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あっぱれ、川島なお美!
2015年09月28日(月)
川島なお美さんの訃報を受け、多くの人ががんという病気に関心を寄せている。
彼女は、見事な人生の終末期を過された。
身をもってがんとのつきあい方を教えてくれたことに、ありがとう!と言いたい。
彼女は、見事な人生の終末期を過された。
身をもってがんとのつきあい方を教えてくれたことに、ありがとう!と言いたい。
痩せた姿を見た時(9月20日)から、川島さんのことを
アピタルに書き、もう少し書くつもり。(現在進行形)
朝日新聞アピタルに寄稿した拙文4本を並べてみたい。
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
9月20日(日) あっぱれ、川島なお美!
女優の川島なお美さんが、昨年一月に肝内胆管がんで手術を受けられて、
現在激ヤセされたことが、いろんなメデイアで報じられています。
特に私の世代には昔から人気がある女優さんですが、昔のイメージとかなり
違う近況写真に、驚いた方も多いでしょう。
一昨日は、出演していた舞台を体調不良で降板したと報じられました。
手術後の体調を心配されている方が多いと想像します。
しかし川島なお美さんのブログのコメントは意外に楽天的に見えました。
ブログを通してファンから応援のメッセージをもらい、喜んでおられる様に見えました。
降板する数日前には、ステージに立つ喜びと意気込みを元気いっぱいに語っておられた。
舞台を降板されたことは、ご本人が一番ショックなことでしょう。
私は、川島なお美さんの覚悟と明るさに、医師として感服する想いでした。
多くの女優さんは体調が悪くなれば、あまりカメラの前に出ないと思います。
しかしご病気で痩せられた川島さんは、誰の目から見ても、
確かに健康体とは程遠いシルエットでしたが、
和服から仕立てたという美しいドレスを纏って、優しそうなご主人とともに、
シャンパングラスを片手に、優雅に笑って見せられて、女優オーラが全開でした。
私は多くのがん患者と接する医師ですから、川島さんように痩せたがん患者さんを
毎日のように見ていますので、あれは私にとっては普通に見慣れた(?)姿でした。
しかし一般の人は、あのような姿を見ることはあまり多くはないはず。
彼女は、がんになっても、元気に仕事ができる、充実した毎日を送れるのだということを
日本全国に向ってアピールしました。
聴衆を元気な気持ちにさせることが、芸能人としてのひとつの役割だとすれば、
川島さんは、全国のがん患者さんを勇気づけたという意味で、大変立派なお仕事をされたのです。
しかしそれを軽々しく、ネット上で揶揄する人もいる。それは人間として、恥ずべき行為です。
もしご自分やご自分の家族がそうなったとき、心無いことを知らない人から言われたり
嘲笑されたらどんな気持ちになりますか?
今や、二人に一人ががんになる時代。
がんになっても堂々と働ける社会を作ることが、
我が国の喫緊の課題であることをどうか忘れないでください。
川島なお美さんの勇気と頑張りとおおらかさに、感動しています。
降板は残念ですが、素晴らしい闘いぶりだと思います。
私は今後も、彼女が発するコメントを楽しみに待ちます。
何も隠すことなく、隠れることなく堂々と発信してほしい。
それががん患者さんたちへのエールとなるし、
私もまた、「頑張れ、なお美さん!」とエールを送ります。
彼女は外科手術を受けました。
一方、手術は意味が無いとがん医療をほぼ全否定する医師の本が売れています。
経過が良ければ「がんもどきだった」と言い、
経過が悪ければ「本物のがんだった」と言うのですから的中率は100%。
一部の報道では、なお美さんは、抗がん剤と放射線は拒否されたと書かれています。
手術は「やる」が、抗がん剤と放射線は「やらない」と自己決定された。
女優としてできるところまで優雅に振る舞い、
「天命を生きる」という選択をされたと書いているメディアもありました。
もちろん、さまざまな葛藤はあることでしょう。
葛藤しながらも、自己決定したうえで天命に任す。
素晴らしい生き方だと思います。
参考文献) 「長尾先生、近藤誠理論のどこが間違っているのですか?」(ブックマン社)
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
9月26日(土) 余命宣告と抗がん剤拒否
川島なお美さんの訃報にショックを受けた方が多いでしょう。
私も彼女同世代なのでショックですがご冥福をお祈りします。
報道によると川島さんは、2013年7月の人間ドックを受けた際に偶然に
胆管がんが発見され、その半年後の2014年1月に腹腔鏡手術を受けられた。
2013年7月の腫瘍発見時に、主治医から「余命1年」と宣告されたとのこと。
腫瘍発見時に、余命1年と宣告??
