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殺人を美談で報じるNHKの終末期医療番組

2016年01月26日(火)

先日、NHKの終末期鎮静の番組について感想を書いたが、
いろんな人からいろんなメールを頂き、少し驚いている。
「あれは酷い放送だった」という趣旨の意見を沢山頂いた。
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あの放送は、いろんなブログや全国版のメーリングリストなどでは
「いい番組だった」という意見が結構、流れているようだ。

まあ、素人を美談で騙すのは簡単だ。
しかし、やっぱ、プロの目は誤魔化せないんだなあ、と思った。

あの番組では緩和医療の解説が無くて、いきなり鎮静の言い訳、ばかりだった。
聞こえはいいかもしれないが、3~7日間眠らせたままで何もせず死なせること。


解説の医師はたしかにこう言い放った。

「私は殺させて頂いた」

「殺させて」って、要は殺人を認めているの?


他の医師も鎮静は安楽死と半ば認めて、しかも「殺人」であると解説をしていた。

おいおい、医者が人を殺したらいかんやろ。
第一、「殺した」をそのまま流すNHKもちょっと信じられない。


日本の法律では、安楽死は殺人であり、殺人罪で罰せられる。
尊厳死でさえグレーゾーンであり、本当は真摯な議論が必要ははずである。

しかしNHKは殺人を正当化する意図なのか、トンデモ番組を作り続けている。
法治国家の国営放送だが、権力があるので、そんなことでも何でもできるのか。

尊厳死やリビングウイルなど重要な議論をすべてすっ飛ばして、いきなり殺人の正当化かよ。
実は、NHKの殺人を正当化する終末期番組は、これに始まったことではない。

前回、抜く必要の無い胃ろうを番組造りのため抜いた番組も同様の趣旨だった。
遺族に配慮してさすがにこのブログのその記事は削除してたが、これも酷かった。

デレクターがまるで不勉強なのか。
あるいは、いきなり殺人で、ビックリさせて視聴率を稼ぎたいのか。

民放とは違い、慎重な報道姿勢が求められるのがNHKであると思ってきたが、
最近の終末期番組は、あまりにも酷いというか論外の内容ばかりで、呆れるばかり。


でもこんな意見はきっと自分だけだろうなあ、と気軽な気持ちでブログを書いた。
すると「私もそう思った」のようなメールや手紙を何人かから頂き、意外だった。


あの番組のように麻薬を使っても痛みのコントロールが難しい患者さんは
私がやっている在宅ホスピスでも年に1人位はおられる位。

しかし仙骨ブロックや鎮痛薬の工夫で乗り越えて、鎮静を考えたことは無い。
実は、「平穏死」の穏やか、とは鎮静で眠らせることではなく、最期まで話せること。

もし管だらけになったら話ができないが、平穏死には管が無いので
最期まで食べたり、話ができるのが特徴である。

鎮静という概念は、本来、病院の過剰な延命処置の悪循環の中で生まれた必要悪。
そんなものを、在宅ホスピスに持ち込まないでほしいなあ、というのが本当のところ。

しかし、NHKは、在宅の末期がんの7人に1人が鎮静で死んでいる、とか
在宅医の4割は過去5年間に鎮静の経験があるなど、勝手な数字を示して、煽る、煽る。

そんなバイアスだらけのアンケート結果を勝手に振りかざしていいように解釈して
安楽死や殺人を正当化しようとする内容には、とても賛同できない。

在宅で、鎮静をしているのは、どう考えても少数派。
病院的な思考だと思う。クセは簡単に治らない。

あれを見た人のなかには、「鎮静をやってくれ」と頼む人が増えるだろう。
余命1ケ月であっても、そう望む人がいたら、拡大解釈でされるだろう。

でも、そんなものは病院の延命死の土台となる風習であることを言って欲しかった。
常に病院やその人たちによる学会が正しい、という報道のあり方はどうかとも思う。

解説者は、たしかに「殺して差しあげた」と言っていたのだが、
殺人を報道しておいて、「これが終末期医療の苦悩だ」とは聞いて呆れる言葉。

鎮静を許した家族になかには、後悔して相談に来られる人もいる。
そんな家族は、「医師に殺された」と主治医を恨み、ずっと泣いている。

私はそんな犠牲者の声の聞き役になるなど、アフターケアもボランテイアとして行っている。
得意気に鎮静を行っている医師は、そんな遺族のトラウマを知らない。

NHKには、どうか医療の原点に戻り、正しい報道をして欲しい。
終末期の報道に関しては、この数年、ずっとずっとほんとうに酷過ぎる。

ちなみに日本尊厳死協会は安楽死に、一貫して反対していることを書いておく。
私自身も勤務医の時に終末期鎮静をしたことがあるが、在宅では1例もないし、今後も無いはず。

どうしてそんな基本的なことも無視して、反対意見は一切無視して
結論ありきの捏造番組をなぜ繰り返して報道するのか理解できない。

やるのであれば、麻薬による緩和の遅れや、活かされなかったリビングウイルや
認知症のリビングウイルのほうが優先することであり、現時点では、あんなキワものなのか。

安楽死と尊厳死の違いも知らないメデイアの人に向けて本を書いた。
「長尾和宏の死の授業」を、1回でも目を通して欲しい。
学生にも伝えている。

終末期鎮静が完全に間違っている。
偏っている。
嘘だらけ・・・・

ちなみに、前回の報道に関して削除した文章を今日、復活させる。
諸事情で、期間限定になるかもしれないが。


このブログを読まれているみなさまへ。
NHKのヘンな終末期医療放送に、騙されないで!

認知症に関しても、「抗認知症薬で怒りだしたら、それは副作用ではなく、
主作用なので絶対に中止しないで」という内容を何度も繰り返す放送局なのだ。

ホント、気をつけて欲しい。






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※本ブログは転載・引用を固くお断りいたします。

この記事へのコメント

子供がいるので、Eテレはとても助かり、料金を支払って満足です。
小さな頃は「いないないばぁ」や「おかあさんといっしょ」で、最近は「おさるのジョージ」や「ひつじのショーン」でお世話になっています。

でも、NHK総合では、天気予報。

スポンサーは国民ですが・・・NHKも視聴率が大事なのではないでしょうか。 素人の私にも「えぇ!?」と思わず疑いたくなるような番組もあります。

専門家の作るドキュメンタリー映画ではなく、普通のテレビなので仕方がないと思っています。
選ぶのは受けて側ですから、それでいいのだと思っています。

Posted by よしみ at 2016年01月26日 11:02 | 返信

放送倫理に抵触しないのでしょうか..?
政治的煽動であるとか、思想的な取り扱いについては、法律の定めがある筈なのに、ひと昔前と
違って、厳しく物申す市民が居なくなったからでしょうか。
日本は過去の大戦を反省した時に「マスメディアの戦争責任」も顧みて、「言論の自由がある」と
同時に「報道側の責任」も強く、共通の意識下にあった筈なのに..という思いに駆られました。
生命に関する倫理ですから、それと同等か、もしくはそれ以上の問題が孕むのではないでしょうか。

Posted by もも at 2016年01月26日 07:48 | 返信

「高齢者に胃瘻作らないでくださいね。たとえ医者に勧められても拒否してくださいね。」という世論形成扇情的で偏向価値を国民に植え付ける目的の放送。さすがはみなさまのNHKですね。
国か財務省からの指示で間違いないでしょう。たぶん北欧と同じように食べれなくなった高齢者をそのまま
医療費を使わせずに早く逝かせたいのだと思います。
本音を言えば、高齢者が胃瘻で長生きされたら、金がかかって迷惑という事なのでしょう。

Posted by マッドネス at 2016年01月27日 06:50 | 返信

緩和医療とは、
日々心を折る治療だと確信しています。
患者と患者の心を確実に折る、見事なものです。
トイレで転倒して冷たい床に接しながらも
必死でナースコールを押した父を私は殺したんだ。

Posted by 匿名 at 2016年03月12日 04:33 | 返信

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