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抗認知症薬による易怒性は副作用
2015年10月03日(土)
医療タイムスにはまた抗認知症薬の易怒性は主作用か副作用か、で書いた。→こちら
またNHKの認知症番組に(副作用だから中止したらダメ」という専門医が出ていた。
スポンサーに気を使わないでいいNHKさんは、一方で「権威」に弱いので、残念だ。
またNHKの認知症番組に(副作用だから中止したらダメ」という専門医が出ていた。
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医療タイムス9月号 抗認知症薬の易怒性は主作用!? 長尾和宏
認知症のニューズがメデイアに載らない日は無いという時代になった。これは文明国の世界潮流である。我が国では、新オレンジプランが施行され、専門医療機関で精査して認知症という烙印を押せば投薬、という流れになっている。
抗認知症薬は現在4種類認可されているが、アリセプトしか無い時代が10年も続いたため、アリセプトが抗認知症薬の代名詞になっている。よく知られているようにアリセプトは、「3mgで開始して2週間後には必ず5mgに増量すること」という増量規定がある。しかし3mgだと穏やかでも、5mgに増量した途端に興奮したり怒り出す患者さんが一定頻度でいることを臨床医であれば知っている。筆者は3mgに戻しているが、増量規定に従わないためレセプト審査で「査定」をされてきた。認知症を専門に診ているある医師は、摘要欄に「5mgだと怒り出すので3mgに減量した」というコメントを書いたにもかかわらず「査定」をされ続け、「損害額」は約400万円にものぼる、と嘆く。患者さんのためを思って医療をしても報われないことは保険診療ではよくあることだが、アリセプトのように画一的かつ強制的な増量規定のある汎用薬を他に知らない。そして現在、4種類の抗認知症薬には、2~3段階の増量規定が義務づけられ、多くの医師がこれに従っている。
抗認知症薬の増量により惹きおこされる「易怒性」は誰が考えても副作用だろう。暴れるため泣く泣く施設や精神病院に入れざるを得なくなった人がたくさんいる。そんな人生を左右するような重大な副作用を「それは副作用ではなく主作用なので、絶対に中止や減量してはいけない。とにかく続けることが大切」と某国政放送である認知症専門医が市民に解説していた。製薬会社の強い意向なのだろうが、同じ医師として恥ずかしかった。
そうした専門医に洗脳された一般医は中止や減量どころか、逆に「効いていない」と判断して、10mgまで増量することもある。もちろんもっと大変な事態になる(筆者は炎上と呼んでいる)。そしてこれを周辺症状だ、BPSDだとして、抗精神薬で対応をする。すると認知症の人は、フラフラになり転倒→骨折→入院→寝たきり→認知症悪化→胃ろうとなる。こうしたコースに乗せましょうというのが新オレンジプランなのか。私は、認知症のひとがこの網にかからないことを願い「ばあちゃん、介護施設を間違えたらもっとボケるで!」や「家族よ、ボケと闘うな!」(いずれも共著、ブックマン社)などの一般書を書いて警告してきた。しかし理解しがたい規則や医者が造る認知症は増加の一途である。
認知症=アルツハイマー型認知症(AD)ではない。認知症の約半分であるAD、が抗認知症薬の保険適応だ。一方、前頭側頭型認知症には抗認知症薬は禁忌であるにもかかわらず、誤診・誤処方だらけで、これまた“炎上”だらけ。さらに昨年末からレビー小体型認知症(DLB)にもアリセプトが保険適応となった。薬剤過敏性が特徴のDLBへのアリセプトは5mgでも10mgでもいいとなっているが、本来は1ないし1.5mgから開始して、さじ加減で至適容量設定を目指すべきである。以上の経緯から「一般社団法人・抗認知症薬の適量処方を実現する会」を立ち上げた。11月23日(祝)午後2時から都内で設立総会を行う予定である。
認知症のニューズがメデイアに載らない日は無いという時代になった。これは文明国の世界潮流である。我が国では、新オレンジプランが施行され、専門医療機関で精査して認知症という烙印を押せば投薬、という流れになっている。
