっては理解できるのですけれども、ここで議論するような場面において、当時の厚生省が手順書の中の一部にそれを入れたというのは、その部分だけ議論してもらっても困るという話なのですけれども、どういう理由でその中に入っていったのでしょうか。
私たちは、もともとそのようなことを想定は実はしてなくて、法医学会によるガイドラインが出たときも、極めて純粋に反対するわけですね。違うよねと。だけれども、後押しをしてくださったのが厚生労働省だという歴史観を持つわけです。だから、なぜそこに入れたのかということについて、ここでは独立事象で関係ないということは、多分多くの方がおわかりになっていると思うのですけれども、当時入れた理由は何なのですか。
●田原医事課長
先ほどの届出のところを入れた理由というのは、今、私のほうからは説明できませんけれども、この全体、リスクマネジメントの作成指針をつくった趣旨を申し上げますと、医療事故の発生防止対策、それから医療事故発生時の対応方法について、国立病院などがマニュアルを作成する際の指針を示すということで、各施設、各病院で医療事故防止体制を確立してほしいと。それが安全かつ適切な医療の提供に資するという趣旨でつくられたと理解しております。
●有賀構成員
ちょっと畳みかけてごめんなさい。だから、警察に届け出るというその仕事は、直接的には医療安全と関係ない。言っていることわかりますね。直接的に私たちがやらなければいけない医療安全は、病院の中できちっとそれを分析して、わかりますね。それで、その結果を踏まえて次のステップへ進むわけですね。そのときに、警察に届け出て、何が安全に結びついたのだろうと今となっては強く思うので、だから、したがって、当時の考え方は、警察に届け出ると医療安全がより安全になるとお思いになったのですか。
●田原医事課長
ここのマニュアルというのは、病院長が警察にどのように相談していくのか、この指針やマニュアル自体は法律ではありませんので、法律に従って、医師法21条に基づいて届出をしなければいけないのかどうかということを含めて警察に相談するということで書かれてあるのではないかと思います。
●高杉構成員
医療行為はすることが不確実で、リスクがあって、それはもう何が起こるかわからない。しかし、それが起こったとき警察に届けるというのはどういう意味なのでしょう。犯罪を犯したのは警察に届けるの当たり前ですけれども、そこのところが変な指針が出るからかえって周りがおかしくなる。だから、犯罪と犯罪でないというのをはっきり区別しなければ、警察を入れると言って病院長が責任逃れしているだけではないですか。それでは困ると我々は思うし、きちんとそれを説明しましょうやということでありますから、そこでかわそうとした当時の状況はわからないではありませんけれども、それで混乱が生じたということを反省して前に行かなければ意味がないと私は思うのでありますが。
だから、この捜査との関係というのは、医療行為をして死に至った、これを犯罪とするのなら、これは医療行為やれません。そこのところをきちんと直してくれないと。私たちは、その取り組みの中で患者さんの信頼に応えようというわけですから。
●有賀構成員
高杉先生、そうおっしゃるのは僕と全く心の部分では同じなのですが、しかし、先ほど法律の方たち、座長も含めて言われたのは、診療関連死は21条のこの解釈に含まれるという、それが、今、日本国のルールになっているのですね、要は。
●山本座長
最高裁判所がそのように言っていると。
●有賀構成員
最高裁判所が言ったということは、この国のルールとしてそれが所与の条件なのだということを前提に話をしなくてはいけないということですね。
●山本座長
それはそういうことになると思います。
●有賀構成員
だから、ここで確認したいのは、当時は医療安全に結びついていた可能性があると思うのですよ。厚生労働省の今の話だと。だけれども、今よく考えると、高杉先生がおっしゃったみたいに、そのような考え方と、つまり、警察に届け出るという考え方と、医療安全をよりよい形で全うしていこうではないかと思っている、そういう考え方とは独立している。別個の問題だと考えるのが筋ではないかということを言っているのです。厚生労働省も、今となってはそうではありませんのという質問です。
●田原医事課長
今となってはというのはよくわかりませんが、あくまでも国立病院のほうの作成指針というのは、国立病院などが自主的にこうやったらいいのではないかということをお示ししただけであって、医師法21条の話とはまさに別々の問題だと思います。平成16年に最高裁のほうで、自分が診察していた患者かどうかは関係なく、死体の外表を検査して、検案をして、異状を認めた場合には警察署に届け出ることが必要であるということは示されているわけですので、そのことを念頭に御議論いただければと思います。
●飯田構成員
議論かみ合わない理由はこの用語なのです。さっきから、会の目的と合わない話と同じように。我々は、医療の安全のときは、リスクマネジメントを考えてないわけです。セーフティマネジメントなのです。厚労省の検討会でもそう発言して、医療安全ということでセーフティマネジメントということで統一していただいたのです。広い意味では、セーフティマネジメントがリスクマネジメントの一部になります。それは認めます。だけれども、組織防衛としてのリスクマネジメントと違うのだということを明確にしないといけないのです。今のお話で、警察に届けるという意味では、病院長のリスクマネジメントとして届け出ることはあり得るのです。自分が罪に問われるのですから。それはセーフティとは全然関係ないのです。
ですから、セーフティマネジメントもリスクマネジメントも非常に大事です。だけれども、議論するのは分けて考えていただかなくてはいけないのです。この検討会ではセーフティマネジメントを考えると言っているので、リスクの話をされても困ります。もちろん、リスクを縮減することがセーフティにつながりますから、そういう意味でのリスクは結構ですが、組織防衛という話になると、大事ですが、別のテーブルで議論してほしいのです。そうしなかったら、すれ違ってどうにもなりません。
●山本座長
どうぞ。
●里見構成員
何となく火をつけてしまった気がして気がひけますが。ただ、いろいろ議論あると思いますけれども、この会議で決めなければならないのは、医療事故が起きた時にどうするかということだと思います。皆さんの大半の意見としては、医療関連死や医療事故は刑事訴訟になじまないものであるから、まず届けないというにしていいのではないでしょうか。大半の人はそう思っていると思うのですけれども、それはそれでよいとして、でも、しかし、やはり医療過誤は起こるわけで、そのときにどういう仕組みを作っておけば、患者さんの家族も納得し、原因究明もできるかということを考えるように、もう次に進めていったほうが生産的かなと思います。
今までの解釈はともかくとして、少なくとも、今話を聞いて一致するのは、異論あるかもしれませんけれども、医療に関する死とかそういうものは刑事訴訟にはなじまないから、警察に届出はしないという本来の21条のこの解釈に立って、そのように動いてもらいたいという意見だと思います。しかし、やはり医療過誤起こっているので、それに対してどういうことを我々は次の制度として持っておけばクリアーできるかという議論にそろそろ移ったらいいのではないでしょうか。
●山本座長
今の御発言は、この21条によって届出をしないような仕組みとしてどのようなものを考えればよいのかということを考えるべきだという御発言でしょうか。
●里見構成員
医療関連死に対して、これは警察に届けるべきだという意見があれば、それはまた議論しなければいけないけれども、そうでないのだったら、もうそれはそれで次のステップに移ったほうがいいのではないでしょうかと。
●山本座長
どうぞ。
●加藤構成員
今ずっと皆さんの御意見をお聞きしながらちょっと考えているのですけれども、診療関連死という概念、これ自体、みんなそれぞれ思っているところは大分違うのではないかと思うのですね。診療関連死の中に、例えばエタノールと蒸留水と間違えた京都大学病院のケースがございますね。あれも診療関連死になりますね。それから、牛乳を点滴してしまったということで、そんな事故も過去にあったと思いますけれども、これも診療関連死ですね。診療関連死と一口で言うけれども、さまざまなものがあります。
例えばことしの6月に奈良地方裁判所で判決が言い渡された大和郡山市の山本病院のケースでは、これは禁固刑になっていますけれども、医療行為に関連して亡くなったというケースですけれども、相当悪質な事案であることは、皆さん御存じかどうかわかりませんけれども、相当問題のあるケースです。そういう問題のあるケースが診療関連死と言われる中にまぎれ込んでいることは間違いないのですね。一切そういうことはないのだという前提には全く事実として立てない。過去にそういうことがいろいろ存在した以上は、全く診療関連死というものは刑事的なものと無縁にある概念ではないだろうということはまず押さえなければいけないだろうと思うのですね。
先ほど来ずっと、21条の解釈の問題と、厚労省の保健医療局国立病院部というところがあるのですかね。
●田原医事課長
当時ですね。
●加藤構成員
当時、そのマニュアルの話が出ていますけれども、参考資料2の医師法の条文は、「医師は」とこう書いてあって、届出をしなければいけない主体は医師。それに対しては、こちらの厚労省のマニュアルの話ですけれども、「施設長は」となっています。それから、「検案して異状があると認めたときは」というのが医師法21条の話なのですが、「医療過誤によって死亡又は障害が発生した場合又はその疑いがある場合には」という内容になっています。「24時間以内に」というのが医師法の21条に明記されているのですが、それに対しては「速やかに」と。医師法21条の解釈の問題としては全然違う話がここには私は出ていると思いますので、21条の問題と、このマニュアルに出ている問題とを一応分けて考えるということではないだろうかと。
そうすると、厚労省のこのマニュアルの話は、別の理由、例えば医療の現場で診療関連死というものであったとしても、重大な過失があって患者さんが亡くなってしまったという場合は、なるべくそれを、この当時はもちろん、届出先、第三者機関もないわけですから、その病院の中にとどめておくということはある種の危険性を持つだろうと。だから、隠さないで、きちっとそれはオープンにしていくべきだという世の中の大きな期待があっただろうと思うのですね。マスコミに公表する基準だとか、あるいは警察に届出をしておく基準だとかいう話が当時出たのはそういう背景が時代的にはあったのではないか。
2002年に名古屋大学で起きた腹腔鏡を使った手術のときに、術者がトロッカーで腹部大動脈を突き刺してしまって、大量出血、その後、輸血を大量にしても、結果、救命できなかったというケースがありました。このときに病院が対応をどのようにしたかというと、隠さない、逃げない、ごまかさないという病院長のメッセージを記者会見で発表し、そして、警察にも届出をし、そして、院内で事故調査をすると。それは外部委員も入れて公正にこの際しっかりとやるということを公表したわけですね。
その結果、2カ月で事故調査報告書をまとめるということになるわけですが、当然、最初の時点では警察に届出がなされているので刑事訴訟法に基づく検視という手続がございますけれども、それは病理解剖しているときに警察官が来て写真を撮ったりしていっているという手続は同時並行で起きたわけですが、その後、院内の事故調査委員会で警察が先行してさまざまな取り調べとか捜索押収とかしないようにという形で申し入れをして、その場合には、警察のほうは見守るという態度をとったわけですね。
その結果、2カ月後に事故調査を遂げて報告書をまとめたわけですが、その結果、刑事問題としては、通常は検察庁に書類送検という手続に入っていくわけですが、送検せずということで刑事問題は終了しました。つまり、業務上過失致死が疑われる事件ですから、警察としても関心を持ったわけですけれども、このケースの場合、国が賠償するということで、民事的にも裁判に至らず、示談という形で解決ついたことなど、それから、多分考慮された中には、誠実に院内事故調査で真実を述べ、真剣に医療安全のために術者自らが貢献したことなどを含めて警察は判断したのだろうと私は思っております。
そういうことを総合して考えるときに、厚労省の、2000年の7月でしょうか、このマニュアルというものの持つ意味が、名古屋大学では少なくともそうした形で一つの刑事問題化する可能性があるケースについては隠さないという気持ちから警察に届出をした。それは21条の届出ということであったかどうかは別として、そういうことを知らせておいて、そして院内事故調査ということを優先的にしたという実績があります。
そういう意味では、資料3に戻るのですけれども、「捜査機関との関係について」ということで、医療関連死という言葉、それから診療関連死という言葉が両方ここの中には出てきますが、括弧書きの、皆さんそれぞれ発言される人は、「故意または故意と同視すべき犯罪がある場合は警察へ届け出る」ということ、多分、きょう発言されている医療側の構成員の人も、故意が疑われたり犯罪が疑われるような場合は、これは警察に届けなければと思っておられるでしょう。そうすると、死亡の事例を見てすぐに、それは重大な過失か、あるいは過失があったようだというところまではわかるかもしれないけれども、それが故意かどうかとかいうのは、その瞬間的に判断がつくかというのはなかなか難しいです。実際に難しい。
解剖というのは時間との勝負になりますね。この医師法21条に24時間と書いてあるのは、まさに、場合によれば、例えば虐待で子供が死んでいると考えられる、あるいは刺し傷があって、それが死因になっている可能性があるとなれば、これはほうっておけないので、司法解剖という方向に持っていくことでなければ社会の安全が保てないということになります。よって、この21条というのが存在する意味は今日的にもあるわけですね。そこに、故意または故意と同視すべき犯罪があるような場合は警察に皆届けなければいかんよと、このように考えるわけですが、その判断というのはかなり速やかにやらなければ、火葬されてしまうとその経過が曖昧になってしまうという問題があるわけですね。
そこで、この捜査機関との関係について言えば、私たちは診療関連死というのをどのように考えるかで、ディスカッションする以上はその概念を共通にしてディスカッションしたいと思うし、私は、診療関連死の中には犯罪的なものも含まれてくると見ていますので、それはまた直ちに即決でわかる話ではないだろうと思われるので、そこが一番難しいところなのですね。
しかしながら、第三者機関ができれば、診療関連死というものはその第三者機関に届けていくと。大半はそういうことでふさわしいものですから。しかしながら、第三者機関に届けられた後、問題があったというケースについて、一切刑事的な問題にそれはなり得ないとしたならばどういうことになっていくのかというあたりを少し皆さんの御意見を聞かせていただきたいと私は思っております。
以上です。
●中澤構成員
今、加藤構成員がおっしゃったことは、私たちも同じように考えます。今、お話の中で、アルコールと生理的食塩水を間違えた件とか、それから、ミルクを静脈の中に入れて亡くなった件とかいうのは、これは故意ではないと思うのです。故意ではないですね。やりたくてやっているわけではない。もう一つ、山本病院のケースは、恐らくこれは故意でやっているところに入ると考えられるので悪質と思われます。先ほどのお話ですとこれが一つの診療関連死としてまとまっているとお考えだと思うのですが、これは私たちにとっては非常に大きいインパクトを持っていまして、診療の中で起きる過誤というのはゼロではありませんし、それが死亡につながるということは必ずあることです。
ただ、これが山本病院のケースと同じに見られてしまうというところが、私たちが今まで非常に苦労しているところなのです。一般の新聞で取り上げられていること、それから、一般の方が考えるときに、これは故意だから診療とは関係ないとか、あるいはこれは間違いが起きているのだから診療と関係しているのだとか、そういう区別を持って考えるということはないと思います。大抵の場合はみんな一緒にして、医療機関は、要するにこういうこともやるのだというふうな考え方でとらえていくので、私たちは、完璧に故意と犯罪ということと医療関連死とは分けてほしいというところを申し上げる一つの根拠になるわけであります。
それから、虐待なんかは、これは見ればわかる話なので、これは検死というところではっきりします。それから、診療関連死は、最初から最後まで医療者がつき合っていますから、表面には何もなくても、医療に問題があるかどうかについてはかなり見解を持つことができると思います。その中で、この21条の解釈というのは体表のことを問題にしておりますので、体表の問題だという話になると、これはあるものは届け出なければならないけれども、なければいいのだというような解釈も実際にしている人もいるわけでして、そのような解釈の相違というのが、この21条にもあるし、それから、今お話しいただいた加藤先生の話の中でもあるのですね。
ですから、これを分けてほしい。犯罪捜査は緊急に届出が必要かという件ですが、故意とか犯罪とかは後になってみないとわからないことなので、恐らくそのことをもって一緒に届け出なければならないということにはならないのではないかと私は考えておりますし、今日の混乱の原因ということは医療関係者ではかなりみんなが考えていることだと思います。
●山本座長
山口構成員、どうぞ。
●山口(育)構成員
私は、この検討部会における議論では、「診療関連死」という中に、重大な過失や故意によるものは含まれていないと認識していました。今の議論をお聞きしていて、医療にも法律にも素人の立場ですが、この医師法21条の解釈を読むと、やはりかなり故意や犯罪に近いものと感じます。「犯罪の痕跡を止めている場合があるので」と明確なただし書きがあるからかもしれませんけれども。この検討部会で話し合うときに、医療事故にかかわる調査の仕組みとして、診療関連死とはどういうものを言うのかをある程度きちんと定義づけるか共通認識にしておかないと、人によってイメージが異なり、いつまでたっても話が見えてこないのではないかと思います。もちろん、今までの議論の経緯もありますが、この場で第三者機関ということを考えるに当たっての診療関連死というものはどういうものを言うのかということをまとめていくというのはいかがなものでしょうか。
