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お薬による胃や大腸からの出血
2014年06月25日(水)
お薬の副作用で、胃や大腸から出血することは珍しくない。
6月22日の産経新聞の連載にはこうしたことを書いてみた。
これで全8回の「胃腸シリーズ」は終わり。
6月22日の産経新聞の連載にはこうしたことを書いてみた。
これで全8回の「胃腸シリーズ」は終わり。
産経新聞・兵庫版 胃腸シリーズ第8回(最終回) 気がついたら貧血に?
お薬が原因で胃や大腸から出血
日本人はお薬好きです。たくさんのお薬をもらわないと納得しない患者さんがおられます。一方、お医者さんも負けずにお薬が好きです。肥満の糖尿病の方に、食事や運動などの生活指導の前に複数のお薬を出しています。私は邪道だと思うのですが。患者も医者もまるで宗教のように、お薬を崇拝しているように感じます。
そんな中、お薬に関連した話を2つ紹介します。まずは、血液サラサラのお薬の話。実際に脳梗塞を起こしたならいざ知らず、MRI検査で「隠れ脳梗塞」が見つかったという理由でアスピリンを飲んでいる人を時々見かけます。日本も欧米並みにアスピリン服用者は年々増えています。そうした場合、胃潰瘍の予防のためにPPIなどの胃薬を併用することが推奨されています。保険診療的には、「胃潰瘍の既往のある人の再発予防のため」なのですが、機械的に併用する場合が多いです。腰痛などにNSAIDsという消炎鎮痛薬を使う時も同様です。私自身もアスピリンや鎮痛剤で胃潰瘍を起こした苦い経験が何度もあります。
勤務医時代、週2回ほど胃カメラの検査日がありました。たくさんの胃カメラをしますが、見つかる病気の半数近くが痛み止めによる胃潰瘍だった記憶があります。普通の胃潰瘍と、痛み止めの副作用による胃潰瘍の差は、自覚症状の有無です。前者は、みぞおちが痛みますが、後者は腹痛が無いのが特徴です。自覚症状が無いまま、潰瘍から出血だけ続いていることがあります。ある日突然、重症の貧血で顔が真っ青になり、調べたらその原因は胃潰瘍だった、なんて経験を何度もしました。あれから20年経過した現在でも、在宅患者さんの様子がおかしいなと思ってよく診察すると、結局、痛み止めによる胃潰瘍だった、なんてことが時々あります。たとえ胃薬を併用していても起きる時は起きます。血液サラサラ薬で脳梗塞や心筋梗塞予防はいいのですが、常に胃潰瘍や大腸出血、時には脳出血などの出血の危険と隣り合わせであることを忘れてはなりません。
次に、突然の血便の話です。血便というと、大腸がんや虚血性腸炎という病気を思い浮かべますが、時に偽膜性腸炎という特殊な腸炎のことがあります。薬剤起因性腸炎のひとつです。扁桃腺炎に抗生剤が処方されていたのです。あるいは細菌性腸炎に対する抗生剤が原因だったこともありました。「腸炎の治療薬で腸炎に?」。そうです。腸炎の治療薬が腸内細菌層のバランスを崩してしまい、新たな腸炎を誘発していたのです。内視鏡で直腸を覗くと粘膜は赤くただれ、白い偽膜の付着と点状の出血が印象的でした。
医学が発達して、消炎剤や抗生剤を使う機会が飛躍的に増えました。お薬の恩恵に預かる機会が増える一方、思わぬ副作用に悩まされることも増えてきました。よかれと思ってやっていたことが、大きく裏目に出ることがあります。じんましんとして表に出ればすぐに副作用だと分ります。しかし「胃や腸からの出血」という形だと相当重症にならないと、本人もお医者さんも気がつかない、なんてこともあり得ます。お薬を飲む時は、どんな薬であっても、常に副作用に注意する態度が大切です。
キーワード 薬剤起因性腸炎
疾患の治療のために投与された薬剤の副作用で起きる急性の腸炎。原因薬剤としては抗生剤が多く、非ステロイド性消炎鎮痛剤や抗がん剤などでも起こる。鎮痛剤は、胃潰瘍以外に、小腸や大腸にも潰瘍を起こすことが知られている。