私は、患者さん本人にそのようなことを言ったことは一度もありません。
私の予測はよく外れるので自信も無いし、なにか呪いをかけるような気がするからです。
彼女は半年後に手術を受けられましたが、余命1年なのに
なぜ腹腔鏡手術を受けたのか、詳しい事情は知りません。
しかし川島さんは、1年という余命宣告で生き方を変えたのではないか。
抗がん剤治療を拒否して、最期まで舞台に立とうと決意したのではないか。
つまり、私にしたら残酷にも見える「余命宣告」が結果的に
彼女の人生の最終章の生き方を決定づけたのでしょう。
その意味では、余命宣告が良かったのかもしれません。
私の経験上、胆管がんには、抗がん剤治療はあまり効きません。
その余命宣告は、彼女が強く望んだのか、あるいは主治医が勝手に
言ったのか、詳しい事情は知りません。
しかし彼女は、死を受容した(できた)からこそ、ああして堂々と最期まで
舞台に立ち続け、多くの人に感動と勇気を与えることができたのではないか。
川島さんは、「余命宣告」に対する私の考え方を変えました。
余命宣告が抗がん剤治療に大きな影響を及ぼすことを学びました。
参考文献) 「長尾先生、近藤誠理論のどこが間違っているのですか?」(ブックマン社)
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
9月27日(日) ワインと胆管がん
昨日、あるお店で好きな赤ワインを注文したら、隣の人から
「ワインを飲みすぎたら胆管がんになるよ」と注意されました。
川島なお美さんの訃報を受けて、ワインと胆管がんの因果関係が、
巷の話題になっていると、聞かされました。
そもそも胆管とは肝臓で造られた胆汁を十二指腸に運ぶ管のことで、
肝臓の中にある肝内胆管にがんができると、肝内胆管がんと呼びます。
進行すると、黄疸、腹痛、背部痛、食欲不振などの症状が出ます。
胆管がんの原因として、肝内胆管の結石や高脂肪食などが知られています。
胆管がんは一般にかなり進行するまで症状が表れないため、早期発見が難しいがんです。
早期発見には腹部エコーが有用であり、精密検査としてCTやMRIなどが行われます。
わが国の2013年の胆のう・胆管がん死亡数は男性約8,900人および
女性約9,300人で、それぞれがん死亡全体の4%および6%を占めます。
胆嚢がんは女性に多く、胆管がんは男性に多い病気です。
70代に最も多くみられ、加齢はひとつの危険因子になります。
さて、ワインと胆管がんの因果関係ですが、直接は、関係無いと思います。
ワインはポリフェノールの作用でがんの発生には抑制的と考えられています。
ただしアルコールは飲み過ぎると肝硬変や脂肪肝になるので危険です。
なにごとも、過ぎたるはなんとか、です。
もしかしたらワインのつまみとして食べるチーズなどの高脂肪食が、
胆管がんに関係した可能性はあると思います。
またもし喫煙もされていたなら、原因になる可能性があります。
あと、印刷工場の従業員に胆管がんが多発した事実は有名です。
印刷機の洗浄に利用されている“1.2ジクロロプロパン“が
胆管がんの発がん性物質として認定されています。
川島さんは、「ワインのせいでがんになったと思われたらワインに申し訳ない」
という想いで、がんの公表を迷された、と伝えられています。
というわけで、皆さま、どうか安心してワインを楽しんで頂ければと思います。
それが川島さんが一番喜ぶ供養ではないでしょうか。
@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@
9月28日(月) 最期まで舞台に立てた理由
「長尾先生、末期がんでも亡くなる3週間前まで
舞台に立ったり、仕事ができるものですか?」
川島さんの訃報を知った何人かの人から、そう聞かれました。
「もちろん、そんな人はおられます。
ただし、いくつかの共通点があります」とお答えました。
その共通点とは
1)抗がん剤をやっていない、またはやっていても末期になる前に止める
2)食べられなくなって痩せても高カロリー輸液をやらないこと
3)充分な緩和医療を受けていること
1) 抗がん剤は、やる、やならい、ではなく、“やめどき”が大切!