●山本座長
宮澤構成員、どうぞ。
●宮澤構成員
今おっしゃられたとおりですけれども、診療に関連する死亡ということになると、当然のことながら全部含まれるのですね。実際に診療に関連した形で最高裁で殺人という形で確定した例もあるわけですから。その意味では、診療関連死というのは故意、過失、重過失、全部含まれている。明らかにわかるものをどうするかというのは別ですけれども、とりあえず警察のほうに持っていくのがいいのか、それとも、それ以外のところに持っていって判断していくのがいいのかという問題なのだと思います。
現場でどう振り分けるというのは非常に難しいというのが今までの現状を見て明らかなわけですから、その意味で、どういう状況が起こったにしても、どこに届ければいいのだと、そこできちんとした医療的な判断もされるのだということになれば、それは明らかにはっきりしている。
今回は、そういう医師法21条の解釈の問題も、今現状ではあるわけですけれども、そうではなくて、これからどうしていくか、立法政策的な問題としてどうしていくかということの議論の場なので、その意味では、この21条の解釈、どこが含まれているかというよりも、これから全てを含んだ上でどうするかということを考えるべきだと思います。その意味では、里見構成員のおっしゃったとおりではないかなと私も思っています。今、これからどうするか。それから、幾つかのものが含まれている。それを全部考慮した上で、それを第三者機関のほうに振り分けていく、そういう方向性が正しいのではないかということは私もそのとおりだと思っています。そちらのほうの議論に移っていったほうがいいのではないかと思います。
●山本座長
本田構成員、どうぞ。
●本田構成員
私自身も医療にも法律にも全くの素人なのですけれども、一応手術とか抗がん剤治療とかさまざまな危険を要する治療を受けて、それを選択してきた患者という意味でちょっと感じたことがあるのですけれども、これからのことを考えるということに対しては全く私も賛成なのですけれども、制度をちゃんと理解してない部分もあるので恐縮なのですが、私もずっと議論を聞いている中で、加藤構成員がおっしゃったように、医療関連死とは何なのかというのが一番の疑問でした。
今のお話の中では、医療関連死というのは故意のものとか故意と同等と考えられるものなど全てを含むということだったので、そのように理解したときに、それを警察には届け出ないとまず決めて、警察に届けないのがいいのかはちょっと置いておいて、届け出ないとなったときに、それを誰が判断するのかというのは患者にとってはすごく大きな問題ではないかなと思っていて、疑問があるようなことが起こったときに、当該の医療機関とか、そこが全て判断していると、すごく疑問が残ったままだと思うのですね。
医療関連死、それが故意なのかどうなのか。故意なものは全部、先ほど、医療関係者の方々もみんな、それはちゃんと届け出るべきなのだということをここにも書いてあります。資料3にも書いてありますけれども、それを一体誰が判断するのかというところで、そういうものは、疑義あるもの、医療行為にかかわるものは届け出るというのだったら、その判断を一体どうするのかというところを明確にしていただかないといけないなと。そこが一番のポイントに感じました。
●山本座長
山口構成員、どうぞ。
●山口(徹)構成員
もちろん、再発予防とか医療安全ということを考えると、過失、過誤があった医療、診療関連死というのが一番学ばなければいけないことがたくさんあると思います。従って、それをやはり中心に、この第三者機関、あるいは第三者機関への届出も含めて考える必要があります。そこはいいのですけれども、その前提として、過失のあった医療関連死は、21条で現在は届け出るべきものということに決まっているのだから、ではそれをどうするかという話をするべきだということになると、現在の21条をそのように理解することがもう決まりだとなると、それはやはりちょっと待ってくださいと言いたい。本当に明らかな、悪意のない、うっかりした過誤、過失があって、それが死亡に関連した場合、難しい、法律のことはよくわかるわけではないのですけれども、最高裁の判例の、体表を検案して異常があった、体表に何もなければという議論まで別にくみするつもりはないですけれども、明らかな過誤があったら、それは全て警察のマターだというのは納得がいかない。そして、先ほど加藤構成員のほうからあったように、警察に届けられた後は、警察の判断として、それを送検する、しないが決まると。その判断はすべて警察に任されて当然だ、これはもう現在そう決まっていると言われてしまうと、いや、ちょっとそれは待ってくださいという話になる。本当に悪意のなかった、うっかりミスのような過失も、全てそれは、警察が判断する業務上過失致死傷害に該当するものだということはもう決まっているのでしょうか。それが現在の医師法21条の考え方だということには、そこは少し違うのではないかなと思います。どうしてそれが違うかとまた延々とやるつもりはないですけれども、そうあっさりと決めつけられても困る。医療行為、診療行為における業務上過失致死、あるいは業務上過失傷害についてはまだまだ議論が多く、それほど明確に定義されてはいないと思っているのです。
●宮澤構成員
実は業務上過失致死傷罪というのは昔からある犯罪類型であって、定義ははっきりしているのですね。社会生活上の地位に基づいて反復継続する生命・身体に危険を及ぼし得る行為、これは業務だと言われているのです。医師の行為は業務そのものなのですね。医師という資格のもとで反復継続してやってしまうと、生命・身体に危害を及ぼす可能性のある行為、これは業務そのものなので、何かあって、不注意があれば業務上過失致死傷罪になってしまうというのは定義上明らかなのですね。ですから、その意味ではやはり法律上はそういう形のものに当たってしまう。ただ、それがいいか悪いかという問題なのですね。
私は、ここの場でも申し上げているように、医療上の軽過失、通常の過失というのは刑法上の業務上過失致死傷罪の枠外に置くべきではないかというのは、意見申し上げたとおりなので、それがいいか悪いかは別問題として、現行法の中ではそのように考えられていると理解していただいた上で、その理解を前提にして、これからどうしていくかということをお話しするのが一番いいのかなと思います。
●加藤構成員
要するに診療関連死が発生したときに、第三者機関に届け出るというルールをつくっていく必要があると思うのですね。この第三者機関を早くつくることが大事だと、私はこの際強調しておきたいのですけれども、そういう届出先としての第三者機関がないところに実はいろいろな問題も生じていると。
この医師法21条のような場合、つまり、死体を検案して異常があると認める場合も含めて診療関連死であれば第三者機関に届け出る。第三者機関ができた場合ですよ。その第三者機関が届出を受け付けて、速やかにきちっとした振り分けができるということが前提になってくるのですけれども、そのようにしたならば、医師法21条のこの届出義務というものを果たしたことと同視をしていくという考え方が整理のつけ方としては可能だろうと思っているのですね。
きょう皆さんはどこまで事実を踏まえてお話しされているのか、ちょっとお聞きしていて心配になった点もあるのですが、都立広尾病院事件というのは、皆さんおよそはわかっておられるのでしょうけれども、奥様を亡くされた永井さんという方が本を出版されています。その本の中にはとても衝撃的な、湯灌の儀の際に、その死体の腕のところに、明らかな変化といいましょうか、血管が浮き出たような、そういうものが写真としてその本の中に出ています。で、これは何だという疑問を持つことになるわけですけれども、消毒剤を投与して患者さんが亡くなったのに、その事実を隠蔽しようとしたという力学が働いたことは明らかな事件なのですね。そういう事実。
それから、先ほどの山本病院事件というのは、故意の起訴ではありません。故意犯ではなくて、医療過誤事件と同じような業務上過失致死という形で立件されている事件なのですね。その中では、医療過誤があったのかなかったのかという形で展開はされているのです。もちろん、これは明らかに著しく無謀な、人体実験にも等しいような医療行為だということで、医療の名に値しないとか、そういう評価がきっとベースに裁判官の気持ちの中にあったのかなあとうかがわれた、私はその判決要旨を読んで感じましたけれども、医学的に全く根拠のない医療だとか、著しく無謀な医療だとか、著しい怠慢だとか、そういうものは医療の世界で、残念ながら存在し得るわけですね。そういうものが、捜査機関に何ら問題にならない、刑事的には全く問題にならないということは到底人々の了解が得られる筋合いのことではありません。
だからこそ、故意または故意と同視すべき犯罪がある場合は別だと皆さんが言うのはそこにあると思うのですが、その判断を速やかにするという仕組み、どうやってつくっていくのかということですね。私は、第三者機関に全て届け出ると。まず、報告がなければ調査に入れませんので、報告を網羅的に広く吸い上げるという抽出力を、国家としてこの種の問題について抽出力をしっかりと報告という形で上げていって、そして、その中で、これはきちっと調査しようというものは調査していかなければいけない。調査をして初めて、故意、重過失等の色彩がわかってくる、そういう性質のものだということですね。
その間に、解剖のタイミングとか葬儀とかいろんなことを遺族は抱えるわけですから、そのことを無視して議論はできません。ですから、ある意味で、その間に解剖という手続を入れる以上は、速やかな判断が時間との勝負で必要になる場面に直面するのだということですね。
永井さんの都立広尾病院事件のケースでも、もし荼毘に付されていたら証拠はかなり消えてしまうという問題だっただろうと思いますので、そういう意味での解剖の大切さとか、いろんなことを認識して制度整備を一方に図っていくということでなければいかんと思います。
以上です。
●山本座長
では、鮎澤構成員、どうぞ。
●鮎澤構成員
申しわけありません。私、きょう最終便で帰らなければいけないので、ちょっとお尻がむずむずしております。せっかく九州から来ましたので、ちょっと今の議論の流れに水を差すことになるかもしれないのですが、済みません、言い置かせていただきたいことが4点ほどあります。簡潔にします。
まず1点目、先ほど本田構成員から、誰が決めるのか、特に患者さん御家族に疑念があったときが心配だということをおっしゃっておられましたが、ここでどういう議論をしても、疑念を持たれた患者さん御家族が御自身で警察に、このときの用語というのは告訴になるのでしょうか、告訴することができる権利というのはずっと残っているものだと認識しています。それが間違っていないかどうか、改めて御意見を聞かせていただきたいと思います。
それから2点目、きょうも過失なのか重過失なのか故意なのか悪質なのかという議論が出てきています。恐らくこれはどう定義しても定義し切れないし、どんなに例を挙げても、ではこういう場合はどうですかと言って、また議論になっていくと思います。そもそもそうした判断を司法の手に委ねるのではなくて、「医療者が」と言いません、「医療者が中心となって」判断をしていこうというのがこの第三者機関を設置していくとても大事な目的だったと思います。そこのところに改めて立ち戻って議論していくことが必要なのではないかと思っています。
そして、少し先の議論になるのかもしれませんが、2点ほど。まず1点、これは意見なのですけれども、実はきょうの「捜査機関との関係について」というテーマについては、捜査機関と第三者機関の関係についてなのか、捜査機関と院内調査の関係についてなのか、捜査機関と調査経過の関係についてなのか、捜査機関と調査結果についての関係なのか、いろんなスキームがあって、そのマトリックスの中で議論していかないと実は精緻な議論というのはできないのだと思っています。
ただ、そこまでやるかどうかは別にして、きょうの議論の中で必要なことがいろいろと見えてくるのだとは思っていますが、第三者機関がどのようなかたちになろうが、院内調査は大事だということではおおむね議論が集約しているのではないかと思います。
そのことに絡めてなのですが、病院で事故が起きると公表します。公表すると、おのずと警察が知るところとなって、お問い合わせが入ります。先ほど、見守るというような対応をしてくださるということも出てきた。確かにそのとおりなのですけれども、直ちに事故調査委員会を立ち上げて、院内で事故調査をしていこうとするとき、例えば最近の医療材料、医療器具で起きている事故などは、事故によっては、物性の検証、力学の検証で医療材料等を切り刻んだりしなければいけないことになる。そうすると、将来的にこれは捜査妨害と言われるのだろうか、それから証拠隠滅と言われるのだろうかと心配になるわけです。院内の事故調査においてそういった危惧なくできるような環境整備をどのようにつくっていけばいいのかということもぜひ御議論いただきたいと思っています。
そして、もう一つお願いしておきたいことなのですけれども、実は消費者庁がされておられる事故調査がとても気になっています。これだけ医療事故の調査の議論をしながら、あの法案は何か脇をすっと抜けて成立していったという感じがあって、気がつくとあの中に医療も入っているという感じがあるからなのです。
実際、私たち、事故の公表をしたときに、消費者庁から問い合わせが入って、なぜ消費者庁から問い合わせが来るのだ、あっ、あの法案が通過したからだということを体験しました。消費者庁の調査の中における医療事故の調査をどのように検討しておられるのかについては、またいずれどこかで伺いたいと思いますが、医療事故以外の、いわゆる事故調査と消費者庁の、その経過、結果に関する捜査機関の関係についてどのように整理しておられるのか、一度参考のために伺いたいとも思いますので、どこかで機会をいただければと思います。
以上です。済みません。お時間をいただきました。
●山本座長
消費者庁との関係は、コメントがもしあれば。
●吉岡総務課長
消費者庁とも相談しまして、次回以降、対応を検討したいと思います。
●山本座長
豊田構成員、どうぞ。
●豊田構成員
私は、きょう、加藤構成員がおっしゃったことと、ほぼ同じ意見です。実際に患者さんが亡くなったときに、そこで、これは故意だろうとか何かとはとてもその場で判断なんかできるはずがないので、それを今ここで議論されても、本当にそれは、もしそういうことをいろいろ細かくまとめられるとしたら、逆に御存じない方の発言なのではないかなと思ってしまうぐらい、本当に大混乱の状況だと思いますので、やはり第三者機関をつくっていただいて、きちんと届け出る仕組みをぜひつくっていただきたいと考えています。
その仕組みをしっかりつくらないことには、第三者機関に届出をすれば警察のほうに届け出なくもよいと、いったことを改定していくことにはならないと思っていますので、ぜひ第三者機関をしっかりつくっていくというところにまず議論を持っていっていただきたいということを強く願っています。
●山本座長
どうぞ。
●中澤構成員
第三者機関の重要性については、私も重要な点だと思っておりますので、これはやはり、今のどういうものを診療関連死として扱うかということの問題の中で討議されるような問題ではないと私は思うのですね。今、加藤先生の話の中で、ぜひ御理解いただけたらありがたいと思っているのは、要するに犯罪と一般の医療行為とは物すごく正反対な医療行為なわけですよ。その正反対の医療行為の中で医療者の犯罪が疑われるという形で物事が進むと、もうふだんの診療行為は全部だめになります。信頼性において動いているのが医療ですので、その信頼ということの中で、私たちがふだん考えてもいない犯罪のことまで一つのものの中に入れて議論しなければいけないということそれ自体が、もう本当にどうしていいかわからない、恐らく医療全体の大混乱に私はなると思っているので、これはやはり議論の中からは外してほしいというのが私の考えです。
ですから、ふるい分けをするのなら警察でやろうが、第三者機関で扱おうが、それは同じことだと思います。ふるいを広くかけて、その中から悪いものを取り出すのだという手法は、ふるいの中に入る人は全部疑いをかけられて入るわけです。その中から、あなたは大丈夫、あなたは故意というふうに持っていくというのが、広く網をかけて審査するというやり方ではないかと思います。そうすると、診療関連死は、最初から過誤が問題だとわかるものもあるし、過誤と言っていいかどうかもわからないものも含まれています。全部それを一緒くたにしてやるということについては、ふるいをかける側に立てばこれほど都合のいいことはない。だけれども、ふるいにかけられるほうの立場から考えると、これはやはり人権の侵害と無関係ではないのではないかと私は考えます。
あともう一つ。済みません。ちょっと出てこないので。
●山本座長
宮澤構成員、どうぞ。
●宮澤構成員
犯罪という言い方をすると問題なのかもしれないですけれども、通常の医療の中で犯罪行為というのは出てきてしまう可能性がある行為だと思うのです。例えば安楽死なんていうことを考えてみると、通常で何か物を盗るために人を殺し合うというのと明らかに違います。ただ、それを医療者どう見ているかというと、本当に苦しんで苦しんで、何とかしてあげたいという中でそういう道を選んでしまったということだってもちろんあるわけですね。そうすると、それが通常の、何か物を盗るために人を殺したのとは違うのですけれども、ただ、結果だけを見ると、故意犯というのもどうしても混じってくる可能性はある。だから、それを分けながらやるというよりも、やはり全体を見ながら、紙一重というところをきちんと理解した上で、全体を第三者機関のほうに委ねるということを考えておかないと、どこかで区別つけるというのはなかなか難しいと思います。それは今の段階では非常に難しいのではないかなと思っています。
