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ありがとう、川島なお美さん

2015年10月04日(日)

あの痩せた姿を観た時、川島なお美さんが素敵だと思った。
でも彼女はもうこの世にいない。天国にいった彼女に「ありがとう」と言いたい。
昨日の産経新聞兵庫版には彼女を偲ぶ記事を書いた。→こちら

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産経新聞がんの基礎知識シリーズ第6回  あっぱれ、川島なお美!
                    最期まで舞台に立てた理由
 
 女優の川島なお美さんが胆管がんのために9月24日に54歳の若さで旅立たれました。川島さんのがんの闘病経過は多くの人の参考になると思い振り返ってみます。報道によると川島さんは、2013年7月の人間ドックを受けた際に偶然にも胆管に直径2cmの腫瘍が発見され、その半年後の2014年1月に腹腔鏡手術を受けられました。しかし今年、がんの再発が判明しましたが抗がん剤治療を拒否し、最期まで女優として活躍されました。

 そもそも胆管とは肝臓で造られた胆汁を十二指腸に運ぶ管。肝臓の中にある肝内胆管にがんができると肝内胆管がんと呼びます。進行すると黄疸、腹痛、背部痛、食欲不振などの症状が出ます。胆管がんの原因として肝内胆管の結石や高脂肪食などが知られています。胆管がんは一般にかなり進行するまで症状が出にくいため、早期発見が難しいがんです。早期発見には腹部エコーが有用であり、精密検査としてCTやMRIなどが行われます。

 川島さんはワイン愛好家としても有名でした。ワインと胆管がんの関係を心配する人もいるようですが、ワインが胆管がんに直接関係するというデータはありません。ただしアルコールですから飲み過ぎると肝硬変や脂肪肝になるので危険です。つまみとして食べるチーズなどの高脂肪食に偏っていたのならそれが関係した可能性はあります。あと、印刷機の洗浄に利用されている1.2ジクロロプロパンという化学物質は胆管がんの発がん性物質として認定されています。

 さて川島さんは亡くなる3週間前まで舞台に立たれていました。いつからか死を覚悟し、「舞台で死ねたら本望」とまで語られたそうです。多くの女優さんは体調が悪くなれば人前にはまず出ないでしょう。しかしご病気で痩せられた川島さんは、誰の目から見ても健康体とは程遠いシルエットになってもカメラの前に姿を見せてくれました。和服から仕立てたという美しいドレスを纏って、優しそうなご主人とともにシャンパングラスを片手に、優雅に笑って見せられて、女優オーラ全開でした。その写真を見た私は思わず「あっぱれ、川島なお美!」と応援記事を書いたほどでした。

 「長尾先生、末期がんでも亡くなる3週間前まで仕事ができるものですか?」川島さんの訃報を知った人からそう聞かれました。「もちろん、そんな人はおられます。ただし、いくつかの共通点があります」とお答えました。それは、1)最期まで抗がん剤をやっていない、やっていても末期になる前に止める、2)徐々に食べられなくなって痩せてきても高カロリー輸液をやっていない、3)充分な緩和医療を受けていること、です。

 一言で言うなら少しずつ枯れていくことを“待つ”ことができるかです。“待てる”ためには、充分な緩和医療という土台が必要です。3つの条件を満たした時に、川島さんのように、最期まで仕事ができます。亡くなる1ケ月前まで、外に出てなんらかの仕事をしていたがん患者さんは、私が在宅で看とらせて頂いた方の中でも決して珍しくありません。みなさん、がんの治療の選択だけでなくその“やめどき”を自己決定された方がたです。詳しく知りたい方は、拙書「平穏死・10の条件」と「抗がん剤・10のやめどき」(いずれもブックマン社)を参照してください。
 
 
キーワード 胆管がん
わが国の2013年の胆のう・胆管がん死亡数は男性約8,900人および女性約9,300人で、それぞれがん死亡全体の4%および6%を占める。胆のうがんは女性に多く、胆管がんは男性に多い。罹患率の国際比較では、日本人は他の東アジアの国や欧米人に比べて高い傾向にある

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この記事へのコメント

PRIDE:プライド を辞書で引くと "誇り・自尊心"とあります。
Wikipediaでも同様に、歌の引用を示すばかりで語彙の解説は同じくです。
生きている最中には、Prideが先行すると兎角、人の受けは悪いし、プライドという
言葉自体が、あまり良い場面では使われない、どちらかと言えば否定されがちな、
対人的には欠点として捉えられている場合が、今の日本では多いような気がします。
日常であっても、万人が大いにプライドを持って堂々と世渡りできるのが理想とは
思いますが、狭く小さな日本では風土が、それを許さないのかも知れません。
けれど、終末期に関しては、「俺の、私の人生」を忌憚なく発揮できるように、
自分の信念を固める事が第一。そして同時に身内には、それを歴然と示し意思表示
しておく事、それが大事。..と川島なお美さんの終焉の御様子から思いました。
御冥福をお祈り申し上げます。

Posted by もも at 2015年10月04日 08:44 | 返信

うちのステーションの 今の 合言葉…
「川島なお美さんを見よ!」

世間に たくさんのことを教えてくださった

本当に 昨日まで 動いていた
昨日まで 食べていた… じゃなくて 今朝まで 食べていただった

一人一人 違うのは わかっています
でも 自分や 家族が きちんと 見極めていくことが大事です
選ぶのは 自分です 決めるのは 自分です

だから 医療者は きちんと 情報を伝えてください
伝わる言葉で 話してください
お願いします

Posted by 訪問看護師 宮ちゃん at 2015年10月04日 09:48 | 返信

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