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依存症の時代に生きている
2014年10月12日(日)
産経新聞・心と体シリーズ第8回 ニコチンやアルコールだけではない
増加するネット、薬物、ギャンブル“依存症”
町医者のもとには、日々、さまざまな症状の方が来られます。眠れない、イライラする、体がだるい、やる気が出ない、などなど。一瞬、うつ病なのかな?と思いながらじっと聴いてみると「依存症」だと気がつきます。ニコチン依存症やアルコール依存症は匂いや雰囲気ですぐに分ります。しかしインターネット依存やギャンブル依存などは、その診断に辿りつくまで少し時間がかかります。「なんだ、最初から言ってくれればいいのに」とも思いますが、患者さん自身が、○○依存症であるという自覚を持っていないことが多い。あのタイガーウッズでも、セックス依存症の治療に苦しんだと聞きます。依存症は現代社会において、大人も子供もそして高齢者も、すぐそこにある大きな「落とし穴」に思えます。
そもそも「依存症」とは何かをニコチン依存症を例に説明します。タバコを吸うことは200種類以上の毒物を体に入れることなのですが、なかでもニコチンは脳の受容体に結合した結果、ドーパミンという快楽物質を放出されます。人間も動物も「快楽」には弱いもの。何度か快楽を味わううちに、またその刺激が欲しくなります。いつしか、刺激→快楽という報酬→また刺激が欲しい、という「報酬系」の回路が脳の中に形成されます。芸能人が薬物や覚せい剤等で時々逮捕され、せっかく刑務所から出て来ても、また同じ過ちを繰り返します。それほど一旦脳内に形成された報酬系を消し去ることは、極めて困難なのです。ニコチン依存症やアルコール依存症を身近に見ている方なら納得できるでしょう。
薬物依存として覚せい剤依存のほか、危険ドラッグや向精神薬の依存患者が急増しています。昔からあるアルコール依存症は、従来の中年男性患者が減少して、高齢化が目立ちます。在宅医療で診ている高齢患者さんの中にもアルコール依存症の方が時々おられます。また1990年以降はギャンブル依存症が増えています。我が国では女性の多くはパチスロやスロットです。これは、うつ病や発達障害や統合失調症といった精神疾患の合併が少なくないので、精神科医や専門スタッフとの連携が大切です。
一方、若年世代ではインターネット依存が増えています。2013年の調査では、中高生の男子6.4%、女子9.9%、つまり全国で約52万人が依存の疑いがあるとのこと。スマフォを取りあげると暴言・暴力となる子供は、ニコチン依存症やアルコール依存症の大人と同じ病態。インターネット依存は、昼夜逆転や不眠症を起こします。親御さんから子供の依存や登校拒否や引きこもりの相談を持ちかけられることが、年々増えています。
さて、これらの依存症をどのように治療すればいいのでしょうか?ニコチン依存症には禁煙外来があり、治療薬が使えます。アルコール依存症にも新薬が出たし断酒会がありますし、入院加療もあります。覚せい剤なら刑務所に入り禁断症状を乗り越えると、一応治ります。しかしネット依存やギャンブル依存を治すことは極めて困難です。ニコチンやアルコールは「完全中止」ですが、ネット依存は「禁ネット」以外に「節ネット」という方法もあります。いずれもカウンセリングや精神療法や患者会などの個別対応と、教育・医療・行政の連携による社会としての対応が両輪です。どうか「依存症」という言葉の意味と重みを知って頂ければ幸いです。(終)
キーワード インターネット依存
1 過剰使用(時間の感覚を忘れる)、2 離脱(ネットができない時の怒り、緊張、抑うつ)、3耐性(より良いコンピューター設備やソフトを求める)、4 悪影響(口論やうそ、業績悪化、社会的孤立、疲労)の4つの構成要素からなる病態。問題があっても使用の制御が困難な状態。
増加するネット、薬物、ギャンブル“依存症”