●山本座長
どうぞ。
●有賀構成員
多分、中澤先生もおっしゃりたかったことだと思うので発言します。
今の宮澤先生のおっしゃっていることは、法律家としては多分正論なのだと思いますけれども、医療者はとてつもなくたまらない。このような情緒的な言い方しかできない。それが私たち医療者の本音です。ですから、その本音を無視するような形で論理的にものが進んでいって、こうですよとなったときに、恐らく医療はだめになります。これは法律の方たちの論理の外に情の世界をきっちり入れておいていただかないとどうにもなりません。
加藤先生がおっしゃったみたいに、たくさん集めて、そして、よし、よし、よし、ペケというふうな形をもしとるならば、そんな業界に私たちはもう働くことをしません。これは全くそのとおりです。これは嫌なのです、そんなものは。好きかどうかという、論理的におかしいんだ、おまえと言われたら、ああ、そうですか、仕事変えましょうとなりますよ。それから、医学部なんか誰も来ませんよ。人を助けようとみんな医学部へ来ているわけですから。ですから、そのようなことを丁寧に見ていただかないと、国民の数から医療者を差し引いて、あと残りで多数決してみろ、おまえら負けるではないかと言われているのと全く同じですよ。そんなことのためにここに集まっているわけではないのですよ。
加藤構成員が言われた中で、警察に届け出ると。これはもう所与のテーマとして届け出ることになっているわけですね。で、届け出た。そして見守ってもらっているということですね。その見守りはなぜ起こったかというと、医療機関がきちっとやっているというようなことがあるから見守るわけですね。だから、話の筋の原点はそこから出発するわけで、第三者機関の話はその次のステップのはずなのですよ。そこのところをよくわかっていただかないと、現場の医療者は、いつも宮澤先生に助けていただいていますけれども、法律の理屈だけで全てが転がってはいないのです。その部分は、中澤先生一生懸命言われていると思いますし、恐らく医療者はみんな思っていると思います。本田構成員の主治医も、恐らくそうやって一生懸命やったのだと思います。
だから、最終的な一番大事なポイントは現場なのですね。それをわかっていただかないといけない。だから、第三者機関はそういう意味では警察のかわりにとかいう議論になりますけれども、警察はそもそも届け出ることになっているというのが今のテーマで、さっき座長は、別の判例が出ればと言いましたけれども、その判例は、第三者機関に届け出たと。だけれども、警察に届け出てなかったではないかという話が、最高裁判所で第三者機関でOKよねというふうにならないとルールは変わらないと考えるのが筋だと私は思いますね。
ですから、今は警察にとにかく届け出る。でも、それはそれとして、きちっと中でやる。そのやるという話を、届け出られた警察が見守ってくれるかどうかというところがとりあえず今のタイドロープですね。僕はそのように理解していますけれども、ちょっと反論してください。
●山本座長
御指名です。
●宮澤構成員
基本的には、私も冷酷な法律家というわけでなくて、どちらかというと医療は今非常に難しい立場にあって、非常に大変なところに立たされていることはよくわかっているつもりなのです。だからこそ、こういう形で何か新しい立法とか新しい政策というものの中でその救いの場を求めていく。きちんとした医療者と患者との間の、一般国民との間で信頼をつくりたい。そのためにはどうしたらいいのか。刑事法というのが関与している間というのはなかなかそういうのは難しい。「全部言ってください、本当のことを」と言いながら、その後、「手が後ろに回りますよ」と言われて、なかなかそんなこと言えるわけがない。そういう意味では、どうやったら信頼をつくられて、医療者も十分な医療行為ができて、国民もきちんとした診断ができるかということを私ももちろん願っています。
ですから、反論というのではなくて、医療者の思いというのは、もし法律家に伝わってない、私は伝わっているかなと思ってはいるのですけれども、もしそうであるとお感じになるのだったら、ぜひたくさんのことを発言していただいて、私も含めてさまざまな法律家、あるいはもっと、その後ろにいる国民全体に理解できるように発信をぜひお願いしたいと思います。口は1つですけれども、耳は2つありますから、倍聞こうと思っていますので。
●山本座長
高杉構成員、どうぞ。
●高杉構成員
医療には納得と説明と同意という言葉がありますけれども、これは不幸な経過をたどったところでもやはり十分な説明と迅速な対応が必要なのですね。だから、当初に私たちは基本的提言をお見せしましたけれども、全く現場が、院内事故調がまず基本なのです。そこで納得されたら、それは問題ない。しかし、患者さんたちは初めて遭遇する不幸な出来事には激昂もし怒りもし悲しむ。それを寄り添って説明できるかどうか、これはまさにプロの技だろうと思うのですけれども、それをきちんとしないから警察に行く。あるいは訴訟になる。しかし、それをきちんとやれば、その積み重ねが、私は全て解決の道へつながるだろうと思います。
しかし、そのときに、やはりそうだよなというときには、今度、分析と収集と、それで予防につなげるのは第三者機関がないとだめだよと。だから、広く集めるといっても、加藤先生言われますけれども、そうではないのだろうと僕は思うのですよ。きちんと説明ができればそれでいいし、納得されればいい。きちんと我々は予測できた死であっても、患者さんが不満に思えば、これはやはり第三者の調査機関は要るでしょうし、医療者の、我々は予測したといっても、患者さんにとっては予測できない場合がしばしばある。そういうことをきちんとやっていく。だから、医療機関が性悪説と見られるのならこれはもう仕方ないですけれども、みんな一生懸命努力している。その中でできた不幸な結果をどのように対応するかということで我々は頑張りたいと思いますしね。
もう一つ、検死、検案のことが出ましたけれども、私は今、脳死検証委員会に出ています。これは、医療が十分にされたか、御家族が納得されたか、あるいは臓器提供の手続がどうだったか、その後のフォローはどうだったかきちんと検証していますけれども、その中に、事故とかいわゆる検死が必要な場合には必ず、例えば崖で落ちた、救命されたのだけれども脳死の提供に至ったという場合には、きちっとそれは検死が入ります。今の死因究明法案の2法案は犯罪死を見逃さないという法案ですね。その中に医療関連死はとにかく外してくれと。我々はちゃんと、これは警察が入っても救命できないからということで、医療関連死に関しては我々が調べさせてくれということを述べて、外していただいた。あるいは、いわゆる死因究明法案では、医療は外す、医療関連死は外すということの経過に至ったということも御承知おきください。
●山本座長
どうぞ。
●飯田構成員
幾つかあるのですが、まず、加藤構成員がおっしゃったように、故意、あるいは過失もたくさん出ておりますけれども、それを言い始めると、どの分野にもいらっしゃるわけで、例えば、言いにくいことですが、法律家にもたくさん悪い人いますし、行政官にもいますし、マスコミにもいますので、だから広くやれと言われると、ちょっとやってられないのです。はっきり言って。明確にしていただきたいということです。
それから、さっきから広尾最高裁判決のことがずっと盛んに出ているので言いたくなかったのですが、あえて言わざるを得ないので言わせていただきます。私は、あの判決は医療者の人権侵害のおそれがあると、疑いあると非常に思っています。ちょっとメモを見てお話ししますけれども、判決も全部読んだわけでないので、一部しか読んでないので、もし違ったら言ってほしいのですが、ここに書いてあることは、「届け人と主体とのかかわり等、犯罪行為を構成する自己の供述までも強制されるものではない」と言っているのです。一方では、「医師に一定の不利益を負わせる可能性があるとしても、医師免許に付随する合理的根拠のある負担として許容される」と。わけわからないです。だから、憲法38条違反でないと。診療契約するということは、これを認めたことになるということです。そんなことを認めた覚えないのですが、ここまで書かれてしまうと、私はこの判決文見て、もうプッツンしまして、有賀委員おっしゃったけれども、私も、医師をやめようかと思いました、このとき本当に。これがまかり通ったら、本当に医療従事者、いなくなります。
私は、この年ですから我慢してやっていますけれども、これを知ったら、本当に、若い人は医療部門に入ってきません。きちんとやってほしいです。私たちも人権があるということを改めて申し上げたい。もちろん、患者さんにも人権あります。同じなのです。私たちも、患者さんに悪かろうと思ってやっているわけでないのです。
もう一つ言いますと、シドニー・デッカーの『ヒューマンエラーは裁けるか』という本もありますが、どこまで裁いていいのかということは問題です。今度、イタリアの地震予知でも、禁固刑です。あれでいいのでしょうか。あれと同じことが医療にも起こっているのではないかと非常に私は恐れます。
以上です。
●山本座長
加藤構成員。
●加藤構成員
有賀構成員が、自浄作用という言葉だったかと思いますけれども、要するに、非常に医療の世界で、ピアレビューというか、同僚評価、あるいはプロとしてのオートノミーすなわち自律的に、要するに客観的公正にレビューするということがとても難しいことであり、そのことが国民との信頼の中で問われているのだろうと私は思ってずっと見てきたわけですね。ですから、そういう意味では、生き生きと医療に携わる人たちがやりがいなり何なりを持って仕事に励んでいただきたいと心から願っているわけですが、一面において、山本病院事件のことだとか広尾病院事件のことだとか出ました。やはりそういう、事実、社会で起きていること、山本病院事件というのはそんなに古い話ではなくて、2006年ですから、平成18年の出来事ですね。そういう時期に、人体実験ではないかと思われるような興味本意の、非常に粗雑な医療が展開されていると。
大事なのは、そうした問題というのは、医療の世界では多分、この病院の周辺とかそういうところでは、あの病院はちょっと問題ありということはその前から指摘されたりしていただろうと思うのですね。そういうことに対して、医療界というか、そういう世界がきちっと、大きな問題になる前に、自浄作用を発揮できる仕組みがあるのかとか、そういうことまで私はこの際医療の側の先生方にはやはり考えてほしいと思っています。学会とか地域の医師会とかいろいろなところで、本当に問題があるなあという場合に、ピアレビューというのをきちっとやれる文化というのを育てていかないと、この医療事故に係る調査の仕組みを私たちがどのようにつくっていっても、最後担うところの中心にそれぞれの医療職の先生方の尽力というのがかかわってくるわけですから、そこのところはやはりプロとしての仕事をしっかりとしていただきたいと思っているわけです。
以上です。
●山本座長
どうぞ、中澤構成員。
●中澤構成員
今の御指摘、非常に大切なことだと思っていて、恐らく第三者機関とかいろいろな仕組みだけでは解決できない問題だと思いますので、これは恐らく医の倫理を一つのところでまとめられない今の医療の問題の点の一つだと思うのです。これはやはり患者さんの立場に立つということを、要するに患者の権利の立場に立つ、擁護の立場に立つということが前提にならないと始まらないと思うのです。
そのときに、過誤の存在とかそういうことを防止するという形でかなり責任追及的な仕組みが出てきますと、恐らくピアレビューというのは逆な方向にいってしまう。例えば、こういうことを言われるからこれを言ってはいけないよ、こういうことを言われると突つかれるからこういう記載はやってはいけないよとか、そのように防衛的な問題にいきそうな気がするのです。
ですから、あとの再発防止というところで私もまた意見を述べさせていただきたいと思いますが、理想的には、医療が患者さんのためになるよということをやはり宣言しなければいけないと思うのです。その宣言の中で、全てをやるということを同じ職場の人たちの意見として共有することだと思います。それから、もし責任追及ということがなければ、かなりピアレビューというのは楽になります。というのは、ピアレビューは、今おっしゃっている中は、恐らく誤りに学ぶということで、誤りの存在を認めないと話が進まないという状況の中でいきますので、そこで責任追及というのが出てしまうと、これはやはり同僚をかばうとか、あるいは病院としていろんな思惑が出てきて、それを議題に乗せないという動きになっていくと思います。私は一番それが問題だと思っていますので、真剣に医療機関としては考えていくような話になると思います。ただ、いろいろな責任追及の仕組みが確立されていくことでそれが解消するかというと、それは逆な話になっていくのではないかと私は思います。
さっきお話ししようと思って言えなかったことなのですが、広尾病院事件、それからいろいろな事件、山本病院の事件もありますが、これは同業者としては認めないという形をやはりとらないとまずいと思うのですけれども、ただ、それが今までできてないということが問題で、これが今私たちの非常に苦しいところなのです。ここにスポットを当てられていろいろな仕組みをつくられていくと、もうがんじがらめになって、改善の余地は残されなくなってきてしまうだろうなあと思っています。私は、今、院内調査というところに重きを置くという動きで動いておりますので、これを充実させて、いかに患者さんの理解が得られるような形で公平なものができるかどうかということが問われると考えておって、そのときにはやはり議論の対象を犯罪まで広げてほしくないなということを私は言いたいわけです。そこまでいくともっと複雑になってしまって、その議論が行われなくなるだろうなあという感じがしているので、ぜひその辺も今後議論の中で御理解いただきたいと思っております。
●山本座長
どうぞ。
●豊田構成員
立場が違えばきょうのようなお話になって当然だとは思うのですけれども、とはいっても、ではどうすればいいのというところで、私はきょうのお話を聞いていると、このままではとてもまとまるとは思えなくなりました。結局のところ、そうすると、医療を代表している側の立場の皆さんは、院内の事故調査をメインにということで皆さん同じ考えということでよろしいのでしょうか。
もしそうだとすると、ある程度、こういった体制がいいのではないかという仕組みを明確に出していただかないと、これやられたらたまらない、これやられたら困るとか、それを両側で言っていたら、このままでは本当に延々に決まらないと思いますので、患者が理解できるような、ある程度納得できるような仕組みをもう少し医療界の中でまとめていただかないと、皆さんの御主張はわかるのですけれども、患者の権利の話ばかり私たちがしても仕方ないかもしれませんし、医療者の皆さんが、こんなことされてもたまらないという話をされても、このままではとてもまとまるとは思えませんので、そうであれば、中澤構成員がこうやっておっしゃってくださっているわけですから、ある程度、こういった形で院内の事故調査をつくっていく仕組みができれば、警察の届出とかそういった問題についてもある程度解決していく仕組みができるのではないかと私たちも理解できると思うのですけれども、今のままだととても理解できないので、何かしらの形で示していただきたいのですけれども。
●山本座長
山口構成員、どうぞ。
●山口(育)構成員
これまでの議論では、まず院内調査が大事であって、それだけでは納得が得られなかったときに第三者機関という話が進んでいたと思うのですね。今日の議題に「捜査機関」が出てきたことで、先ほどから責任追及という言葉も出てきていると思います。これまでの議論のまとめのところを見ても、最初にこの調査を行う目的については、医療安全と質の向上であることは、一致したと思うのですね。
ですから、もう一度その基本に立ち返って、多分、捜査機関の話題が出てきたことで責任追及云々の話がきょうは議論になっていると思いますけれども、ぜひ一歩進めるためにもう一度目的のところを改めて、医療安全と質の向上なのだということを前提にして議論を進めていただきたいなと思います。
●山本座長
どうぞ、飯田構成員。
●飯田構成員
いや、全然進んでないのではなくて、今の山口委員と同じことを言おうと思ったのです。きょうの議論は捜査機関との関係を議題にやっているわけです。だからこういう話なのです。既にもう院内調査もやるし院外もやると、私も全日病の意見を出して説明しています。ほかの病院団体も出しています。それに対してはほとんど一致しているわけです。きょうはそれを踏まえた上で捜査機関との関係に絞って話をしているわけですから、全然食い違っておりません。
●有賀構成員
全国医学部長病院長会議の大学病院の医療事故に関連する委員会の委員長をしています。このようなところの議論を踏まえて会議の中での委員会をしますと、今言われたように、21条の問題をテーマにすると、やはり全体の議論が違うところにいってしまうことはもうしようがない。だから、捜査の話は一旦切り離して、そして、医療安全の件を議論しないとやはりいけないのではないかというようなことを言われている委員もいて、みんなが、そう言われるとそうだよねということだったのです。
だから、きょうの議論を聞きながら、まとまることをまとめないという問題ではなくて、21条の議論はちょっと横に置いておかないと話は多分また迷走するのではないかなということを感じていました。医学部長病院長会議の中では、会議として決をとったわけではありませんが、論理的に考えていくとこうなるざるを得ないよねという意見を言っておられる方がいましたので、ちょっとここで意見として出しておきます。
●豊田構成員
ごめんなさい。私の言い方もよくなかったのだと思いますけれども、院内の事故調査を基本にという考えはわかるのですけれども、そうすると、最初の届出の部分に関してのところがどうなるかというところで、先ほどの解剖のことも含めて、すぐに判断しないといけないことがあるので、届出をどうするかという話になると、21条ということになってしまうのかもしれませんけれども、最初のところでどうするかというところがまとまってないように私には聞こえてしまうのですね。だから、院内の事故調査をやるとすると、全くどこにも第三者機関にも警察にも届出をしないで院内の事故調査をやるということだと、それでいいのかという疑問が私たちの中には残るということなのです。
●山本座長
どうぞ。
●有賀構成員
今の日本国の法律は警察に届け出るということになっているということを理解したのです、私は。
●豊田構成員
そのままでいいということですか。
●有賀構成員
そんなこと言っていませんよ。今はそうだと言っている。だから、どうしようかという話なのだけれども、そのときに罰を加えるという話が入ってくると、このようになるよねということについて、医学部長病院長会議の中での議論でも同じだと言っているわけです。
●山本座長
では、宮澤構成員、手短に。
●宮澤構成員
手短に。要は、医療の安全とかそういうものを考えていくのは当然のことで、それをどうやって現実的に十分なものにするか。警察が入ってきて、捜索差し押さえ令状で医療の記録や何かをがさっと持っていって、その後調査がちゃんとできるかというと、これはもうできないと思うのですね。だから、そういうことの関係をどうするかというのはこれからの問題で、それをやるためには医師法の21条との関連をどうしておくかということもやっておかなければいけない。こういう観点からもの全体を見ていくべきだと思います。
●山本座長
非常に活発な御意見をいただいて、恐らくこういう御議論になるだろうと予想はしていましたけれども、この段階でもちろん何らかの、この問題についてまとまったことが、結論を得られるわけではないだろうということは予想されていたところであります。本日は皆さんから、とりあえず全員の方の御発言をいただけたと思いますので、御意見を出していただいたということにさせていただいて、次回、事務局がこれを四角でどのようにまとめるかというのは考えるだに大変そうではありますが、まことに申しわけないのですが、積み残しで、この再発防止の点につきましては、次回にこれも回させていただきたいと思います。ですから、次回は、冒頭で恐らくこの再発防止の問題を取り扱っていただくということになろうかと思いますが、どうぞ。
●中澤構成員
ただいま豊田委員からお話がありました、幾つかの案ということを言われたのですが、恐らくそういうのが書かれてないと、何を言っているか御理解をいただけないと思うのですが、それについて、私は代表するバックグラウンドはないのですけれども、こんな仕組みでどうなのかみたいなことは、私はちょっと代表するバックグラウンドはないのですけれども、提案させていただくということは可能なのでしょうか。
●山本座長
それは、御意見として紙の資料として出していただくということはもちろん可能だと思います。
それでは、よろしければ、あと、事務連絡とかもしあれば。
●川嵜室長補佐
本日は特段ございません。
●山本座長
それでは、本日はこれで終了したいと思います。長時間にわたる御議論、ありがとうございました。
しかし最重要課題なのだ。
医療事故=警察介入のようになっているが、それは医師法21条が根拠。
医師法(ウィキペディア)
しかし、私はそれ自体が間違っている!と思う。
以下は、よほど時間のある人しか読めない議論。
この中には、「終末期」の話も出てくる。
たとえば、こんな議論を積み重ねながら、医療はどこに向かう。
可能であれば、多くの人と共有したい。
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第8回医療事故に係る調査の仕組み等のあり方に関する検討部会 議事録
医政局総務課医療安全推進室
●日時
平成24年10月26日(金)
●場所
厚生労働省省議室(9階)
核心部分から
●山本座長
本日は医事課長にも御出席いただいておりますので、適宜御発言、あるいは御説明をいただければと思います。
この点については、かなり御意見というか、御議論、これまでも既にあったところとは思いますが、本日は、このまとまった形で議題、論点とさせていただいておりますので、御自由に御発言をいただければと思います。どなたからでもお願いいたします。
どうぞ、有賀構成員。
●有賀構成員
どちらかというと素人っぽい質問で申しわけないのですけれども、この21条に従って届け出たこともある、そのような経験がありますので、私たちの会議の目的は、原因の究明と、それをもとにしてより質の高い安全な医療をつくっていこうという話ですね。そのことと、それから、この医師法21条の直接的な関係というのは、論理的には多分ないとは思うのですけれども、歴史的に、法医学会や、その後だと思うのですけれども、厚生労働省がこういう診療に関連した死亡なども届け出るべきだという見解に至ったものの考え方といいますか、そこら辺が歴史的にどういうことだったのか、ちょっと教えていただきたいなと思います。
私たちの議論は、そもそもそういうものだという中で議論したことはいっぱいあるのですけれども、ここでの議論は、より質の高い医療をつくっていこうねという話のときに、捜査機関は同時進行で私たちに振りかかる厳しいテーマでありますから、問題にすることはもちろんやぶさかではないのですが、どうしてそうなってしまったのか、ちょっと聞いてもいいですか。お願いします。
●田原医事課長
医事課長でございます。
まず、参考資料2をごらんいただければと思います。医師法21条では、「医師は、死体又は妊娠四月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは、二十四時間以内に警察署に届け出なければいけない」というものでございまして、その犯罪の痕跡をとどめている場合があるということで、こういった届出義務を規定したというものでございます。
今、有賀先生のほうから御質問がありましたけれども、厚生労働省が診療関連死について届け出るべきだというようなことを申し上げたことはないと思っております。この法律と、ここに書いてある解釈をお示ししているということで、診療関連死というのが何を示すのかというのはちょっといろいろありますが、明示的にそれを届け出なさいということを申し上げてはいないのではないかと思います。
関連して、法医学的な異状を意味するということが書かれておりますけれども、この法医学的異状を判断する際に法医学会のガイドラインも参考にしてくださいというようなことは申し上げておりますけれども、それを参考にして、最終的には検案した医師が、異状であるかどうかということを判断していただくというものでございます。
●有賀構成員
一般の病院に向かってその手の話を発信されなかったということはそうだと思うのですけれども、もし僕の記憶に間違いがなければ、国立病院にはそうなさいませということを配信したというか、意見を国立病院の病院長にはおっしゃったということはあるのではないですか。多分、それを一般の病院が皆まねしたのではないかと思うのですけれども、そこら辺をちょっと教えてください。
●田原医事課長
今、御指摘いただきました、国立病院のほうに対して、リスクマネジメントマニュアル作成指針ということで、そこには、警察への届出として、医療過誤によって死亡または障害が発生した場合、またはその疑いがある場合には、施設長は速やかに所轄警察署に届出を行うというような内容がございます。平成12年だったかと思いますけれども、それについては、これはあくまでも国立病院などに対してお示ししたものでありまして、国立病院のほうで実際にいろんな対応する際の参考になるように指針を示しているということで、ほかの医療機関について、こういうことをしなさいと言っているわけではないと考えております。
●有賀構成員
そうしますと、国立病院でない病院については、そのようなマニュアルになさいませということが届いていなければ、違うマニュアルがあってもよろしいと、こういう話ですね。
●田原医事課長
それはそれぞれ、検案した医師が第一義的には判断するものだと考えております。
●山本座長
それでは、どうぞ、中澤構成員。
●中澤構成員
そうすると、今の議論は、要するにこれは検死の段階の話であって、医療関連死とは関係がないという解釈でよろしいでしょうか。
●田原医事課長
「ケンシ」というのと検案というのはちょっと違いますので、お亡くなりになって、検案を医師がしたときに警察に届け出るかどうかということが論点だと思っております。「ケンシ」という意味合いが、いろんな字がありますので、少し限定して御質問いただければと思います。
●中澤構成員
検案というのは、普通は医療が関係しないところで起きた事例について、医師が必ず検証を行わなければいけないという状況の中で検死が行われるという考えで私はいるのですけれども、これは検死にもかなり幅が広いという感じにはなるのですか。
●田原医事課長
検案は外表を見て判断するとなっておりますけれども、その亡くなられた死体があって、死体の外表を見たドクターが検案して、そのときに異状だと考える場合は警察署に届け出てくださいということだと考えております。
●中澤構成員
それは、外表を見てということは、外表だけで判断されるということでよろしいわけですね。
●田原医事課長
基本的には外表を見て判断するということですけれども、外表を見るときに、そのドクターはいろんな情報を知っている場合もありますので、それを考慮に入れて外表を見られると思います。ここで書かれているのは、あくまでも、検案をして、死体の外表を見て、異状があるという場合に警察署のほうに届け出るということでございます。これは診療関連死であるかないかにかかわらないと考えております。
●中澤構成員
そうすると、外表では判断できないものは出さなくていいという考えですか。
●田原医事課長
ですから、検案ということ自体が外表を検査するということでございますので、その時点で異状とその検案した医師が判断できるかどうかということだと考えています。
●中澤構成員
判断できなければ出さなくていいですね。
●田原医事課長
それは、もしそういう判断できないということであれば届出の必要はないということになると思います。
●中澤構成員
私は、最初からこの法律の内容は医療事故死というのを意識してない時代にできていると思います。ですから、これを現代の非常に複雑化した死亡ということに適用するのは難しい面があるだろうなと思っておりましたので、今のお考えをはっきり聞きましたので、そういうことかということで理解させていただきます。
●山本座長
よろしいでしょうか。
それでは、飯田構成員。
●飯田構成員
大体同じことを言おうと思っていたのですが、非常にはっきりしていると思います。私も全く同じで、医師法21条の立法の趣旨とは、今の解釈がかなり変わっている、変わってきたというのが実態で、大野病院事件以来、またそれが少し揺り戻しがあった。それで、きょうの参考資料2は極めて重要な資料で、医師法に関してはこの四角のとおりでいいのですが、下の、立法の趣旨がきちんと書いてありますので、やはりこれは厳密にやっていただかなければ困ります。私も(厚生労働省の国立病院に対する)ガイドラインが混乱の発端だと思いますけれども、今までが厳密に解釈していなかったのが問題であって、きょうこの場でそれが明らかになったということは極めて重要だと思います。本当にありがたいと思います。
以上です。
●山本座長
どうぞ、宮澤構成員。
●宮澤構成員
法律というものについてちょっとお話をしておかなければいけないのかなと思います。法律というのは時代に普遍的に適用されるものなのですね。したがって、立法された当時に何を対象にしたかということと、その後の社会的な変化によって何が変わっていくのかということに対応しなければいけない。法律は常に変わらないものですけれども、もちろん、ある一定限度、社会的な情勢の変化があれば変わる時期というのはあるかと思いますけれども、法律そのものは、立法の趣旨というか、その当時の立法の目的で文書ができていくのですけれども、文章そのものがその立法の目的を限定的に書いていない以上は、その文章の中でどのように解釈されていくかということに変わっていきます。法律というのは社会の変化に伴って変わっていく必要があるので、ある一定の立法の目的があったからといって、その目的どおりに常にそこだけに限定されるというわけではないと考えるのが法律だと思います。
そうしないと、恐らく法律というのは社会の変化に対応できないというものになってしまうので、法律そのものの性格ということから考えると、医師法21条もそうなのですけれども、基本的には、立法当時に考えられたことと、法文そのものが現代になってどういうところまでカバーする形になってしまったのかというのは変化していると考えなければいけないと思います。
その意味では、立法のそもそもの目的から現在の医師法21条の適用の仕方というのは確かにずれてきています。しかし、法文そのものから言って、その適用の仕方が明らかに現代的な適用の仕方であって、法律そのものが変わってきているわけではないです。法文そのものはそのとおりなのですけれども、その適用範囲が社会の状態によって変わっていると考えるべきではないかと思っています。
●中澤構成員
そういうことですと、これは拡大解釈ということになるのですけれども、それは許されるという御意見ですか。
●宮澤構成員
拡大解釈と言っているわけではないのですね。解釈の中身がどのような形なのか、文章に書いてないことを拡大的に解釈することは許されないです。文章に書いてある中身をどのように現代的に解釈すべきなのか、解釈論の中での問題なので、拡大解釈というのとは次元が異なっていると考えています。
●中澤構成員
今、文章の中と書いてあるのですが、実際この文面に書いてある事態については、現代の医療の内容の中で頻繁にあることなのです。ただ、医療事故、あるいは診療に関係する死亡は別で、これだと2つ意味を持つということになるので、一つの法律で2つのことを意味つけるというのはかなり乱暴な議論だと私は思うのです。
●宮澤構成員
ここの中で「刑事犯罪に関連する」という文言が入っていれば確かにそのとおりなのですけれども、この文言の中にはそれが入っていません。したがって、刑事犯罪だけに関連すると考えるのが解釈の限界だというのは、私は誤りだと思っています。
●山本座長
どうぞ、里見構成員。
●里見構成員
医師法21条の解釈に関して、参考資料2というのが、多分、皆さんが大体考えていることだと思うのですけれども、ただ、私は、先ほどの厚労省のお話をお聞きしていて、厚労省、逆に一歩踏み込んだことを、たとえ一部の国立病院にしろ、やったのかなという気がしたのですけれども、その辺についてはどうお考えでしょう。要するに、診療に関することに関しても警察に届けるべきだという示唆を与えたというので、これが全国にかなり大きな影響を与えたと思いますけれども、現在でもそういう考え方は余り変わっていないのですか。
●田原医事課長
私が答えるのがいいのかどうかわかりませんが、あくまでも、先ほどのリスクマネジメントマニュアル作成指針というのは国立病院に対してお示しをしているので、国立病院では、その医師法21条もあるけれども、そういった事態が発生した場合は警察署に届出をする、相談するということをお示ししたわけであって、そのほかの医療関係者がこれに拘束される理由はないと思います。
●里見構成員
でも、それは非常に不思議な考え方だと思いますね。厚労省がそういう明確な意見を持っていて提示したのであれば、かなり大きな影響力があると私は考えるので。今でもそう思います。
●山本座長
どうぞ、宮澤構成員。
●宮澤構成員
今のお答えというのは、例えば国立大学のほうに示しましたと。ただ、一つの条文を一つの解釈の仕方で示したということになると、基本的にはその解釈は全体に広がると考えるべきだと思います。それは、やはり国立大学だけ特別とか、民間とは違うという理由がないからなのですね。国立大学に示した基準であれば、それは一般の民間の病院、診療所にも同じように当てはまると考えるのが、一つの条文を基本にする限りは当然の帰結ではないかなと思います。
●田原医事課長
もう一つ補足いたしますと、今申し上げましたリスクマネジメントマニュアル指針というのは、これは医師法21条についてのみ解釈を示して、これに従ってくださいと言ったわけではなくて、標準的な医療事故防止の手順書という形で出してあって、その中の一部に今申し上げたようなことが書いてあるだけですから、そこの部分だけ取り上げて云々するというのはどうかなというのはありますけれども、その全体を見ていただくのが重要ではないかと思っております。
●山本座長
山口構成員。
●山口(徹)構成員
ちょっと今のお話の中でもう一つ出てきた話として、参考資料2の中に、「『異状』とは病理学的の異状ではなくて法医学的のそれを意味する」と。そのところに法医学会のガイドラインというのが出てきましたけれども、ぜひ宮澤構成員に教えていただきたいのですが、こういう法医学会のガイドラインというものはどういう位置づけになるのでしょうか。
●宮澤構成員
ガイドラインというのは法律そのものではありませんから、一つの社会的なルールとして定着する可能性はあるかと思います。ただ、ガイドラインが幾つも重なって、だんだんそのガイドラインが普通のことだということになってくると、それがいわゆる社会的相当性という違法性を限定づける基礎になり得るので、それが一般の社会的意識と同一のところになると、だんだんそのガイドラインが社会的相当性の基礎になってくるという可能性はあります。
ただし、今のところは、ガイドラインというのはあくまでも社会的な中でのルール、法律は絶対的なルールになりますけれども、それに至る前のルールと考えざるを得ないと思います。
●中澤構成員
