プレ調査として、旅行に行く頻度と個人の主観的幸福感の関連を調べる目的で、研究グループは5月に45人の客を対象にアンケート調査を実施した。過去5年間の旅行回数について、自由記述形式で質問。また、心理学的に信頼性が確認された質問紙である「主観的幸福感尺度」にも回答してもらい、客の主観的幸福感(自分は幸せだと思う気持ち)を測定した。さらに、客がどのようなモチベーションを持って旅行に行き、そのモチベーションが主観的幸福感とどのように関連するかを調べるため、観光動機の質問紙にも答えてもらった。
過去5年間の旅行回数と主観的幸福感の関係性を調べる統計解析を行ったところ、過去5年間の旅行回数が多いほど、人生に対する「失望感」が低いという有意な結果が得られた。また、「現地交流」を動機として旅行をする傾向が高いほど、人生に対する「満足感」が高いこと、「旅行先の文化や歴史を知りたい」といった文化の見聞を旅行の動機とする傾向の高い人ほど人生で起こる困難な状況に自分で対処できるという自信を強く持っていることもわかったとしている。
これらの結果は、あくまで旅行回数や観光動機と主観的幸福感の「関連」を示す結果であり、旅行回数や観光動機が主観的幸福感に「影響」することを示すものではないが、頻繁に旅行に行くほど、あるいは明確な動機を持って旅行に行きその動機が満たされるほど、主観的幸福感が高くなる可能性が示唆される結果となった。高い主観的幸福感は、長寿命や認知機能の維持に影響すると考えられており、今回のプレ調査の結果は、旅行が認知症の予防・抑制に効果的であるという可能性に期待が持てる結果であると研究グループは見ている。
今後は、「旅行に行く頻度の高い高齢者は主観的幸福感やストレスコーピング(対処)能力が高く、認知機能が保たれている。また、旅行前・旅行後で脳に変化があり、主観的幸福感は向上、認知機能は低下抑制が見られる」という仮説をもとに、3年間で約90人を対象に、さらに詳しい調査をしていく予定。
この記事へのコメント
旅行療法は認知症の予防、抑制だけではなく、ADLの維持、向上にも効果ありだと思います。
Posted by 社会福祉士河本健二 at 2016年07月18日 06:11 | 返信
東京で、自力整体のお教室を経営している中学校時代の友達が以前「昔のインドでは、歳を取って、認知症になったり、死期が近づくと、年寄りが一人で旅の出る。旅の出た先で、倒れて死にかけたりするとその近所の人達がなにくれとなく世話をして、亡くなるとその地に葬ってあげる風習があった。」というのです。
年寄りが、一人で旅立つのも治療のひとつなのかなと思います。
でも集団で旅をする時は、リーダーとか添乗員さんは、頭脳明晰でしょうけど、ただ黙って一緒についていくだけで認知症予防になるのですか?
ちょっとわかりません。
Posted by 匿名 at 2016年07月18日 09:16 | 返信
文中にあります、"主観的幸福感やストレスコーピング(対処)能力が高く" の箇所について、
高齢者の認知症予防というよりも、"働き世代の病気予防"として、是非とも推進して頂きたいと
思います。理想的な休日取得は、ままならない御時世が定着してしまった世の中ですから、
疲労感が蓄積した身体を引きずったまま、日々を送る人々が、どれだけ多いことでしょう。
長い目で見れば、健康的に働き続けた後に、定年や老後を迎えれば、それは認知症予防には
なることでしょう。
Posted by もも at 2016年07月18日 11:20 | 返信
元々の生活習慣に依るのかな、と思います。
旅行好きであって、旅行慣れしているのであれば、開放的な気分になるでしょうし、主観的幸福感
を持つことができると想像できますが、旅行に慣れていない人は疲れるでしょう。
今現在、高齢な方の中には「滅多に県外には出たことがない」という生活をしてきた方々も、おられ
ます。一概に、旅行=認知症予防、と詠うには広義すぎるような気もします。
ただ、旅行によって刺激を与えるという意味は理解できます。
Posted by もも at 2016年07月18日 11:50 | 返信
こんにちは。
確かに旅行は行く準備をしている時からワクワクしますし、
心にも体にも良さそうですね。
Posted by 匿名 at 2016年07月22日 02:44 | 返信
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