町医者のもとには、日々、さまざまな症状の方が来られます。眠れない、イライラする、体がだるい、やる気が出ない、などなど。一瞬、うつ病なのかな?と思いながらじっと聴いてみると「依存症」だと気がつきます。ニコチン依存症やアルコール依存症は匂いや雰囲気ですぐに分ります。しかしインターネット依存やギャンブル依存などは、その診断に辿りつくまで少し時間がかかります。「なんだ、最初から言ってくれればいいのに」とも思いますが、患者さん自身が、○○依存症であるという自覚を持っていないことが多い。あのタイガーウッズでも、セックス依存症の治療に苦しんだと聞きます。依存症は現代社会において、大人も子供もそして高齢者も、すぐそこにある大きな「落とし穴」に思えます。
そもそも「依存症」とは何かをニコチン依存症を例に説明します。タバコを吸うことは200種類以上の毒物を体に入れることなのですが、なかでもニコチンは脳の受容体に結合した結果、ドーパミンという快楽物質を放出されます。人間も動物も「快楽」には弱いもの。何度か快楽を味わううちに、またその刺激が欲しくなります。いつしか、刺激→快楽という報酬→また刺激が欲しい、という「報酬系」の回路が脳の中に形成されます。芸能人が薬物や覚せい剤等で時々逮捕され、せっかく刑務所から出て来ても、また同じ過ちを繰り返します。それほど一旦脳内に形成された報酬系を消し去ることは、極めて困難なのです。ニコチン依存症やアルコール依存症を身近に見ている方なら納得できるでしょう。
薬物依存として覚せい剤依存のほか、危険ドラッグや向精神薬の依存患者が急増しています。昔からあるアルコール依存症は、従来の中年男性患者が減少して、高齢化が目立ちます。在宅医療で診ている高齢患者さんの中にもアルコール依存症の方が時々おられます。また1990年以降はギャンブル依存症が増えています。我が国では女性の多くはパチスロやスロットです。これは、うつ病や発達障害や統合失調症といった精神疾患の合併が少なくないので、精神科医や専門スタッフとの連携が大切です。
一方、若年世代ではインターネット依存が増えています。2013年の調査では、中高生の男子6.4%、女子9.9%、つまり全国で約52万人が依存の疑いがあるとのこと。スマフォを取りあげると暴言・暴力となる子供は、ニコチン依存症やアルコール依存症の大人と同じ病態。インターネット依存は、昼夜逆転や不眠症を起こします。親御さんから子供の依存や登校拒否や引きこもりの相談を持ちかけられることが、年々増えています。
さて、これらの依存症をどのように治療すればいいのでしょうか?ニコチン依存症には禁煙外来があり、治療薬が使えます。アルコール依存症にも新薬が出たし断酒会がありますし、入院加療もあります。覚せい剤なら刑務所に入り禁断症状を乗り越えると、一応治ります。しかしネット依存やギャンブル依存を治すことは極めて困難です。ニコチンやアルコールは「完全中止」ですが、ネット依存は「禁ネット」以外に「節ネット」という方法もあります。いずれもカウンセリングや精神療法や患者会などの個別対応と、教育・医療・行政の連携による社会としての対応が両輪です。どうか「依存症」という言葉の意味と重みを知って頂ければ幸いです。(終)
キーワード インターネット依存
1 過剰使用(時間の感覚を忘れる)、2 離脱(ネットができない時の怒り、緊張、抑うつ)、3耐性(より良いコンピューター設備やソフトを求める)、4 悪影響(口論やうそ、業績悪化、社会的孤立、疲労)の4つの構成要素からなる病態。問題があっても使用の制御が困難な状態。
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この記事へのコメント
たしかに、依存症は、心の弱さだなあと痛感します。
タバコは止められたのに、お酒がやめられない。
それにネット依存症かも知れない。
一日に、一度は「長尾ブログ」を見てしまいます。おもしろいです。
ウェブリブログのブログの訪問も、止められません。
一人はどうやら私と同じ年くらいの男性で、もう一人は随分若い感じのカメラマンです。
何処のだれか分からない所が、気楽で調子がいい感じです。
Posted by にゃんにゃん at 2014年10月13日 01:31 | 返信
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