そして抗がん剤の〝やめどき〟とは、がんの種類や年齢や体力によって、
また患者さんの死生観によっても大きく違ってくるので、
医師が「ここでやめるべき」とは一概には言えません。
あくまでも患者さんご自身が決めるもの。
ですから、もっとリテラシーを持ってがん治療に挑んでほしいと言う意味で
二年前に私は『抗がん剤10の「やめどき」』という本を書いたのですが、
あれから二年たって、ようやく「やめどき」と言う言葉が徐々に浸透してきているようです。
その拙書に書いた第一番目の「やめどき」とは、、
川島さんと同様、「迷った挙句、最初からやらない」です。
効果が期待できるがんではやってもいい、あるいは積極的に
やったほうがいい場合もありますが、いつか必ず効かなくなる時が来ます。
だから“やめどき”が大切で、それを間違うと、抗がん剤で命を縮めてしまします。
2) 川島さんのあの痩せ方は、私から診ると「がん性悪液質」という状態でした。
治療の副作用によって体力が奪われて痩せたわけではないと考えました。
末期がんで口から食べられなくなった時、高カロリー輸液をする医師がいますが
私は反対です。命を縮めるどころか、咳や痰や腹水で大きな苦痛をもたらします。
誤解を恐れずに言えば、ベッドの上で「溺死」しているような方もいます。
動物でも植物でも、本来の最期というのは自然に枯れるようにして命を終えるのです。
それが一番、苦しまずに旅立てる。
川島さんがブログで最後に掲載された病床の姿を撮ったお写真は、
私から見たら、“順調に(?)枯れて”おられました。
高カロリー輸液は行っていなかったようです。
さらにあの写真は、抗がん剤をしていないお顔に見えました。
3) 高カロリー輸液に代表されるように、なぜ、最期の最期まで過剰な延命治療が
行われる場合があるのか? それは、現代人が「待つ」ことができなくなっているからです。
ゆっくりとその時を待つことが怖くて不安、もしくはまだまだ何か打つ手はあるはずと
多くを望み過ぎてしまう――それが自然に枯れて死ぬことが難しくなった現代医療の功罪です。
何も医療者だけの問題ではありません。ご本人もご家族も、
枯れていくことを“待つ”ことができるか……? これがなかなか難しいのです。
“待つ”ためには、充分な緩和医療が必要です。
肉体的な痛みを取る麻薬はもちろん、精神的痛みや魂の痛みへの対応が大切です。
川島さんは、民間療法を受けておられて、それが心の支えになっていたそうです。
それを批難する人がいるようですが、筋違いです。
そして、もちろん旦那さんの献身的な愛情こそが、最高の緩和ケアだったことは言うまでもありません。
川島さんの旦那さんの記者会見の様子をたまたま往診中のテレビで拝見し、
思わず涙してしまいました。
「ごめんね…」「私こそごめんね…」こんな優しいやりとりが最期の会話であるとは、
なんと素敵なご夫婦でしょうか。
優しさにあふれた言葉が、最高のモルヒネ効果をもたらしたと思います。
以上の3つの条件を満たした時に、川島さんのように、最期まで仕事ができます。
排泄もほぼ自立して過ごせるのですが、あまり知られていないようですね。
川島さんのように、亡くなる1~2週間前まで、外に出てなんらかの仕事を
されていた方は、私の患者さんの中にも何人かおられ、決して珍しくありません。
・末期がんでも2週間前まで仕事ができる
・外出できる、旅行できる、人前に出られる
・何かしら食べ物を口にできる、少量のアルコールも飲める
・亡くなる直前まで笑顔で愛する人に「ありがとう」と言える。
これが、私が提唱する「平穏死」の姿です。
私には、当たり前ですが、きっと多くの皆さまには知らないことかも。
実は、まだ多くの医療スタッフも知らないことなのです。
参考文献) 「長尾先生、近藤誠理論のどこが間違っているのですか?」(ブックマン社)
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まだ続いています。 →こちら
アピタルに書き、もう少し書くつもり。(現在進行形)
朝日新聞アピタルに寄稿した拙文4本を並べてみたい。
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9月20日(日) あっぱれ、川島なお美!
