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人ごとではない認知症と火事

2015年08月27日(木)

認知症と火事。
これは、たいへん難しいテーマである。
しかし今後、年々大変になるであろう。
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「社会全体で救う制度を」

 社会保障制度の本質を問われる時代

 〜病気は罪か〜

(抜粋)
 認知症の人によるトラブルをめぐっては愛知県で07年、91歳の男性が徘徊(はいかい)中に列車にはねられ死亡した事故で、JR東海が遺族に振り替え輸送費などの賠償を求めた訴訟の一、二審判決も妻に賠償を命じた。

 賠償責任の根拠は、夫婦の助け合い義務を定めた民法752条だった。この規定は戦後まもない1947年にできた。まだ家族の人数が多く、地域の絆も強かった時代だ。

 「核家族化が進み、認知症患者を支える身近な人は限られるのが現実。民法の規定を機械的に当てはめ、過度に責任を課すのは酷だ」と棚村政行・早稲田大教授(家族法)は言う。

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『認知症の夫が火災、責任は 留守中の妻に「過失」判決』
 2015年8月24日
 http://apital.asahi.com/article/news/2015082400009.html

 認知症の夫を家に残して妻が用事で出かけた時、火事が起きた。隣の家に燃え移り、裁判で賠償を求められた妻。判決は夫婦の助け合いを義務付けた民法の規定を当てはめ、妻に賠償を命じた。介護に明け暮れ、わずかに目を離したすきの惨事。その責任のすべてを妻は負わなければならないのか――。認知症500万人時代、社会が支え合う仕組みを求める声があがる。

 大阪地裁判決(谷口安史裁判官、5月12日付)によると、火災は2013年4月2日夕、認知症を患う当時82歳の夫と、妻(73)が暮らす大阪府内の住宅で起きた。妻が郵便局に出かけて留守中、3階の洋室付近から出火して29平方メートルが焼け、隣家の屋根と壁の一部に延焼した。夫が紙くずにライターで火をつけ、布団に投げたとみられると現場の状況から認定した。

 夫は11年8月に認知症と診断され通院。警察は刑事責任能力がないと判断し、大阪府が措置入院とした。2カ月後に退院したが昨年11月、84歳で亡くなった。

 夫婦は延焼の損害を補償する火災保険には入っておらず、隣家の住人は昨年4月、夫への監督義務を怠ったとして妻に200万円の賠償を求めて提訴。妻は「夫は他人に危害を加えたことがなく、当日も落ち着いていた」と反論した。

 判決は、火災の前月ごろから夫は認知症が進み、姉に「妻が死んだ」と電話するなど妄想による言動があったと指摘。民法752条の「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない」という規定を踏まえ、妻には夫が異常な行動をしないか注意深く見守る義務があったとし、夫を残して外出したことは「重い過失」と判断した。

 そのうえで、隣家の修理費143万円のうち弁償済みの100万円を差し引き、残り43万円の支払いを妻に命じた。妻は納得できず控訴し、審理は9月1日から大阪高裁で始まる。

 ■「家でみとりたかった」

 「私は、どうすればよかったんでしょうか」。裁判で賠償責任があるとされた妻は取材にそう漏らした。

 火災の約1時間前、郵便局の不在通知に気づいて出かけた。夫と「車で旅行にでも行こうか」と話し、全国道路地図を通信販売で注文していた。ようやく届いたかと弾む気持ちで伝えると、夫は「行っといで。テレビ見てるから」。そう返す姿は落ち着いて見えた。

 夫は化学薬品会社の元営業マン。定年後は夫婦で卓球を楽しむ日々だった。その夫に異変が起きたのは火災の2年前。部屋で一点を見つめ、動かない状態が続いた。認知症だった。夫は「情けない」と嘆いた。

 妻は自宅介護を選んだ。一人息子を育て上げ、夫婦で共に歩んできた人生をまっとうし、その最期も家でみとりたかった。そんな選択ごと判決に否定された気がして、悔し涙が出る。

 「同じような境遇の人は大勢いる。控訴審では、そんな人たちの心を少しでも軽くする言葉がほしい」

 ■「社会全体で救う制度を」

 認知症の人によるトラブルをめぐっては愛知県で07年、91歳の男性が徘徊(はいかい)中に列車にはねられ死亡した事故で、JR東海が遺族に振り替え輸送費などの賠償を求めた訴訟の一、二審判決も妻に賠償を命じた。

 賠償責任の根拠は、夫婦の助け合い義務を定めた民法752条だった。この規定は戦後まもない1947年にできた。まだ家族の人数が多く、地域の絆も強かった時代だ。

 「核家族化が進み、認知症患者を支える身近な人は限られるのが現実。民法の規定を機械的に当てはめ、過度に責任を課すのは酷だ」と棚村政行・早稲田大教授(家族法)は言う。

 全国の当事者でつくる「認知症の人と家族の会」(京都市)も、賠償責任を本人や家族だけに負わせず、社会全体で救済する制度をつくるよう求めている。厚生労働省の担当者は「何らかの仕組みは必要だが、具体策の検討には至っていない」と話す。