お薬が原因で胃や大腸から出血
日本人はお薬好きです。たくさんのお薬をもらわないと納得しない患者さんがおられます。一方、お医者さんも負けずにお薬が好きです。肥満の糖尿病の方に、食事や運動などの生活指導の前に複数のお薬を出しています。私は邪道だと思うのですが。患者も医者もまるで宗教のように、お薬を崇拝しているように感じます。
そんな中、お薬に関連した話を2つ紹介します。まずは、血液サラサラのお薬の話。実際に脳梗塞を起こしたならいざ知らず、MRI検査で「隠れ脳梗塞」が見つかったという理由でアスピリンを飲んでいる人を時々見かけます。日本も欧米並みにアスピリン服用者は年々増えています。そうした場合、胃潰瘍の予防のためにPPIなどの胃薬を併用することが推奨されています。保険診療的には、「胃潰瘍の既往のある人の再発予防のため」なのですが、機械的に併用する場合が多いです。腰痛などにNSAIDsという消炎鎮痛薬を使う時も同様です。私自身もアスピリンや鎮痛剤で胃潰瘍を起こした苦い経験が何度もあります。
勤務医時代、週2回ほど胃カメラの検査日がありました。たくさんの胃カメラをしますが、見つかる病気の半数近くが痛み止めによる胃潰瘍だった記憶があります。普通の胃潰瘍と、痛み止めの副作用による胃潰瘍の差は、自覚症状の有無です。前者は、みぞおちが痛みますが、後者は腹痛が無いのが特徴です。自覚症状が無いまま、潰瘍から出血だけ続いていることがあります。ある日突然、重症の貧血で顔が真っ青になり、調べたらその原因は胃潰瘍だった、なんて経験を何度もしました。あれから20年経過した現在でも、在宅患者さんの様子がおかしいなと思ってよく診察すると、結局、痛み止めによる胃潰瘍だった、なんてことが時々あります。たとえ胃薬を併用していても起きる時は起きます。血液サラサラ薬で脳梗塞や心筋梗塞予防はいいのですが、常に胃潰瘍や大腸出血、時には脳出血などの出血の危険と隣り合わせであることを忘れてはなりません。
次に、突然の血便の話です。血便というと、大腸がんや虚血性腸炎という病気を思い浮かべますが、時に偽膜性腸炎という特殊な腸炎のことがあります。薬剤起因性腸炎のひとつです。扁桃腺炎に抗生剤が処方されていたのです。あるいは細菌性腸炎に対する抗生剤が原因だったこともありました。「腸炎の治療薬で腸炎に?」。そうです。腸炎の治療薬が腸内細菌層のバランスを崩してしまい、新たな腸炎を誘発していたのです。内視鏡で直腸を覗くと粘膜は赤くただれ、白い偽膜の付着と点状の出血が印象的でした。
医学が発達して、消炎剤や抗生剤を使う機会が飛躍的に増えました。お薬の恩恵に預かる機会が増える一方、思わぬ副作用に悩まされることも増えてきました。よかれと思ってやっていたことが、大きく裏目に出ることがあります。じんましんとして表に出ればすぐに副作用だと分ります。しかし「胃や腸からの出血」という形だと相当重症にならないと、本人もお医者さんも気がつかない、なんてこともあり得ます。お薬を飲む時は、どんな薬であっても、常に副作用に注意する態度が大切です。
キーワード 薬剤起因性腸炎
疾患の治療のために投与された薬剤の副作用で起きる急性の腸炎。原因薬剤としては抗生剤が多く、非ステロイド性消炎鎮痛剤や抗がん剤などでも起こる。鎮痛剤は、胃潰瘍以外に、小腸や大腸にも潰瘍を起こすことが知られている。
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この記事へのコメント
必要ない鎮痛剤から危く逃れたウチの例です。
昨年の7月、当時86歳の父が、立ち上がる時や座る時など、身体の体制を変えるときに腰や関節が痛いと言っていたので、リハビリなど考えなくては・・と思っていました。父はその時は、昨年9月に亡くなった母と共に、同じ特養に入所していました。特養の施設医師が巡回診療に来た時に、父は何気なく「腰が痛い」と言ってしまいました。
