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在宅患者さんの不眠

2016年05月22日(日)

産経新聞・睡眠シリーズに「在宅患者さんの不眠」について書いた。
多くの在宅患者さんが不眠を訴えるが、我々は何ができるのか?
当たり前のことを、私なりに書いてみた。→ こちら
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産経新聞・睡眠シリーズ第6回  在宅患者さんの不眠
               朝一番に光を浴びることが大切
 
 今日は増え続けている在宅療養患者さんの睡眠に関するお話です。ひとくちに在宅患者さんと言っても病状も療養の場も様々です。病状とはがんとがん以外、療養の場とは自宅と介護施設に分かれます。介護施設の部屋にはたいてい窓があり採光が確保されています。しかし自宅療養の場合、寝室に窓の無い部屋のことがあります。またせっかく窓があっても1日中厚いカーテンが閉められている場合があります。デイサービス等で週に何度か朝から外出の機会があればいいのですが、それを拒否して全く外出の機会が無い人もおられます。私の経験ではそうした人は昼夜逆転して介護者は悲鳴をあげがちです。そして「先生、睡眠薬を出して」となります。患者さんも介護者も保護するために睡眠薬を処方せざるをえない場合がありますが、本来考えるべきは療養環境の改善です。つまり朝一番に日光を浴びる習慣こそが不眠症改善の第一歩なのです。週6~7日、デイサービスに行く人は朝日を浴びるため睡眠薬が不要になることが多いです。

 次に介護施設の療養環境ですが実に様々です。車椅子に乗せてでも朝日を浴びたり外を散歩させてくれる施設もあれば、1年中あまり光の入らない部屋で過ごす施設まで、日光への対応は様々です。光を浴びる時間が少ない施設ほど不眠を訴える入所者が多く、睡眠薬の処方が多く、転倒・骨折も増えるとう悪循環に陥り易くなります。

 人の体は時間とともに一定の規則性のあるリズムを刻んでいます。それは“生体リズム”と呼ばれ、これが作りだす時計のような仕組みは“腹時計”ならぬ“生体時計”と呼ばれています。そのリズムの中に睡眠のリズムがあります。睡眠以外にも体温調節や血圧や脈拍調節のリズムがあります。この“生体時計”の中で最も大切な働きをしている物質がメラトニンです。メタトニンは、光を感知すると減少して夜に暗くなると急速に増加します。メラトニンは太陽の光や照明の光と強く関係します。メラトニンの原料はトリプトファンという必須アミノ酸で、脳内でセロトニンに変わった後にメラトニンに変化します。トリプトファンは肉や魚、大豆製品や乳製品に多く含まれています。朝食に納豆や魚を食べることはメラトニンの観点からも理にかなっています。一方、セロトニンはうつ病で不足することも有名ですが、メラトニンの分泌と正反対のリズムを持っています。光を浴びると昼間のセロトニンが増え、暗くなると今度はメラトニンが増えます。

 朝一番に光を浴びることはメラトニンを減らして脳を覚醒させることです。遅くとも起床後3~4時間以内にたとえ5分でもいいので太陽の光を浴びることで不眠が改善します。ある施設ではさらに午後に入所者全員で施設の周囲を散歩させてみました。ほぼ全員ですから車椅子の人も多く介護職員も総動員になりますが、たった30分程度の午後のお散歩習慣だけで入所者だけでなく、介護職員の不眠まで改善しました。メラトニンというと先週書いたメラトニン受容体作動薬であるラメルテオン(ロゼレム)を思い浮かべるかもしれません。しかし薬はあくまで次善の策で、朝日を浴びることだけで自分の脳から自然のメラトニンを夜にたっぷり分泌させることができるのです。
 
 
キーワード メラトニン
脳の松果体から分泌されるホルモン。覚醒と睡眠を切り替えて自然な眠りを誘う作用があるため「睡眠ホルモン」とも呼ばれる。また抗酸化作用や老化防止作用などの効果もある。

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この記事へのコメント

「ラジオ体操」は万能な健康法だそうですね。関節を意識して正しく身体を動かすと、節々に効く
刺激を感じます。普及に努める団体もあると聞きました。夏休みの早朝、出席カードを持参した
幼少時代がありましたが、個人で行うも良し、環境が許されるのであれば公園での企画もアリでは
ないでしょうか。
朝日と早朝の空気は、文句なしに気持ち良いと思います。

Posted by もも at 2016年05月22日 10:26 | 返信

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