 厚労省によると、高齢者(65歳以上)の認知症患者は2012年現在462万人で、高齢者の7人に1人の割合。10年後には700万人に達し、5人に1人になると予想される。


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この記事へのコメント

人ごとではない認知症と火事 ・・・・・・ を読んで


認知症患者を守るため、国は在宅ケアと
地域(包括)ケアに、ハンドルを切りました。


いつまでの住み慣れた地域〔自宅〕に住み
続けて、心穏やかに老齢期を過ごすことは
とても重要な〔望ましい〕ことと私は思い
ますが、その場合の一番の心配事が“火の
不始末:失火”です。


認知症の出現する症状にも拠りますが、料理
中に火にかけた鍋のことを失念して、鍋を
焦がす、或いは、失火しボヤに発展すること
は、容易に考えられることと思います。


先の徘徊中に鉄道の線路に入り、人身事故と
なり妻に賠償責任を認めた判例、そしてまた
失火による火災発生時の賠償責任を認めると
なると ・・・・・・・、事実上、認知症患者の在宅
看護は不可能となると思います。


誰かを悪者にしなければ賠償が成立せず、被
害者が泣き寝入りするということは分りますが、
そのような被告(加害者?)に賠償する能力
(財産の裏づけ)がある場合は少ないと思い
ます。

有罪判決を受けて、支払う意思があっても支払
えないことが殆どと思います。


今回の寝屋川の通り魔のような事件でも、犯人
が言われているように山田容疑者だとして、彼
に賠償能力があるとは思えません。


被害者の救済は必要なことですから、不可抗力
の事案による被害者、例えば責任能力のない、
認知症患者が引き起こした事件や、賠償能力
のない通り魔の起した事件の被害者救済には
長尾先生の指摘されている「社会全体で救う
制度」が必要と考えています。


国の財政がひっ迫している中で、国民が引き
起こした事件・事故の賠償(救済)を税金で
賄うことに多々問題はあろうかと思いますが、
被害者を救済する必要はそれ以上に重要な課題
であると思います。

今朝〔8/27〕の6チャンネルの「おはよう朝日
です」で、白衣を来て正統な医師を演じていた
長尾先生が、いわゆる“良い先生”に変身して
しまうことを危惧していましたが、継続して
社会問題に物申す医師を貫かれて行かれる姿勢
を確認することが出来て、嬉しく思っています。

長尾先生の真骨頂は、正義の町医者! と思い
ます。

これからも、その姿勢で後20年頑張って戴き
たいと希望しています。

Posted by 小林 文夫 at 2015年08月27日 09:39 | 返信

今年4月初めの未明、96歳になる姑の部屋から出火し全焼しました。
隣の部屋で寝ていた長男が気付いた時は部屋から火と煙が噴き出ていたとのことで、長男の火事だ!という声で目が覚めバケツリレーをしたのですが長男の「ダメだ!」「119番!!」という言葉に姑の部屋の前に駆けつけ大声で呼びかけたのですが不気味なほど中はシンとしていました。すごい煙でむせ込み長男の消防!という声に促され119番した時は煙で喉をやられて声が出ませんでした。

凄く寒い日で電気ストーブをつけて寝ていた為、火が布団に燃え移った事が原因でした。
気付くのが遅ければ長男もダメだったと思います。
姑の死因は焼死ではなく煙を吸っての中毒死だったとのことですが、長男が気付くまで何の声もせずベッドの下で倒れた形でみつかりました。
姑は高齢でしたが私をボケ扱いするほどしっかりしていました。認知症ではありませんでしたが不注意は免れなかったのだと思います。

幸いご近所には大きな被害にならずお見舞金だけで済んだのですが、やはり私の不注意でもあり申し訳ない思いでいっぱいでした。お詫びに行ったときお隣の奥さんが「急に風向きが変わってこっちに来ていた火が向こうへ行っちゃったのよ!奇跡よ!」と言ってくださり、お向かいのご主人が長男に「心配するな!」と言ってくださったとのことで本当にありがたく思っています。
今長女の家にいますが、やることやっても居候は居候で、日が経つにつれ肩身の狭い思いで、早く家が完成しないかな~と願うばかりです。

補足
なぜか和室が押入れと天井、ふすまを除きそのまま残ったのですが(7割以上は全焼になるとのことでした)大事なものはすべてその部屋に集まっており着の身着のままで飛び出したにもかかわらず必要なもの、失くしたくないものがすべて無事で、何より驚いたのが炬燵の中に逃げ込んでいた飼い猫が(外へ逃げたとばかり思っていました)出火から7時間経って無事に消防士に保護されたことです。炬燵の蒲団が消化の水で濡れ、煙を防いだことが幸いしたようです。どうか皆様も火にはくれぐれもご注意ください。

Posted by 桜 at 2015年09月05日 04:18 | 返信

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