８階建ての本屋さんを体力の限り全階、ウロウロした。
歳なので長時間立ち読みしていると、腰が痛くなる。

巨大な本屋さんにいると自分自身が何に興味があるかよく分かる。
経済、人類の歴史、哲学などどちらかというと人文系に目が行く。

あれだけ本があって、欲しいと思ったのは１０冊に満たなかった。
興味が縮小したのか、自分が賢くなったからか。

まず前者であろう。
特に、自己啓発本には目が行かなくなった。

あと字が小さい翻訳本もめんどくさくなった。
歳をとると読みたい本が少なくなることに気がついた。

そんな中、異常に所有欲をそそられる本の群がある。
写真集だ。

カブト虫やクガタ虫の巨大な写真集は、どんな女優さんのヌード写真集より
はるかにインパクトがあり、買いたい衝動にかられた。

しかしシリーズで何冊もあり、それぞれが大きくて高価だ。
そして空や雲の写真集や、タコやイカの写真集に恐ろしい位興味をひかれる。

なぜなら、自然の姿は、最高の芸術でありファッションであり哲学であるからだ。
人間がそこに居ないのもいいし、とにかく何時間視ていても飽きないのだが我慢した。

養老毅先生は、昆虫の機能に感動するのだろうが、私は、
昆虫の色彩や造形配分に感動する。

形が好きなのだ。
形が何かを主張している。

結局、フラクタルの世界観に魅かれるのだろう。
昆虫は人間であり、日本であり、世界であり、宇宙である。

一匹の昆虫に、宇宙の中で人類が知り得る世界とその
向こう側にあるものを想像してしまうのだ。

買えば、その世界に埋没してしまいそうな気がして怖い。
まるで宇宙のことばかり考えていたら、仕事などどうでもようなるかのように。

これはおそらく、女性には理解されないものだろう。
反対に、私は料理本の類には全く興味がない。

ウロウロしていたら、自分の本に遭遇したが、反射的に恥ずかしかった。
何故だかよく分らないが、そこを避けるように通りすぎてしまった。

２年間も埋もれている誰も買わなかったような掘り出し本をわざわざ何冊か買った。
アマゾンや古本屋で買えばいいのだろうが、著者に敬意を払うつもりで買った。

というより、そこで買わないと永遠に出会いそうもないと感じたからなのだろう。
なんだか、大昔に声をかけられなかった女性のことを今頃悔やんでいるかのように我が手に、した。