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医療事故対応の現状はこんなもんです
2015年08月08日(土)
医療事故という言葉は、もはや国民なら誰でも知っている。
しかし実際にそれが起きた時、そのあとどうなっていくのか、
については、実は知っている人がほとんどいないのが実態だ。
しかし実際にそれが起きた時、そのあとどうなっていくのか、
については、実は知っている人がほとんどいないのが実態だ。
医師法21条という法律の解釈を、日本法医学会が誤って広めた
後遺症にいまでも、医療界も国民も悩まされているのだ。
そもそも医師法21条とは、明治時代にできた法律で
「異状死体」の届け出義務を定めている。
しかし1994年に作成された日本法医学会の異常死ガイドラインが、
医師法21条にありもしない「異状死」という概念を独自に定義したこと
から問題が拡大した。
その後、様々な医療事件への刑事介入をきかっけにして
事故調の議論が始まり、2014年6月に改正医療法が成立した。
そして本年10月より、医療事故調査制度が開始することになっているが、
どんなことになるのやら、まだモメている。
予期せぬ事故が発生した時に、院内調査とは別に第三者機関である
医療事故、支援センターに報告することになっている。
しかし本来の目的である原因究明、再発防止とは異なり、
個人の責任追及に使用される危険性が危惧されているのだ。
すべての発端は、日本法医学会が「異状死体」と「異状死」を混同させたことにある。
まことに罪深いことをしたと私は憂うが、日本法医学会はそうは思っていないようだ。
日本医事新報という医療者が読むトップ雑誌に、私はそのあたりの反論を
書いたので、このブログを読まれているお医者さんは是非参考にして欲しい。→こちら
最近、国立国際医療研究センターで造影剤医療事故が起こったが、
その事故への対応について坂根先生が解説しておられるのでMRICより転載させて頂く。
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だんまりを決め込む人たち ?ウログラフィン誤投与事件の責任の所在-
現場の医療を守る会 代表世話人
医法協 医療事故調運用GL作成委員会副委員長
坂根Mクリニック 坂根みち子
2015年8月8日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
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2014年4月、国立国際医療研究センター病院で研修中の整形外科医が脊髄造影には禁忌薬であるウログラフィンを誤投与し、78歳の女性が亡くなった。病院は事故直後に内規に従って警察に届け出、研修医は業務上過失致死罪で起訴された。2015年7月14日に東京地裁にて禁錮1年執行猶予3年の有罪判決が確定した。
この事件は、世界の医療安全の常識から大きく外れており、事件の経過も裁判の結果も医療現場にいるものとして見過ごすことが出来ない。最も責任を取らなければいけない人々、こういう時こそ活動して頂きたい方々がだんまりを決め込んでいては、また同じことが繰り返されると思われるので、きちんと指摘しておきたい。
1.国立国際医療研究センター病院のだんまり
1)国立国際医療研究センター病院は自らのシステムエラーを放置して現場の医療者個人の責任を追及した。重大な人権侵害である。特に今回は、研修医が対象である。研修医が研修先の違いで刑事罰に処されることがあってはならない。単純誤薬は、病院が警察に届けなければ、裁判になる可能性は極めて低かった事例である。病院が研修医を守れないなら研修医を募集してはいけない。国立国際医療研究センター病院は、病院の不備を認め研修医に謝罪し、医療者の人権にも配慮した安全管理システムの改善事項を公表すべきである。
2)国立国際医療研究センター病院は、医療安全推進のためには当事者を罰してはいけないという世界保健機構(WHO)も認める基本ルールに反して警察に届けた。
この内規は1999年の都立広尾病院事件をきっかけに2000年に厚労省が、医療事故は警察に届けるようにというマニュアルを出したのがきっかけで広まった規則だが、2008年に元のマニュアルは失効している(但し、この事実が明らかになったのは2015年)。また、都立広尾病院事件をきっかけに、異状な死亡は24時間以内に警察に届けるようにと曲解された医師法21条が診療関連死にも適応されるようになってしまったが、これも2004年に最高裁判決が出て、故意の犯罪を見逃さないために外表を検案して異状があった場合に届け出ると限定することで決着がついている。「国立国際」を名乗る病院が、これらを学ぶことなく旧態依然とした体制のまま、内規に従って警察に届けた罪は重い。この病院の医療安全の責任者と歴代病院長は何をしていたのか責任の所在を明らかにすべきである。
