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がんの腹腔鏡手術

2015年10月13日(火)

がんの腹腔鏡手術というと、怖いイメージがあるかもしれない。
しかし実際には、多くの胃がん、大腸がんが腹腔鏡で手術されている。
そのあたりのことを、10月10日の産経新聞の連載に書かせて頂いた。→こちら

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産経新聞がんの基礎知識シリーズ第7回  胃がん、大腸がんの手術法
                    腹腔鏡手術という選択
 
 女優の川島なお美さんが胆管がんで54歳の若さで旅立たれて2週間。今週も、川島さんのがん闘病を振り返ってみます。川島さんは2014年1月に胆管がんに対して腹腔鏡手術を受けられました。そもそも腹腔鏡手術は開腹手術に比べると手術時間は若干長くなりますが、傷が小さいため痛みも少なく、術後の回復も早まり入院期間も短くて済みます。開腹手術と比べての利点は、実は術者側にもあります。開腹手術ではお腹の中の限られた範囲しか見ることができませんが、腹腔鏡を使うと内腔の奥までカメラが近づいて開腹では見ることのできなかった血管まで鮮明に映るので、より安全に手術ができる場合が多いのです。ただし、腹腔鏡手術は病状などによって適応できるケースは限られています。胃がんや大腸がんにはエビデンスがあるので健康保険も適応されていますが、胆管がんではまだ標準治療ではありません。がんができる臓器によって腹腔鏡手術の現状は全く異なると言えます。また大腸がんなどでは開ける穴が一つの単孔式手術も成果を挙げているなど、まさに日進月歩の領域ですし、その実績は施設間により大きな差があります。

 がんの外科手術は可能な限り取り残し無く完全に切除するために行います。ですから、すべてのがんやすべてのステージが対象になるわけではありません。現在、行われているがんの腹腔鏡手術の対象は、開腹手術と同様に根治できると考えられるがんです。胃がんや大腸がんでは術後の成績は開腹手術とほぼ同等と言われています。ただしそうした前向きのエビデンスが出るためにはどうしても5年以上かかります。

  腹腔鏡手術を受けるがん患者さんは年々、増加しています。川島なお美さんは芸能人なので、傷を小さくしたい、早く舞台に立つために腹腔鏡手術を選択したのでしょう。もし開腹手術で行っていたら、結果が違っていた可能性があるか、とメデイアから聞かれました。こればかりは外野席からはなんとも言えません。がん治療に限らず、医療行為において「もし」や「タラレバ」を言ってもキリが無いし、特に結果が悪かった場合には意味が無いどころか、有害です。しかし敢えて言わせて頂くならば、川島さんの手術を開腹手術で行っていても結果は同じか、むしろ悪かったかもしれないと私は思います。手術時間が12時間もかかったそうです。大腸がんや胃がんでは腹腔鏡手術の手術時間が開腹手術と比べて極端に長いということはあまり無いそうです。しかし肝臓がんや肝内胆管がんでは長くかかることがあるそうです。川島さんのブログによると主治医は「状況によっては開腹に切り替えるかも」と説明されていたとのこと。しかし結果的には、12時間もかけて予定された手術を終えられたとのこと。

 その手術後、1年半も川島さんは活躍し、亡くなる1週間前まで舞台に立てた事実こそが、腹腔鏡手術という選択は間違いで無かったと私は思います。がんの腹腔鏡手術は「安全と根治性の確保」に最大限の配慮したうえで日々行われていて、多くの患者さんがその恩恵にあずかっています。誤解して欲しくないのは、群馬大学での腹腔鏡手術事件は「手術死」ですが、川島さんの場合は「がん死」であること。川島さんは手術により亡くなったのではなく、再発というがんの経過によって命を奪われたので、どうか両者を混同しないで欲しいと思います。
 
 
キーワード 腹腔鏡手術
開腹せずに、お腹に数ケ所の穴を開けてそこから手術器具を入れてテレビ画面を観ながら行う手術法。ジャーナリストの鳥越俊太郎氏は直腸がんを、プロ野球の王貞治氏は胃がんを、女優の仁科亜希子氏は御自身にとって3度目のがんになる大腸がんを腹腔鏡手術で切除した。

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西宮市の明和病院では、半数が腹腔鏡手術である。

大腸がんの9割が腹腔鏡手術であるばかりか、
肝切除の3割が腹腔鏡手術であるという。

さらに、腹腔鏡下肝切除210例で、手術死はゼロである。→こちら

こうした現状を知って頂きたく記事を書いた。

おそらく多くの人が誤解している。

近藤誠医師も現状をまったく知らずに記事を書いている。


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この記事へのコメント

はじめまして。先日、YAHOOに出ていた長尾先生の川島なお美さんの記事を読んで、面白そうだなと思って先生の『長尾先生、近藤誠理論のどこが間違っているのですか?』を買った者です。私は川島なお美さんと同じ歳で、ワインも大好きなので、他人事じゃないと思い今回の川島さんのがん治療について興味を持ちました。『長尾先生、近藤誠理論のどこが間違っているのですか?』(長いタイトルですね…)は、単に近藤先生を攻めているわけではなく、がんもどき理論には、正しいところも間違っているところもあり、また現状ではよくわからないところもある、とすごく正直に書かれていたところが、好ましいし、今までこのような癌の本は読んだことがありませんでしたので面白い読書体験でした。ところで、長尾先生は今月号の文芸春秋をお読みになりましたか? 近藤誠先生が「川島なお美さんはもっと生きられた」と言っているんです。もしも、長尾先生の先の本を読んでいなければ、わたくしはこの記事を全面的に鵜呑みにしていたと思います。腹腔鏡についても否定的でした。だけど、長尾先生の本を読んだあとだったので、間違っているところがたくさん目についたのです! ずぶの素人の私が読んだだけでも10か所は「あらら? ここは間違っているのでは?」と思うところがありました。なので、ぜひ、長尾先生にこの記事を解説してほしいと思い投稿しました。お忙しいと思いますが、文芸春秋を買っていただき、近藤先生が川島なお美さんについて言っていることの間違っているところと正しいところを示唆していただけないでしょうか? よろしくお願いします。

Posted by ゆうえん at 2015年10月13日 11:45 | 返信

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