- << 1.20を国民全員で考えよう!
- HOME
- 認知症ドライバーと交通事故 >>
このたびURLを下記に変更しました。
お気に入り等に登録されている方は、新URLへの変更をお願いします。
新URL http://blog.drnagao.com
ロコモ在宅
2015年01月26日(月)
ロコモテイブシンドローム(運動器症候群)をご存知だろうか。
ロコモを対象にした在宅医療には、結構な需要がある。
同時に漢方薬も重宝している。
ロコモを対象にした在宅医療には、結構な需要がある。
同時に漢方薬も重宝している。
漢方の雑誌に連載している。→こちら
漢方と在宅第6回 ロコモ在宅と防風通聖散
非がん在宅の重要性
超高齢化が進行する中、国を挙げての在宅医療推進政策が続いている。マスコミは在宅というと「末期がん」を連想するだろうが、現実には、「非がん」の在宅が増えている。当院の在宅看取り例の変遷を見ても、一昨年までは「末期がん」:「非がん」と比較すると、常に末期がんのほうが多かったが、昨年逆転した。現在、両者の比は、2:3になっている。当院の在宅症例には、病院からの紹介例もあるが、外来から通院できなくなった人がメインである。特に症例を選ぶことはなく、自然に任せた結果がそれである。
「非がん」とは、脳梗塞後遺症や慢性心不全に代表される臓器不全症や神経難病など。なかでも最近、ロコモテイブシンドローム(ロコモ)に由来した在宅医療症例が増えている。腰椎圧迫骨折や変形性膝関節症や骨粗しょう症でADLが低下して在宅療養になる症例である。いすれにせよ、非がん在宅の重要性が高まっている。
ロコモ在宅需要の増加
2年前から、「腰が痛い」、「膝が痛い」、「肩が痛い」と訴える在宅患者さんのために、週1回、整形外科医に訪問診療をお願いすることになった。勝手に「ロコモ在宅」と呼んでいるが、結構そのような需要があることに気がついた。普段、私が訪問診療している方の中に、膝に水が貯まったり、転倒で動けなくなった人で私では対応できない場合はロコモ在宅をしてくれる整形外科医にお願いすることが時々ある。患者さんにも大変喜ばれ助かっている。整形外科医も診察室からどんどん外に出る時代になったようだ。当院の整形外科医にも在宅医療は初めての経験であったが、「楽しいですね」と言ってくれている。
在宅医療に従事している医師を見渡すと案外(?)、整形外科医が多い。ADL低下の原因疾患としてロコモが多いので、当然かもしれない。このように外科系の在宅医が重宝される時代だ。もちろん外来診療もお願いしている。ロコモ在宅需要の増加を肌で感じている。
変形性膝関節症にはまず減量指導
さて、変形性膝関節症のため通院不能になった方が何人かいる。全員、肥満症がベースにある。女性が多い。膝のためには痩せるしかないのだが、その痩せることが現実に困難な方がどこの医療機関に何人かいるだろう。栄養士を訪問させて訪問栄養指導をすることもある。ちなみに当院はNST認定施設でもある。地域では「在宅NST研究会」を開催している。しかし食事指導だけでは限界があるのも現実だ。痩せ薬を必要とする患者さんには、防風通聖散を投与している。防風通聖散は実に16種類もの生薬の合剤で、結構面白い漢方薬だ。以前、数十人の肥満症の方に防風通聖散を投与してデータを取ったことがある。もちろん食事指導との併用であるが、3ケ月で平均2~3Kgの減量効果があることが分った。なかには、10kg以上の減量に成功した人もいた。最近では、糖質制限ダイエット(あくまで期間限定)と防風通聖散を併用することが増えた。
あるいは、防い黄ぎ湯も処方する。防い黄ぎ湯は抗肥満作用に加えて、膝に貯まった水を吸収させる作用がある。関節穿刺しての水の吸引やヒアルロン酸注射を嫌がられる方には防い黄ぎ湯の出番である。その有効性は何百年という歴史が証明している。
痩せ薬と便秘薬としての防風通聖散
防風通聖散はもともと、便秘薬なので便秘気味の人に人気がある。ロコモでADLが低下するとたいてい便秘症になるので、防風通聖散は、痩せ薬と便秘薬の一石二鳥の効果が期待できる。日本における抗肥満薬としてマジンドールもあるが、厳しい投与制限がある。すなわちBMI35以上の高度肥満の人に3ケ月だけしか投与できない。一方、防風通聖散は誰にでも投与でき、しかも漢方の中では薬価が安いので私の繁用処方のひとつになっている。防風通聖散だけをもらうためだけに外来通院される方も少なくないくらい人気がある。人気があるということは、患者さんも効果を実感しているのだろう。