3)国立国際医療センター病院は、医療安全推進のためには当事者の秘匿性が大事であるという基本ルールを理解せず、当事者が特定されてしまうような記者会見を行い、研修医がバッシングにさらされた。
医療事故公表基準も都立広尾病院事件をきっかけに出来たものであるが、この15年間の医療安全についての世界の趨勢から学ぶことなく、当事者が特定されうる公表を行ったのは大きな問題である。
4)遺族の処罰感情が非常に強く、国立国際医療センター病院の初動体制の失敗はあきらかである。
この場合の初動体制とは、事故直後、遺族のグリーフケアも含め、迅速に真摯に謝罪・説明することである。また医療安全のためには、個人を罰することなくシステムの改善が必要であること。貴重な医療資源である研修医を今後どのように戦力として育てていくか遺族に理解してもらうことも重要である。これらは刑事裁判を回避して、民事で補償していくことを理解して頂くこととセットで進めていくべきことである。残念ながら病院は初動体制に失敗したばかりでなく、その後の裁判でも「病院は、通り一遍の謝罪しかなく、傍聴にも来ない」と更に遺族は怒りを増幅させている。結果として病院の遺族対応はすべてに失敗している。これでは民事の補償交渉も難航するであろうし、初動体制の失敗が、この事件が略式起訴ではなく裁判となり、更に同様の事故の中でも重い判決となったことに対する認識が感じられない。
2.国立国際医療研究センター病院の元院長 木村壮介氏のだんまり
木村壮介氏は、この事件が起きる直前まで国立国際医療研究センター病院の院長を務めており、現在日本医療安全調査機構の中央事務局長である。つまり、上記の体制の不備について最も責任があったと思われる人物であるが、この件に関しては、何ら責任を取ることもせず、だんまりを決め込んでいる。あまつさえ現在10月から施行される医療事故調査制度の幹部になると言う話しである。木村氏は本事件の責任を取って、医療安全に関わるすべての役職を辞退すべきである。
3.医療安全関連学会・日本医師会のだんまり
今回の事件の病院の対応について各医療安全関連学会や日本医師会が、病院に抗議したと言う話しは寡聞にして知らない。これらの学会や医師会から法曹界やメディアに対して声明文や抗議文が出された形跡もない。研修医に対する嘆願書は各地から出されたが、これとて各地の保険医協会や現場の医療を守る会有志、医師会では新潟県医師会、諫早市医師会などから出されただけで一番医療安全に詳しいはずの学会関連・現場の医療者を守るべき日本医師会は全く動かなかった。病院の元院長や関係者が学会の幹部であることとの関連が疑われる。自律できない医療界に未来はない。
4.大手メディアのだんまり
大手メディアは、個人の責任追及が何ら医療安全に資することがなく、日本の対応は世界の常識からかけ離れたものであることをきちんと報道すべきである。崩壊しそうな医療現場を顧みることなく、遺族の処罰感情に沿ったワイドショー的報道を繰り返すことは、国民にとっても不利益である。
5.法曹界のだんまり
裁判官と検察の不勉強が甚だしい。すでに同じ単純誤薬で9人の方が亡くなり、7人が有罪となっている。このような単純過誤を厳罰に処しても、医療安全に寄与しないことは世界の常識である。事故の背景要因を分析して、病院の管理者責任(場合によっては国の責任)を問うのが筋である。ところが本件では、時代に逆行するように、個人の責任に固執し、同じ事故と比較しても重い処分とした。他の先進国の対応と雲泥の差である。東京地裁 大野勝則裁判長も検察も医療安全の「い」の字も全く勉強していないことを露呈した。不勉強な裁判官による時代錯誤な判決が現場の医療者の法曹界への不信感を増幅させている。付け加えるなら、原告側の弁護士も処罰感情をあおって医療者を現場から立ち去らせることが私たちの社会にとって必要なことなのか、よく考えていただきたい。医療者と違い法曹界の方々の身分は非常に強く守られている。判断の間違いがあっても罪に問われることはない。自戒を込めて門外漢の分野に於ける逸脱した判決は検証できるシステムにして頂きたいものである。
6.行政処分もだんまり?
