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終末期以降は過剰な医療を控え緩和に徹する
2016年06月14日(火)
東京在住63歳女性からの質問をお送りさせていただきますのでよろしくお願い申し上げます。
【質問】
実母(90歳)が1月頃から激しい下痢が続き、かかりつけ医から紹介状を書いて頂き大学病院で診ていただいたところ、肺に転移したステージ4の盲腸癌で、余命は一年。それに伴う腸閉塞とわかりました。高齢のため、抗がん剤治療はせず腸閉塞治療のための腸のバイパス手術だけを受けて自宅療養に入ることになりました。末期がんということで前倒しで介護サービスを受けられるようにケアマネさんが奔走してくださっています。夫婦共働きのため、家をあけることも多いのですがありがたいことに近所の方々がとてもいい人達(下町ということもあると思うのですが)で母の心配だけでなく、猫の世話をしてくれたり、植木に水をあげてくれたりといつも留守を守ってくれています。家で母を看取りたいと思っていますが、今後母にはどのような症状が予想されるのでしょうか?家族はこれからどのようなことに気を付けて生活していけばよいのでしようか?何かアドバイスを頂けますでしょうか。どうぞよろしくお願い致します。
【回答】
90歳のステージⅣの盲腸がんとのことですが長生きできた先にできたがんは“長寿者の宿命”なのかもしれません。「余命1年」と説明されたとのことですが、主治医の主観であくまで一つの目安とお考え頂いたほうがいいかと思います。というのも、ヤブ医者の私の余命宣告は正直、よく外れます。高齢者の場合、時にがん以外の要因(肺炎)などで亡くなることもあります。私自身は、余命が2~3ケ月以内だと思った時に家族には「末期」という言葉を使いますが、余命1年なら「まだまだ大丈夫」と言っています。盲腸がんは大腸がんのひとつですが、進行した場合、腸閉塞を来たすことがあり得ます。内腔が完全に閉塞して詰まるのです。ですからお母さまのようの根治目的ではなく腸閉塞を回避するためのバイパス手術や人口肛門を造設する場合があります。さて、今後知っておくべきことを2、3書かせていただきます。
早めに在宅医を探しておいてください。
家でお看取りしたいとの考えですが、もしそうであれば早めに在宅医を探しておいてください。外来診療も在宅医療もやっている町医者型でもいいですし、在宅専門クリニックでも構いません。選ぶポイントとしては、自宅から近ければ近いほどいいですし、お目当ての医師と実際にお話ししてウマがあうことも大切。そしてできれば在宅看取りの実績のある診療所が望ましいでしょう。在宅療養支援診療所ないし在宅療養支援病院という看板を掲げている中から選ぶことをお勧めします。但し、そうした看板を掲げていても年間看取りがゼロという診療所も少なからず存在します。従ってたとえば週刊朝日ムックの「在宅で看取るお医者さん」のように看取りの実績が公開されているので書店やネットで調べてください。すでにケアマネさんが奔走されているとのことですから、ケアマネさんに聞いてみてもいいでしょう。ケアマネさんや訪問看護師さんが地域の在宅医の実態を一番知っています。
在宅専門クリニックであっても、外来通院可能な元気なうちから面談して備えてください。末期がんの平均在宅期間は1~2ケ月程度で正直、あっと言う間です。ですから徐々に衰弱していく過程や痛みをどう支えるか在宅チームの力量なのですが、一番力になってくれる職種は医師ではなく間違いなく訪問看護師さんのはず。しかし在宅医と訪問看護師との関係はさまざまです。自院のナースを訪問させる医師もいれば、法人内や別法人の訪問看護ステーションと組む場合などいろんな形態があります。ケアマネさんはもうみつけられたようですが、あとは訪問看護師も含めた医療職との出会いになります。在宅医療には緩和ケアの技術が必須です。看取り数が多くて看取り率が高いチームは、それだけ在宅緩和ケアの技術に精通しているチームと言えます。
