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腸から健康を考える
2014年10月19日(日)
産経新聞・腸と心シリーズ第1回 心は腸にある!?
免疫能やうつに深く関係する腸内細菌叢
台風一過のあとは ぐっと秋らしくなってきました。今日から「腸と心」について書きます。まずは、「え?腸と心って関係あるの?」という疑問があるでしょう。それがおおあり、なのです。そもそも心はどこにあるのでしょうか?これは昔から論じられてきた命題です。アリストテレスは心臓にあると考え、プラトンは脳と脊髄に、デカルトは魂にあると考えました。一方、古代中国ではお腹に、バビロニアでは肝臓にあると考えたそうです。そして現代医学では、心は脳にあるという考えが一般的です。
では、脳と腸とどちらが先だったかご存知ですか?生物の進化の過程を学べば、脳より先に腸ができたことが明らかです。10億年前に多細胞生物が出現し、5億年前に動物に進化しました。そして最初にできたのは、腸でした。たとえばヒドラやイソギンチャクは、腸しか存在しない腔腸動物です。脳や心臓の無い動物は現在でも存在しますが、腸を持たない生物はいません。ですから、間違いなく脳より腸が先なのです。
腸というと、ウンコを造るだけの臓器だと思っていませんか?実は私もかつては大腸内視鏡検査をしながらそう思っていました。しかし決してそうではないことが分かってきました。そして脳と腸は、みなさんの想像以上に密接な関係にあります。人は脳内の神経伝達物質によって幸福感を感じますが、それは腸でも造られます。また免疫システムの維持においても腸は大きな役割を果たしています。私たちが活き活きと暮らすためには腸の協力が必須なのです。人の心は脳よりもむしろ腸にあると考えたくなります。ただ先週書きましたように、脳は「依存症になりやすい」という弱点があります。脳はだまされやすいのです。
一方、腸は食べ物に含まれる有害物質を排除するだけでなく、適宜、肝臓や膵臓に指示を出しています。生体の存続という観点からみれば、腸は脳に勝るとも劣らない働きをしています。たとえば免疫システムのなんと7割に腸が集中しています。腸粘膜の表面は全身の皮膚の200倍にも及びますが、そこで細菌やウイルスのような外敵の侵入をブロックしています。そうした免疫活動の主役といえは、“腸内細菌”なのです。腸内には、善玉菌、悪玉菌、そして日和見菌がひしめきあって、互いに協力関係を保ちながら、外敵をやっつける門番の役割を果たしています。腸内細菌叢とは人間社会では町内会のようなもの。人間は60兆個の細胞からできていますが、腸内細菌叢は1000兆個もいるそうです。人間は体の細胞の約200倍もの数の細菌を腸内に宿しています。腸内細菌叢とは第二の自分自身ともいえるもかもしれません。しかしその割にはあまり知られていないのが腸内細菌です。
幸せな人生とは自分自身が満足できる人生です。そうした脳が感じる幸福感に、実は腸が大きく関係しています。腸こそが心の不調と大きく関係していることが分かってきました。増加する「うつ」の原因の多くが腸にあるという研究成果が発表されています。腸の健康を守ることは、日々楽しく過ごせるだけでなく、健康寿命を延ばすことなのです。そのためには具体的にどう行動すればいいのか、しばらく一緒に考えていきましょう。(続く)
キーワード 腸内細菌叢
乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌、大腸菌やウエルシュ菌やブドウ球菌などの悪玉菌、レンサ球菌やバクテロイデス菌などの日和見菌から構成される腸の中の細菌群。三者の理想的な割合は、2:1:7と言われている。
免疫能やうつに深く関係する腸内細菌叢
台風一過のあとは ぐっと秋らしくなってきました。今日から「腸と心」について書きます。まずは、「え?腸と心って関係あるの?」という疑問があるでしょう。それがおおあり、なのです。そもそも心はどこにあるのでしょうか?これは昔から論じられてきた命題です。アリストテレスは心臓にあると考え、プラトンは脳と脊髄に、デカルトは魂にあると考えました。一方、古代中国ではお腹に、バビロニアでは肝臓にあると考えたそうです。そして現代医学では、心は脳にあるという考えが一般的です。
では、脳と腸とどちらが先だったかご存知ですか?生物の進化の過程を学べば、脳より先に腸ができたことが明らかです。10億年前に多細胞生物が出現し、5億年前に動物に進化しました。そして最初にできたのは、腸でした。たとえばヒドラやイソギンチャクは、腸しか存在しない腔腸動物です。脳や心臓の無い動物は現在でも存在しますが、腸を持たない生物はいません。ですから、間違いなく脳より腸が先なのです。
腸というと、ウンコを造るだけの臓器だと思っていませんか?実は私もかつては大腸内視鏡検査をしながらそう思っていました。しかし決してそうではないことが分かってきました。そして脳と腸は、みなさんの想像以上に密接な関係にあります。人は脳内の神経伝達物質によって幸福感を感じますが、それは腸でも造られます。また免疫システムの維持においても腸は大きな役割を果たしています。私たちが活き活きと暮らすためには腸の協力が必須なのです。人の心は脳よりもむしろ腸にあると考えたくなります。ただ先週書きましたように、脳は「依存症になりやすい」という弱点があります。脳はだまされやすいのです。
一方、腸は食べ物に含まれる有害物質を排除するだけでなく、適宜、肝臓や膵臓に指示を出しています。生体の存続という観点からみれば、腸は脳に勝るとも劣らない働きをしています。たとえば免疫システムのなんと7割に腸が集中しています。腸粘膜の表面は全身の皮膚の200倍にも及びますが、そこで細菌やウイルスのような外敵の侵入をブロックしています。そうした免疫活動の主役といえは、“腸内細菌”なのです。腸内には、善玉菌、悪玉菌、そして日和見菌がひしめきあって、互いに協力関係を保ちながら、外敵をやっつける門番の役割を果たしています。腸内細菌叢とは人間社会では町内会のようなもの。人間は60兆個の細胞からできていますが、腸内細菌叢は1000兆個もいるそうです。人間は体の細胞の約200倍もの数の細菌を腸内に宿しています。腸内細菌叢とは第二の自分自身ともいえるもかもしれません。しかしその割にはあまり知られていないのが腸内細菌です。
幸せな人生とは自分自身が満足できる人生です。そうした脳が感じる幸福感に、実は腸が大きく関係しています。腸こそが心の不調と大きく関係していることが分かってきました。増加する「うつ」の原因の多くが腸にあるという研究成果が発表されています。腸の健康を守ることは、日々楽しく過ごせるだけでなく、健康寿命を延ばすことなのです。そのためには具体的にどう行動すればいいのか、しばらく一緒に考えていきましょう。(続く)
キーワード 腸内細菌叢
乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌、大腸菌やウエルシュ菌やブドウ球菌などの悪玉菌、レンサ球菌やバクテロイデス菌などの日和見菌から構成される腸の中の細菌群。三者の理想的な割合は、2:1:7と言われている。
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