今のお話を聞いていると、法律は解釈が可変であるというような問題と、それから、最初の時点で書かれたものはほかの解釈に使われてもいいという、すごく曖昧で、それに拘束される立場から言うと、一体これはどうやって動けばいいのだというような感覚を持つのですけれども、法律というのがそういうものだとすると、最後は最高裁ということになって、大体今の世の中全部そうなのですけれども、医療機関でもそうですが、要するに、はっきりしたルールがないから上の話を聞こうという形に全部なっていくのですね。ですから、みんな非常に細かいことまで上の意見を聞くという、医療としては本当にこれでいいのかという非常に危ない風潮になっていくので、何がルールなのかということは、法律家の方が、こうだと言っていただかないと、それに従うほうは非常に混乱を招いて、今もそうだと思います。その辺についてもう一回。
●宮澤構成員
何か全国の法律家の代表みたいになってしまいましたけれども、確かに、今おっしゃられること、よくわかるのです。いわゆる処罰規定のある規定、刑法規定ですね。処罰規定のある規定というのは明確性の原則というのがあって、それは絶対に明確でなければいけないというのが根底にあるのですね。もう一つ法律の特徴というのがありまして、どうしても解釈の枠内ということがあるのですけれども、時代とともに変化しなければいけないというところもあります。
ただ、絶対的な解釈と、こう分かれる道があるので、今言われたような、例えば終末期どうするかという問題も、実は法律不備なのですね。法律というのは常に社会を先行してルールをつくっていくのではなくて、社会の後追いで、何かがあったときにその抑制をしていく。例えばねずみ講があった後に、連鎖販売の防止に対する法律ができてくるように、どうしても後追いになる。ですから、先生のおっしゃられるのは、ここの部分ははっきりしないではないかという部分はどうしても出てきています。だからこそ、今、法律の解釈をはっきりさせておくことと、それから、今後どうしていくかと立法政策的な部分というのもやはり考えなければいけない部分というのは医療はたくさんあるのではないかと思っています。
終末期もその一つの代表例だと思っています。終末期が何なのか、どうなのか、これはそこの議論ではありませんけれども、法律というのは常に後追いの性質を持っているので、今の状況を常に先行的に全部解釈できるというわけではないというのが法律の特徴だと思わなければいけないと思います。
ただ、その範囲内でできる限り明確であるということは必要なことなので、この文章から明確にできる範囲というのは考えておく必要があると思います。
●山本座長
私も法律家ですので一言申し上げさせていただきますと、法律の解釈適用について最終的な権限を持っているのは、日本においては司法権なので、そして司法権の頂点にあるのが最高裁判所ですから、最高裁判所が例えばこの医師法21条に対して一定の解釈を示したとすれば、それはもちろん判例が変更されるということは論理的にあり得ますけれども、基本的にはそれは日本国の中で、この医師法21条はそのように解釈されるということを明らかにするということになるというのが日本の国の仕組みですので、上に従うとかそのような話では基本的にはないということだと思います。
ですから、この医師法21条について、私の理解している限りでは、最高裁判所、一定の判断を示しているのではないかという気もするのですけれども。
●田原医事課長
医師法21条につきましては、最高裁で判示されて平成16年に出されておりますが、医師法21条にいう死体の検案とは、医師が死因等を判定するために死体の外表を検査すること、といっております。また、当該死体が自己の診療していた患者のものであるか否かを問わないと解するのが相当であり、これと同旨の原判断という高裁の判断は正当として是認できるといったようなことが示されております。
●中澤構成員
済みません。簡単にこういうことだと言っていただければありがたいのですけれども。
●田原医事課長
簡単には、先ほど少し御説明しました、検案というのは、医師が死因を判定する際に、死体の外表を見て検査するということをいっていますということであって、死体が診療中の患者さんなのかそうでないか、そういったものとは関係はないといっているということです。
●中澤構成員
ということは、医療関連死はこの関係からは省かれるという考えでよろしいのですね。
●田原医事課長
そういうことではなくて、いわゆる、ここでいろいろ議論されている医療関連死であっても、医師が死因を判断するために外表を見て、異状がある場合は警察に届け出なければならないということです。
●山本座長
どうぞ。
●岩井構成員
現在、異状死として警察に届けられたものについて検死が行われて、そして、犯罪の疑いがないもの、そして、犯罪の疑いがあるかどうかわからないものにスクリーニングされ、さらに犯罪による死亡の疑いがあるものは刑事訴訟法上の検視に付されて非犯罪死体と犯罪の疑いのある死体に分けられて後者は司法解剖といいますか、検死に付されるとなっているので、行政解剖の対象になるようなものも異状死の概念に入るわけですね。ですから、届出があって、それから、そういう判別が検死によって行われるわけですね。ですから、ここの「犯罪の痕跡をとどめている場合があるので、司法警察上の便宜のために」という解釈はちょっと狭過ぎると思います。
法医学会が出したガイドラインというのは非常に広くて、基本的には、「病気になり、診療を受けつつ、診断されているその病気で死亡することが普通の死であり、これ以外は異状死と考えられる」という非常に広い概念でとらえるというガイドラインを法医学会は出しているわけですね。それに対してほかの医学会は非常に反発しまして、もっと、純然たる病死でない状況が死体に存する一切の場合を異状死というのはおかしいといいますか、その診療に関連しないものでも、自然に病死するという場合があるので、そういうものまで異状死に含めるのはおかしいという抗議をしているわけですね。平成17年の日本学術会議の提言では、第3者の医師の見解を求め、死因の説明の合理性に疑義をはさむ場合は異状死とすべきとしています。
ただ、私は、この医療事故関係の届出件数の推移というのを見ましても、平成9年から非常に上がっていて、だんだんまた下がってきているとか、それから、立件送致数の推移というのも非常に平成9年から変動していますね。最高裁の判決というのは、医療関連死だってこの異状死の概念の中から外れるものではないのだという見解を示したものだと思うのですけれども、それまでは余り送致がなされてこなかったのが、医療過誤で非常に問題になったケース、それを医師が届けなかったというので刑事事件になったケースがありますね。この21条違反、届出義務違反。そういうものがあってから届出件数も多くなって、そしてまた立件送致数も多くなっているのではないかなあと私は思うのですけれども、そうではないでしょうか。
●山本座長
どうぞ。
●田原医事課長
そこの因果関係はちょっとわかりませんけれども、事実としては、平成11年にそういった医師法21条違反のことについて疑義が生じるような事案があって、それが裁判で争われて、平成16年に最高裁の判決が出たということですから、そのころと少し時期は一致しているのかなとは思います。
●山本座長
どうぞ。
●高杉構成員
したがって、今、宮澤先生が言われた法の解釈、それは時代によって変わるのかもしれませんけれども、現場で結局法医学のガイドラインが出、国立病院の診療ガイドラインが出、あやふやなままにいったのが現在の混乱を起こしているのですね。だから、そのためにこの調査のあり方、検討委員会も行われているのであって、そこがはっきりしない限りは前に進まない。あるいは、これはこうなのだと決めていただければそれはそこで対処できる。
しかし、自律的な取り組みの中で我々は努力しようと言って、その肝心のところがころころ変わったのではやれませんね。だから、そこをきちんとしなくて、そういう国立病院への指令が出たり、法医学のガイドラインで、我々、一生懸命応えても、また解釈が変わるということでは困るわけですね。
だから、医療関連死というのは犯罪でしょうかと。犯罪ではないですね。医療過誤で届けないのは犯罪かもしれません。それは患者さんにきちんと説明するプロセスをきちんと我々やりましょうと提案しているわけです。それは明らかな過誤のことはもちろんですけれども、そうでないケースもある。説明がなかなか院内の事故調査委員会でも説明できない。これをどのように処理しましょうかと、どのように患者さんに納得してもらいましょうかということの話し合いが大切なのです。
だから、そこの基本が、どうも提言がぐらぐらするようではこれは前に進まない。我々は、何をしているのですかねということにもなりますし、今後の医療をどのようにするかという視点でやはり進めなければいけない。そうすると、法律家の先生方の御意見も大切だけれども、そこをきちんと示してくださいよというのが本当に現場の意見ですね。
●有賀構成員
また厚生省の方に聞いてしまうので嫌がられてしまうかもしれませんけれども、リスクマネジメントに関する手順書全体のあり方を示唆した中で本件についての部分が入っているという御説明ですね。ここの会議では、何か困ったことが起こったときに、その原因をきちんと見極めて、そして、医療安全に資する形で利用しようではないかという話で、まさにそれはリスクマネジメントそのものなのですが、リスクマネジメントについて、極めて広く、いわゆるクライシスマネジメントというか、訴訟とか、そのような観点まで含めて広く考えるという考え方でいくと、患者さんが警察に駆け込むというふうな状況をマネージするためにも、先に警察へ届けておけと。そのような感じでリスクマネジメントに関する手順書の中にお入れになったのですか。
そもそも医療安全をしていこうということと警察に届け出るということとは論理的には全くの独立事象ですね。つまり、私たちがいい医療をしようと思うことと警察に届け出るということは、今、僕がちょっと触れたリスクマネジメント、ペイシェントセーフティのことを考えた上で、究極の向こうにある訴訟とかそのようなことまで入れれば、場合によっては理解できるのですけれども、ここで議論するような場面において、当時の厚生省が手順書の中の一部にそれを入れたというのは、その部分だけ議論してもらっても困るという話なのですけれども、どういう理由でその中に入っていったのでしょうか。
私たちは、もともとそのようなことを想定は実はしてなくて、法医学会によるガイドラインが出たときも、極めて純粋に反対するわけですね。違うよねと。だけれども、後押しをしてくださったのが厚生労働省だという歴史観を持つわけです。だから、なぜそこに入れたのかということについて、ここでは独立事象で関係ないということは、多分多くの方がおわかりになっていると思うのですけれども、当時入れた理由は何なのですか。
●田原医事課長
先ほどの届出のところを入れた理由というのは、今、私のほうからは説明できませんけれども、この全体、リスクマネジメントの作成指針をつくった趣旨を申し上げますと、医療事故の発生防止対策、それから医療事故発生時の対応方法について、国立病院などがマニュアルを作成する際の指針を示すということで、各施設、各病院で医療事故防止体制を確立してほしいと。それが安全かつ適切な医療の提供に資するという趣旨でつくられたと理解しております。
●有賀構成員
ちょっと畳みかけてごめんなさい。だから、警察に届け出るというその仕事は、直接的には医療安全と関係ない。言っていることわかりますね。直接的に私たちがやらなければいけない医療安全は、病院の中できちっとそれを分析して、わかりますね。それで、その結果を踏まえて次のステップへ進むわけですね。そのときに、警察に届け出て、何が安全に結びついたのだろうと今となっては強く思うので、だから、したがって、当時の考え方は、警察に届け出ると医療安全がより安全になるとお思いになったのですか。
●田原医事課長
ここのマニュアルというのは、病院長が警察にどのように相談していくのか、この指針やマニュアル自体は法律ではありませんので、法律に従って、医師法21条に基づいて届出をしなければいけないのかどうかということを含めて警察に相談するということで書かれてあるのではないかと思います。
●高杉構成員
医療行為はすることが不確実で、リスクがあって、それはもう何が起こるかわからない。しかし、それが起こったとき警察に届けるというのはどういう意味なのでしょう。犯罪を犯したのは警察に届けるの当たり前ですけれども、そこのところが変な指針が出るからかえって周りがおかしくなる。だから、犯罪と犯罪でないというのをはっきり区別しなければ、警察を入れると言って病院長が責任逃れしているだけではないですか。それでは困ると我々は思うし、きちんとそれを説明しましょうやということでありますから、そこでかわそうとした当時の状況はわからないではありませんけれども、それで混乱が生じたということを反省して前に行かなければ意味がないと私は思うのでありますが。
だから、この捜査との関係というのは、医療行為をして死に至った、これを犯罪とするのなら、これは医療行為やれません。そこのところをきちんと直してくれないと。私たちは、その取り組みの中で患者さんの信頼に応えようというわけですから。
●有賀構成員
高杉先生、そうおっしゃるのは僕と全く心の部分では同じなのですが、しかし、先ほど法律の方たち、座長も含めて言われたのは、診療関連死は21条のこの解釈に含まれるという、それが、今、日本国のルールになっているのですね、要は。
●山本座長
最高裁判所がそのように言っていると。
●有賀構成員
最高裁判所が言ったということは、この国のルールとしてそれが所与の条件なのだということを前提に話をしなくてはいけないということですね。
●山本座長
それはそういうことになると思います。
●有賀構成員
だから、ここで確認したいのは、当時は医療安全に結びついていた可能性があると思うのですよ。厚生労働省の今の話だと。だけれども、今よく考えると、高杉先生がおっしゃったみたいに、そのような考え方と、つまり、警察に届け出るという考え方と、医療安全をよりよい形で全うしていこうではないかと思っている、そういう考え方とは独立している。別個の問題だと考えるのが筋ではないかということを言っているのです。厚生労働省も、今となってはそうではありませんのという質問です。
●田原医事課長
今となってはというのはよくわかりませんが、あくまでも国立病院のほうの作成指針というのは、国立病院などが自主的にこうやったらいいのではないかということをお示ししただけであって、医師法21条の話とはまさに別々の問題だと思います。平成16年に最高裁のほうで、自分が診察していた患者かどうかは関係なく、死体の外表を検査して、検案をして、異状を認めた場合には警察署に届け出ることが必要であるということは示されているわけですので、そのことを念頭に御議論いただければと思います。
●飯田構成員
議論かみ合わない理由はこの用語なのです。さっきから、会の目的と合わない話と同じように。我々は、医療の安全のときは、リスクマネジメントを考えてないわけです。セーフティマネジメントなのです。厚労省の検討会でもそう発言して、医療安全ということでセーフティマネジメントということで統一していただいたのです。広い意味では、セーフティマネジメントがリスクマネジメントの一部になります。それは認めます。だけれども、組織防衛としてのリスクマネジメントと違うのだということを明確にしないといけないのです。今のお話で、警察に届けるという意味では、病院長のリスクマネジメントとして届け出ることはあり得るのです。自分が罪に問われるのですから。それはセーフティとは全然関係ないのです。
ですから、セーフティマネジメントもリスクマネジメントも非常に大事です。だけれども、議論するのは分けて考えていただかなくてはいけないのです。この検討会ではセーフティマネジメントを考えると言っているので、リスクの話をされても困ります。もちろん、リスクを縮減することがセーフティにつながりますから、そういう意味でのリスクは結構ですが、組織防衛という話になると、大事ですが、別のテーブルで議論してほしいのです。そうしなかったら、すれ違ってどうにもなりません。
●山本座長
どうぞ。
●里見構成員
何となく火をつけてしまった気がして気がひけますが。ただ、いろいろ議論あると思いますけれども、この会議で決めなければならないのは、医療事故が起きた時にどうするかということだと思います。皆さんの大半の意見としては、医療関連死や医療事故は刑事訴訟になじまないものであるから、まず届けないというにしていいのではないでしょうか。大半の人はそう思っていると思うのですけれども、それはそれでよいとして、でも、しかし、やはり医療過誤は起こるわけで、そのときにどういう仕組みを作っておけば、患者さんの家族も納得し、原因究明もできるかということを考えるように、もう次に進めていったほうが生産的かなと思います。
今までの解釈はともかくとして、少なくとも、今話を聞いて一致するのは、異論あるかもしれませんけれども、医療に関する死とかそういうものは刑事訴訟にはなじまないから、警察に届出はしないという本来の21条のこの解釈に立って、そのように動いてもらいたいという意見だと思います。しかし、やはり医療過誤起こっているので、それに対してどういうことを我々は次の制度として持っておけばクリアーできるかという議論にそろそろ移ったらいいのではないでしょうか。
●山本座長
今の御発言は、この21条によって届出をしないような仕組みとしてどのようなものを考えればよいのかということを考えるべきだという御発言でしょうか。
●里見構成員
医療関連死に対して、これは警察に届けるべきだという意見があれば、それはまた議論しなければいけないけれども、そうでないのだったら、もうそれはそれで次のステップに移ったほうがいいのではないでしょうかと。
●山本座長
どうぞ。
●加藤構成員
今ずっと皆さんの御意見をお聞きしながらちょっと考えているのですけれども、診療関連死という概念、これ自体、みんなそれぞれ思っているところは大分違うのではないかと思うのですね。診療関連死の中に、例えばエタノールと蒸留水と間違えた京都大学病院のケースがございますね。あれも診療関連死になりますね。それから、牛乳を点滴してしまったということで、そんな事故も過去にあったと思いますけれども、これも診療関連死ですね。診療関連死と一口で言うけれども、さまざまなものがあります。