女優の川島なお美さんが、昨年一月に肝内胆管がんで手術を受けられて、
現在激ヤセされたことが、いろんなメデイアで報じられています。
特に私の世代には昔から人気がある女優さんですが、昔のイメージとかなり
違う近況写真に、驚いた方も多いでしょう。
一昨日は、出演していた舞台を体調不良で降板したと報じられました。
手術後の体調を心配されている方が多いと想像します。
しかし川島なお美さんのブログのコメントは意外に楽天的に見えました。
ブログを通してファンから応援のメッセージをもらい、喜んでおられる様に見えました。
降板する数日前には、ステージに立つ喜びと意気込みを元気いっぱいに語っておられた。
舞台を降板されたことは、ご本人が一番ショックなことでしょう。
私は、川島なお美さんの覚悟と明るさに、医師として感服する想いでした。
多くの女優さんは体調が悪くなれば、あまりカメラの前に出ないと思います。
しかしご病気で痩せられた川島さんは、誰の目から見ても、
確かに健康体とは程遠いシルエットでしたが、
和服から仕立てたという美しいドレスを纏って、優しそうなご主人とともに、
シャンパングラスを片手に、優雅に笑って見せられて、女優オーラが全開でした。
私は多くのがん患者と接する医師ですから、川島さんように痩せたがん患者さんを
毎日のように見ていますので、あれは私にとっては普通に見慣れた(?)姿でした。
しかし一般の人は、あのような姿を見ることはあまり多くはないはず。
彼女は、がんになっても、元気に仕事ができる、充実した毎日を送れるのだということを
日本全国に向ってアピールしました。
聴衆を元気な気持ちにさせることが、芸能人としてのひとつの役割だとすれば、
川島さんは、全国のがん患者さんを勇気づけたという意味で、大変立派なお仕事をされたのです。
しかしそれを軽々しく、ネット上で揶揄する人もいる。それは人間として、恥ずべき行為です。
もしご自分やご自分の家族がそうなったとき、心無いことを知らない人から言われたり
嘲笑されたらどんな気持ちになりますか?
今や、二人に一人ががんになる時代。
がんになっても堂々と働ける社会を作ることが、
我が国の喫緊の課題であることをどうか忘れないでください。
川島なお美さんの勇気と頑張りとおおらかさに、感動しています。
降板は残念ですが、素晴らしい闘いぶりだと思います。
私は今後も、彼女が発するコメントを楽しみに待ちます。
何も隠すことなく、隠れることなく堂々と発信してほしい。
それががん患者さんたちへのエールとなるし、
私もまた、「頑張れ、なお美さん!」とエールを送ります。
彼女は外科手術を受けました。
一方、手術は意味が無いとがん医療をほぼ全否定する医師の本が売れています。
経過が良ければ「がんもどきだった」と言い、
経過が悪ければ「本物のがんだった」と言うのですから的中率は100%。
一部の報道では、なお美さんは、抗がん剤と放射線は拒否されたと書かれています。
手術は「やる」が、抗がん剤と放射線は「やらない」と自己決定された。
女優としてできるところまで優雅に振る舞い、
「天命を生きる」という選択をされたと書いているメディアもありました。
もちろん、さまざまな葛藤はあることでしょう。
葛藤しながらも、自己決定したうえで天命に任す。
素晴らしい生き方だと思います。
参考文献) 「長尾先生、近藤誠理論のどこが間違っているのですか?」(ブックマン社)
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9月26日(土) 余命宣告と抗がん剤拒否
川島なお美さんの訃報にショックを受けた方が多いでしょう。
私も彼女同世代なのでショックですがご冥福をお祈りします。
報道によると川島さんは、2013年7月の人間ドックを受けた際に偶然に
胆管がんが発見され、その半年後の2014年1月に腹腔鏡手術を受けられた。
2013年7月の腫瘍発見時に、主治医から「余命1年」と宣告されたとのこと。
腫瘍発見時に、余命1年と宣告??