最近、認知症の在宅医療も増加している。食べたことを忘れて1日中、食べている人もいる。当然、肥満は進み、HbA1cは悪化する。うかうかしていると「多剤投与」になりがちだが、ベースにすべきはやはり防風通聖散であろう。周辺症状がある場合は、抑肝散も必要となることがある。私は2剤併用は副作用のリスクを考えてあまりしないので、防風通聖散か抑肝散かの選択に悩むことがある。いずれにせよ、認知症に伴う肥満は便秘症にもなる。よく食べるので空気を一緒に嚥下するので鼓腸になっていることも多い。やはり防風通聖散を重宝している。
ロコモは予防が重要
ロコモが原因で在宅になる症例がたしかに増えている。しかしロコモこそ予防が重要であると考える。それは、生活習慣病の予防と同じで食事と運動であろう。骨粗しょう症があれば、活性型ビタミンDやビスフォスフォネート製剤のお世話になることが増えた。しかしそうした中で、防風通聖散や防い黄ぎ湯の出番が益々増えると考えている。
漢方と在宅第6回 ロコモ在宅と防風通聖散
非がん在宅の重要性
超高齢化が進行する中、国を挙げての在宅医療推進政策が続いている。マスコミは在宅というと「末期がん」を連想するだろうが、現実には、「非がん」の在宅が増えている。当院の在宅看取り例の変遷を見ても、一昨年までは「末期がん」:「非がん」と比較すると、常に末期がんのほうが多かったが、昨年逆転した。現在、両者の比は、2:3になっている。当院の在宅症例には、病院からの紹介例もあるが、外来から通院できなくなった人がメインである。特に症例を選ぶことはなく、自然に任せた結果がそれである。
「非がん」とは、脳梗塞後遺症や慢性心不全に代表される臓器不全症や神経難病など。なかでも最近、ロコモテイブシンドローム(ロコモ)に由来した在宅医療症例が増えている。腰椎圧迫骨折や変形性膝関節症や骨粗しょう症でADLが低下して在宅療養になる症例である。いすれにせよ、非がん在宅の重要性が高まっている。
ロコモ在宅需要の増加
2年前から、「腰が痛い」、「膝が痛い」、「肩が痛い」と訴える在宅患者さんのために、週1回、整形外科医に訪問診療をお願いすることになった。勝手に「ロコモ在宅」と呼んでいるが、結構そのような需要があることに気がついた。普段、私が訪問診療している方の中に、膝に水が貯まったり、転倒で動けなくなった人で私では対応できない場合はロコモ在宅をしてくれる整形外科医にお願いすることが時々ある。患者さんにも大変喜ばれ助かっている。整形外科医も診察室からどんどん外に出る時代になったようだ。当院の整形外科医にも在宅医療は初めての経験であったが、「楽しいですね」と言ってくれている。
在宅医療に従事している医師を見渡すと案外(?)、整形外科医が多い。ADL低下の原因疾患としてロコモが多いので、当然かもしれない。このように外科系の在宅医が重宝される時代だ。もちろん外来診療もお願いしている。ロコモ在宅需要の増加を肌で感じている。
変形性膝関節症にはまず減量指導
さて、変形性膝関節症のため通院不能になった方が何人かいる。全員、肥満症がベースにある。女性が多い。膝のためには痩せるしかないのだが、その痩せることが現実に困難な方がどこの医療機関に何人かいるだろう。栄養士を訪問させて訪問栄養指導をすることもある。ちなみに当院はNST認定施設でもある。地域では「在宅NST研究会」を開催している。しかし食事指導だけでは限界があるのも現実だ。痩せ薬を必要とする患者さんには、防風通聖散を投与している。防風通聖散は実に16種類もの生薬の合剤で、結構面白い漢方薬だ。以前、数十人の肥満症の方に防風通聖散を投与してデータを取ったことがある。もちろん食事指導との併用であるが、3ケ月で平均2~3Kgの減量効果があることが分った。なかには、10kg以上の減量に成功した人もいた。最近では、糖質制限ダイエット(あくまで期間限定)と防風通聖散を併用することが増えた。
あるいは、防い黄ぎ湯も処方する。防い黄ぎ湯は抗肥満作用に加えて、膝に貯まった水を吸収させる作用がある。関節穿刺しての水の吸引やヒアルロン酸注射を嫌がられる方には防い黄ぎ湯の出番である。その有効性は何百年という歴史が証明している。
痩せ薬と便秘薬としての防風通聖散
