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90分後に生き帰った人の話

2015年02月16日(月)

産経新聞の連載には、いつも死ぬことばかり書いているので
一昨日は、たまには生き返った人の話を書いてみた。→こちら
90分間心臓が動かなくても後遺症無く回復する例もあるのだ。
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産経新聞・生と死シリーズ第8話  急性心筋梗塞直後の心室細動
                       90分間の蘇生処置後に後遺症無く復帰
 
 今日は「生」と「死」の淵を90分間もさまよいながらも、「生」の方に後遺症無く社会復帰された人を紹介します。正確には90分間、完全に死んでいたのですが、まさに奇跡的に生き帰ったという私の経験です。

 数年前のことです。その夜、1日の仕事を終えてラーメンを流し込み休日夜間診療所の当直に出ました。午後10時の夜診開始時には珍しく患者さんがゼロ。しかし10分後に私と同年齢の男性が冴えない顔をしてフラフラと診察室に入って来られました。問診票には「胸が苦しくて」と書いてある。椅子に座り「どうされましたか?」との質問に「さっきから胸が苦しくて・・・」と答えたところで失神しました。慌てて身体を支えましたが白目をむいて呼吸が止まっている!つまりいきなりの心肺停止状態。おそらく急性心筋梗塞を起こしながらなんとか歩いて到着したものの、私の前に座った途端に心室細動という致死性不整脈が出たのでしょう。考える間もなく気管内挿管を行い心臓マッサージなどの蘇生処置を開始しました。

 蘇生処置を続けながら、AEDのスイッチを何度も押しましたが救急隊が到着するまでの15分間は心拍は再開せず。同乗した救急車内でも救急隊員と一緒に心肺蘇生を続けましたがそれでも無理。20分後に大学病院の救急センターに到着し10人位の救急救命チームにバトンタッチして必死の心肺蘇生処置が続きました。粘り強く処置を続けたところ45分後に小さな心電図波形が出始めました。それでも少し心臓マッサージの手を離すとすぐに心電図がフラットになるのでまだ心拍再開とは言えない。果たして60分後に心拍が再開しました。ただすでに停止から90分も経過していたので、仮に一命をとりとめても植物状態ないし脳死コースかと思われました。奥さんに「万一、退院できたら連絡下さい」と名刺を渡して再び救急車に乗り帰り、翌朝まで当直業務を続けました。

 その2週間後、午前の診療が終わる頃、小さな菓子折を持った夫妻が当院の受付に挨拶にみえられました。私と同年齢、同体格、そして似た顔をしたあの日の男性でした。ああ、あの後、生き返ったのだ。あの後心拍が再開して、そのままカテーテルで処置をして、夜のうちに自発呼吸も再開して抜管できたと教えてくれました。男性は、バツが悪そうにはにかみながらも、禁煙を約束してくれました。不思議なご縁をお互い喜びあいました。

 もちろん救命チームが蘇生を諦めなかったことが勝因ですが、到着までの35分間の私の処置も貢献したはず。30年前、2年間ほど救急医療の現場にいた経験が役に立ちました。先日、心肺停止から後遺症無く蘇生した日本記録が82分間だと新聞に載っていましたが、この患者さんの心肺停止時間は90分以上でした。たとえ90分間も心肺停止しても蘇生に成功し後遺症無く社会復帰している例があるので諦めたらダメだと教えられました。いつも死ぬ話ばかり書いていますが、たまには人を生き返らせています。(笑)
2月21日(土)21時~23時10分のフジテレビ系(8チャンネル)で、本邦初の死に関する特集番組が放映されます。全国民に観て欲しい内容。録画もしてください。

キーワード 82分の日本記録
心筋梗塞で心停止した愛媛県西予市の男性(61)が運ばれた市立八幡浜総合病院で、82分後に再度心臓が動き始め、愛媛大学病院での「低体温療法」で、約1週間後に意識を取り戻した例が国内最長時間として報道されている。

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この記事へのコメント

先日家族が入院先の病院のトイレで心停止の状態で発見され90分の蘇生処置の末、心拍再開だったそうです。
90分も蘇生処置頂けることなどあるのでしょうか?心拍は再開しましたが、意識回復は難しいと宣告されました。

Posted by 奥村彰太郎 at 2022年07月25日 12:13 | 返信

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