私は、患者さん本人にそのようなことを言ったことは一度もありません。
私の予測はよく外れるので自信も無いし、なにか呪いをかけるような気がするからです。
彼女は半年後に手術を受けられましたが、余命1年なのに
なぜ腹腔鏡手術を受けたのか、詳しい事情は知りません。
しかし川島さんは、1年という余命宣告で生き方を変えたのではないか。
抗がん剤治療を拒否して、最期まで舞台に立とうと決意したのではないか。
つまり、私にしたら残酷にも見える「余命宣告」が結果的に
彼女の人生の最終章の生き方を決定づけたのでしょう。
その意味では、余命宣告が良かったのかもしれません。
私の経験上、胆管がんには、抗がん剤治療はあまり効きません。
その余命宣告は、彼女が強く望んだのか、あるいは主治医が勝手に
言ったのか、詳しい事情は知りません。
しかし彼女は、死を受容した(できた)からこそ、ああして堂々と最期まで
舞台に立ち続け、多くの人に感動と勇気を与えることができたのではないか。
川島さんは、「余命宣告」に対する私の考え方を変えました。
余命宣告が抗がん剤治療に大きな影響を及ぼすことを学びました。
参考文献) 「長尾先生、近藤誠理論のどこが間違っているのですか?」(ブックマン社)
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9月27日(日) ワインと胆管がん
昨日、あるお店で好きな赤ワインを注文したら、隣の人から
「ワインを飲みすぎたら胆管がんになるよ」と注意されました。
川島なお美さんの訃報を受けて、ワインと胆管がんの因果関係が、
巷の話題になっていると、聞かされました。
そもそも胆管とは肝臓で造られた胆汁を十二指腸に運ぶ管のことで、
肝臓の中にある肝内胆管にがんができると、肝内胆管がんと呼びます。
進行すると、黄疸、腹痛、背部痛、食欲不振などの症状が出ます。
胆管がんの原因として、肝内胆管の結石や高脂肪食などが知られています。
胆管がんは一般にかなり進行するまで症状が表れないため、早期発見が難しいがんです。
早期発見には腹部エコーが有用であり、精密検査としてCTやMRIなどが行われます。
わが国の2013年の胆のう・胆管がん死亡数は男性約8,900人および
女性約9,300人で、それぞれがん死亡全体の4%および6%を占めます。
胆嚢がんは女性に多く、胆管がんは男性に多い病気です。
70代に最も多くみられ、加齢はひとつの危険因子になります。
さて、ワインと胆管がんの因果関係ですが、直接は、関係無いと思います。
ワインはポリフェノールの作用でがんの発生には抑制的と考えられています。
ただしアルコールは飲み過ぎると肝硬変や脂肪肝になるので危険です。
なにごとも、過ぎたるはなんとか、です。
もしかしたらワインのつまみとして食べるチーズなどの高脂肪食が、
胆管がんに関係した可能性はあると思います。
またもし喫煙もされていたなら、原因になる可能性があります。
あと、印刷工場の従業員に胆管がんが多発した事実は有名です。
印刷機の洗浄に利用されている“1.2ジクロロプロパン“が
胆管がんの発がん性物質として認定されています。
川島さんは、「ワインのせいでがんになったと思われたらワインに申し訳ない」
という想いで、がんの公表を迷された、と伝えられています。
というわけで、皆さま、どうか安心してワインを楽しんで頂ければと思います。
それが川島さんが一番喜ぶ供養ではないでしょうか。
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9月28日(月) 最期まで舞台に立てた理由
「長尾先生、末期がんでも亡くなる3週間前まで
舞台に立ったり、仕事ができるものですか?」
川島さんの訃報を知った何人かの人から、そう聞かれました。
「もちろん、そんな人はおられます。
ただし、いくつかの共通点があります」とお答えました。
その共通点とは
1)抗がん剤をやっていない、またはやっていても末期になる前に止める
2)食べられなくなって痩せても高カロリー輸液をやらないこと
3)充分な緩和医療を受けていること
1) 抗がん剤は、やる、やならい、ではなく、“やめどき”が大切!
