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近著「大病院信仰・・・」に関連した話題

2014年05月18日(日)

昨日、「大病院信仰」どこまで続けますか、という本が世に出たが
世の中の動きを見ていると、実にタイムリーだったと思っている。
それに関連した話題を拾ってみよう。
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初診料、全額自費も検討 紹介状なく大病院受診
       共同通信社  2014年5月9日(金)配信
 
 
 大病院を紹介状なしで受診する外来患者に対し、治療の初回にかかる初診料
や、再診料を全額自費負担とする案を、厚生労働省が検討していることが9日
分かった。現在は初診料2820円と再診料720円に公的な医療保険が適用
され、患者の窓口負担は原則1~3割になっている。
 
 田村憲久厚労相が記者会見で「いろいろな案の中の一つだ」と述べた。ほか
に窓口負担は現状通りとし、追加で1万円を求める案などが政府内で浮上して
いる。厚労省は年末までに具体案をまとめ、来年の通常国会に関連法案の提出
を目指す。
 
 紹介状なしで大病院を外来で受診した患者に負担増を求めるのは、軽症患者
の受診を抑制し、本来の高度な治療に注力できるようにするのが狙い。現在も
大病院では通常の初診料のほかに、別料金を求める仕組みがある。ただ実施し
ていない病院があるほか、徴収している病院も平均約2千円にとどまっている。
 
 昨年成立した社会保障制度改革に関するプログラム法には、新たな負担増を
求める方針が盛り込まれている。
 
 ※初診料と再診料
 
 患者が外来で初めて医療機関の診察を受ける時に請求されるのが初診料で、
治療の基本料金に当たる。簡単な検査や処置を含む診療行為への対価で、医療
機関の規模によらず2820円。診療所と、ベッド数20床以上200床未満
の病院では、2回目以降の受診から再診料720円がかかる。200床以上の
大規模病院には別に外来診療料がある。患者は1~3割を支払い、残りは公的
医療保険が負担する。

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初診料、全額負担に 紹介状持たず大病院受診 厚労省案
               朝日新聞  2014年5月9日(金) 配信
 
 
 厚生労働省は、紹介状を持たずに大病院を受診した患者に新たな負担金を求
める制度を、2016年4月をめどに導入する方針を固めた。初診時には現在
の初診料にあたる2820円を、再診時には再診料720円を、それぞれ患者
に全額負担してもらう案を軸に検討する。軽症で大病院に行く患者を減らし、
医師が高度な治療に専念しやすくするねらいだ。年内に具体案を固め、来年の
通常国会での法改正をめざす。
 
 一般病床の数が400以上の病院では、紹介状を持たない患者が外来の8割
を占める。患者が集まる大病院は多忙で、本来の役割である重症患者の治療に
医師が専念しにくくなる。紹介状なしの患者に上乗せで負担を求めるのは、受
診のハードルを上げ、こうした状況を改善するためだ。
 
 厚労省は近く審議会で具体案の議論を始める。検討の軸とするのが、初・再
診料分の金額を患者に負担してもらう案。今は初診料が2820円、再診料は
720円だが、公的な医療保険が適用され、患者の負担は3~1割で済む。こ
れを診療報酬とは別の料金にし、10割分を自己負担にする。
 
 ベッドがいくつ以上の病院を対象とするかや、救急の患者を対象外とするか
など、詳細は今後詰める。500床以上の病院は全国に約450カ所(全体の
約5%)、200床以上だと約2660(同約31%)ある。
 
 紹介状を持たない患者への定額負担の導入は、政府の社会保障国民会議が昨
年夏に提言し、1万円案も出た。厚労省では「1万円は高い」との意見が多い
が、特に大きな病院では実効性を持たせるため、初診料分の2820円より負
担額を重くすることも検討する。
 
 紹介状を持たずにベッド数200床以上の病院を受診する患者に対しては、
現在も病院が特別料金を徴収できる仕組みがある。金額は平均約2千円。ただ
し導入病院は半数に満たない。新制度が導入されると、大病院は一律、強制的
に特別料金をとることになる。
 
 大病院を直接受診しにくくなると、必要に応じて大病院を紹介できる診療所
や中小病院の役割が大切になる。こうした「かかりつけ医」を普及させるため、
診療報酬の優遇など支援策も進める方針だ。(高橋健次郎)