「平穏死」を知っておく
がんが進行すればいつかは徐々に食べられなくなり痩せてきます。しかしその時に「食べられないから高カロリー輸液」と考えるのは間違いです。がんはブドウ糖を栄養源にしていますから、高カロリー輸液はがんに餌をあげているのと同じことになるからです。そればかりか水分を入れ過ぎると、腸閉塞や腹水や胸水に苦しむことになります。肺に転移が見られるとこのことですが、そこに胸水や心不全が加われば呼吸困難で苦しむことになり本末転倒です。できるだけ1日200ml以上の輸液は行わず、「自然な脱水過程を見守る勇気」が大切であると全国各地で説いて回ってきました。私は「終末期の脱水は友」、とも述べてきました。しかし亡くなるまで大量の高カロリー点滴をしている病院がまだ少なからずあり、そのまま在宅医に回される場合もあるので注意が必要です。
終末期以降は自然な脱水を甘受することで、痛みが軽減され最期まで何かしら食べられます。完全な腸閉塞になりません。そしてなによりも沢山点滴をするよりも長く生きられます。つまりいいことだらけなのです。しかし治療のギアチェンジのタイミングやその判断は難しく、本人・家族と多職種と話合いを重ねることが大切です。なかでも本人の意志をできるだけ尊重することこそが終末期における「尊厳」であると考えます。
以上は「平穏死」という概念です。「平穏死」とは尊厳死、自然死と同じ意味。「枯れて」いくこと。これは末期がんにも老衰にも共通する概念です。終末期以降は過剰な医療を控えて緩和ケアに徹すること。平穏死の土台は、緩和ケアです。昨今の緩和ケアの発達はめまぐるしく、医療用麻薬など様々な痛み止めが在宅においても病院とまったく同じように使えます。そして在宅緩和ケアチームは、体の痛みだけではなく心の痛みも癒す研鑽を積んでいます。もし余裕があるようでしたら拙書「平穏死・10の条件」をご一読ください。
在宅看取りについて知っておく
日本は法治国家ですから在宅看取りも当然法律に基づいて行われています。看取りの法律とは昭和24年にできた医師法20条のことです。しかし残念ながらこの法律を誤解している医療職や市民が多いのが現状です。是非、一般市民のみなさまも拙書を精読してしい知識を得ておいてください。「自宅で死亡=警察届け」ではありません。定期的に診ている医療機関(主治医)がいれば、患者さんが息を引き取る瞬間に医師がその場に立ち会って居なくても大丈夫です。後ででも家に行って患者さんを診察すれば(たとえとっくに亡くなってずっと後も)主治医は死亡診断書を書くことができます。記入する死亡時刻とは医師が到着した時間ではなく、息を引き取った(であろう)だいたいの時間です。推定でも結構です。
さらに救急車についても勉強しておいた方がいいでしょう。呼吸が止まった時に気が動転した家族やヘルパーが救急車を呼んだなら、救急車は警察に連絡します。すると警察官が家にやってきて「捜査」が始まります。在宅死は人間の自然な営みであり事件ではありません。ですから在宅看取りと決めたらなら腹を決めてください。イザその時がきたら在宅主治医に連絡してくれぐれも救急車を呼ばないことも大切です。医者も人間。風呂に入っていたらすぐに電話に出られないこともあります。ですから家族とスタッフ全員が「待つ」ことができなければ、在宅看取りは叶いません。この「最後の一手」で後悔する家族がいまだに少なくありません。
限られた紙面ですべてをお伝えすることができませんでした。もし可能でしたら「平穏死という親孝行」や「家族が選んだ平穏死」などの拙書で詳しく解説していますので続きはそちらをご参照ください。ケアマネさんが奔走してくれていたり、ご近所の方も協力的で見守り体制もあるようですから、たとえ共稼ぎであっても在宅看取りの条件は充分です。お母さまが主治医の予想を遥かに超えて長生きをされ、ご自宅で貴方に感謝しながら穏やかな最期を迎えられることをお祈り申し上げます。
