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臨床試験と治験の違い

2014年12月07日(日)

一般の方は、「混合診療」の意味を知っている方はほとんどいないだろう。
同様に、臨床試験と治験の違いは、私でも上手く説明できない。
こうした難しいことを、分り易く説明している記事を見つけたので転載する。
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保険承認薬はどうできる?【研修最前線】
 
東京医科歯科大学2014年研修医セミナー第17週「治験」-Vol.22014年12月5日
 研修最前線  カテゴリ: 一般内科疾患・投薬に関わる問題・その他
 
「治験」Vol.1◆分かりますか?臨床試験と治験の違いVol.2◆保険承認薬はど
うできる?
 
効果がありそうな新規化合物を見つけただけでは薬にならない。保険で使える
薬になるまでには膨大なステップが必要だ。東京医科歯科大学臨床試験管理セ
ンターの小池竜司氏がひもとく。まとめ:酒井夏子(m3.com編集部)「大発見」
だけでは使えない写真講師は東京医科歯科大学臨床試験管理センター、小池竜
司氏
 
小池 昔の漫画で描かれている新薬発見はたとえばこんなイメージです。科学
者が「新薬を発見したぞ!」とやる。それを誰か身近な人にゴクゴク飲ませて
「やった、大発見だ」などという感じですね。ですがそんなわけないですよね。
見つけた何かを元に、ヒトが本当に飲めるような薬剤や使っても大丈夫な機器
として実用化する。さらにいろいろ段階を踏んだうえで、われわれ人間の健康
増進に役に立つものができるのです。なぜ保険で認めてほしいのか写真クリッ
クすると大きな画像を閲覧できます。
 
 なぜかといえば保険の問題があるからです。原則として日本ではすべての人
が公的健康保険の診療を受けることができます。保険診療では、保険承認を受
けた医薬品や機器、手技だけが使えます。そうでないものは自費で全部払うこ
とになる。
 
 日本では混合診療が法律で禁止されていて、保険承認されていない薬を使え
ばその際の医療にかかる費用が全額自己負担になるのです。公的健康保険を使
えば自己負担は2-3割で、残りは保険機構などが払ってくれます。実際の薬価
は1,000円でも自分は300円しか払わなくて済むわけです。けれど、まだ保険で
認められていない新薬を「1,000円払ってもいいから飲みたい」と言っても認
められない。そうするとその病気のためにかかるほかの費用すべてに保険が使
えなくなり、100パーセント自分で払わなければいけなくなるんですね。それ
が混合診療の禁止です。
 
 すなわち保険で医療を受けられなければ、実質的に使える薬とは言えないわ
けです。だから「早く保険で認めてくれよ」となるわけです。実用化のために
絶対必要な治験
 
 研究者が「何か見つけたぞ」と思っても、実際にヒトで使える薬にして、そ
れが本当に効くかどうかを臨床研究や臨床試験で証明しなければなりません。
同時に実際の診療で使用できるためには、保険使用下の医療として承認される
ようなプロセスを踏まなければなりません。それが治験であり、治験こそがこ
のプロセスというわけです。どんな大発見であっても、そのプロセスがなけれ
ば人の役に立つものにはならない。治験というのは実用化のためにも絶対に必
要なのです。
 
 製薬企業がやることがエビデンスになるのかという疑問があるかもしれませ
んが、NEJMに出てくるような臨床試験結果の中には製薬企業がスポンサーにな
った治験もあります。試験の結果はきちんとした学術的なものだから、こうい
った雑誌に報告すれば掲載されるのです。これを見て皆も「この薬は効くぞ」
「エビデンスがあります」と言うわけです。製薬企業が儲けたいというのは事
実ですが、決してそのためだけに治験をやっているのではないのです。治験は
エビデンスを作ることにもなっているのです。写真クリックすると大きな画像
を閲覧できます。
 
 新薬の開発とは、長いプロセスがあるということを次に説明します。例えば、
実際に物質を見つけたり、その作用について調べたりする基礎研究の段階で、
もし「いけそうだ」となれば次は動物です。いきなりヒトに投与するのではな
く、マウスやウサギ、ひょっとしたらサルなどヒトに近い動物に投与してみて
「大丈夫そう」「効果がありそう」という試験を行い、その後にヒトを対象に
した臨床試験に入ります。第I相から第IV相までの長いステップ
 