そして抗がん剤の〝やめどき〟とは、がんの種類や年齢や体力によって、
また患者さんの死生観によっても大きく違ってくるので、
医師が「ここでやめるべき」とは一概には言えません。
あくまでも患者さんご自身が決めるもの。
ですから、もっとリテラシーを持ってがん治療に挑んでほしいと言う意味で
二年前に私は『抗がん剤10の「やめどき」』という本を書いたのですが、
あれから二年たって、ようやく「やめどき」と言う言葉が徐々に浸透してきているようです。
その拙書に書いた第一番目の「やめどき」とは、、
川島さんと同様、「迷った挙句、最初からやらない」です。
効果が期待できるがんではやってもいい、あるいは積極的に
やったほうがいい場合もありますが、いつか必ず効かなくなる時が来ます。
だから“やめどき”が大切で、それを間違うと、抗がん剤で命を縮めてしまします。
2) 川島さんのあの痩せ方は、私から診ると「がん性悪液質」という状態でした。
治療の副作用によって体力が奪われて痩せたわけではないと考えました。
末期がんで口から食べられなくなった時、高カロリー輸液をする医師がいますが
私は反対です。命を縮めるどころか、咳や痰や腹水で大きな苦痛をもたらします。
誤解を恐れずに言えば、ベッドの上で「溺死」しているような方もいます。
動物でも植物でも、本来の最期というのは自然に枯れるようにして命を終えるのです。
それが一番、苦しまずに旅立てる。
川島さんがブログで最後に掲載された病床の姿を撮ったお写真は、
私から見たら、“順調に(?)枯れて”おられました。
高カロリー輸液は行っていなかったようです。
さらにあの写真は、抗がん剤をしていないお顔に見えました。
3) 高カロリー輸液に代表されるように、なぜ、最期の最期まで過剰な延命治療が
行われる場合があるのか? それは、現代人が「待つ」ことができなくなっているからです。
ゆっくりとその時を待つことが怖くて不安、もしくはまだまだ何か打つ手はあるはずと
多くを望み過ぎてしまう――それが自然に枯れて死ぬことが難しくなった現代医療の功罪です。
何も医療者だけの問題ではありません。ご本人もご家族も、
枯れていくことを“待つ”ことができるか……? これがなかなか難しいのです。
“待つ”ためには、充分な緩和医療が必要です。
肉体的な痛みを取る麻薬はもちろん、精神的痛みや魂の痛みへの対応が大切です。
川島さんは、民間療法を受けておられて、それが心の支えになっていたそうです。
それを批難する人がいるようですが、筋違いです。
そして、もちろん旦那さんの献身的な愛情こそが、最高の緩和ケアだったことは言うまでもありません。
川島さんの旦那さんの記者会見の様子をたまたま往診中のテレビで拝見し、
思わず涙してしまいました。
「ごめんね…」「私こそごめんね…」こんな優しいやりとりが最期の会話であるとは、
なんと素敵なご夫婦でしょうか。
優しさにあふれた言葉が、最高のモルヒネ効果をもたらしたと思います。
以上の3つの条件を満たした時に、川島さんのように、最期まで仕事ができます。
排泄もほぼ自立して過ごせるのですが、あまり知られていないようですね。
川島さんのように、亡くなる1~2週間前まで、外に出てなんらかの仕事を
されていた方は、私の患者さんの中にも何人かおられ、決して珍しくありません。
・末期がんでも2週間前まで仕事ができる
・外出できる、旅行できる、人前に出られる
・何かしら食べ物を口にできる、少量のアルコールも飲める
・亡くなる直前まで笑顔で愛する人に「ありがとう」と言える。
これが、私が提唱する「平穏死」の姿です。