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総合診療医、「数と場の議論は外して」、丸山理事長
 
プライマリ・ケア連合学会学術大会、日医・大学との連携も強調
    2014年5月11日(日) 橋本佳子(m3.com編集長) 
 
 
 第5回日本プライマリ・ケア連合学会学術大会で5月10日、理事長の丸山泉氏
が講演、総合診療専門医の制度設計に当たっては、「数と場」という視点を強
調すると、専門医の質低下の懸念があることから、慎重に議論する必要性を強
調した。「総合診療専門医だけでは、プライマリ・ケアは担えない。また、医
師不足の地域、へき地に総合診療専門医を配置するという議論にも反対だ。数
と場の議論を外して、総合診療専門医は何かを一生懸命主張することが必要」
と丸山氏は訴えた。
 
日本プライマリ・ケア連合学会理事長の丸山泉氏。
 
 日本専門医機構がこの5月に発足し、2017年度から基本診療領域の専門医の
一つとして、総合診療専門医の養成が開始する予定(『日本専門医機構、正式
に発足』を参照)。総合診療専門医の制度は、2014年度中に決まる見通しで、
ここ数カ月が議論の正念場だ。
 
 日本内科学会をはじめ、関係学会が協議して議論を進めることから、丸山氏
はまず、「私たちが主体になって動けるものではない。(議論の)ボードメン
バーの一人でしかない」と断りつつ、「今の日本では、総合診療専門医を養成
すべき時期が来ているという認識では共通している」と述べ、日本プライマリ・
ケア連合学会の家庭医療専門医に近い形にするよう働きかけていくとした。家
庭医療専門医については、日本専門医機構が検討を進める総合診療専門医と、
研修領域や期間などを併せたプログラム「Ver2」の運用を、2014年度から開始
している(『総合診療専門医の医師像を決定 - 吉村博邦・北里大学名誉教授
に聞く』を参照)。
 
 丸山氏が言う「数」とは、総合診療専門医の養成数。超高齢社会を迎え、プ
ライマリ・ケアへのニーズは高まるものの、総合診療専門医に限らず、プライ
マリ・ケアのマインドを持った医師が幅広く担うべきというのが、丸山氏の基
本的な考え。30万人を超す日本の医師のうち、日本プライマリ・ケア連合学会
の会員医師は約1万1000人。うち同学会が運営するプライマリ・ケア認定医は、
2014年度だけでも約3000人が誕生するが、家庭医療専門医は400人弱にとどま
る。
 
 「数の話が優先されると、専門医が守るべきものが危うくなる。スタート時
期であり、質を落とすべきではないと主張していく。総合診療専門医を、『簡
単な初期医療ができる医師』などという捉え方をされると、容易に養成できる
と考えられてしまう。今までないジャンルの医師を養成する際には、丁寧さが
求められるが、そうではなく数の理論を追求されると、専門医の質が低下する
懸念があり、私たちが全く考えてきたものと全く違うものになる」と丸山氏は
訴えた。総合診療専門医の要件についてはハードルを下げずに設定することを
求めると同時に、他の専門医からの総合診療専門医への安易な移行措置を設け
ることをけん制しているとも受け取れる発言だ。
 
 一方の「場」とは、総合診療専門医の活躍の場。へき地や離島などが想起さ
れがちだが、「日本で今後、最も大きな医療問題を抱えることになるのは、東
京などの大都市」と丸山氏は指摘。へき地等に限らず、急速に高齢化が進み、
かつ多数の高齢者を抱える都市部など、多様な地域で医療を担うことを想定し
て、総合診療専門医の議論を進めることが必要だとした。
 
 さらに、丸山氏は、「この数年間は、(3学会を統合して誕生した)日本プ
ライマリ・ケア連合学会の運営を軌道に乗せることに全力で邁進してきた」と
し、今後の課題の一つとして、医師会との連携強化を挙げた。「医師会との連
携があってこそ、日本のプライマリ・ケアの強化が実現できる」と指摘、「日
本の喫緊の課題として突き付けられている地域包括ケアを実現するためにも、
日本医師会や各都道府県医師会と協議の場を設け、取り組んでいく」とした。
そのほか、「日本の人口構成が今後、大きく変わる。日本がどう乗り切るかが、
諸外国から注視されている。学会としても何ができるかを考えなければいけな
い」とし、プライマリ・ケアの研究などにも取り組んでいく方針を示し、その
ためには大学との連携も重要になるとした。
 
