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膵臓がんで死なないために
2015年11月10日(火)
産経新聞がんの基礎知識シリーズ第11回 増加する膵臓がん
腹部エコーで早期発見を
在宅医療を依頼される患者さんのうち、最近多いなあと思うのが末期の膵臓がん。膵臓がんは検診法が無く早期発見が難しいがんです。国立がん研究センターの予測では今年、3万9千人が膵臓がんに罹患して、死亡者数は3万3千人にまで及ぶとのこと。肝臓がんを抜いて第4位に上昇中のがんです。ちなみに膵臓がんの5年生存率は2~3割と他のがんと比較して大変低く超ワルのがん、です。腹痛や背部痛や黄疸などの自覚症状が出た時には、すでに8割の人がもはや手術不能の状態になっています。
糖尿病があると膵臓がんのリスクが2~3倍に上がります。糖尿病外来で血糖値の動向を熱心に記録している人が徐々に痩せてきて、やっと血糖値が改善したと喜んでいたら末期の膵臓がんだった、なんて話をよく聞きます。糖尿病の人は心筋梗塞や脳梗塞が心配なことは誰でも知っていますが、私から見れば膵臓がんがとても心配。そのほか、アルコールの飲みすぎでなる慢性膵炎、喫煙、親兄弟に膵臓がんがいる人なども膵臓がんのハイリスクです。
膵臓がんは難治性のがんのひとつ。みなさんは膵臓は胃や大腸の内視鏡検査のように気軽に検査しにくい臓器だと思っています。でもどうすれば膵臓がんで死ぬことを免れるのか?これは重要な命題ですが、私は腹部エコーと血中CA19-9を測ることだと思います。腹部エコーでは膵管の拡張や膵のう胞の多発に注目します。一方、CA19-9は膵臓がんの腫瘍マーカーとして有名です。しかし日本癌治療学会のガイドラインによれば直径2cm未満の初期の膵臓がんにおける陽性率は52%で特異度は73%です。つまりCA19-9だけの検査では初期の膵臓がんの半分は見逃してしまうし、陽性者100名のうち27名は膵臓がんでは無いので過剰診療になる恐れがあります。
一方、マイクロRNAという細胞から血中に分泌される物質が最近注目されています。血液中のマイクロRNAを検出してがんを早期発見する研究が進んでいます。乳がんや大腸がんにおいては8~9割の精度で診断できるレベルになりました。さらに膵臓がんにおいては唾液中のがん細胞の代謝物の濃度が上昇することが確認され、早期の膵臓がんが検出できる可能性が高まってきました。唾液を用いた膵臓がんの早期発見や検診法の開発に大きな期待が集まっています。
現状では、もし腹部エコーや血中CA19-9値に異常があれば、腹部CTや腹部MRIや超音波内視鏡やERCP(内視鏡的逆行性膵胆管造影)などの精密検査が行われます。腹部エコーはCTと違い何回行ってもなんの害もありません。それどころか膵臓以外の腹部臓器である肝臓、胆のう、腎臓、膀胱などの臓器のがんが偶然見つかることもあります。自覚症状が無い人は人間ドックで、有る人は保険診療で、もし機会があれば逃さずに腹部エコー検査を受けてください。「私は膵臓がんで死にたくない」と願う人は年に一回では助かる範囲で見つからないこともあるので、半年に一度の割合で腹部エコー検査を受けても全然いいかと思います。
キーワード CA19-9
消化器がんの中でも特に膵臓がんに特異性が高い腫瘍マーカー。がん以外の良性の病気でも上昇することがあるのでがんの早期発見には有用性が低い。しかしがんの治療効果を知るためには役に立つ。
腹部エコーで早期発見を
在宅医療を依頼される患者さんのうち、最近多いなあと思うのが末期の膵臓がん。膵臓がんは検診法が無く早期発見が難しいがんです。国立がん研究センターの予測では今年、3万9千人が膵臓がんに罹患して、死亡者数は3万3千人にまで及ぶとのこと。肝臓がんを抜いて第4位に上昇中のがんです。ちなみに膵臓がんの5年生存率は2~3割と他のがんと比較して大変低く超ワルのがん、です。腹痛や背部痛や黄疸などの自覚症状が出た時には、すでに8割の人がもはや手術不能の状態になっています。
糖尿病があると膵臓がんのリスクが2~3倍に上がります。糖尿病外来で血糖値の動向を熱心に記録している人が徐々に痩せてきて、やっと血糖値が改善したと喜んでいたら末期の膵臓がんだった、なんて話をよく聞きます。糖尿病の人は心筋梗塞や脳梗塞が心配なことは誰でも知っていますが、私から見れば膵臓がんがとても心配。そのほか、アルコールの飲みすぎでなる慢性膵炎、喫煙、親兄弟に膵臓がんがいる人なども膵臓がんのハイリスクです。
膵臓がんは難治性のがんのひとつ。みなさんは膵臓は胃や大腸の内視鏡検査のように気軽に検査しにくい臓器だと思っています。でもどうすれば膵臓がんで死ぬことを免れるのか?これは重要な命題ですが、私は腹部エコーと血中CA19-9を測ることだと思います。腹部エコーでは膵管の拡張や膵のう胞の多発に注目します。一方、CA19-9は膵臓がんの腫瘍マーカーとして有名です。しかし日本癌治療学会のガイドラインによれば直径2cm未満の初期の膵臓がんにおける陽性率は52%で特異度は73%です。つまりCA19-9だけの検査では初期の膵臓がんの半分は見逃してしまうし、陽性者100名のうち27名は膵臓がんでは無いので過剰診療になる恐れがあります。
一方、マイクロRNAという細胞から血中に分泌される物質が最近注目されています。血液中のマイクロRNAを検出してがんを早期発見する研究が進んでいます。乳がんや大腸がんにおいては8~9割の精度で診断できるレベルになりました。さらに膵臓がんにおいては唾液中のがん細胞の代謝物の濃度が上昇することが確認され、早期の膵臓がんが検出できる可能性が高まってきました。唾液を用いた膵臓がんの早期発見や検診法の開発に大きな期待が集まっています。
現状では、もし腹部エコーや血中CA19-9値に異常があれば、腹部CTや腹部MRIや超音波内視鏡やERCP(内視鏡的逆行性膵胆管造影)などの精密検査が行われます。腹部エコーはCTと違い何回行ってもなんの害もありません。それどころか膵臓以外の腹部臓器である肝臓、胆のう、腎臓、膀胱などの臓器のがんが偶然見つかることもあります。自覚症状が無い人は人間ドックで、有る人は保険診療で、もし機会があれば逃さずに腹部エコー検査を受けてください。「私は膵臓がんで死にたくない」と願う人は年に一回では助かる範囲で見つからないこともあるので、半年に一度の割合で腹部エコー検査を受けても全然いいかと思います。
キーワード CA19-9
消化器がんの中でも特に膵臓がんに特異性が高い腫瘍マーカー。がん以外の良性の病気でも上昇することがあるのでがんの早期発見には有用性が低い。しかしがんの治療効果を知るためには役に立つ。
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