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がん検診 受けるべきか、受けざるべきか
2015年05月26日(火)
毎年受けるようにと言われている「がん検診」。
しかしがんが見つかったら怖いし、何歳まで受けるのか?という疑問も。
「がん検診は一切意味が無い」という極論ではなく現実論を書いてみた。
しかしがんが見つかったら怖いし、何歳まで受けるのか?という疑問も。
「がん検診は一切意味が無い」という極論ではなく現実論を書いてみた。
月刊 公論 の6月号の連載は、
「がん検診 受けるべきか、受けざるべきか」について書いた。→こちら
もっと簡単に、がんの有無が分かるようになればいいのに。
尿を採るだけでがんの有無が分かるかどうかの研究が進んでいるが、
簡便化も鍵であろう。
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
公論6月号 がん検診、受けるべきか、受けざるべきか 長尾和宏
放置してもいいがんもある
2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで死ぬ
俳優の愛川欣也氏が肺がんのために逝かれた。歌手のつんく♂氏の喉頭がんの手術で声を失った。そして俳優の今井雅之氏が大腸がんでの闘病を告白された。このようにメデイアには日々、がんに関する情報が溢れている。一方、書店では「がんもどき」や「がん放置療法」といった奇抜なタイトルの本飛ぶように売れている。しかしそれを持ちあげた週刊誌記者自身ががんと判明したら、慌ててがんセンターを受診しているのが現実だ。要するにがんという病を一人称で考えていない人達が、売らんかなという姿勢で「極論」を囃したてているようにも見える。またきっと多くのがん患者さんたちは、我が国のがん医療の現状に満足していない面もあろう。最期まで抗がん剤を打ちながら逝かれた遺族には心残りがある。私を含む医療人はこうした国民の声にしっかり耳を傾けなければならない。
日本人の2人に1人ががんになる。3人に1人ががんで亡くなっている。これは脅しではなく紛れもない現実だ。がんは数多ある病気の中でも最もありふれた病気である。しかし有名人ががんになるたびに大騒ぎになる。また有名ながん専門医が「自分ががん患者になって初めて分かったこと」のような本を書いては売れる。このように、がんという病を一人称で捉えることは意外に難しい。
がん検診の受診率が日本は先進国のなかで低いことが問題視されている。自覚症状が出てからでも充分だろう、と甘えているのか。あるいは、がんにせよ死にせよ、「自分だけは例外」と楽観的に考えているのか。あるいは、「もしがんが見つかったら怖い」という小心者が多いのかもしれない。何を隠そう、私自身ももう何年も検診とやらを受けていないので偉そうなことは言えない。(笑)
放置しても死ににくいがん
あるカルチャー教室から講演を依頼された。何を話してもいいというので「放置したほうがいいがん、治療したほうがいいがん」というタイトルを掲げたら担当者が飛んできた。「先生、ふざけないでください!」当たり前のことをお伝えしようと思っただけなのだが、担当者の慌てぶりにこちらが驚いた。
がんの予後を表す「5年生存率」という指標がある。病気が判明していろんな治療を受けるにせよ、5年後に生存している確率である。2003年~2005年にがんと診断された日本人の「がんの統計13年度版」のがん種別5年生存率を調べてみた。全がんの5年生存率は、58.6%である。もしみなさまの周囲にがんと分かった人がいるなら、その人が5年後に生きている確率は約6割だというのだ。
がんであれば「5年生存率」はだいたい同じだろう、と思われる人がいるかもしれないが間違いだ。「5年生存率」が高いがんと低いがんがあり、なんと10倍以上の差がある。「5年生存率」が高いがんの上位5つを挙げてみる。前立腺がん 93.8%、甲状腺がん 92.2%、乳がん89.1%、子宮体がん 79.8%、喉頭がん 75.9%である。反対に、「5年生存率」が低いがんとして、食道がん、肝臓がん、胆のうがん、胆管がん、膵臓がん、肺がん、脳腫瘍、白血病などが挙げられ、7~34%という数字が並んでいる。
80歳男性にPSA検査から前立腺がんが見つかることがあるが、5年後に生きている確率が94%もあるのであれば、既に男性の平均寿命を過ぎているので治療するかしないかという選択はどうでもいい問題なのかもしれない。80歳女性に偶然発見された甲状腺がんも同じ理屈になる。すなわち高齢者のこうした臓器にできたがんには「放置療法」は理にかなった考え方であり極論本が売れようが売れまいが、放置することは決して珍しいことではない。
