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胃がん検診の未来
2016年05月22日(日)
日本は胃がん大国なので、バリウム検診が広く普及している。
しかしそんな国は世界中で日本だけであることは、あまり知られていない。
内視鏡検査のほうが圧倒的に早期がんの発見に有利であることは常識なのだが。
しかしそんな国は世界中で日本だけであることは、あまり知られていない。
内視鏡検査のほうが圧倒的に早期がんの発見に有利であることは常識なのだが。
そうはいっても、バリウム検診はそう簡単に無くならない。
バリウムは放射線技師さんができるが、内視鏡は医師しかできないからだ。
私も10数年(今もだが)、何万人ものバリウム写真を診てきた。
しかし正直、怖くて怖くて仕方がない。
写っていないものを観る能力が要求されるからだ。
1時間で200人位のバリウム写真を読影するが、正直、考えないほうがいい。
そんな胃がん検診の近未来像がMRICから流れてきた。
胃がん検診の現状と未来が書かれているので、参考にしてほしい。
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50歳以下の人には必要ない毎年の胃がん検診
~内視鏡検査を選択肢に加え、50歳以上、2年に1回にするべき~
この原稿はJBpressからの転載です。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46734
武蔵浦和メディカルセンター ただともひろ胃腸科肛門科
多田 智裕
2016年5月18日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
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今から遡ること1年前の2015年4月、国立がん研究センターは「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン?2014年度版」を発表しました。
この改定の一番のポイントは、ようやく胃内視鏡検査が「胃がん検診として有効である」と認められたことです。同時に、「検診対象は50歳以上、なおかつ検診間隔は2~3年に1回で良い」とのお墨付きも公的に与えられました。
これらを踏まえれば2016年4月より胃がん検診は、「胃のバリウム検査もしくは胃内視鏡検査が選択可能」になり、なおかつ検診対象年齢は「50歳以上」で、頻度は「2~3年に1回」と変更になっても良いはずです。ところが、そのような話はあまり聞かれません。
2016年度のさいたま市胃がん検診においても、検診対象年齢は「40歳以上」、なおかつ「毎年受診可能」と昨年と変わらない形での実施となりました。
最近、テレビのバラエティ番組で、ある有名な先生が「バリウム検査をなくすと多くの人が職を失ってしまう」と発言しておられました。それもある一 面では正しいとは思いますが、今回のガイドライン変更はあまりにも大きな変化すぎて現場レベルではすぐには対応不可能だろうというのが私の正直な感想で す。
●バリウム検査しか選べないのは時代遅れ
胃がん検診には、「胃のバリウム検査」と「胃内視鏡検査」があります。
胃のバリウム検査は胸部レントゲンの150~300倍もの被曝量があるとともに、早期の食道がんはほとんど発見することができません。また、飲ん だバリウムを排出する際に痔を悪化させたり、便秘になって苦しんだりすることもあります。ですから、医師が胃がん検視を受ける際は、9割近くの人がバリウ ム検査ではなく胃内視鏡検査を選んで受けています。
一方で、鼻から細い管を挿入する胃内視鏡検査も普及しているとはいえ、硬い管を飲み込む胃内視鏡検査が苦手な方は、もちろん数多くいらっしゃいま す。また、意識をボーっとさせる鎮静剤使用は呼吸抑制などの副作用があることから、検診においては使用しないように通達が出ています。
また、胃のバリウム検査であれば、放射線技師さんのみで撮影が可能です。また地域の医療事情により胃内視鏡検査のマンパワーが手配できない場合でも、胃がん検診を行うことができます。
このように胃のバリウム検査と胃内視鏡検査にはそれぞれメリットとデメリットがあります。ただし、「がんの早期発見」という点ではやはり胃内視 鏡検査に軍配が上がります。また、放射線被曝がないという点も大きなメリットでしょう。そのため、胃のバリウム検査しか選べない現在の胃がん検診は、少 し時代遅れであると言わざるをえないと思います。
●受け入れられなかった「50歳以上」「2年に1回」
ちなみに2015年4月の国立がん研究センターの胃がん検診ガイドラインの改定を受けて、厚生労働省は各自治体に向けて、2016年度からの胃がん検診は「50歳以上」「2年に1回」で行うよう努力するようにという通達を出しています。
私が働くさいたま市にも国から通達が来ています。浦和医師会の胃がん検診運営委員会では緊急会議が招集され、対応が議論されました。
ただし、この会議で決まったことは以下の2点でした。
・さらなる胃内視鏡検診の精度管理向上のために、胃内視鏡検査時の写真の撮影枚数を従来の20枚から30~40枚に増やす。
・ヘリコバクターピロリ胃炎が強いほど胃がん発症確率が高まるため、胃炎の程度(胃の萎縮度)とピロリ菌除菌治療歴を記載して胃がん発生リスクに応じた読影が可能か検討する。