抗認知症薬は現在4種類認可されているが、アリセプトしか無い時代が10年も続いたため、アリセプトが抗認知症薬の代名詞になっている。よく知られているようにアリセプトは、「3mgで開始して2週間後には必ず5mgに増量すること」という増量規定がある。しかし3mgだと穏やかでも、5mgに増量した途端に興奮したり怒り出す患者さんが一定頻度でいることを臨床医であれば知っている。筆者は3mgに戻しているが、増量規定に従わないためレセプト審査で「査定」をされてきた。認知症を専門に診ているある医師は、摘要欄に「5mgだと怒り出すので3mgに減量した」というコメントを書いたにもかかわらず「査定」をされ続け、「損害額」は約400万円にものぼる、と嘆く。患者さんのためを思って医療をしても報われないことは保険診療ではよくあることだが、アリセプトのように画一的かつ強制的な増量規定のある汎用薬を他に知らない。そして現在、4種類の抗認知症薬には、2~3段階の増量規定が義務づけられ、多くの医師がこれに従っている。
抗認知症薬の増量により惹きおこされる「易怒性」は誰が考えても副作用だろう。暴れるため泣く泣く施設や精神病院に入れざるを得なくなった人がたくさんいる。そんな人生を左右するような重大な副作用を「それは副作用ではなく主作用なので、絶対に中止や減量してはいけない。とにかく続けることが大切」と某国政放送である認知症専門医が市民に解説していた。製薬会社の強い意向なのだろうが、同じ医師として恥ずかしかった。
そうした専門医に洗脳された一般医は中止や減量どころか、逆に「効いていない」と判断して、10mgまで増量することもある。もちろんもっと大変な事態になる(筆者は炎上と呼んでいる)。そしてこれを周辺症状だ、BPSDだとして、抗精神薬で対応をする。すると認知症の人は、フラフラになり転倒→骨折→入院→寝たきり→認知症悪化→胃ろうとなる。こうしたコースに乗せましょうというのが新オレンジプランなのか。私は、認知症のひとがこの網にかからないことを願い「ばあちゃん、介護施設を間違えたらもっとボケるで!」や「家族よ、ボケと闘うな!」(いずれも共著、ブックマン社)などの一般書を書いて警告してきた。しかし理解しがたい規則や医者が造る認知症は増加の一途である。
認知症=アルツハイマー型認知症(AD)ではない。認知症の約半分であるAD、が抗認知症薬の保険適応だ。一方、前頭側頭型認知症には抗認知症薬は禁忌であるにもかかわらず、誤診・誤処方だらけで、これまた“炎上”だらけ。さらに昨年末からレビー小体型認知症(DLB)にもアリセプトが保険適応となった。薬剤過敏性が特徴のDLBへのアリセプトは5mgでも10mgでもいいとなっているが、本来は1ないし1.5mgから開始して、さじ加減で至適容量設定を目指すべきである。以上の経緯から「一般社団法人・抗認知症薬の適量処方を実現する会」を立ち上げた。11月23日(祝)午後2時から都内で設立総会を行う予定である。
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この記事へのコメント
こんなこと言っちゃ悪いですけど、戦争中、中国の北の満州で、「371部隊」とかいう医療実験があって大勢の中国人の人々に人体実験したらしいです。
森村誠一の「悪魔の飽食」と言う小説になってます。
お医者さんは皆、九州大学や京大、東大等のエリートばかりだったそうです。
その時の実験データは日本国内に、持って帰って、米軍に処刑されるかと戦々恐々としていたら、「その人体実験のデーターを米軍に供出したら、罪には問わない」と言われて喜んで米軍に供出したそうです。
最近の血液製剤でエイズを血友病の人々に与えた安倍英帝京大教授もその371部隊の生き残りだったそうです。
なんか医療の世界は昔中国人にしていた「人体実験」を、日本人に対して施行しているような感じもします。
Posted by 匿名 at 2015年10月03日 02:40 | 返信
純粋なアルツハイマーは少ないと思います。純粋アルツハイマーでない疾患群に対して抗認知症薬が無鉄砲に処方されているのが現状で、アルツハイマー以外の疾患群だと現在の増量規定ではほぼ耐えられません。現状ではアルツハイマー以外の抗認知症薬の使用はもはや禁止すべきなのかもしれません。
そうなると抗認知症薬の売り上げは1/100くらいに落ち込むのは間違いないでしょう。
アルツハイマー以外の高齢認知症などにも使いたいというのなら、適用疾患を「アルツハイマー」「レビー」だけでなく単に「認知症」に拡大して用量を医者の裁量で調整できるようにすべきですね。
「アルツハイマー」ではない高齢認知症患者に使われて脱落続出している様は失笑を禁じ得ないですね。
認知症外来に連れていった結果として患者を薬害にさらした家族は贖罪意識に苛まれるのではないかと。