 それだけでは済みません。そのあとにその薬を保険で使えるようにお願いし
ますと申請したら「はいどうぞ」というわけにはいかなくて、時間がかかる。
さらに発売したあとも、実際には調査がずっと行われます。全体を見ると何年
もかかるということになるわけです。写真クリックすると大きな画像を閲覧で
きます。
 
 臨床試験のプロセスだけを見ても、第I、II、III相があります。第I相は通
常、少数の健常な人間を対象にします。若者をアルバイトで「新薬の試験に参
加しませんか」などと募って、1日入院して薬を飲んで血液採るというような
試験をやり、ヒトに投与してもとりあえず大丈夫と分かったら今度は対象とな
る疾患の患者さんに対して第II相試験をスタートします。
 
 最初は例えば20、30人くらいの小規模で始めて、かつ「どのくらい飲んだら
効くのか」「どれくらい飲んだら安全なのか」「どこを超えたら危ないのか」
といったことも見極めながら行います。第II相試験は薬の量を多くしたり少な
くしたりもします。対象とする病気の患者さんに対して本当に効くのかという
ことも同時に見るので、対象はほんの少数例なのです。
 
 これもうまくいき、この薬は本当に患者さんに投与できる薬になりそうだと
いうことになれば、多くの患者さんを対象にした第III相試験が行われます。
患者がたくさんいる病気とあまりいない病気の間では規模は違いますが、比較
的多くの人を対象として行い、これらの成績をもとに保険承認の申請をすると
いう流れになります。iPSも臨床試験第1例までに数年かかった
 
 こういうプロセスですから、数年くらいかかるのは分かりますよね。1つの
薬を例えば1カ月飲む試験を組んだとしても、日本中の人や世界中の人が同じ
日に飲み始めるわけはない。10月1日に飲み始める人もいれば10月末に飲み始
める人もいます。そうすると前後で倍ぐらい時間がかかる。
 
 さらには1カ月間だけ薬を飲んだとしてもその後半年、いや1年くらいは様子
を見ないと大丈夫かどうかは分からない。一つの試験に1年や2年という時間を
設定しても、それからさらに別の試験を次々に組んで行くとあっという間に数
年から10年かかってしまいます。
 
 山中伸弥先生がヒトの皮膚細胞からiPS細胞を作りだすことに成功してから
数年以上経っていますが、今年初めてiPS細胞由来の網膜細胞を目に移植する
という試験が行われました。第1例です。国のお金をドドンとかけて、総がか
りでやってもこれくらい時間がかかるわけですから、新薬の開発いかに時間が
かかるか分かると思います。CRCって何?
 
 さて、この治験に参加中の患者さんの診察をしてくれと研修医の皆さんが頼
まれたときに、「何が何だか分からない」ということが起こってきます。「普
通に診察するだけじゃなく、何かやらなきゃならないことがあるんじゃないか」
とか、「試験中の薬を処方するにはどうしたらいいのか」とか、分からないこ
とだらけです。写真クリックすると大きな画像を閲覧できます。写真クリック
すると大きな画像を閲覧できます。
 
 そこで、助ける人が必要になります。そういう人をClinical Research Coor
dinator、臨床試験コーディネーター、略してCRCです。皆さんの今日のミッシ
ョンの1つは、友人や知人に「お前のとこの病院にCRCっている? CRCって何?」
と聞かれたときには答えられるようになってほしいということです。臨床試験
にCRCは必須の存在です。CRCは臨床試験や治験を行っている大きな病院には大
体配置されていて、臨床試験に参加中の患者さんの診察をするときにいろいろ
助けてくれます。
 
 たとえば、皆さんも病棟で患者さんに時間をかけて説明しなくてはいけない
ことがあると思います。新薬について説明しようと思えば軽く30分や1時間か
かりますよね。外来の診察時間では終わりません。そういうときに「こういう
薬があるんだけども、詳しいことをコーディネーターに聞いてみますか?」と
尋ねる。その患者さんが「聞いてみます」と言われればコーディネーターにあ
とで説明してもらって、最終的には患者さんに判断してもらうわけです。
 
 この病院には実際に7人のCRCがいて、臨床試験の診療のお手伝いをしてくれ
ています。さらに診察のときにもこういうふうに同席して、検査の予定など必
要なことを事細かに指示してくれるので、間違いなく治験の診察ができます。
CRCなしに医師だけで進めると、「あれも忘れた、これも忘れた」「次いつ来
るか分からない」となってしまいますからね(続く)。

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