例えばことしの6月に奈良地方裁判所で判決が言い渡された大和郡山市の山本病院のケースでは、これは禁固刑になっていますけれども、医療行為に関連して亡くなったというケースですけれども、相当悪質な事案であることは、皆さん御存じかどうかわかりませんけれども、相当問題のあるケースです。そういう問題のあるケースが診療関連死と言われる中にまぎれ込んでいることは間違いないのですね。一切そういうことはないのだという前提には全く事実として立てない。過去にそういうことがいろいろ存在した以上は、全く診療関連死というものは刑事的なものと無縁にある概念ではないだろうということはまず押さえなければいけないだろうと思うのですね。
先ほど来ずっと、21条の解釈の問題と、厚労省の保健医療局国立病院部というところがあるのですかね。
●田原医事課長
当時ですね。
●加藤構成員
当時、そのマニュアルの話が出ていますけれども、参考資料2の医師法の条文は、「医師は」とこう書いてあって、届出をしなければいけない主体は医師。それに対しては、こちらの厚労省のマニュアルの話ですけれども、「施設長は」となっています。それから、「検案して異状があると認めたときは」というのが医師法21条の話なのですが、「医療過誤によって死亡又は障害が発生した場合又はその疑いがある場合には」という内容になっています。「24時間以内に」というのが医師法の21条に明記されているのですが、それに対しては「速やかに」と。医師法21条の解釈の問題としては全然違う話がここには私は出ていると思いますので、21条の問題と、このマニュアルに出ている問題とを一応分けて考えるということではないだろうかと。
そうすると、厚労省のこのマニュアルの話は、別の理由、例えば医療の現場で診療関連死というものであったとしても、重大な過失があって患者さんが亡くなってしまったという場合は、なるべくそれを、この当時はもちろん、届出先、第三者機関もないわけですから、その病院の中にとどめておくということはある種の危険性を持つだろうと。だから、隠さないで、きちっとそれはオープンにしていくべきだという世の中の大きな期待があっただろうと思うのですね。マスコミに公表する基準だとか、あるいは警察に届出をしておく基準だとかいう話が当時出たのはそういう背景が時代的にはあったのではないか。
2002年に名古屋大学で起きた腹腔鏡を使った手術のときに、術者がトロッカーで腹部大動脈を突き刺してしまって、大量出血、その後、輸血を大量にしても、結果、救命できなかったというケースがありました。このときに病院が対応をどのようにしたかというと、隠さない、逃げない、ごまかさないという病院長のメッセージを記者会見で発表し、そして、警察にも届出をし、そして、院内で事故調査をすると。それは外部委員も入れて公正にこの際しっかりとやるということを公表したわけですね。
その結果、2カ月で事故調査報告書をまとめるということになるわけですが、当然、最初の時点では警察に届出がなされているので刑事訴訟法に基づく検視という手続がございますけれども、それは病理解剖しているときに警察官が来て写真を撮ったりしていっているという手続は同時並行で起きたわけですが、その後、院内の事故調査委員会で警察が先行してさまざまな取り調べとか捜索押収とかしないようにという形で申し入れをして、その場合には、警察のほうは見守るという態度をとったわけですね。
その結果、2カ月後に事故調査を遂げて報告書をまとめたわけですが、その結果、刑事問題としては、通常は検察庁に書類送検という手続に入っていくわけですが、送検せずということで刑事問題は終了しました。つまり、業務上過失致死が疑われる事件ですから、警察としても関心を持ったわけですけれども、このケースの場合、国が賠償するということで、民事的にも裁判に至らず、示談という形で解決ついたことなど、それから、多分考慮された中には、誠実に院内事故調査で真実を述べ、真剣に医療安全のために術者自らが貢献したことなどを含めて警察は判断したのだろうと私は思っております。
そういうことを総合して考えるときに、厚労省の、2000年の7月でしょうか、このマニュアルというものの持つ意味が、名古屋大学では少なくともそうした形で一つの刑事問題化する可能性があるケースについては隠さないという気持ちから警察に届出をした。それは21条の届出ということであったかどうかは別として、そういうことを知らせておいて、そして院内事故調査ということを優先的にしたという実績があります。
そういう意味では、資料3に戻るのですけれども、「捜査機関との関係について」ということで、医療関連死という言葉、それから診療関連死という言葉が両方ここの中には出てきますが、括弧書きの、皆さんそれぞれ発言される人は、「故意または故意と同視すべき犯罪がある場合は警察へ届け出る」ということ、多分、きょう発言されている医療側の構成員の人も、故意が疑われたり犯罪が疑われるような場合は、これは警察に届けなければと思っておられるでしょう。そうすると、死亡の事例を見てすぐに、それは重大な過失か、あるいは過失があったようだというところまではわかるかもしれないけれども、それが故意かどうかとかいうのは、その瞬間的に判断がつくかというのはなかなか難しいです。実際に難しい。
解剖というのは時間との勝負になりますね。この医師法21条に24時間と書いてあるのは、まさに、場合によれば、例えば虐待で子供が死んでいると考えられる、あるいは刺し傷があって、それが死因になっている可能性があるとなれば、これはほうっておけないので、司法解剖という方向に持っていくことでなければ社会の安全が保てないということになります。よって、この21条というのが存在する意味は今日的にもあるわけですね。そこに、故意または故意と同視すべき犯罪があるような場合は警察に皆届けなければいかんよと、このように考えるわけですが、その判断というのはかなり速やかにやらなければ、火葬されてしまうとその経過が曖昧になってしまうという問題があるわけですね。
そこで、この捜査機関との関係について言えば、私たちは診療関連死というのをどのように考えるかで、ディスカッションする以上はその概念を共通にしてディスカッションしたいと思うし、私は、診療関連死の中には犯罪的なものも含まれてくると見ていますので、それはまた直ちに即決でわかる話ではないだろうと思われるので、そこが一番難しいところなのですね。
しかしながら、第三者機関ができれば、診療関連死というものはその第三者機関に届けていくと。大半はそういうことでふさわしいものですから。しかしながら、第三者機関に届けられた後、問題があったというケースについて、一切刑事的な問題にそれはなり得ないとしたならばどういうことになっていくのかというあたりを少し皆さんの御意見を聞かせていただきたいと私は思っております。
以上です。
●中澤構成員
今、加藤構成員がおっしゃったことは、私たちも同じように考えます。今、お話の中で、アルコールと生理的食塩水を間違えた件とか、それから、ミルクを静脈の中に入れて亡くなった件とかいうのは、これは故意ではないと思うのです。故意ではないですね。やりたくてやっているわけではない。もう一つ、山本病院のケースは、恐らくこれは故意でやっているところに入ると考えられるので悪質と思われます。先ほどのお話ですとこれが一つの診療関連死としてまとまっているとお考えだと思うのですが、これは私たちにとっては非常に大きいインパクトを持っていまして、診療の中で起きる過誤というのはゼロではありませんし、それが死亡につながるということは必ずあることです。
ただ、これが山本病院のケースと同じに見られてしまうというところが、私たちが今まで非常に苦労しているところなのです。一般の新聞で取り上げられていること、それから、一般の方が考えるときに、これは故意だから診療とは関係ないとか、あるいはこれは間違いが起きているのだから診療と関係しているのだとか、そういう区別を持って考えるということはないと思います。大抵の場合はみんな一緒にして、医療機関は、要するにこういうこともやるのだというふうな考え方でとらえていくので、私たちは、完璧に故意と犯罪ということと医療関連死とは分けてほしいというところを申し上げる一つの根拠になるわけであります。
それから、虐待なんかは、これは見ればわかる話なので、これは検死というところではっきりします。それから、診療関連死は、最初から最後まで医療者がつき合っていますから、表面には何もなくても、医療に問題があるかどうかについてはかなり見解を持つことができると思います。その中で、この21条の解釈というのは体表のことを問題にしておりますので、体表の問題だという話になると、これはあるものは届け出なければならないけれども、なければいいのだというような解釈も実際にしている人もいるわけでして、そのような解釈の相違というのが、この21条にもあるし、それから、今お話しいただいた加藤先生の話の中でもあるのですね。
ですから、これを分けてほしい。犯罪捜査は緊急に届出が必要かという件ですが、故意とか犯罪とかは後になってみないとわからないことなので、恐らくそのことをもって一緒に届け出なければならないということにはならないのではないかと私は考えておりますし、今日の混乱の原因ということは医療関係者ではかなりみんなが考えていることだと思います。
●山本座長
山口構成員、どうぞ。
●山口(育)構成員
私は、この検討部会における議論では、「診療関連死」という中に、重大な過失や故意によるものは含まれていないと認識していました。今の議論をお聞きしていて、医療にも法律にも素人の立場ですが、この医師法21条の解釈を読むと、やはりかなり故意や犯罪に近いものと感じます。「犯罪の痕跡を止めている場合があるので」と明確なただし書きがあるからかもしれませんけれども。この検討部会で話し合うときに、医療事故にかかわる調査の仕組みとして、診療関連死とはどういうものを言うのかをある程度きちんと定義づけるか共通認識にしておかないと、人によってイメージが異なり、いつまでたっても話が見えてこないのではないかと思います。もちろん、今までの議論の経緯もありますが、この場で第三者機関ということを考えるに当たっての診療関連死というものはどういうものを言うのかということをまとめていくというのはいかがなものでしょうか。
●山本座長
宮澤構成員、どうぞ。
●宮澤構成員
今おっしゃられたとおりですけれども、診療に関連する死亡ということになると、当然のことながら全部含まれるのですね。実際に診療に関連した形で最高裁で殺人という形で確定した例もあるわけですから。その意味では、診療関連死というのは故意、過失、重過失、全部含まれている。明らかにわかるものをどうするかというのは別ですけれども、とりあえず警察のほうに持っていくのがいいのか、それとも、それ以外のところに持っていって判断していくのがいいのかという問題なのだと思います。
現場でどう振り分けるというのは非常に難しいというのが今までの現状を見て明らかなわけですから、その意味で、どういう状況が起こったにしても、どこに届ければいいのだと、そこできちんとした医療的な判断もされるのだということになれば、それは明らかにはっきりしている。
今回は、そういう医師法21条の解釈の問題も、今現状ではあるわけですけれども、そうではなくて、これからどうしていくか、立法政策的な問題としてどうしていくかということの議論の場なので、その意味では、この21条の解釈、どこが含まれているかというよりも、これから全てを含んだ上でどうするかということを考えるべきだと思います。その意味では、里見構成員のおっしゃったとおりではないかなと私も思っています。今、これからどうするか。それから、幾つかのものが含まれている。それを全部考慮した上で、それを第三者機関のほうに振り分けていく、そういう方向性が正しいのではないかということは私もそのとおりだと思っています。そちらのほうの議論に移っていったほうがいいのではないかと思います。
●山本座長
本田構成員、どうぞ。
●本田構成員
私自身も医療にも法律にも全くの素人なのですけれども、一応手術とか抗がん剤治療とかさまざまな危険を要する治療を受けて、それを選択してきた患者という意味でちょっと感じたことがあるのですけれども、これからのことを考えるということに対しては全く私も賛成なのですけれども、制度をちゃんと理解してない部分もあるので恐縮なのですが、私もずっと議論を聞いている中で、加藤構成員がおっしゃったように、医療関連死とは何なのかというのが一番の疑問でした。
今のお話の中では、医療関連死というのは故意のものとか故意と同等と考えられるものなど全てを含むということだったので、そのように理解したときに、それを警察には届け出ないとまず決めて、警察に届けないのがいいのかはちょっと置いておいて、届け出ないとなったときに、それを誰が判断するのかというのは患者にとってはすごく大きな問題ではないかなと思っていて、疑問があるようなことが起こったときに、当該の医療機関とか、そこが全て判断していると、すごく疑問が残ったままだと思うのですね。
医療関連死、それが故意なのかどうなのか。故意なものは全部、先ほど、医療関係者の方々もみんな、それはちゃんと届け出るべきなのだということをここにも書いてあります。資料3にも書いてありますけれども、それを一体誰が判断するのかというところで、そういうものは、疑義あるもの、医療行為にかかわるものは届け出るというのだったら、その判断を一体どうするのかというところを明確にしていただかないといけないなと。そこが一番のポイントに感じました。
●山本座長
山口構成員、どうぞ。
●山口(徹)構成員
もちろん、再発予防とか医療安全ということを考えると、過失、過誤があった医療、診療関連死というのが一番学ばなければいけないことがたくさんあると思います。従って、それをやはり中心に、この第三者機関、あるいは第三者機関への届出も含めて考える必要があります。そこはいいのですけれども、その前提として、過失のあった医療関連死は、21条で現在は届け出るべきものということに決まっているのだから、ではそれをどうするかという話をするべきだということになると、現在の21条をそのように理解することがもう決まりだとなると、それはやはりちょっと待ってくださいと言いたい。本当に明らかな、悪意のない、うっかりした過誤、過失があって、それが死亡に関連した場合、難しい、法律のことはよくわかるわけではないのですけれども、最高裁の判例の、体表を検案して異常があった、体表に何もなければという議論まで別にくみするつもりはないですけれども、明らかな過誤があったら、それは全て警察のマターだというのは納得がいかない。そして、先ほど加藤構成員のほうからあったように、警察に届けられた後は、警察の判断として、それを送検する、しないが決まると。その判断はすべて警察に任されて当然だ、これはもう現在そう決まっていると言われてしまうと、いや、ちょっとそれは待ってくださいという話になる。本当に悪意のなかった、うっかりミスのような過失も、全てそれは、警察が判断する業務上過失致死傷害に該当するものだということはもう決まっているのでしょうか。それが現在の医師法21条の考え方だということには、そこは少し違うのではないかなと思います。どうしてそれが違うかとまた延々とやるつもりはないですけれども、そうあっさりと決めつけられても困る。医療行為、診療行為における業務上過失致死、あるいは業務上過失傷害についてはまだまだ議論が多く、それほど明確に定義されてはいないと思っているのです。
●宮澤構成員
実は業務上過失致死傷罪というのは昔からある犯罪類型であって、定義ははっきりしているのですね。社会生活上の地位に基づいて反復継続する生命・身体に危険を及ぼし得る行為、これは業務だと言われているのです。医師の行為は業務そのものなのですね。医師という資格のもとで反復継続してやってしまうと、生命・身体に危害を及ぼす可能性のある行為、これは業務そのものなので、何かあって、不注意があれば業務上過失致死傷罪になってしまうというのは定義上明らかなのですね。ですから、その意味ではやはり法律上はそういう形のものに当たってしまう。ただ、それがいいか悪いかという問題なのですね。
私は、ここの場でも申し上げているように、医療上の軽過失、通常の過失というのは刑法上の業務上過失致死傷罪の枠外に置くべきではないかというのは、意見申し上げたとおりなので、それがいいか悪いかは別問題として、現行法の中ではそのように考えられていると理解していただいた上で、その理解を前提にして、これからどうしていくかということをお話しするのが一番いいのかなと思います。
●加藤構成員
要するに診療関連死が発生したときに、第三者機関に届け出るというルールをつくっていく必要があると思うのですね。この第三者機関を早くつくることが大事だと、私はこの際強調しておきたいのですけれども、そういう届出先としての第三者機関がないところに実はいろいろな問題も生じていると。
この医師法21条のような場合、つまり、死体を検案して異常があると認める場合も含めて診療関連死であれば第三者機関に届け出る。第三者機関ができた場合ですよ。その第三者機関が届出を受け付けて、速やかにきちっとした振り分けができるということが前提になってくるのですけれども、そのようにしたならば、医師法21条のこの届出義務というものを果たしたことと同視をしていくという考え方が整理のつけ方としては可能だろうと思っているのですね。
きょう皆さんはどこまで事実を踏まえてお話しされているのか、ちょっとお聞きしていて心配になった点もあるのですが、都立広尾病院事件というのは、皆さんおよそはわかっておられるのでしょうけれども、奥様を亡くされた永井さんという方が本を出版されています。その本の中にはとても衝撃的な、湯灌の儀の際に、その死体の腕のところに、明らかな変化といいましょうか、血管が浮き出たような、そういうものが写真としてその本の中に出ています。で、これは何だという疑問を持つことになるわけですけれども、消毒剤を投与して患者さんが亡くなったのに、その事実を隠蔽しようとしたという力学が働いたことは明らかな事件なのですね。そういう事実。