Posted by ある実践医 at 2015年10月04日 12:13 | 返信
アリセプトの処方ルールは本当に酷いものです。以前からどうにかならないかと思っていました。
今後の長尾先生の活躍を期待しています。
Posted by みるく at 2015年10月04日 08:22 | 返信
母は昨年、他界しましたが、母の認知症が進むなか、父が末期癌(重複癌で両方とも末期)となったため、母のケアマネが父の治療や闘病を優先して、有料ホームにお世話になりました。父他界後、私は仕事を平日していたため、毎週末土日、母を見舞ってました。食事が美味しいホームでしたが、夏ごろ、一切食事をとらなくなりました。ただ、食べたくないとのこと。週末、ホームにいったら、母の手に血液をとったあとがあったため、ホームの看護師さんやケアマネさんへ確認したら、病院の担当医に胃カメラや血液検査等、いろいろしたが、医師からは、「夏バテ」とのことでした。看護師さんは薬の管理をしています。母が自宅にいたときは、私が母の薬の管理をしていたので、看護師さんに聞くと、「アリセプト」が6月ごろから投与され(私は、兄とともに母の後見人に選任されていました)、2週間後に増量されていました。ネットでアリセプトの副作用を調べたら、食欲不振、もありました。看護師さんも、アリセプトが追加されたことによって変化がでたので、疑っていましたが、医師(80代後半の内科医)の「夏バテ」診断に、看護師は従うしかない状態でした。そこで、私は、ホーム長、看護師とともに、母の通院日に自分は娘であり、後見人であることを見せて、食べなくなった原因がアリセプトにあるのではないでしょうか、減量もしくは、中止、現在は「張り薬」も認知症薬と認められているので、変更していただけないか、と申し出ました。内科医は私が後見人に選任されていることから、アリセプトを中止していただけました。その後、毎日、ホームに電話して食事が改善されているかどうか、食事量を会社から平日は聞きました。アリセプト中止の結果、少しずつ、食欲が戻りました。それ以外にも、いろいろ、父の末期癌の闘病の姿(余命半年と言われたのが、1年5か月と)、また、母の最期の日々も含めて、長尾先生の言われていることに納得することが多いです。人間の尊厳というのでしょうか。私は肉親でしたが、長尾先生は様々な人の最期の時をみてきていると思います。お体に障らない程度に発信していただければ、医療や介護現場も変わると期待しております。
Posted by 匿名 at 2015年10月12日 06:42 | 返信
長尾先生
お世話になります。
こちらの記事を書いていただき本当にありがとうございます。
周囲の反発、権威の反発にも屈せられることなく、先生の様な発言をしていただけて、本当に勇気を持たれていて感激します。
親戚が認知症の時にアリセプトを服用し、大声を出したりパニックになり過剰のアリセプト、過剰の鎮静剤を与えられてベッドから身動きのできない、眼も明けられず意識も朦朧とした患者になってしまった経験から、認知症の薬には猛反対でした。
親戚がアリセプトを服用する前までは、忘れっぽく10分に1度は同じ話をするものの、
その方は一応喜怒哀楽があり、常識的で礼儀作法がある方でした。
ところが、アリセプトを服用してからというもの、認知症の症状を遅らせるどころか、
大声を出したりいきなりパニックになったり怒り出したり、考えられないような恥なことをするようになり、それまでとは全く別の人間になってしまいました。
そこでその親戚の家族は手に負えなくなったので老人介護施設に親戚を預けることになり、老人介護施設でも大声を出したりして他の人の眠りの妨げになるということで、鎮静剤、精神薬など様々な薬を与えられて、非常に鎮静されて、私がお見舞いに行ったときには目も開けられない、眼が空いていてもどこを見ているのか分からない朦朧とした意識、激やせ、話すことどころか何かに反応することもほとんどできない、そんな親戚になってしまっていました。
今回、再び親戚が認知症になってしまい、前回の親戚の経験から、認知症薬は絶対にお勧めできない、、そんなときにこちらの記事を拝見し、以前の親戚の病状が激変したのも納得です。
お金と権力に買われている医療業界ですが、先生の様な勇気ある誠実な方に今後ともご活躍いただけますと大変ありがたく思います。
Posted by 匿名希望 at 2017年08月28日 10:25 | 返信
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