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この記事へのコメント
私の母の頸動脈が触れなかった時、東京の学会に出席している母の主治医に電話で相談して、消防署に電話して救急車に来て貰いましたけど、警察は来ませんでした。救急病院の医師が「心肺停止」と診断してくれました。
病室で母の遺体の顔の布を取って、暫く茫然と見つめました。驚きと恐怖で涙も出ませんでした。
その様子を、どこかで医師と看護師が見ていたかもしれません。「どうしても警察に届けて、警察で検視をしなければいけない。そうなると数日間お母さんのご遺体は帰ってこないかもしれませんよ」と医師に言われました。
警察で検視がある事は、みんなから聞いて知っていました。
「私の母が何故死んだのか知りたいから、是非警察で、検視をして下さい」と強く言いました。
暫く休憩室で休んでいると、「CTスキャンで撮ったらお母さんの胸の動脈解離がハッキリ出た。心タンポナーデと言って、解離した動脈から血がどっと心臓に行って詰まったんだ。こんなにハッキリ映るとは思わなかった」と医者が言ってくれて、驚きました。
私は、在宅医に「老衰」と死亡診断書を書いて貰うより、「警察の検視をします」と脅されたけれど、CTスキャンで「大動脈解離のよる心タンポナーデの為に死亡」と診断されて良かったです。
これは個人的な問題で、今後の老人の介護や死亡原因の研究に役立つと思ったからです。
在宅医がいらっしゃって、「まあ91歳だから、老衰だろう」でも良いと思います。偶然、市役所の介護保険審査会に関わっていらっしゃった院長がいらっしゃたし、沢山の老人ホームの担当医も兼ねて、病院全体で在宅医療も施行していらっしゃったようですから、運が良かったのか、偶然です。
これが、地方の病院だったら、事情が違っていたかもしれません。
在宅医療はこれからも、多様なケースがあって、多様な対応が望まれるのではないでしょうか。
Posted by 大谷佳子 at 2016年06月14日 06:52 | 返信
昨日 市で開催の在宅医療 介護の研修会に参加しました
感想 一言発言で…
在宅看取りをするならば 在宅看取りを理解してくださる先生が必要です
どんなにいい先生でも何かあったら病院へ…とおっしゃる先生では 在宅看取りは厳しいですと発言させていただきました
ですが…
大先輩の訪問看護ステーション管理者さまが
「私は 少し意見が違います
24時間356日来なくても いい先生はたくさんいます
人工呼吸器がついていても 夜間は訪問看護で対応して ドクターを呼ぶことはないです」とおっしゃいました
こうやって書かせていただいて
意味合いが違うことに気がついきました
本当の在宅看取りを考えていかないとダメですね…
Posted by 訪問看護師 宮ちゃん at 2016年06月14日 09:51 | 返信
先日便に陽性反応が出て 注腸検査を受け受けました。 私の中ではそっとしていたい気持ちもあったのですが 80はまだ若い85を超えれば選択肢の一つにしてもいいと囁かれ ついついその気になりました。
私はこれまで切腹3回、腸閉塞で入院もしていますので内視鏡検査は嫌いです。 結果として育ち過ぎたポリープが見つかり出血もしています。 積極的治療は望まず穏やかにQOL?を保ちたいのですが気持ちの揺れに自分で驚いています。 「日本尊厳死協会」にも入っているのですが〜
明日 地域の拠点病院に行きます。 48歳で胃の全摘していますので80歳まで生きてこられた事だけでも感謝なのですが なんとも
先日は小澤竹俊先生の講演会にスタッフの一員として参加できて嬉しかったです
Posted by 綾女 at 2016年06月15日 09:27 | 返信
お身体を大切になさってください
訪問看護師 宮ちゃんから綾女への返信 at 2016年06月17日 10:21 | 返信
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