それから、先ほどの山本病院事件というのは、故意の起訴ではありません。故意犯ではなくて、医療過誤事件と同じような業務上過失致死という形で立件されている事件なのですね。その中では、医療過誤があったのかなかったのかという形で展開はされているのです。もちろん、これは明らかに著しく無謀な、人体実験にも等しいような医療行為だということで、医療の名に値しないとか、そういう評価がきっとベースに裁判官の気持ちの中にあったのかなあとうかがわれた、私はその判決要旨を読んで感じましたけれども、医学的に全く根拠のない医療だとか、著しく無謀な医療だとか、著しい怠慢だとか、そういうものは医療の世界で、残念ながら存在し得るわけですね。そういうものが、捜査機関に何ら問題にならない、刑事的には全く問題にならないということは到底人々の了解が得られる筋合いのことではありません。
だからこそ、故意または故意と同視すべき犯罪がある場合は別だと皆さんが言うのはそこにあると思うのですが、その判断を速やかにするという仕組み、どうやってつくっていくのかということですね。私は、第三者機関に全て届け出ると。まず、報告がなければ調査に入れませんので、報告を網羅的に広く吸い上げるという抽出力を、国家としてこの種の問題について抽出力をしっかりと報告という形で上げていって、そして、その中で、これはきちっと調査しようというものは調査していかなければいけない。調査をして初めて、故意、重過失等の色彩がわかってくる、そういう性質のものだということですね。
その間に、解剖のタイミングとか葬儀とかいろんなことを遺族は抱えるわけですから、そのことを無視して議論はできません。ですから、ある意味で、その間に解剖という手続を入れる以上は、速やかな判断が時間との勝負で必要になる場面に直面するのだということですね。
永井さんの都立広尾病院事件のケースでも、もし荼毘に付されていたら証拠はかなり消えてしまうという問題だっただろうと思いますので、そういう意味での解剖の大切さとか、いろんなことを認識して制度整備を一方に図っていくということでなければいかんと思います。
以上です。
●山本座長
では、鮎澤構成員、どうぞ。
●鮎澤構成員
申しわけありません。私、きょう最終便で帰らなければいけないので、ちょっとお尻がむずむずしております。せっかく九州から来ましたので、ちょっと今の議論の流れに水を差すことになるかもしれないのですが、済みません、言い置かせていただきたいことが4点ほどあります。簡潔にします。
まず1点目、先ほど本田構成員から、誰が決めるのか、特に患者さん御家族に疑念があったときが心配だということをおっしゃっておられましたが、ここでどういう議論をしても、疑念を持たれた患者さん御家族が御自身で警察に、このときの用語というのは告訴になるのでしょうか、告訴することができる権利というのはずっと残っているものだと認識しています。それが間違っていないかどうか、改めて御意見を聞かせていただきたいと思います。
それから2点目、きょうも過失なのか重過失なのか故意なのか悪質なのかという議論が出てきています。恐らくこれはどう定義しても定義し切れないし、どんなに例を挙げても、ではこういう場合はどうですかと言って、また議論になっていくと思います。そもそもそうした判断を司法の手に委ねるのではなくて、「医療者が」と言いません、「医療者が中心となって」判断をしていこうというのがこの第三者機関を設置していくとても大事な目的だったと思います。そこのところに改めて立ち戻って議論していくことが必要なのではないかと思っています。
そして、少し先の議論になるのかもしれませんが、2点ほど。まず1点、これは意見なのですけれども、実はきょうの「捜査機関との関係について」というテーマについては、捜査機関と第三者機関の関係についてなのか、捜査機関と院内調査の関係についてなのか、捜査機関と調査経過の関係についてなのか、捜査機関と調査結果についての関係なのか、いろんなスキームがあって、そのマトリックスの中で議論していかないと実は精緻な議論というのはできないのだと思っています。
ただ、そこまでやるかどうかは別にして、きょうの議論の中で必要なことがいろいろと見えてくるのだとは思っていますが、第三者機関がどのようなかたちになろうが、院内調査は大事だということではおおむね議論が集約しているのではないかと思います。
そのことに絡めてなのですが、病院で事故が起きると公表します。公表すると、おのずと警察が知るところとなって、お問い合わせが入ります。先ほど、見守るというような対応をしてくださるということも出てきた。確かにそのとおりなのですけれども、直ちに事故調査委員会を立ち上げて、院内で事故調査をしていこうとするとき、例えば最近の医療材料、医療器具で起きている事故などは、事故によっては、物性の検証、力学の検証で医療材料等を切り刻んだりしなければいけないことになる。そうすると、将来的にこれは捜査妨害と言われるのだろうか、それから証拠隠滅と言われるのだろうかと心配になるわけです。院内の事故調査においてそういった危惧なくできるような環境整備をどのようにつくっていけばいいのかということもぜひ御議論いただきたいと思っています。
そして、もう一つお願いしておきたいことなのですけれども、実は消費者庁がされておられる事故調査がとても気になっています。これだけ医療事故の調査の議論をしながら、あの法案は何か脇をすっと抜けて成立していったという感じがあって、気がつくとあの中に医療も入っているという感じがあるからなのです。
実際、私たち、事故の公表をしたときに、消費者庁から問い合わせが入って、なぜ消費者庁から問い合わせが来るのだ、あっ、あの法案が通過したからだということを体験しました。消費者庁の調査の中における医療事故の調査をどのように検討しておられるのかについては、またいずれどこかで伺いたいと思いますが、医療事故以外の、いわゆる事故調査と消費者庁の、その経過、結果に関する捜査機関の関係についてどのように整理しておられるのか、一度参考のために伺いたいとも思いますので、どこかで機会をいただければと思います。
以上です。済みません。お時間をいただきました。
●山本座長
消費者庁との関係は、コメントがもしあれば。
●吉岡総務課長
消費者庁とも相談しまして、次回以降、対応を検討したいと思います。
●山本座長
豊田構成員、どうぞ。
●豊田構成員
私は、きょう、加藤構成員がおっしゃったことと、ほぼ同じ意見です。実際に患者さんが亡くなったときに、そこで、これは故意だろうとか何かとはとてもその場で判断なんかできるはずがないので、それを今ここで議論されても、本当にそれは、もしそういうことをいろいろ細かくまとめられるとしたら、逆に御存じない方の発言なのではないかなと思ってしまうぐらい、本当に大混乱の状況だと思いますので、やはり第三者機関をつくっていただいて、きちんと届け出る仕組みをぜひつくっていただきたいと考えています。
その仕組みをしっかりつくらないことには、第三者機関に届出をすれば警察のほうに届け出なくもよいと、いったことを改定していくことにはならないと思っていますので、ぜひ第三者機関をしっかりつくっていくというところにまず議論を持っていっていただきたいということを強く願っています。
●山本座長
どうぞ。
●中澤構成員
第三者機関の重要性については、私も重要な点だと思っておりますので、これはやはり、今のどういうものを診療関連死として扱うかということの問題の中で討議されるような問題ではないと私は思うのですね。今、加藤先生の話の中で、ぜひ御理解いただけたらありがたいと思っているのは、要するに犯罪と一般の医療行為とは物すごく正反対な医療行為なわけですよ。その正反対の医療行為の中で医療者の犯罪が疑われるという形で物事が進むと、もうふだんの診療行為は全部だめになります。信頼性において動いているのが医療ですので、その信頼ということの中で、私たちがふだん考えてもいない犯罪のことまで一つのものの中に入れて議論しなければいけないということそれ自体が、もう本当にどうしていいかわからない、恐らく医療全体の大混乱に私はなると思っているので、これはやはり議論の中からは外してほしいというのが私の考えです。
ですから、ふるい分けをするのなら警察でやろうが、第三者機関で扱おうが、それは同じことだと思います。ふるいを広くかけて、その中から悪いものを取り出すのだという手法は、ふるいの中に入る人は全部疑いをかけられて入るわけです。その中から、あなたは大丈夫、あなたは故意というふうに持っていくというのが、広く網をかけて審査するというやり方ではないかと思います。そうすると、診療関連死は、最初から過誤が問題だとわかるものもあるし、過誤と言っていいかどうかもわからないものも含まれています。全部それを一緒くたにしてやるということについては、ふるいをかける側に立てばこれほど都合のいいことはない。だけれども、ふるいにかけられるほうの立場から考えると、これはやはり人権の侵害と無関係ではないのではないかと私は考えます。
あともう一つ。済みません。ちょっと出てこないので。
●山本座長
宮澤構成員、どうぞ。
●宮澤構成員
犯罪という言い方をすると問題なのかもしれないですけれども、通常の医療の中で犯罪行為というのは出てきてしまう可能性がある行為だと思うのです。例えば安楽死なんていうことを考えてみると、通常で何か物を盗るために人を殺し合うというのと明らかに違います。ただ、それを医療者どう見ているかというと、本当に苦しんで苦しんで、何とかしてあげたいという中でそういう道を選んでしまったということだってもちろんあるわけですね。そうすると、それが通常の、何か物を盗るために人を殺したのとは違うのですけれども、ただ、結果だけを見ると、故意犯というのもどうしても混じってくる可能性はある。だから、それを分けながらやるというよりも、やはり全体を見ながら、紙一重というところをきちんと理解した上で、全体を第三者機関のほうに委ねるということを考えておかないと、どこかで区別つけるというのはなかなか難しいと思います。それは今の段階では非常に難しいのではないかなと思っています。
●山本座長
どうぞ。
●有賀構成員
多分、中澤先生もおっしゃりたかったことだと思うので発言します。
今の宮澤先生のおっしゃっていることは、法律家としては多分正論なのだと思いますけれども、医療者はとてつもなくたまらない。このような情緒的な言い方しかできない。それが私たち医療者の本音です。ですから、その本音を無視するような形で論理的にものが進んでいって、こうですよとなったときに、恐らく医療はだめになります。これは法律の方たちの論理の外に情の世界をきっちり入れておいていただかないとどうにもなりません。
加藤先生がおっしゃったみたいに、たくさん集めて、そして、よし、よし、よし、ペケというふうな形をもしとるならば、そんな業界に私たちはもう働くことをしません。これは全くそのとおりです。これは嫌なのです、そんなものは。好きかどうかという、論理的におかしいんだ、おまえと言われたら、ああ、そうですか、仕事変えましょうとなりますよ。それから、医学部なんか誰も来ませんよ。人を助けようとみんな医学部へ来ているわけですから。ですから、そのようなことを丁寧に見ていただかないと、国民の数から医療者を差し引いて、あと残りで多数決してみろ、おまえら負けるではないかと言われているのと全く同じですよ。そんなことのためにここに集まっているわけではないのですよ。
加藤構成員が言われた中で、警察に届け出ると。これはもう所与のテーマとして届け出ることになっているわけですね。で、届け出た。そして見守ってもらっているということですね。その見守りはなぜ起こったかというと、医療機関がきちっとやっているというようなことがあるから見守るわけですね。だから、話の筋の原点はそこから出発するわけで、第三者機関の話はその次のステップのはずなのですよ。そこのところをよくわかっていただかないと、現場の医療者は、いつも宮澤先生に助けていただいていますけれども、法律の理屈だけで全てが転がってはいないのです。その部分は、中澤先生一生懸命言われていると思いますし、恐らく医療者はみんな思っていると思います。本田構成員の主治医も、恐らくそうやって一生懸命やったのだと思います。
だから、最終的な一番大事なポイントは現場なのですね。それをわかっていただかないといけない。だから、第三者機関はそういう意味では警察のかわりにとかいう議論になりますけれども、警察はそもそも届け出ることになっているというのが今のテーマで、さっき座長は、別の判例が出ればと言いましたけれども、その判例は、第三者機関に届け出たと。だけれども、警察に届け出てなかったではないかという話が、最高裁判所で第三者機関でOKよねというふうにならないとルールは変わらないと考えるのが筋だと私は思いますね。
ですから、今は警察にとにかく届け出る。でも、それはそれとして、きちっと中でやる。そのやるという話を、届け出られた警察が見守ってくれるかどうかというところがとりあえず今のタイドロープですね。僕はそのように理解していますけれども、ちょっと反論してください。
●山本座長
御指名です。
●宮澤構成員
基本的には、私も冷酷な法律家というわけでなくて、どちらかというと医療は今非常に難しい立場にあって、非常に大変なところに立たされていることはよくわかっているつもりなのです。だからこそ、こういう形で何か新しい立法とか新しい政策というものの中でその救いの場を求めていく。きちんとした医療者と患者との間の、一般国民との間で信頼をつくりたい。そのためにはどうしたらいいのか。刑事法というのが関与している間というのはなかなかそういうのは難しい。「全部言ってください、本当のことを」と言いながら、その後、「手が後ろに回りますよ」と言われて、なかなかそんなこと言えるわけがない。そういう意味では、どうやったら信頼をつくられて、医療者も十分な医療行為ができて、国民もきちんとした診断ができるかということを私ももちろん願っています。
ですから、反論というのではなくて、医療者の思いというのは、もし法律家に伝わってない、私は伝わっているかなと思ってはいるのですけれども、もしそうであるとお感じになるのだったら、ぜひたくさんのことを発言していただいて、私も含めてさまざまな法律家、あるいはもっと、その後ろにいる国民全体に理解できるように発信をぜひお願いしたいと思います。口は1つですけれども、耳は2つありますから、倍聞こうと思っていますので。
●山本座長
高杉構成員、どうぞ。
●高杉構成員
医療には納得と説明と同意という言葉がありますけれども、これは不幸な経過をたどったところでもやはり十分な説明と迅速な対応が必要なのですね。だから、当初に私たちは基本的提言をお見せしましたけれども、全く現場が、院内事故調がまず基本なのです。そこで納得されたら、それは問題ない。しかし、患者さんたちは初めて遭遇する不幸な出来事には激昂もし怒りもし悲しむ。それを寄り添って説明できるかどうか、これはまさにプロの技だろうと思うのですけれども、それをきちんとしないから警察に行く。あるいは訴訟になる。しかし、それをきちんとやれば、その積み重ねが、私は全て解決の道へつながるだろうと思います。
しかし、そのときに、やはりそうだよなというときには、今度、分析と収集と、それで予防につなげるのは第三者機関がないとだめだよと。だから、広く集めるといっても、加藤先生言われますけれども、そうではないのだろうと僕は思うのですよ。きちんと説明ができればそれでいいし、納得されればいい。きちんと我々は予測できた死であっても、患者さんが不満に思えば、これはやはり第三者の調査機関は要るでしょうし、医療者の、我々は予測したといっても、患者さんにとっては予測できない場合がしばしばある。そういうことをきちんとやっていく。だから、医療機関が性悪説と見られるのならこれはもう仕方ないですけれども、みんな一生懸命努力している。その中でできた不幸な結果をどのように対応するかということで我々は頑張りたいと思いますしね。
もう一つ、検死、検案のことが出ましたけれども、私は今、脳死検証委員会に出ています。これは、医療が十分にされたか、御家族が納得されたか、あるいは臓器提供の手続がどうだったか、その後のフォローはどうだったかきちんと検証していますけれども、その中に、事故とかいわゆる検死が必要な場合には必ず、例えば崖で落ちた、救命されたのだけれども脳死の提供に至ったという場合には、きちっとそれは検死が入ります。今の死因究明法案の2法案は犯罪死を見逃さないという法案ですね。その中に医療関連死はとにかく外してくれと。我々はちゃんと、これは警察が入っても救命できないからということで、医療関連死に関しては我々が調べさせてくれということを述べて、外していただいた。あるいは、いわゆる死因究明法案では、医療は外す、医療関連死は外すということの経過に至ったということも御承知おきください。
●山本座長
どうぞ。
●飯田構成員
幾つかあるのですが、まず、加藤構成員がおっしゃったように、故意、あるいは過失もたくさん出ておりますけれども、それを言い始めると、どの分野にもいらっしゃるわけで、例えば、言いにくいことですが、法律家にもたくさん悪い人いますし、行政官にもいますし、マスコミにもいますので、だから広くやれと言われると、ちょっとやってられないのです。はっきり言って。明確にしていただきたいということです。
それから、さっきから広尾最高裁判決のことがずっと盛んに出ているので言いたくなかったのですが、あえて言わざるを得ないので言わせていただきます。私は、あの判決は医療者の人権侵害のおそれがあると、疑いあると非常に思っています。ちょっとメモを見てお話ししますけれども、判決も全部読んだわけでないので、一部しか読んでないので、もし違ったら言ってほしいのですが、ここに書いてあることは、「届け人と主体とのかかわり等、犯罪行為を構成する自己の供述までも強制されるものではない」と言っているのです。一方では、「医師に一定の不利益を負わせる可能性があるとしても、医師免許に付随する合理的根拠のある負担として許容される」と。わけわからないです。だから、憲法38条違反でないと。診療契約するということは、これを認めたことになるということです。そんなことを認めた覚えないのですが、ここまで書かれてしまうと、私はこの判決文見て、もうプッツンしまして、有賀委員おっしゃったけれども、私も、医師をやめようかと思いました、このとき本当に。これがまかり通ったら、本当に医療従事者、いなくなります。