私には、当たり前ですが、きっと多くの皆さまには知らないことかも。
実は、まだ多くの医療スタッフも知らないことなのです。
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この記事へのコメント
>ある開業医の方のブログを転載します。
割と詳しくその経緯が書かれています。ので何かのご参考になれば
>http://med2008.blog40.fc2.com/blog-entry-2455.html
Posted by 薬剤師 井澤康夫 at 2015年09月28日 08:49 | 返信
あっぱれ、川島なお美! ・・・・・ を読んで
夫の鎧塚さんに 『 全力で生を全うした ・・・・・・・。 』
と言わしめた、川島なお美さん。
『命を懸けて俳優業を全うした ・・・・・・。 』と評された、
今井雅之さん。
お二人の傑出した俳優さんが、昨今相次いで癌に罹り、
ご自分の生と真摯に向き合い、壮絶な最期を迎えたこ
とに対して、インターネット上で“あっぱれ!”の評
価が高まっています。
そんな折、長尾先生のブログでも、“あっぱれ、川島
なお美!” を取り上げられました。
今回の長尾先生のブログを読んでいて、突如西宮でつど
い場さくらちゃんを主宰している丸ちゃん〔丸尾さん〕
の顔が出て来て “だけを集めたらアカン!” と言って
いるような気が致しました。
川島なお美さんが、そして、今井雅之さんが、ご自分の
生と真摯に向き合い、ご自分の決定した意思を貫き通し、
それぞれの生を全うしたことは称賛に値するものと私も
思いますが ・・・・・・、新たに芸人さんやアーチストさんが、
健診で早期癌を見つけた時、予定していた高座やステージ
をキャンセルして、 “早期治療” を選択した際、その決
断もまた評価し “あっぱれ!” と評する社会であって欲
しいと願っています。
今回の川島さん、今井さんの自己決定と較べて、天職よ
りも自分の命を優先させた時、芸人としてアーチストと
して、覚悟が足りない!? と批難されることがあって
はいけないと思います。
癌や認知症に罹った時、何を優先させるか? は、それ
ぞれの人の人生観にも関わってきていて、一つだけの
正解があるものではないと私は思っています。
ちょっと以前のこととなりますが、つんく♂さんが
咽頭がんに罹った時、天職〔歌手〕の命である声を捨てて
命を選びました。 そして、つんく♂さんは“歌を唄う
ことは出来ないが、今僕ができることをやる!”とどこ
までも前向きの姿勢を示しています。
それもまた “あっぱれ!” の自己決断だと思います。
癌と向き合い、壮絶な最期を迎えることだけが“あっ
ぱれ!”なのではなく、自分や家族との関係性を優先
させて“命を長らえる選択”も、また“あっぱれ!”
な態度と思います。
まるちゃん〔丸尾さん〕の言われるように、“○○だけ
のあっぱれ!”ではなく、いろいろな形の“あっぱれ!”
が許容される、柔軟な社会であって欲しいと願っています。
かく言う私自身、突然に癌宣告を受けた時、冷静に自分
の生と向き合い、迷いのない自己決定が出来るか?
とても心もとなく思っています。
そのような状態に置かれた時、うろたえ頭が真っ白に
なって、家族の意向や周りの雰囲気に流されかねない
懸念を感じています。
“あっぱれ!”な態度を貫くことは難しそうです。
Posted by 小林 文夫 at 2015年09月29日 01:45 | 返信
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