つまりは国からの通達のうち、胃がん検診の「精度管理体制の整備」の部分についてのみ対応が決定したということです。
「50歳以上」と「2年に1回」については、「40歳代で胃がんが見つかった方もいる」「1年前には胃内視鏡検診で異常なしでも、翌年に胃がんが見つかることもある」との意見が噴出して、とても受け入れられないという結論になったのです
●どこまでの誤差なら許容されるのか
2014年度のデータでは、さいたま市民検診で胃内視鏡検査を受けた40~49歳の約4000名のうち胃がんが見つかった人は1人もいません。ち なみに、50~59歳の方も、約4000名の受診者のうち胃がんが見つかった人はゼロです。つまり、胃がんは60歳以上の方に発症する場合がほとんどなの です。
また、1年前に胃がん検診を受けたときは異常がなくてピロリ菌感染もない人であれば、翌年に胃がんを発症する確率は、通常の胃がん検診における胃がん発見率0.1%よりも低い数字になることが見込まれます。つまり、99.9%以上は検診なしでも大丈夫ということです。
行政側は、「それであれば、胃がん検診対象年齢は50歳以上にして、2年に1回にするのが望ましい」との通達を出しています。一方、医師会側(検 診センターなども含む)は「可能性がゼロではないので、これまで通り毎年40歳以上の方が受けられるようにすべきだ」と主張している構図です。
私は個人的には、いくら予防のためとはいえ胃がんの発見頻度は少ないので、公的に補助がつくのは2年に1回にして、毎年受けたい方は自費での検診を追加してもらえば良いのではないか、と考えています。
もちろん、それで100%大丈夫と保障できるということではありません。頻度が少ないとはいえ、40代でも「昨年は異常なしだったのに今年、胃がんが見つかった」というケースもゼロではないのです。
しかし、これからも1件1万5000円のコストをかけて50歳未満の方への胃がん検診を毎年続けるべきなのか、各々がどこまでなら許容できるのか、コンセンサス作りの議論が必要なのではないでしょうか。
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ご覧になる環境により、文字化けを起こすことがあります。その際はHPより原稿をご覧いただけますのでご確認ください。
MRIC by 医療ガバナンス学会 http://medg.jp
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バリウムは放射線技師さんができるが、内視鏡は医師しかできないからだ。
私も10数年(今もだが)、何万人ものバリウム写真を診てきた。
しかし正直、怖くて怖くて仕方がない。
写っていないものを観る能力が要求されるからだ。
1時間で200人位のバリウム写真を読影するが、正直、考えないほうがいい。
そんな胃がん検診の近未来像がMRICから流れてきた。
胃がん検診の現状と未来が書かれているので、参考にしてほしい。
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50歳以下の人には必要ない毎年の胃がん検診
~内視鏡検査を選択肢に加え、50歳以上、2年に1回にするべき~
この原稿はJBpressからの転載です。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46734
武蔵浦和メディカルセンター ただともひろ胃腸科肛門科
多田 智裕
2016年5月18日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行 http://medg.jp
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今から遡ること1年前の2015年4月、国立がん研究センターは「有効性評価に基づく胃がん検診ガイドライン?2014年度版」を発表しました。
この改定の一番のポイントは、ようやく胃内視鏡検査が「胃がん検診として有効である」と認められたことです。同時に、「検診対象は50歳以上、なおかつ検診間隔は2~3年に1回で良い」とのお墨付きも公的に与えられました。
これらを踏まえれば2016年4月より胃がん検診は、「胃のバリウム検査もしくは胃内視鏡検査が選択可能」になり、なおかつ検診対象年齢は「50歳以上」で、頻度は「2~3年に1回」と変更になっても良いはずです。ところが、そのような話はあまり聞かれません。
2016年度のさいたま市胃がん検診においても、検診対象年齢は「40歳以上」、なおかつ「毎年受診可能」と昨年と変わらない形での実施となりました。
最近、テレビのバラエティ番組で、ある有名な先生が「バリウム検査をなくすと多くの人が職を失ってしまう」と発言しておられました。それもある一 面では正しいとは思いますが、今回のガイドライン変更はあまりにも大きな変化すぎて現場レベルではすぐには対応不可能だろうというのが私の正直な感想で す。
●バリウム検査しか選べないのは時代遅れ
胃がん検診には、「胃のバリウム検査」と「胃内視鏡検査」があります。