医師免許の停止は、1年に2回医道審議会で決まるが、刑事処分に連動しているそうである。その刑事処分に問題があっても、機械的に処分が決まるなら医道審議会などいらない。今回の事件ではまだ行政処分が出ていないが、今の世界の常識では受ける必要のなかった刑事処分に連動して、更に行政処分まで受けさせることがないよう関係者の方々の熟考をお願いしたい。
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この10月から医療事故調査制度がスタートするのを踏まえ、誤解が生じやす
いポイントについて、m3.com意識調査でお聞きしたところ、いまだ正しい解釈
が浸透していない実態が浮き彫りになりました(詳細な結果はこちら)。
ぜひ一度、医療事故調査制度の法的根拠となる「医療法」および「医療法施
行規則」をお読みください。
Q1:制度の目的は「医療安全」正解者:医師会員の20%、医師以外の会員の16
%
確かに、院内事故調査の結果等については、遺族への説明が求められますが、
医療法上では、医療事故調査・支援センターを第三者機関として設置する目的
として「医療の安全の確保」を掲げています。厚生労働省による、制度に関す
るQ&Aでも「WHOドラフトガイドラインでは、報告システムは、『学習を目的と
したシステム』と『説明責任を目的としたシステム』に大別され、本制度は前
者に当たる」と説明。
Q2:第三者機関である医療事故調査・支援センターに報告する医療事故の対象
は、「医療過誤の有無を問わない」正解者:医師会員の54%、医師以外の会員
の65%
センターへの報告対象は、「医療に起因し、または起因すると疑われる死亡・
死産で、管理者が当該死亡・死産を予期しなかったもの」。つまり「医療に起
因したか」と「予期しなかったか」の二つが判断基準であり、医療過誤の有無
は報告対象の判断に関係ありません。
Q3:院内事故調査委員会に「外部委員を入れることは義務ではない」正解者:
医師会員の24%、医師以外の会員の24%
医療事故調査制度の特徴は、院内調査を基本としている点で、センターに報
告した医療事故は、院内で調査することが求められます。医療法では、「医療
事故調査を行うために必要な支援を求めるものとする」としているものの、外
部委員を入れる義務までは規定していません。
Q4:院内事故調査報告書は当事者について「匿名化」と「非識別化」が必要正
解者:医師会員の55%、医師以外の会員の59%
省令において、院内事故調査が終了した際には「医療事故に係る医療従事者
等の識別(他の情報との照合による識別を含む)ができないようにした報告書
を提出」と求めています。これは単に、A氏、B氏などと置き換え、匿名化する
だけでは不十分で、他の情報とひも付けても当事者等が分からないようする「非
識別化」が必要です。
Q5:院内事故調査の結果は、「口頭もしくは文書、あるいは双方で」正解者:
医師会員の54%、医師以外の会員の63%
省令において、院内調査終了時の遺族への説明については、「口頭(説明内
容をカルテに記載)または書面(報告書又は説明用の資料)もしくはその双方
の適切な方法により行う」「調査の目的・結果について、遺族が希望する方法
で説明するよう努めなければならない」と定められています。文書での説明が
義務化されているわけではありません。
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