受けた方がいいがん検診
がん検診を受けたほうがいいがんを独断と偏見で書いてみる。塩辛いものが好きな人は、できれば胃カメラでがん検診を受けてほしい。お酒とタバコが好きな人なら、食道がんや咽頭がんもリスクも高いので胃カメラの先生に直接、カメラを飲む直前に「喉と食道もよく観てくださいね!」と言ったほうがいい。よほど目を凝らして見ないと、助かる範囲の食道がんは見つけにくいのだ。もし余裕があれば「ピロリー菌も調べてください」と加えて欲しい。胃がんが無くて慢性胃炎があるならば、胃がん予防のためのピロリー菌除菌の対象者になるからだ。
お肉が好きな人には便潜血検査と腹部超音波検査をお勧めしたい。便潜血検査は、爪楊枝のような棒を便に刺すだけで苦痛はゼロ。できれば2本を提出願いたい。増加する膵臓がんや胆のうがん・胆管がんは、黄疸や腹痛などの自覚症状が出た時には既に手遅れのことが多い。機会があれば超音波検査を受けて頂くと膵管や胆管の拡張でがんを疑う。もし直径1~2cm程度で発見できれば命が助かる場合が多い。
肺がんの早期発見は意外に難しい。もう他臓器に転移があるステージⅣの肺がんでも胸部単純レントゲンで見落とすことがある。特に喫煙者はできれば肺のCTを撮って欲しい。毎年撮ると放射線被ばくが問題になるので、思い立った時でもいい。
律儀に誕生日に毎年人間ドックに入られる人がおられる。時間的・経済的余裕がある壮年期の人にはお勧めだ。しかし逸見正孝氏のスキルス胃がんの例にもあるように内視鏡の名手に半年ごとの検査を受けても早期に発見できないがんが存在するのも事実である。偶然撮った肺のCTに偶然腹部臓器(肝臓、腎臓、膵臓)のがんが早期発見され命拾いした人はいくらでもいる。要はがん検診も運なのだ。がんができる臓器、年齢、検査の頻度等が噛み合えば早期発見・早期治療という恩恵に預かれるが、上手く噛み合わない人もおられる。検診や人間ドックは、健康保険を使わず自費で行うものだが、上手にちゃっかり健康保険を使う人もいる。たとえば、腹痛と便秘で消化器内科を受診すれば、当然、さまざまな検査を健康保険で受けられる。以上はあくまで、平均寿命以下の人へのアドバイス。無事にそれを超えた方は受けないほう方がストレスという観点からも得だろう。
「がん検診 受けるべきか、受けざるべきか」について書いた。→こちら
もっと簡単に、がんの有無が分かるようになればいいのに。
尿を採るだけでがんの有無が分かるかどうかの研究が進んでいるが、
簡便化も鍵であろう。
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
公論6月号 がん検診、受けるべきか、受けざるべきか 長尾和宏
放置してもいいがんもある
2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで死ぬ
俳優の愛川欣也氏が肺がんのために逝かれた。歌手のつんく♂氏の喉頭がんの手術で声を失った。そして俳優の今井雅之氏が大腸がんでの闘病を告白された。このようにメデイアには日々、がんに関する情報が溢れている。一方、書店では「がんもどき」や「がん放置療法」といった奇抜なタイトルの本飛ぶように売れている。しかしそれを持ちあげた週刊誌記者自身ががんと判明したら、慌ててがんセンターを受診しているのが現実だ。要するにがんという病を一人称で考えていない人達が、売らんかなという姿勢で「極論」を囃したてているようにも見える。またきっと多くのがん患者さんたちは、我が国のがん医療の現状に満足していない面もあろう。最期まで抗がん剤を打ちながら逝かれた遺族には心残りがある。私を含む医療人はこうした国民の声にしっかり耳を傾けなければならない。
日本人の2人に1人ががんになる。3人に1人ががんで亡くなっている。これは脅しではなく紛れもない現実だ。がんは数多ある病気の中でも最もありふれた病気である。しかし有名人ががんになるたびに大騒ぎになる。また有名ながん専門医が「自分ががん患者になって初めて分かったこと」のような本を書いては売れる。このように、がんという病を一人称で捉えることは意外に難しい。
がん検診の受診率が日本は先進国のなかで低いことが問題視されている。自覚症状が出てからでも充分だろう、と甘えているのか。あるいは、がんにせよ死にせよ、「自分だけは例外」と楽観的に考えているのか。あるいは、「もしがんが見つかったら怖い」という小心者が多いのかもしれない。何を隠そう、私自身ももう何年も検診とやらを受けていないので偉そうなことは言えない。(笑)
放置しても死ににくいがん