結果、ノイロトロピン錠4単位(4錠)とセレコックス錠200mgを2錠、これが1日分で14日分が処方されました。
私がそれを知ったのは、本人が服用し始めて2日目でした。寝たきりの母の面会に行った帰りに父の居室へ行った時に、本人が「薬が出た」と言ったので、あわてて介護スタッフに処方箋のコピーを見せてもらいました。
看護師には、薬の追加や変更があれば必ず連絡してくれるように何度も頼んでいたのに連絡は来ませんでした。介護スタッフが、自分達用に処方箋のコピーを保存していたのが幸いしました。
帰宅後、ネットでこの薬の添付文書を調べて私はびっくりしました。
ろくに寝ないで翌朝早く、7時頃に本人と電話で話をしました。知り合いが亡くなったので香典の相談をしたいから、とウソを言って電話をつないでもらいました。
私は父に、「セレコックス200mgを1日2回」という処方は「外傷や歯を抜いた後や手術後の痛みを抑える目的で処方される量」であることを話しました。
父に、「あなたの足腰の痛みは、外傷や歯を抜いた後や手術後の痛みと同じくらいひどいものなの?」と尋ねると、「そんなに痛くない」と言います。「心機能・腎機能、高血圧、消化性潰瘍などの悪化といった副作用が書いてあるけど、それを承知で飲みたいの?」と尋ねると「いや、特に薬は無くても良い」、「そんなに大変な薬なら飲みたくない」と言いました。
しかも添付文書には、セレコックスと他鎮痛剤剤を併用しないことが望ましい、と書かれています。それなのにノイロトロピンも目いっぱい処方されているのです。
私は父に、自分の言葉で、「もう痛くないから薬は飲まない」と言うように話しました。
看護師達は、「せっかく先生が処方してくださったのになぜ飲まないの?」と相当しつこく食い下がったようです。しかし父はガンとして「もういらない」を貫き通したので、看護師達はそれ以上強制はできなかったようです。結果、父は2日間(正確には1日半)、飲んだだけでした。
私は父に、「良かったね、病院じゃなくて。病院だったら口をこじ開けて飲まされているよ。飲まされ続けてあっちこっち、もっと悪くなっても、また別の薬を飲まされるだけだよ。」と言いました。
その後、特に父は腰痛関節痛を抑える薬は飲んでいません。つまり、必要ない薬だったのです。
愚痴っぽい老人の言葉をそのまま受け取って、軽度腎障害・脳梗塞後遺症・食道癌既往・心筋梗塞危険ありの86歳の老人に、1日にノイロトロピン4錠とセレコックス400mgを14日間処方する医者・・・たぶん、他にも同じような医者がいるんでしょうね・・・
医者が、薬を信仰しているんじゃないんでしょうか。
薬を信仰しているというより、処方すればするほど処方料で稼げて消費する薬剤が多いほど製薬会社からマージンや贈り物をたくさんもらえる、といったほうが正確だと思います。
薬を使わないで症状を改善できたほうが医者の収入が上がるようにシステムを変えれば、薬害が減って病人が減ると思います。
Posted by komachi at 2014年06月27日 02:39 | 返信
komachiさんの、お母様は、去年の9月に、亡くなられていらっしゃったのですか。まったく存じ上げませんでした。
親孝行なkomachiさんでいらっしゃるから、私は、どうお悔やみ申し上げてよいのか分かりません。
でも、komachiさんも、良いと思われる最善の親孝行をなさったのですから、お母様も分かっていらっしゃって、喜んでいらっしゃると思います。
komachiさんが、お仕事を持って、そのお仕事で、社会貢献なさっているのですから、お母様も、誇りに思っていらっしゃるでしょうと思います。
komachiさんも、御身体ご自愛下さい。
Posted by 大谷佳子 at 2014年06月27日 10:36 | 返信
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