丸山泉氏は、講演で『The sound of a wild snail eating』というノンフィク
ションを紹介。
 
 講演で丸山氏は、『The sound of a wild snail eating』(Elisabeth Tova
 Bailey著)という本も紹介。難病に苦しみ、悶々とした療養の日々を送って
いた著者が、カタツムリとの“対話”をしながら、次第に自分を取り戻して、
生きる力を回復していくというストーリー。カタツムリの役割を果たすのが家
庭医(総合診療医)する丸山氏は、「こうした点が今の日本の医療に欠けてい
るのではないか。そこを何とかする必要があるが、こうした言語化しにくい領
域が家庭医に含まれている。コンピテンシーを示しても、なかなか理解しても
らえず、我々は難しい局面に立たされていることを理解しなければいけない。
患者と対話しつつ、新しい世界を切り拓いていくしかない」と述べ、国民や医
療者に家庭医(総合診療医)への理解を得るには、現場での取り組みこそが重
要だとした。

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5/14号 大病院の外来制限、活発化の様相
 
2014年05月14日 (アクションとは)
 
 2014年度診療報酬改定のキーワードは、入院、外来ともに、機能分化。m3.c
om意識調査で、外来の見直しについてお聞きしたところ、「実施」と「実施予
定」の合計は、病院勤務の医師で約35%、診療所勤務の医師で約23%に上りま
した(Q1、詳細な結果はこちら)。医師個人への調査のため、施設別データと
は言えないものの、外来の在り方を見直す動きが始まっていることが伺えます。
 
 特に500床以上の病院の場合、紹介率・逆紹介率の要件を満たさないと初再
診料が下がる設定となりました(『大学病院の紹介率、「50%以上」』を参照)。
地域での紹介率・逆紹介率をめぐる動きについては、「活発化したと思う」と
「ある程度、活発化したと思う」は、医師会員の回答で24%(Q2)。東京など
では、大病院を中心に、逆紹介を進める動きが出ており、この辺りは地域差な
どもあるようです。
 
 紹介率と逆紹介率が低い500床以上の病院では、長期処方も制限(『500床以
上の長期処方制限、例外は7分類』を参照)。この関連でお聞きしたところ、5
00床以上の病院に限らず、500床未満の病院や診療所でも、生活習慣病患者の
処方日数を見直す動きが見られます(Q4)。
 
 今改定で注目される新点数が、主治医機能を評価する「地域包括診療料」と
「地域包括ケア加算」(『主治医機能、月1万5000円で評価』を参照)。「届
出済み」「届出予定」は、診療所勤務の医師で、計27%(Q3)。これらの点数
が今後、どの程度普及するかを聞いたところ、「普及すると思う」「ある程度、
普及すると思う」は医師会員の約2割、医師以外の会員の3割弱と、いずれも少
数派(Q4)。両点数については、「要件が厳しい」との指摘もあり、今後普及
するか否かは、次回改定で点数や要件がどう見直されるかにもかかっていると
言えます。
 
 4月からの消費増税に伴い、初再診料や入院基本料がアップ。患者負担も増
加するため、その周知のポスターを掲示する医療機関も見られました。実際に
は、「患者から説明を求められた」と回答したのは、少数にとどまり、混乱は
少ないようです。
 
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専門医、統一的基準で認定へ 各学会の独自認定から移行
               朝日新聞  2014年5月7日(水) 配信
 
 
 内科や外科、小児科などの専門医を統一的な基準で認定する第三者機関、日
本専門医機構(理事長=池田康夫・早稲田大特命教授)が7日、発足した。2
020年度に新しい制度による専門医が誕生する予定。複数の病気を抱えるお
年寄りらを幅広く診療する「総合診療専門医」も新設される。
 
 機構は認定基準や研修プログラムをつくり、17年度から専門医の養成が始
まる。国家試験に合格し2年間の臨床研修を終えた医師が、内科や外科、総合
診療など19種類の基本領域から一つを選び、医療機関で3年間の研修を受け
て専門医に認定される。その後、希望者は、より専門的な領域(29種類)の
専門医の資格取得に進む。機構は、すでに専門医となっている医師らの資格の
更新方法も検討する。
 
 専門医は現在、各学会が独自の基準で認定しているが、質にばらつきがある
という指摘があった。このため、厚生労働省の検討会で議論し、第三者機関が
統一して認定する新制度に移ることになった。
 
 池田理事長は「医師の診療の質を向上させるとともに、患者にもわかりやす
い専門医制度をつくりたい」と語った。

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真価問われる専門医改革日本専門医機構、正式に発足
 
旧専門医機構は発展的解散へ
 
2014年5月8日(木) 橋本佳子(m3.com編集長) 
 
 専門医の認定などを行う第三者機関、日本専門医機構が5月7日発足した。理
事長には、池田康夫・早稲田大学特命教授(慶應義塾大学名誉教授)が就任(『専
門医の新機構、学会外したわけ - 池田康夫・日本専門医制評価・認定機構理
事長に聞く』を参照)。85学会が加盟する日本専門医制・評価認定機構は、5
月8日に開催する社員総会で、発展的解散を決議する見通し。解散が決まれば、
剰余財産等は日本専門医機構に継承される予定。
 
 日本専門医機構は、池田氏のほか、理事21人、監事3人で構成。社員は、日
本医学会連合、日本医師会、全国医学部長病院長会議の3団体で、四病院団体
協議会、公益財団法人医療研修推進団体、公益財団法人医学教育振興財団のほ
か、19の基本領域の専門医の各代表者も今後、社員として加わることになって
いる。
 
 日本専門医機構は、2014年度中に養成プログラムの評価・認定などの準備を
進める。2015年4月から初期の臨床研修を始め、2017年度から専門医研修を開
始する医師から新専門医制度の対象となり、2020年に同機構が認定した専門医
が初めて誕生する。対象とする専門医は、従来の18のほか、総合診療専門医を
加えた19の基本領域(『総合診療専門医の医師像を決定 - 吉村博邦・北里大
学名誉教授に聞く』を参照)。
 
 日本専門医機構は、2013年8月に、組織委員会を設置し、準備を進めてきた
(『「日本専門医機構(仮称)」組織委員会、トップは金澤氏』を参照)。基
本領域の学会が社員として加わるか否かなど、紆余曲折を経て、発足に至った
が、準備はこれからが本番だ(『「学会外し」の専門医制度、73学会が覆す』
などを参照)。注目の総合診療専門医についても基本骨格は決まったものの、
詳細は未定の部分も多く、既に専門医を取得している医師の移行措置や専門医
の更新の基準、サブスペシャリティの扱いもこれからの検討課題だ。
 
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

総合診療専門医の医師像を決定 - 吉村博邦・北里大学名誉教授に聞く◆Vol.1
 
他の専門医とは全く違う専門性を有する
 
2014年4月11日(金) 聞き手・まとめ:橋本佳子(m3.com編集長) 
 
 日本専門医機構の立ち上げに向け、「組織委員会」の下で準備を進めていた
「総合診療専門医に関する委員会」が3月28日、「中間まとめ」を行った。委
員長を務めた、北里大学名誉教授の吉村博邦氏は、「合意できた事項を取りま
とめた内容」と説明する。総合診療専門医の医師像のほか、初期臨床研修修了
者がすぐに総合診療専門医を取得する場合の研修プログラムの骨格などが合意
事項だ。一方で、既に他領域の専門医取得している医師が移行する場合の研修
プログラムなど、今後の検討課題は多々ある。総合診療専門医の制度は、最終
的には、4月中に発足予定の日本専門医機構の理事会と社員総会で決定する。
 吉村氏に、「総合診療専門医に関する委員会」の検討経緯や「中間まとめ」
の内容、今後の課題をお聞きした(2014年3月31日にインタビュー。計3回の連
載)。
 
――先生が委員長を務める「総診療専門医に関する委員会」が「中間まとめ」
を行いました。写真吉村博邦氏は、「総合診療専門医は、扱う問題の広さと多
様性が特徴」と説明。
 
 厚生労働省の「専門医のあり方に関する検討会」の報告書の重要な骨子の一
つは、専門医の認定は、学会と緊密な連携の上に第三者機関が行うこと、もう
一つは、総合診療医が基本領域の専門医として新たに位置付けられたることで
す(『「医師不足」消える、専門医制度の最終報告』を参照)。全ての医師が、
いずれかの基本領域の専門医の取得を基本とするとされています。
 
 第三者機関の設立準備に向けて昨年8月に、金澤一郎・日本医学会副会長を
中心に、組織委員会が発足しました(『「日本専門医機構(仮称)」組織委員
会、トップは金澤氏』を参照)。その下の委員会の一つとして、「総合診療専
門医に関する委員会」が設置され、その委員長として私が指名を受けたわけで
す(『「総合診療専門医」委員会、トップは吉村氏』を参照)。
 
 委員会は、総合診療に密接に関わる基本領域の学会や医学関連の団体の代表
者、医学教育や臨床の現場で実際に教育に従事している人など、計14人で構成
しました。昨年9月から計6回会議を開催し、3月28日に「総合診療専門医に関
する委員会」として、これまで合意できた事項と、今後、引き続き議論すべき
課題について整理したのが、「中間まとめ」です。28日の意見を踏まえて修正
し、委員会の委員の確認を経て、新たに発足する日本専門医機構に提出する予
定です。
 
 ただし、注意していただきたいのですが、総合診療専門医の在り方は、最終
的には新機構の理事会と社員総会で決定されるものです。また、関連学会との
調整が必要な事項も残されています。したがって、私どもの委員会が「中間ま
とめ」を行った内容がそのまま総合診療専門医の在り方として制度化されるか
どうかは分かりません。また、合意に至らなかった事項もたくさんあり、これ
らの点については、日本専門医機構内に設けられる、総合診療専門医に関する
新たな委員会で検討することになっています。
 
――「総合診療専門医に関する委員会」発足時のことについてまずお聞きしま
す。内科、外科、小児科、産婦人科、救急医学の各学会のほか、日本プライマ
リ・ケア連合学会の代表者が入っています。他の学会から委員会のメンバーに
なりたいという要望はあったのでしょうか。
 
 それはありました。しかし、委員会は大枠を決める場であることや、あまり
人数が多すぎても議論ができないこと、また各委員には、学会や所属団体の利
益代表ではなく、各個人の見識に基づいてご議論を頂くことをお願いしている
ことなどをご説明し、ご理解いただきました。
 
 議論は、厚労省の「専門医のあり方に関する検討会」の報告書に沿って進め
ました。私は議論を開始するに当たり、三つの基本方針(委員会としてのビジ
ョン)を提示しました。第一は、総合診療医の質の向上を目指す仕組みにする
こと。今までは、例えば、他科の医師が総合診療医になる場合、新たな特別の
トレーニングをつむというより、過去のご自分の経験を基にやっていたわけで
すが、「今後は、共通のトレーニングを最低限、受ける制度にしましょう」と
いうことです。
 
 第二は、地域で活躍する総合診療医が、誇りを持って従事できる専門医資格
とすること。安易に「誰でも総合診療専門医」になれるのではなく、しっかり
とした制度を作る。第三は、今後の医療提供体制の構築に資する制度にするこ
とです。
 
――その3点については、あまり異論が出なかったのでは。
 
 その後の議論の過程では必ずしもそうでもありません。他科の先生からは、
「もっと簡単に、総合診療専門医を取得できるようにすべき」といった意見は
出ました。しかし、しっかりした誇りを持てる専門医資格にすべだという点で
は、皆さん共通の理解をお持ちでした。
 
――総合診療医のイメージ、果たすべき役割は多様です。
 
 はい。総合診療医と言っても、へき地でどんな疾患でも診る医師から、大学
病院の総合診療部の医師もいる。現に、開業されて地域のかかりつけ医として
ご活躍されている先生もいます。ですから、この委員会では、まず総合診療医
の医師像を決めることから始めました。その上で、そのような医師像に合致す
る医師を養成するための研修プログラムはどうあるべきか、さらには専門医養
成のための組織の在り方を検討することなどを委員会のミッションとすること
としました。
 
――「総合診療専門医に関する委員会」では、合意できた事項と、今後の議論
に委ねられた事項があるとのことです。合意できた事項とは。
 
 合意事項は、総合診療専門医の医師像、そして、初期臨床研修の修了者が進
む研修プログラムなどです。一方で、今後の議論に委ねられた事項としては、
その他の医師を対象とした研修プログラム、指導医の基準策定や養成の在り方、
研修施設の指定要件の策定、運営組織の構築や各種事務手続きなど、多々あり
ます。
 
 総合診療専門医の医師像については、少なくても2点、大事な点を決めまし
た。一つは、「日常遭遇する疾患や障害に対して、適切な初期対応と必要に応
じた継続医療を全人的に提供する医師」、もう一つは、「疾病の予防、健康増
進、介護、在宅医療、看取り、地域の保健・福祉活動など、人々の命と健康に
関わる幅広い健康問題について、適切な対応ができる医師」です。
 
 つまり、診療面では、日常遭遇する疾患等を最初に診てどうするかを決め、
その後の継続医療を自ら行ったり、場合によっては専門医に紹介するというプ
ライマリ・ケア能力、それに加えて地域の健康問題をマネジメントする能力。
これら二つが総合診療専門医の専門性です。領域別専門医は「深さ」が特徴で
あるのに対し、総合診療専門医は「扱う問題の広さと多様性」が特徴というこ
とです。
 
 総合診療専門医は、疾患の鑑別能力が強調されがちですが、それだけでは専
門医とは言えません。また、医療制度の異なる米国のファミリー・フィジシャ
ン、あるいは英国のジェネラル・プラクティショナーなどとオーバーラップす
る部分はあるものの、幾つかの点で異なります。
 
――そうした総合診療専門医が活躍する場は。
 
 主に、地域を支える診療所や病院ですが、それは働く場所の問題で、へき地
で活躍したり、あるいは大学に戻るかもしれません。どんな場所で働く場合で
も、求められるコアな能力を身に付けることが期待されます。具体的には、他
の領域別の専門医、一般の医師、歯科医師、医療や健康に関わる他職種などと
連携して、地域の医療、介護、保健などさまざまな分野でリーダーシップを発
揮して、在宅医療や緩和ケア、高齢者ケアを含む多様な医療サービスを包括か
つ柔軟に提供する能力です。
 
 さらに、「総合診療専門医が持つべき医学的な知識および技術」についても、
合意しました。健康増進・疾病予防、幼小児・思春期のケア、高齢者のケアな
ど多岐にわたります。その内容を見れば、従来とは全く違うジャンルの専門性
を持つことが分かるでしょう(表1)。
 
 例えば、日本では少ないですが、欧米の女性では、ピルを飲んでいる人が多
い。ピルの他の薬への影響を考える。妊娠した場合に、飲んでいい薬と飲んで
はいけない薬がありますが、飲んでもいい薬をやめてしまったばかりに問題が
生じることもあります。女性の健康問題も、幅広く診療する総合診療専門医の
知識として必要です。
 
 メンタルヘルスには、うつ病だけでなく、認知症も含まれます。高齢の患者
が増える中で、精神科の医師だけで、とても全ての認知症患者には対応できま
せん。
 
 救急で必要なのは、必ずしも1次救急ではなく、「初期対応」の能力です。
心臓が停止した場合に、どう対応すべきか、そのマネジメント知識と能力を持
ってほしいということです。
 
 臓器別の問題については、例えば、急性心筋梗塞の患者でも、急性期の治療
までを担うのではなく、「初期対応と必要に応じた継続医療」を求めています。
治療まで全てができたら、そればスーパードクターですが、一方で「私は循環
器の医師でないので、診ることができません」では困ります。
 
――今の初期の臨床研修でも、幅広い基本的診療能力の習得を目的としていま
すが、総合診療専門医は、さらにそれをさらに深めるイメージでしょうか。
 
 実践ができるように、ということです。初期の臨床研修を2年終えても、経
験を積まないと実践は難しい。
 
――「医学的な知識および技術」で、「これは入れるべき」あるいは「外すべ
き」といった意見はありましたか。
 
 今回は大枠を決めただけなので、その辺りは今後、各項目を掘り下げて行く
際に出てくる議論でしょう。例えば、小児。一言で「小児」と書いてあります
が、どんな疾患まで診るか、またワクチン接種の扱いなど、各項目について検
討していく際に、どの範囲までを総合診療専門医として必要とされる能力の中
に入れるかという議論になります。

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