胃のバリウム検査は胸部レントゲンの150~300倍もの被曝量があるとともに、早期の食道がんはほとんど発見することができません。また、飲ん だバリウムを排出する際に痔を悪化させたり、便秘になって苦しんだりすることもあります。ですから、医師が胃がん検視を受ける際は、9割近くの人がバリウ ム検査ではなく胃内視鏡検査を選んで受けています。
一方で、鼻から細い管を挿入する胃内視鏡検査も普及しているとはいえ、硬い管を飲み込む胃内視鏡検査が苦手な方は、もちろん数多くいらっしゃいま す。また、意識をボーっとさせる鎮静剤使用は呼吸抑制などの副作用があることから、検診においては使用しないように通達が出ています。
また、胃のバリウム検査であれば、放射線技師さんのみで撮影が可能です。また地域の医療事情により胃内視鏡検査のマンパワーが手配できない場合でも、胃がん検診を行うことができます。
このように胃のバリウム検査と胃内視鏡検査にはそれぞれメリットとデメリットがあります。ただし、「がんの早期発見」という点ではやはり胃内視 鏡検査に軍配が上がります。また、放射線被曝がないという点も大きなメリットでしょう。そのため、胃のバリウム検査しか選べない現在の胃がん検診は、少 し時代遅れであると言わざるをえないと思います。
●受け入れられなかった「50歳以上」「2年に1回」
ちなみに2015年4月の国立がん研究センターの胃がん検診ガイドラインの改定を受けて、厚生労働省は各自治体に向けて、2016年度からの胃がん検診は「50歳以上」「2年に1回」で行うよう努力するようにという通達を出しています。
私が働くさいたま市にも国から通達が来ています。浦和医師会の胃がん検診運営委員会では緊急会議が招集され、対応が議論されました。
ただし、この会議で決まったことは以下の2点でした。
・さらなる胃内視鏡検診の精度管理向上のために、胃内視鏡検査時の写真の撮影枚数を従来の20枚から30~40枚に増やす。
・ヘリコバクターピロリ胃炎が強いほど胃がん発症確率が高まるため、胃炎の程度(胃の萎縮度)とピロリ菌除菌治療歴を記載して胃がん発生リスクに応じた読影が可能か検討する。
つまりは国からの通達のうち、胃がん検診の「精度管理体制の整備」の部分についてのみ対応が決定したということです。
「50歳以上」と「2年に1回」については、「40歳代で胃がんが見つかった方もいる」「1年前には胃内視鏡検診で異常なしでも、翌年に胃がんが見つかることもある」との意見が噴出して、とても受け入れられないという結論になったのです
●どこまでの誤差なら許容されるのか
2014年度のデータでは、さいたま市民検診で胃内視鏡検査を受けた40~49歳の約4000名のうち胃がんが見つかった人は1人もいません。ち なみに、50~59歳の方も、約4000名の受診者のうち胃がんが見つかった人はゼロです。つまり、胃がんは60歳以上の方に発症する場合がほとんどなの です。
また、1年前に胃がん検診を受けたときは異常がなくてピロリ菌感染もない人であれば、翌年に胃がんを発症する確率は、通常の胃がん検診における胃がん発見率0.1%よりも低い数字になることが見込まれます。つまり、99.9%以上は検診なしでも大丈夫ということです。
行政側は、「それであれば、胃がん検診対象年齢は50歳以上にして、2年に1回にするのが望ましい」との通達を出しています。一方、医師会側(検 診センターなども含む)は「可能性がゼロではないので、これまで通り毎年40歳以上の方が受けられるようにすべきだ」と主張している構図です。
私は個人的には、いくら予防のためとはいえ胃がんの発見頻度は少ないので、公的に補助がつくのは2年に1回にして、毎年受けたい方は自費での検診を追加してもらえば良いのではないか、と考えています。
もちろん、それで100%大丈夫と保障できるということではありません。頻度が少ないとはいえ、40代でも「昨年は異常なしだったのに今年、胃がんが見つかった」というケースもゼロではないのです。
しかし、これからも1件1万5000円のコストをかけて50歳未満の方への胃がん検診を毎年続けるべきなのか、各々がどこまでなら許容できるのか、コンセンサス作りの議論が必要なのではないでしょうか。
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ご覧になる環境により、文字化けを起こすことがあります。その際はHPより原稿をご覧いただけますのでご確認ください。
MRIC by 医療ガバナンス学会 http://medg.jp
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この記事へのコメント
題記とは直接的ではなくて、少し恐縮ですが、
先程、NHK番組:Eテレ 内で、須磨久善医師が対談なさるのを見ました。
心臓外科の権威でいらっしゃる須磨先生の静かな迫力と目力、発言の端的さに
引き込まれました。
成果については、「患者さんが病気以前よりも、何かを会得して下さることが嬉しい。」
という結論付けが、とても膨らみと温かみがあって良かったです。
ドッグや検診を受けるのも当然ですが、急に病に臥せったとしても、会えて良かった!と
思わせて下さる医師の存在如何によっては、病も吹き飛ぶ=人生を二度生きることができる、
そんな幸福感もあるナ、と、ふっくらとした気持ちに浸りました。
Posted by もも at 2016年05月22日 12:41 | 返信
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