あるカルチャー教室から講演を依頼された。何を話してもいいというので「放置したほうがいいがん、治療したほうがいいがん」というタイトルを掲げたら担当者が飛んできた。「先生、ふざけないでください!」当たり前のことをお伝えしようと思っただけなのだが、担当者の慌てぶりにこちらが驚いた。
がんの予後を表す「5年生存率」という指標がある。病気が判明していろんな治療を受けるにせよ、5年後に生存している確率である。2003年~2005年にがんと診断された日本人の「がんの統計13年度版」のがん種別5年生存率を調べてみた。全がんの5年生存率は、58.6%である。もしみなさまの周囲にがんと分かった人がいるなら、その人が5年後に生きている確率は約6割だというのだ。
がんであれば「5年生存率」はだいたい同じだろう、と思われる人がいるかもしれないが間違いだ。「5年生存率」が高いがんと低いがんがあり、なんと10倍以上の差がある。「5年生存率」が高いがんの上位5つを挙げてみる。前立腺がん 93.8%、甲状腺がん 92.2%、乳がん89.1%、子宮体がん 79.8%、喉頭がん 75.9%である。反対に、「5年生存率」が低いがんとして、食道がん、肝臓がん、胆のうがん、胆管がん、膵臓がん、肺がん、脳腫瘍、白血病などが挙げられ、7~34%という数字が並んでいる。
80歳男性にPSA検査から前立腺がんが見つかることがあるが、5年後に生きている確率が94%もあるのであれば、既に男性の平均寿命を過ぎているので治療するかしないかという選択はどうでもいい問題なのかもしれない。80歳女性に偶然発見された甲状腺がんも同じ理屈になる。すなわち高齢者のこうした臓器にできたがんには「放置療法」は理にかなった考え方であり極論本が売れようが売れまいが、放置することは決して珍しいことではない。
受けた方がいいがん検診
がん検診を受けたほうがいいがんを独断と偏見で書いてみる。塩辛いものが好きな人は、できれば胃カメラでがん検診を受けてほしい。お酒とタバコが好きな人なら、食道がんや咽頭がんもリスクも高いので胃カメラの先生に直接、カメラを飲む直前に「喉と食道もよく観てくださいね!」と言ったほうがいい。よほど目を凝らして見ないと、助かる範囲の食道がんは見つけにくいのだ。もし余裕があれば「ピロリー菌も調べてください」と加えて欲しい。胃がんが無くて慢性胃炎があるならば、胃がん予防のためのピロリー菌除菌の対象者になるからだ。
お肉が好きな人には便潜血検査と腹部超音波検査をお勧めしたい。便潜血検査は、爪楊枝のような棒を便に刺すだけで苦痛はゼロ。できれば2本を提出願いたい。増加する膵臓がんや胆のうがん・胆管がんは、黄疸や腹痛などの自覚症状が出た時には既に手遅れのことが多い。機会があれば超音波検査を受けて頂くと膵管や胆管の拡張でがんを疑う。もし直径1~2cm程度で発見できれば命が助かる場合が多い。
肺がんの早期発見は意外に難しい。もう他臓器に転移があるステージⅣの肺がんでも胸部単純レントゲンで見落とすことがある。特に喫煙者はできれば肺のCTを撮って欲しい。毎年撮ると放射線被ばくが問題になるので、思い立った時でもいい。
律儀に誕生日に毎年人間ドックに入られる人がおられる。時間的・経済的余裕がある壮年期の人にはお勧めだ。しかし逸見正孝氏のスキルス胃がんの例にもあるように内視鏡の名手に半年ごとの検査を受けても早期に発見できないがんが存在するのも事実である。偶然撮った肺のCTに偶然腹部臓器(肝臓、腎臓、膵臓)のがんが早期発見され命拾いした人はいくらでもいる。要はがん検診も運なのだ。がんができる臓器、年齢、検査の頻度等が噛み合えば早期発見・早期治療という恩恵に預かれるが、上手く噛み合わない人もおられる。検診や人間ドックは、健康保険を使わず自費で行うものだが、上手にちゃっかり健康保険を使う人もいる。たとえば、腹痛と便秘で消化器内科を受診すれば、当然、さまざまな検査を健康保険で受けられる。以上はあくまで、平均寿命以下の人へのアドバイス。無事にそれを超えた方は受けないほう方がストレスという観点からも得だろう。
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この記事へのコメント
私は、近所の評判も良くて、お会いしてみると、気の合いそうなお医者さんのところでは癌検診しています。
子宮頸がん、大腸がん、ピロリ菌だけですけど。
お酒を飲み過ぎるので、肝癌になるかも。脂肪肝っていわれているのです。
Posted by にゃんにゃん at 2015年05月26日 09:33 | 返信
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