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内視鏡専門医の講習会で2日間缶づめに

2016年05月15日(日)

週末、日本消化器内視鏡学会専門医の指定講習会に2日間缶づめになっていた。
これだけ長時間缶づめになるのは、おそらく人生で最後になるだろう。
様々な想いで、数々の素晴らしい講習を聞いていた。
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品川の巨大な部屋に日本中の消化器内視鏡専門医が
おそらく2000人以上も集まった姿は実に壮観である。

胃、大腸、膵・胆管など、お腹の臓器と内視鏡に関する講義を
2日間に合計16個も聞き、空港のラウンジでこれを書いている。

講師はすべて世界(当然日本でも)のトップランナーばかり。
といっても同世代かもっと若い先生も多い。

なんだか、子供に教えてもらっている感じで、随分歳を取ったと感じた。
内視鏡医療の最新事情について再確認するいい機会となった。

しかし20年前と比較してみると、正直、大きな進歩はあまり感じなかった。
しかしたしかに内視鏡画像や処置具は格段に進化している。

1mmの胃がんや大腸がんも明確に診断できる時代になった。
拡大やNBI内視鏡の普及は素晴らしい。

がん表面の模様でがんか否か、そして悪性度も診ただけでその場で分かる。
そして胃も腸も早期がんの多くが、内視鏡治療で完治できる時代になった。

近藤誠医師が、「早期胃がんなんて無い」とか「助かってもそれはがんもどきだ」
なんてまだ言って売れているが、ここにいる人たちの眼中には全くそれは無い。

とにかく小さながんを早く見つけて内視鏡で治して差し上げましょう、という趣旨が
内視鏡医のウリであり、自分達のアイデンテイテイであり、それを疑う人はまずいない。

早期胃がんはあるし、間違いなく「がん」である。
ただし医学の発達で、早期胃がんの自然経過を診ることは本当に少なくなった。

超高齢者の場合は、がん放置療法で行く場合もあるが、案外長生きする場合や
案外進行が早くて、1年位で寿命が来て亡くなられる場合まで様々ではある。

内視鏡治療でがんが少し残った場合、それが”暴れ出す”ということは充分あり得る。
昨日もそんな症例が何例か出ていたが、「ほんもののがん」の取り残しだったのか。

世の中は「早期がんを早期発見して縮小手術へ」という傾向にある。
しかしそれは、上記ののようなリスクを宿していて、現代医療の宿命でもあろう。

そして各医学会がネットを通じて症例登録を進めていて
臨床のビッグデータが蓄積されて現場に還元できる方向に動いている。

しかしずっと頭にあるのは、
「いつまでやるの?」
「検査や治療のやめどきは?」であった。



専門医や指導医の資格を維持するためにはこの2日間の講習が必須。
次回の更新は5年後なので、63歳になるので、その時は捨てるつもり。

消化器専門医や内視鏡専門医という資格を取得して20年以上になるが
その間にこれらの資格が何かの役に立ったことは一度も無かった。

そして、おそらくこれからも一度も無いだろう。
現在30代、40代の医師は役に立つことがあるかもしれないが。

だから、専門医の資格など何の意味も無かったし、いつ捨てても何も困らない。
しかし苦労して取り苦労して維持してきたわけなので、捨てるのは正直、辛い。

なんだか自分で自分を捨てる作業に思える。
しかし60歳を超えたらそんな資格は意味が無いし、やはり、捨てるのみである。

そう迷いながら高いお金と貴重な時間を費やして、缶づめになっていたが、
ひとつだけ収穫があった。

それは現代医療は、ますます人間を見ない医療に進んでいることを感じたこと。
1mmの病変は顕微鏡も使って一生懸命診るが、それを宿している人間はよく診ない。

よく「電子カルテのほうばかり診て」と患者さんに怒られる現代医療であるが、
内視鏡医は「内視鏡画面ばかり診て」という方向にもっともっと進んでいる。

だから、当院では
「病だけでなくい人を診る医療」をスローガンにしている想いはは20年間変わらない。

言うのは簡単だが、実行は難しい。
しかし医者というプロライセンスで飯を食うには、病も大切に診なければならない。

そうした想いが強くなっただけでも、参加した甲斐があった。







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※本ブログは転載・引用を固くお断りいたします。

この記事へのコメント

こんにちは。
日本中の内視鏡専門医が品川に集まっていたのですね。
1ミリの病変はみても、人は見ない方向にますます進んでいるということは、
患者としても多少感じることではありますが、そうでない先生もいらっしゃり、
そういう先生のもとには患者が大勢詰めかけてますます忙しい思いをされているのではと拝察いたします。内視鏡ではありませんが、侵襲性の高い検査をしようとしていて、失敗等もありうるので迷っており、「検査をどこまでするのか」や「やめどき」という話題は、まさに今の私に直撃です。今後もブログを楽しみにしています。よろしくお願いします。

Posted by ゆま at 2016年05月15日 09:14 | 返信

おつかれさまでした。

Posted by 尾崎 友宏 at 2016年05月15日 09:16 | 返信

長尾先生って、人間存在としてのヒトを看る総合内科医師としては、ほんとに「こんな先生が身近にいたらいいな」と感じます。
一方、認知症に関しては、現状妥協派というか、介護者を助ける目的etc.と言いながら少量投与とはいえ抗認知症薬・向精神薬投与肯定派でいらっしゃる。河野メソッドにベタ惚れの単細胞。脳をもてあそぶ薬は、少量だから良いってもんじゃありません。
「認知症は関係性の障害」とも書いておられるのに、なお薬物治療優先?---するしか方法が無いからでしょうか。
本人が置かれている環境を良い方向へ変えると、明らかに病的と言うべき症状は消滅します。逆に、うつ状態を悪化させるような環境に置くと、妄想や幻視が強く出ます。
この事実は、我が家の老人が現在進行形での証人です。介護施設を移動して、驚くほど明るく元気になりました。

Posted by 匿名 at 2016年05月16日 12:45 | 返信

匿名さんへ、
確かに認知症の方は、環境により症状の出方が大きく変ります。
介護者の対応の仕方など環境を整えることは、重要です。
しかし、それだけでは対応できないケースが居ることは、事実です。
また。症状により薬物療法をう上手に使っていくと、容易に良い常谷出来るケースも居ます。
全てを薬で解決しようとすると、無理が出てくることも事実です。
薬で悪化させてしまう事に成ってしまいます。
認知症に立ち向かうには、適切な介護と適切な薬物療法(不要なケースも多いですが)を行う必要が有ります。どちらか片方だけでは、うまくいかないケースが有りません。
あとコウノメソッドですが、メソッドにしたげって行くと比較的容易に良い状態を得られるということと、過去の対応法に比較して遥かに改善が得られるケースが居るということが挙げられます。

Posted by 小関 洋 at 2016年05月16日 12:37 | 返信

ゆまさんのブログを、読ませて頂きました。
ゆまさんはご家族とご自分の健康に、真面目に向き合っていらっしゃると思いました。
そしてお嬢さん達と、ポップや演歌や民謡や多くのジャンルの音楽に夢中になっているママさんです。
長尾先生も、メールを通じてか、それとも東京にいらっしゃる時は一度、ゆまさんの話を聞いてあげて下さい。
ゆまさんが関西にいらっしゃることができるかどうかは、難しいと思いました。

Posted by 匿名 at 2016年05月17日 11:02 | 返信

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