私は、この年ですから我慢してやっていますけれども、これを知ったら、本当に、若い人は医療部門に入ってきません。きちんとやってほしいです。私たちも人権があるということを改めて申し上げたい。もちろん、患者さんにも人権あります。同じなのです。私たちも、患者さんに悪かろうと思ってやっているわけでないのです。
もう一つ言いますと、シドニー・デッカーの『ヒューマンエラーは裁けるか』という本もありますが、どこまで裁いていいのかということは問題です。今度、イタリアの地震予知でも、禁固刑です。あれでいいのでしょうか。あれと同じことが医療にも起こっているのではないかと非常に私は恐れます。
以上です。
●山本座長
加藤構成員。
●加藤構成員
有賀構成員が、自浄作用という言葉だったかと思いますけれども、要するに、非常に医療の世界で、ピアレビューというか、同僚評価、あるいはプロとしてのオートノミーすなわち自律的に、要するに客観的公正にレビューするということがとても難しいことであり、そのことが国民との信頼の中で問われているのだろうと私は思ってずっと見てきたわけですね。ですから、そういう意味では、生き生きと医療に携わる人たちがやりがいなり何なりを持って仕事に励んでいただきたいと心から願っているわけですが、一面において、山本病院事件のことだとか広尾病院事件のことだとか出ました。やはりそういう、事実、社会で起きていること、山本病院事件というのはそんなに古い話ではなくて、2006年ですから、平成18年の出来事ですね。そういう時期に、人体実験ではないかと思われるような興味本意の、非常に粗雑な医療が展開されていると。
大事なのは、そうした問題というのは、医療の世界では多分、この病院の周辺とかそういうところでは、あの病院はちょっと問題ありということはその前から指摘されたりしていただろうと思うのですね。そういうことに対して、医療界というか、そういう世界がきちっと、大きな問題になる前に、自浄作用を発揮できる仕組みがあるのかとか、そういうことまで私はこの際医療の側の先生方にはやはり考えてほしいと思っています。学会とか地域の医師会とかいろいろなところで、本当に問題があるなあという場合に、ピアレビューというのをきちっとやれる文化というのを育てていかないと、この医療事故に係る調査の仕組みを私たちがどのようにつくっていっても、最後担うところの中心にそれぞれの医療職の先生方の尽力というのがかかわってくるわけですから、そこのところはやはりプロとしての仕事をしっかりとしていただきたいと思っているわけです。
以上です。
●山本座長
どうぞ、中澤構成員。
●中澤構成員
今の御指摘、非常に大切なことだと思っていて、恐らく第三者機関とかいろいろな仕組みだけでは解決できない問題だと思いますので、これは恐らく医の倫理を一つのところでまとめられない今の医療の問題の点の一つだと思うのです。これはやはり患者さんの立場に立つということを、要するに患者の権利の立場に立つ、擁護の立場に立つということが前提にならないと始まらないと思うのです。
そのときに、過誤の存在とかそういうことを防止するという形でかなり責任追及的な仕組みが出てきますと、恐らくピアレビューというのは逆な方向にいってしまう。例えば、こういうことを言われるからこれを言ってはいけないよ、こういうことを言われると突つかれるからこういう記載はやってはいけないよとか、そのように防衛的な問題にいきそうな気がするのです。
ですから、あとの再発防止というところで私もまた意見を述べさせていただきたいと思いますが、理想的には、医療が患者さんのためになるよということをやはり宣言しなければいけないと思うのです。その宣言の中で、全てをやるということを同じ職場の人たちの意見として共有することだと思います。それから、もし責任追及ということがなければ、かなりピアレビューというのは楽になります。というのは、ピアレビューは、今おっしゃっている中は、恐らく誤りに学ぶということで、誤りの存在を認めないと話が進まないという状況の中でいきますので、そこで責任追及というのが出てしまうと、これはやはり同僚をかばうとか、あるいは病院としていろんな思惑が出てきて、それを議題に乗せないという動きになっていくと思います。私は一番それが問題だと思っていますので、真剣に医療機関としては考えていくような話になると思います。ただ、いろいろな責任追及の仕組みが確立されていくことでそれが解消するかというと、それは逆な話になっていくのではないかと私は思います。
さっきお話ししようと思って言えなかったことなのですが、広尾病院事件、それからいろいろな事件、山本病院の事件もありますが、これは同業者としては認めないという形をやはりとらないとまずいと思うのですけれども、ただ、それが今までできてないということが問題で、これが今私たちの非常に苦しいところなのです。ここにスポットを当てられていろいろな仕組みをつくられていくと、もうがんじがらめになって、改善の余地は残されなくなってきてしまうだろうなあと思っています。私は、今、院内調査というところに重きを置くという動きで動いておりますので、これを充実させて、いかに患者さんの理解が得られるような形で公平なものができるかどうかということが問われると考えておって、そのときにはやはり議論の対象を犯罪まで広げてほしくないなということを私は言いたいわけです。そこまでいくともっと複雑になってしまって、その議論が行われなくなるだろうなあという感じがしているので、ぜひその辺も今後議論の中で御理解いただきたいと思っております。
●山本座長
どうぞ。
●豊田構成員
立場が違えばきょうのようなお話になって当然だとは思うのですけれども、とはいっても、ではどうすればいいのというところで、私はきょうのお話を聞いていると、このままではとてもまとまるとは思えなくなりました。結局のところ、そうすると、医療を代表している側の立場の皆さんは、院内の事故調査をメインにということで皆さん同じ考えということでよろしいのでしょうか。
もしそうだとすると、ある程度、こういった体制がいいのではないかという仕組みを明確に出していただかないと、これやられたらたまらない、これやられたら困るとか、それを両側で言っていたら、このままでは本当に延々に決まらないと思いますので、患者が理解できるような、ある程度納得できるような仕組みをもう少し医療界の中でまとめていただかないと、皆さんの御主張はわかるのですけれども、患者の権利の話ばかり私たちがしても仕方ないかもしれませんし、医療者の皆さんが、こんなことされてもたまらないという話をされても、このままではとてもまとまるとは思えませんので、そうであれば、中澤構成員がこうやっておっしゃってくださっているわけですから、ある程度、こういった形で院内の事故調査をつくっていく仕組みができれば、警察の届出とかそういった問題についてもある程度解決していく仕組みができるのではないかと私たちも理解できると思うのですけれども、今のままだととても理解できないので、何かしらの形で示していただきたいのですけれども。
●山本座長
山口構成員、どうぞ。
●山口(育)構成員
これまでの議論では、まず院内調査が大事であって、それだけでは納得が得られなかったときに第三者機関という話が進んでいたと思うのですね。今日の議題に「捜査機関」が出てきたことで、先ほどから責任追及という言葉も出てきていると思います。これまでの議論のまとめのところを見ても、最初にこの調査を行う目的については、医療安全と質の向上であることは、一致したと思うのですね。
ですから、もう一度その基本に立ち返って、多分、捜査機関の話題が出てきたことで責任追及云々の話がきょうは議論になっていると思いますけれども、ぜひ一歩進めるためにもう一度目的のところを改めて、医療安全と質の向上なのだということを前提にして議論を進めていただきたいなと思います。
●山本座長
どうぞ、飯田構成員。
●飯田構成員
いや、全然進んでないのではなくて、今の山口委員と同じことを言おうと思ったのです。きょうの議論は捜査機関との関係を議題にやっているわけです。だからこういう話なのです。既にもう院内調査もやるし院外もやると、私も全日病の意見を出して説明しています。ほかの病院団体も出しています。それに対してはほとんど一致しているわけです。きょうはそれを踏まえた上で捜査機関との関係に絞って話をしているわけですから、全然食い違っておりません。
●有賀構成員
全国医学部長病院長会議の大学病院の医療事故に関連する委員会の委員長をしています。このようなところの議論を踏まえて会議の中での委員会をしますと、今言われたように、21条の問題をテーマにすると、やはり全体の議論が違うところにいってしまうことはもうしようがない。だから、捜査の話は一旦切り離して、そして、医療安全の件を議論しないとやはりいけないのではないかというようなことを言われている委員もいて、みんなが、そう言われるとそうだよねということだったのです。
だから、きょうの議論を聞きながら、まとまることをまとめないという問題ではなくて、21条の議論はちょっと横に置いておかないと話は多分また迷走するのではないかなということを感じていました。医学部長病院長会議の中では、会議として決をとったわけではありませんが、論理的に考えていくとこうなるざるを得ないよねという意見を言っておられる方がいましたので、ちょっとここで意見として出しておきます。
●豊田構成員
ごめんなさい。私の言い方もよくなかったのだと思いますけれども、院内の事故調査を基本にという考えはわかるのですけれども、そうすると、最初の届出の部分に関してのところがどうなるかというところで、先ほどの解剖のことも含めて、すぐに判断しないといけないことがあるので、届出をどうするかという話になると、21条ということになってしまうのかもしれませんけれども、最初のところでどうするかというところがまとまってないように私には聞こえてしまうのですね。だから、院内の事故調査をやるとすると、全くどこにも第三者機関にも警察にも届出をしないで院内の事故調査をやるということだと、それでいいのかという疑問が私たちの中には残るということなのです。
●山本座長
どうぞ。
●有賀構成員
今の日本国の法律は警察に届け出るということになっているということを理解したのです、私は。
●豊田構成員
そのままでいいということですか。
●有賀構成員
そんなこと言っていませんよ。今はそうだと言っている。だから、どうしようかという話なのだけれども、そのときに罰を加えるという話が入ってくると、このようになるよねということについて、医学部長病院長会議の中での議論でも同じだと言っているわけです。
●山本座長
では、宮澤構成員、手短に。
●宮澤構成員
手短に。要は、医療の安全とかそういうものを考えていくのは当然のことで、それをどうやって現実的に十分なものにするか。警察が入ってきて、捜索差し押さえ令状で医療の記録や何かをがさっと持っていって、その後調査がちゃんとできるかというと、これはもうできないと思うのですね。だから、そういうことの関係をどうするかというのはこれからの問題で、それをやるためには医師法の21条との関連をどうしておくかということもやっておかなければいけない。こういう観点からもの全体を見ていくべきだと思います。
●山本座長
非常に活発な御意見をいただいて、恐らくこういう御議論になるだろうと予想はしていましたけれども、この段階でもちろん何らかの、この問題についてまとまったことが、結論を得られるわけではないだろうということは予想されていたところであります。本日は皆さんから、とりあえず全員の方の御発言をいただけたと思いますので、御意見を出していただいたということにさせていただいて、次回、事務局がこれを四角でどのようにまとめるかというのは考えるだに大変そうではありますが、まことに申しわけないのですが、積み残しで、この再発防止の点につきましては、次回にこれも回させていただきたいと思います。ですから、次回は、冒頭で恐らくこの再発防止の問題を取り扱っていただくということになろうかと思いますが、どうぞ。
●中澤構成員
ただいま豊田委員からお話がありました、幾つかの案ということを言われたのですが、恐らくそういうのが書かれてないと、何を言っているか御理解をいただけないと思うのですが、それについて、私は代表するバックグラウンドはないのですけれども、こんな仕組みでどうなのかみたいなことは、私はちょっと代表するバックグラウンドはないのですけれども、提案させていただくということは可能なのでしょうか。
●山本座長
それは、御意見として紙の資料として出していただくということはもちろん可能だと思います。
それでは、よろしければ、あと、事務連絡とかもしあれば。
●川嵜室長補佐
本日は特段ございません。
●山本座長
それでは、本日はこれで終了したいと思います。長時間にわたる御議論、ありがとうございました。
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この記事へのコメント
幻冬舎から、“介護経営黒字化の極意”と言う書籍が出版されています。
杢野暉久著
“介護報酬削減、要介護認定の引き下げ、10年後には、社会福祉法人の5割は破たんする”
という内容だそうです。
これ以上、在宅死が増えると、施設も大変に、なるから、従来認めて来た在宅死も、制限されるという事情じゃないでしょうか?
厚生労働省は、在宅医療と、施設医療のどっちを採る方針なのでしょう?
私自身は、死後、遺体解剖されても、在宅死の方が良いと思います。
Posted by 大谷佳子 at 2014年05月02日 03:33 | 返信
警察と違って(?)、ここまで議論が可視化されているのは素晴らしいですね。
内容については、再読・再々読しないと語れませんが。
ところで医療がらみと言うだけのつながりなのですが
今夜のテレビ東京番組WBSの中で、ロバート・A・フェルドマン氏が
「延命治療は自費診療で。メタボ検診で指導されても二年間改善できなかった人は
保険料負担率UP」という個人意見を出していました。
キャスター「えっ 厳しいですね」
私もこの意見の前半は同じこと考えていて、後半も(多分私は保険料率UPだなと
悲嘆にくれつつも)モチベーション上がること必至、と拍手しました。
でも週刊誌では、これまでのメタボ検診の数値は医者と製薬会社の陰謀で
例えば血圧は年齢+90までが正常値と言う過去の数値のほうが適切と。
確かに年齢によって血管も変化するのだから、と説得力感じつつも
イヤ今度の数値見直しは、人体実験なのかなあ・・・なんて。
Posted by 梨木 at 2014年05月03日 01:17 | 返信
実父母、養父母とも在宅死でした。実父母の時は、親戚の男子全員がパンツ一丁になり総出で湯灌したものです。養父の時は、前夜薬を処方していただいたかかりつけ医が、警察に連絡したので、深夜おそくまで検死ということになりました。ぼくも養父のごとく、いずれひとり死を迎えることになります。ヨーガマントラ宗祖・空海のごとく即身成仏できればいいのですが。
医師法21条をめぐる、厚生省の論議をざっと一瞥しましたが、どうやら有識者?だけで多角的に検討しつつ、ある方向に集約、誘導いくのでしょうか。
対象となる一般人は、生きている時もいつも受け身です。
心身に違和感を感じて受診した時も、医師に言われます。検査の結果、原因不明です。ストレスか加齢のせいでしょう。食事や運動を大事にネ。こうした診断では納得できず、症状に合うような疾病名をもらってやっと安心します。
反対に、精神分析の分野では、医師がいくつかの分類にあてはめたがります。今回の小保方氏への自己愛性パーソナリティ障害という決めつけもそうです。これは、香山リカさんが障害という末尾を抜いて発信したとたん、週刊誌が飛びつき、あっという間に全国に拡散しました。
1月31日のことですが、
記者会見以降、研究成果に関係ない報道が一人歩きしてしまい、‥‥プライバシーに関わる取材が過熱し、知人・友人をはじめ、近隣にお住まいの方々にまでご迷惑が及び大変心苦しい毎日を送っております。報道関係の方々におかれましては、どうか今がSTAP細胞研究の今後の発展にとって非常に大事な時期であることをご理解いただけますよう、‥‥長い目で見守っていただけますようよろしくお願いいたします。 細胞リプログラミング研究ユニット 小保方 晴子
というお願いが報道関係者にありました。
この時点では、小保方氏のSTAP細胞は空海とされ、山中氏のiPS細胞は最澄とされていたのですが。
どうでしょう。パーソナリティ障害には、自己愛性、境界性、演技性、反社会性、回避性などというのがあるそうですが、今や科学的?には病者オボカタにすべてあてはまるのでしょうか。
死刑囚として来る日も来る日も執行連れ出しの恐怖や無念のもとで、四十数年も幽閉されてきた袴田さん。警察・検察、裁判所、マスメディア、世間の十字砲火によくも耐えられてきたものです。人生と人格破壊の仕打ちからやっと解放されたの、つい最近のことです。
こんなふうにコメントする爺さんは、お偉い科学者の眼から観て、現代精神分析風にいうとどう採点していただけるでしょうか。
Posted by 鍵山 at 2014年05月03日 03:55 | 返信
私自身は、在宅死を希望していますが、母は、結論を保留しています(認知症と言われていますが)。
母は、祖母が看護婦だったので、病院にある種の尊敬を持っているのです。
でも、母が意識が無くなれば、私は、母の在宅死を希望しています。
それですから、母の遺体解剖を、監察医にしてもらいたいと希望しています。
でも、監察医の数が絶対的に少ないと言うので、待たされている間に腐乱するかも知れません。
それでも母の、在宅死を希望しています。
何でも、言ってるだけでは真実性が無くて、終わってみないと分かりませんけど。
細木数子さんでも、「いつどこで、どの様に死ぬかは占いはできない。希望する人には、お金を返すから、トットと、帰ってくれ!」と言っているくらいですからね。
Posted by 大谷佳子 at 2014年05月05日 01:01 | 返信
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