防風通聖散はもともと、便秘薬なので便秘気味の人に人気がある。ロコモでADLが低下するとたいてい便秘症になるので、防風通聖散は、痩せ薬と便秘薬の一石二鳥の効果が期待できる。日本における抗肥満薬としてマジンドールもあるが、厳しい投与制限がある。すなわちBMI35以上の高度肥満の人に3ケ月だけしか投与できない。一方、防風通聖散は誰にでも投与でき、しかも漢方の中では薬価が安いので私の繁用処方のひとつになっている。防風通聖散だけをもらうためだけに外来通院される方も少なくないくらい人気がある。人気があるということは、患者さんも効果を実感しているのだろう。
最近、認知症の在宅医療も増加している。食べたことを忘れて1日中、食べている人もいる。当然、肥満は進み、HbA1cは悪化する。うかうかしていると「多剤投与」になりがちだが、ベースにすべきはやはり防風通聖散であろう。周辺症状がある場合は、抑肝散も必要となることがある。私は2剤併用は副作用のリスクを考えてあまりしないので、防風通聖散か抑肝散かの選択に悩むことがある。いずれにせよ、認知症に伴う肥満は便秘症にもなる。よく食べるので空気を一緒に嚥下するので鼓腸になっていることも多い。やはり防風通聖散を重宝している。
ロコモは予防が重要
ロコモが原因で在宅になる症例がたしかに増えている。しかしロコモこそ予防が重要であると考える。それは、生活習慣病の予防と同じで食事と運動であろう。骨粗しょう症があれば、活性型ビタミンDやビスフォスフォネート製剤のお世話になることが増えた。しかしそうした中で、防風通聖散や防い黄ぎ湯の出番が益々増えると考えている。
- << 1.20を国民全員で考えよう!
- HOME
- 認知症ドライバーと交通事故 >>
このたびURLを下記に変更しました。
お気に入り等に登録されている方は、新URLへの変更をお願いします。
新URL http://blog.drnagao.com
この記事へのコメント
「老人票を1票でも欲しい政治家は「命は地球よりも重い」などと嘯く。「持ったことがあるのか?」と聞いてみたい。」大いに笑わせられました!(^^)!長尾先生、もうしばらく?!お元気でいて、私を笑わせてください?!♪
先日、滋賀では生の長尾先生を目の前で拝見し、フォーラムの話にも随分と刺激を受け。訪問看護婦さんたちの素敵なコメントも読ませていただき、私まで嬉しくなってしまい…少数派ではあっても志高く頑張ってる方々の姿には心から敬服します。後藤さんの解放についても、この世界への見方に関しても長尾先生の意見に教えられ、賛同もし、疑問ももち…考えさせられることばかりです。
人間の力では及ばないところの様々な出来事、考えても祈ってもスッキリしない不全感。情報の完全遮断を自らで行えば、それらからは解放され、安穏と日常を送り、感情を乱されることもないのでしょう…が。そういう生き方でいいのかどうか…父を自殺で亡くしてる私としては、その方法があるよね。
自決…「自分の命は私のものか?、神さまにも自死の許しを乞うて地上にサヨナラも、ありやな?!」…と…自問自答しながら…先生のブログ読みながら…考えさせられることしきりです(-.-)あっ、鬱っぽくなってるわけではなく、薬も服用してないので、正常に理性的に?!ちょっと暇あると考えさせられます。。。。。
Posted by あい at 2015年01月26日 01:27 | 返信
数年前からホームドクターとして漢方専門医にかかっておりまして、そちらの先生は、防風通聖散が安全なダイエット薬であるかのように宣伝されている現状は望ましくないと言っていました。
長尾先生のような影響力のある先生が処方名を挙げることで、診断を受けずにドラッグストアへ走ってしまう人が出ないかが少し心配です。
主治医は普通の"町の開業医"ですが、中医学の理論で治療にあたっており、風邪には葛根湯、のような病名処方はしません。証の診断をして個別に処方を決めますので、多剤投与の対極にあります。
ただ、健康保険では処方可能な範囲が限定されており、苦心されているようです。
Posted by 里寺 at 2015年01月26日 03:11 | 返信
保険適応されてから 漢方薬の使い方は非常に疑問です
漢方薬は「証」が一番大切です 「証」をとるには問診が必要なんですけど・・・・テレビで麻黄湯が○○○に良いと言ってたから薬局で買ってきてくれと嫁が言ったとお孫さんを連れた女性が来られましたが 麻黄湯の使い方はとても難しいのでお断りしました。
Posted by 薬剤師 井澤康夫 at 2015年01月29日 04:15 | 返信
コメントする
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL: