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親の介護 子供の準備
2016年02月21日(日)
きらめきプラス (2月号)
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仙台に住む40代の男性からの質問です。
将来の母親の介護についての質問なのですが。
父が9年前に亡くなり、現在68歳の母と二人で生活しています。
毎日家事・買い物・犬の散歩などしていてとても元気な母ですが
最近いつも口癖のようになるべくなら介護を受けずに一生を終わりたいと話しています。
母の元気な姿を見ているとまだ介護について考えるのは早いのかも知れませんが
母のためにも自分のためにも今から少しでも何らかの準備をしておこうと考えております。
日常の生活で気をつけること、また先々のことを考え
どのような準備をしておいたほうがいいのか教えていただきたいのですが。
まだ介護の大変さを実感していないので漠然とした質問になってしまいすみませんが、
宜しくお願い致します。
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回答
「親が長生きしてピンピンコロリするに子供として何をどう準備しておけばいいのか?」という趣旨の質問であると理解しました。きっと多くの子供は親のそんな最期を願っていることでしょう。
この質問を2つに分けて考えてみます。すなわち前半は「長生きする」、後半は「ピンピンコロリする」とし、両方を実現するための生き方でしょうか。実はそんな本を昨年書いています。「寝たきりにならず自宅で平穏死」」(SB出版)という本です。よろしければ参考にしてください。
要介護期間を短くする
たしかに長生きできても寝たきりや要介護状態になったり自分が誰だか分からなくなるのは誰だってイヤですよね。いま「寝たきりにならない」と書きましたが、好き好んで寝たきりになる人はいないわけですが。元気で長生き、すなわち健康長寿でないと子供は困りますよね。要介護期間は短いほどいいのが日本人の死生観でしょう。現在、日本人の生物学的寿命と健康寿命の差は概ね10年もあります。すなわち、せっかく長生きしても10年も要介護状態で過ごしているのが世界一である日本の長寿の実態なのです。がんは早ければ1~2年、長く闘病しても数年程度で、しかも長く寝込むことは無い病態です。一方、脳卒中後遺症は要介護期間が20年以上にも及ぶこともあります。
従って工夫すれば寝たきり期間を短くすることはある程度可能であると思います。そのためにはまず2つのことを意識してください。つまり生活習慣病対策です。まず第一は当たり前ですが毎回の食事に気をつけること。肥満で糖尿病の人は食事で克服できます。プチ炭水化物改善ダイエットだけで血糖値はかなり落ち着きます。夕食のご飯や麺類を控えることだけでも確実な効果があります。第二は毎日その人にあった歩行を毎日、楽しむ習慣を身につけることです。だからその人にあった歩き方を指導するのが医者の務めではないか。そう意気込んで書いたのが「病気の9割は歩くだけで治る!」(山と渓谷社)という本です。発売以来、医学部門で1位を走り続けていますので、よろしければ参考にしてください。
メタボ対策とロコモ対策
中年期ではやはりメタボ対策が大切です。高血圧や糖尿病は心筋梗塞や脳卒中だけでなくがんや認知症の下地になります。もし健康診断などでその傾向があるようなら、相性のいいかかりつけ医を見つけてアドバイスを受けながら、なるべく薬に頼らず食事と運動を心がけてください。そして60歳からはロコモ対策が加わってきます。ロコモとはロコモテイブシンドロームのことで、骨や筋肉が衰えないようにする習慣です。歩行に是非ロコモ体操も加えて下さい。難しい病気を複数抱えて、何人かの専門医にかかられている人もいます。しかしいつか必ずそこに通えなくなります。それが近いと感じたら、近くに往診もしてくれるかかりつけ医を見つけておくことも大切です。詳しくは「大病院信仰、いつまで続けますか?」(主婦の友社)に書きました。
とはいえ、いくら努力しても歳とともに老化による病気は必ずやってくるもの。老化には誰も逆らえません。できるのはせめて同年代の中で若々しくあろう、と意識して理にかなった生活するくらいでしょうか。しかし親のライフスタイルに子供が口をイチイチ口を出すことはなかなか難しい場合が多いですね。あるいは無理だと諦めたほうがいい時もあります。いくら親子といえども別人格。とはいえ親に終末期医療について聞いておくことくらいは、上手くやればどんな子供でも充分可能だと思います。聞いておかないと、実際そうなった時に困るのは親と子供です。
リビングウイルの勧め
「ねえ、お母さん、もし寝たきりになったらどこで療養したい?どこまで医療を希望するの?胃ろうはやるの?」それくらいは何かの機会に聴いてもいい時代かと思います。多くの親は、NO!と答えるでしょう。しかしその質問に怒る親もいます。「親に向かってなんて縁起が悪いことを言うの!」と。人間は自分自身の命については実に楽観的なのです。終末期で今夜死ぬかもしれないという人ですら、自分の最期はまだ何年か先だと思っていることが少なくありません。認めたくないのが本能です。「一人称の死」はいつの時代でもどんな人にも常に「初体験」ですから、シミュレーションしてもらうだけでも大変なことです。多くの高齢者は、「延命治療はお断り。自然に任せてね」と言われます。しかしイザその時になれば、そんな希望を書面にちゃんと残していないと、やはり望んでも無い延命治療に時間を費やし子供たちも後悔することが増えています。
質問するタイミングを上手にうかがい、リビングウイル(LW)の表明を勧めて下さい。テレビで芸能人の終末期医療の報道がされている時などがチャンスです。具体的には一般財団法人・日本尊厳死協会に入会すれば簡単にLWを表明することができます。LWとは、生きているけども自分が意思表示できなくなった時の医療に関する要望書です。私は「いのちの遺言状」と呼んでいます。日本では残念ながら、先進国中唯一、いまだにLWの法的担保がありませんが、書いておけば90%以上の確率で活かされることが分っています。LW表明という道をつけるのも子供世代の役割になる時代です。それを支えたり見守ることも親孝行であるという時代になりました。
親の「老い」を受け入れる
歳をとればどんな人でも様々な症状が出ます。その都度、医者に行けば、病名と薬が増えるだけです。それが好きな高齢者と嫌いな高齢者がいます。好きな高齢者は、結構、ドクターショピングをしています。国民皆保険制度の根幹はフリーアクセスですから、医者はかかり放題です。しかしいくら沢山の医療機関にかかろうが自由です。しかし「老い」から逃げることはどんな動物もできません。
その「老い」を受け入れられる親と受け入れられない親がいます。あるいは、受け入れられる子供と受け入れられない子供がいます。あなたの場合はどうでしょうか?
よくあるパターンは、親は自分の「老い」をちゃんと受け入れているけども、子供が受け入れられないケースです。子供が率先して親をドクターショピングさせるケースが増えてきています。子供世代といえば、40代~60台でしょうか。平和で比較的豊かな時代を生きてきたこの世代は、「老い」や「死」を知りません。辛いことかもしれませんが、親の「老い」を受け入れる準備をしておいて下さい。近著「親の老いを受け入れる」(丸尾多重子さんとの共著、ブックマン社)は、そうした人の参考になるでしょう。結局は、親の終活が成就するかどうかは、子供次第ということ。本誌をじっくり読むなど、子供世代が賢くなることが今回のテーマの答えになります。
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仙台に住む40代の男性からの質問です。
将来の母親の介護についての質問なのですが。
父が9年前に亡くなり、現在68歳の母と二人で生活しています。
毎日家事・買い物・犬の散歩などしていてとても元気な母ですが
最近いつも口癖のようになるべくなら介護を受けずに一生を終わりたいと話しています。
母の元気な姿を見ているとまだ介護について考えるのは早いのかも知れませんが
母のためにも自分のためにも今から少しでも何らかの準備をしておこうと考えております。
日常の生活で気をつけること、また先々のことを考え
どのような準備をしておいたほうがいいのか教えていただきたいのですが。
まだ介護の大変さを実感していないので漠然とした質問になってしまいすみませんが、
宜しくお願い致します。
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回答
「親が長生きしてピンピンコロリするに子供として何をどう準備しておけばいいのか?」という趣旨の質問であると理解しました。きっと多くの子供は親のそんな最期を願っていることでしょう。
この質問を2つに分けて考えてみます。すなわち前半は「長生きする」、後半は「ピンピンコロリする」とし、両方を実現するための生き方でしょうか。実はそんな本を昨年書いています。「寝たきりにならず自宅で平穏死」」(SB出版)という本です。よろしければ参考にしてください。
要介護期間を短くする
たしかに長生きできても寝たきりや要介護状態になったり自分が誰だか分からなくなるのは誰だってイヤですよね。いま「寝たきりにならない」と書きましたが、好き好んで寝たきりになる人はいないわけですが。元気で長生き、すなわち健康長寿でないと子供は困りますよね。要介護期間は短いほどいいのが日本人の死生観でしょう。現在、日本人の生物学的寿命と健康寿命の差は概ね10年もあります。すなわち、せっかく長生きしても10年も要介護状態で過ごしているのが世界一である日本の長寿の実態なのです。がんは早ければ1~2年、長く闘病しても数年程度で、しかも長く寝込むことは無い病態です。一方、脳卒中後遺症は要介護期間が20年以上にも及ぶこともあります。
従って工夫すれば寝たきり期間を短くすることはある程度可能であると思います。そのためにはまず2つのことを意識してください。つまり生活習慣病対策です。まず第一は当たり前ですが毎回の食事に気をつけること。肥満で糖尿病の人は食事で克服できます。プチ炭水化物改善ダイエットだけで血糖値はかなり落ち着きます。夕食のご飯や麺類を控えることだけでも確実な効果があります。第二は毎日その人にあった歩行を毎日、楽しむ習慣を身につけることです。だからその人にあった歩き方を指導するのが医者の務めではないか。そう意気込んで書いたのが「病気の9割は歩くだけで治る!」(山と渓谷社)という本です。発売以来、医学部門で1位を走り続けていますので、よろしければ参考にしてください。
メタボ対策とロコモ対策
中年期ではやはりメタボ対策が大切です。高血圧や糖尿病は心筋梗塞や脳卒中だけでなくがんや認知症の下地になります。もし健康診断などでその傾向があるようなら、相性のいいかかりつけ医を見つけてアドバイスを受けながら、なるべく薬に頼らず食事と運動を心がけてください。そして60歳からはロコモ対策が加わってきます。ロコモとはロコモテイブシンドロームのことで、骨や筋肉が衰えないようにする習慣です。歩行に是非ロコモ体操も加えて下さい。難しい病気を複数抱えて、何人かの専門医にかかられている人もいます。しかしいつか必ずそこに通えなくなります。それが近いと感じたら、近くに往診もしてくれるかかりつけ医を見つけておくことも大切です。詳しくは「大病院信仰、いつまで続けますか?」(主婦の友社)に書きました。
とはいえ、いくら努力しても歳とともに老化による病気は必ずやってくるもの。老化には誰も逆らえません。できるのはせめて同年代の中で若々しくあろう、と意識して理にかなった生活するくらいでしょうか。しかし親のライフスタイルに子供が口をイチイチ口を出すことはなかなか難しい場合が多いですね。あるいは無理だと諦めたほうがいい時もあります。いくら親子といえども別人格。とはいえ親に終末期医療について聞いておくことくらいは、上手くやればどんな子供でも充分可能だと思います。聞いておかないと、実際そうなった時に困るのは親と子供です。
リビングウイルの勧め
「ねえ、お母さん、もし寝たきりになったらどこで療養したい?どこまで医療を希望するの?胃ろうはやるの?」それくらいは何かの機会に聴いてもいい時代かと思います。多くの親は、NO!と答えるでしょう。しかしその質問に怒る親もいます。「親に向かってなんて縁起が悪いことを言うの!」と。人間は自分自身の命については実に楽観的なのです。終末期で今夜死ぬかもしれないという人ですら、自分の最期はまだ何年か先だと思っていることが少なくありません。認めたくないのが本能です。「一人称の死」はいつの時代でもどんな人にも常に「初体験」ですから、シミュレーションしてもらうだけでも大変なことです。多くの高齢者は、「延命治療はお断り。自然に任せてね」と言われます。しかしイザその時になれば、そんな希望を書面にちゃんと残していないと、やはり望んでも無い延命治療に時間を費やし子供たちも後悔することが増えています。
質問するタイミングを上手にうかがい、リビングウイル(LW)の表明を勧めて下さい。テレビで芸能人の終末期医療の報道がされている時などがチャンスです。具体的には一般財団法人・日本尊厳死協会に入会すれば簡単にLWを表明することができます。LWとは、生きているけども自分が意思表示できなくなった時の医療に関する要望書です。私は「いのちの遺言状」と呼んでいます。日本では残念ながら、先進国中唯一、いまだにLWの法的担保がありませんが、書いておけば90%以上の確率で活かされることが分っています。LW表明という道をつけるのも子供世代の役割になる時代です。それを支えたり見守ることも親孝行であるという時代になりました。
親の「老い」を受け入れる
歳をとればどんな人でも様々な症状が出ます。その都度、医者に行けば、病名と薬が増えるだけです。それが好きな高齢者と嫌いな高齢者がいます。好きな高齢者は、結構、ドクターショピングをしています。国民皆保険制度の根幹はフリーアクセスですから、医者はかかり放題です。しかしいくら沢山の医療機関にかかろうが自由です。しかし「老い」から逃げることはどんな動物もできません。
その「老い」を受け入れられる親と受け入れられない親がいます。あるいは、受け入れられる子供と受け入れられない子供がいます。あなたの場合はどうでしょうか?
よくあるパターンは、親は自分の「老い」をちゃんと受け入れているけども、子供が受け入れられないケースです。子供が率先して親をドクターショピングさせるケースが増えてきています。子供世代といえば、40代~60台でしょうか。平和で比較的豊かな時代を生きてきたこの世代は、「老い」や「死」を知りません。辛いことかもしれませんが、親の「老い」を受け入れる準備をしておいて下さい。近著「親の老いを受け入れる」(丸尾多重子さんとの共著、ブックマン社)は、そうした人の参考になるでしょう。結局は、親の終活が成就するかどうかは、子供次第ということ。本誌をじっくり読むなど、子供世代が賢くなることが今回のテーマの答えになります。
- << 無常の中にある終活
- HOME
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この記事へのコメント
少しずつ、「どう生きるかはどう死ぬか?」ということが世間で考えられる
ようになってきていると感じます(まだまだですけど…)
長尾先生はじめ、心ある(^_^;)お医者様方が自然死の現状を根気よく伝えて
くださっていることも大きいと思います。
そもそも日本はなんでも手厚つくしすぎと感じます。国民のために手取り
足取りしすぎた結果が、「それが当たり前」と我々も思っているところに
問題があるのではないかと。すごく不思議なのが、「管に繋がれたくない」
「延命は不要」という人がほとんどなのに、「最後はどこで迎えたいか?」
に多くの人が「病院」をあげ、矛盾を感じます。
早期発見のために病院に行けとあおっておいて、高齢者が増えると病院に
行くな!(苦笑)。利権繋がり厚○省のその場施策に溜息です。
北欧に何度か高齢社会システムや施設の視察に行きましたが、日本でいう
特養にあたる施設での平均滞在期間は半年。日本は約5年。この差に愕然と
しますが、先方の施設長いわく「食べられなくなったら食べない、そのあと
水も飲まなくなる、だいたい死期がわかる」とのこと。
もうひとつは、高齢者本人たちの自立意識が高いと感じます。子に頼らない、
その時が来たらその時、という覚悟が自然でした。これらは文化の違いが
あって、だから北欧人はえらい!というわけではないのですが(^_^;)。
人間というのは、思っている以上にマインドコントロールされやす生き物
だと思います。だからダイエットブームが次々と訪れる(?笑)
先生の書かれていたタイ・レポートでも教育に触れておられましたが
子供だけでなく大人も、そろそろ「どう生きるか、どう死ぬか」も含み
教育が必要かなーと思います。
ちなみに、我が家は子供(私)は十分理解しているのですが、親が病院好き
で大変困ります。それを指摘すると「早く死ねというのか?!」とか
怒り出す始末(^_^;)…。 老人教育も必要と感じます~。
Posted by 匿名 at 2016年02月21日 08:42 | 返信
ありがとうございます。
Posted by 尾崎 友宏 at 2016年02月21日 09:16 | 返信
クリック 5390 に回帰 よかったですね。
今年に入ってから、5000 超えし、その後 6000近くにまで到達したことがあったような気が
します。その時に、どこかにメモしたのですが、残念ながらメモを失くしてしまいました。
益々の上昇をお祈り致します。
Posted by もも at 2016年02月21日 11:09 | 返信
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