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認知症とリビングウイル(きらめきプラス)

2016年07月20日(水)

きらめきプラスvol47の連載には認知症とリビングイルについて書いた。→こちら
この雑誌では毎回、読者からの質問に答えるという形式をとっている。→こちら
あたらめてリビングウイルの重要性を知って欲しい。
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成年後見人の申立人に認知症の本人がなれる。
「後見」がついた認知症の人も選挙で投票できる。

いわんや、リビングウイルを表明することができる。
そう考えているが、みなさんの意見はどうだろうか。

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きらめきプラス8月号
 
仙台在住54歳女性からの質問です。
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皆様の質問、長尾先生のお答えにいつも励まされ、とても参考にさせていただいています。
82歳になる父は2年前に不整脈からの脳梗塞になり、その後要介護4になり誤嚥性肺炎で入退院を繰り返しています。しばらくは訪問看護師さんの手を借りながら母が父の面倒を見ていたのですが母もごく初期の軽い認知症と診断され家族で1年ほど前に同居しました。看取りまで家で過ごさせてあげたいと思っていますが、父はいつも「よけいなことはしないで、死なせて欲しい」と言っています。延命治療はしないでほしいということだと思うのですが、先生に相談したほうが良いのでしょうか。以前、長尾先生が尊厳死協会のお話をされていましたが、いざとなったとき家族としては先生にできるだけのことはしてください!と言ってしまいそうなので、家族で話し合い、延命処置拒否の要望を書いた書面を用意しようと決めました。連絡をすれば尊厳死協会でも相談にのっていただけるのでしょうか。また、ほかにどんなことを知っておくとよいのでしょうか。よろしくお願い致します。
 
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とても大切なことをご質問頂き、ありがとうございます。
 
 
リビングウイル(LW)とは

結論から申しますと、「よけいなことはしないで、死なせて欲しい」とのお父さんの言葉はリビングウイル(LW)そのものです。しかし口頭だけでは証拠にならない可能性があるので是非とも文書という形でLWを残しておいてください。本人のサインないし捺印という文化です。公証役場に出かけて何万円かかけてオーダメイドのLWを作成することもいいでしょう。しかし面倒だし、高いなあと思う人は、是非とも一般財団法人・日本尊厳死協会でLWを表明してください。2000円を振り込んで協会の会員になれば、LWを作成し原本を保存してもらえます。そのうえ年4回の会報や講演会やイベントの案内もお届けいたします。毎年払う2000円は会報代以外に保管料、カード発行、各種イベントに使われますが、なによりも「LWの意思は変わりません」という意味合いもあります。

LWの日本語訳は定まっていませんが、私は「いのちの遺言状」と呼んでいます。日本尊厳死協会では「不治かつ末期になった時に延命処置を拒否」するという文章の後に本人がサインをしてLWとしていますが、類似の文書や類似の団体がいくつかできてきました。我々はLWの普及啓発を目的とする市民団体であるので、こうした草の根的な広がりを大歓迎しています。
 
 
日本人とLW

現在、日本尊厳死協会でLWを表明している人は約12万人おられます。この数字を多いと見るのか少ないと見るのか。実は、米国の41%と比較して日本の0.1%という数字は国際的に見て極めて低い数字です。日本はLEに関して言うと最も後進国です。それはなぜなのでしょうか。

そもそも、日本は自己決定という文化が無い国です。それどころか「自己」という概念もあやふやな国です。たとえば、大阪弁では、相手(You)を指して、「自分(I)」とか、怒ったときには「おのれ!(I)」と言いますが考えてみれば不思議。このようにIとYouを区別せず一体となった珍しい言語を使っている民族が日本人なのです。だから人生の最終章の医療という極めて重要な事態に関する要望でも自分で決めるという国民は0.1%~せいぜい1%にすぎないというとても変わった民族です。家族と一体となるか家族が重要な意思決定を代理するという文化なのです。なにせ、聖徳太子さんの時代から「和をもって尊となす」と、自己主張を美徳としない空気が今も根強く残っているのが日本社会であるとも言えるでしょう。

日本は先進国中唯一、LWの法的な担保もされていません。こうした法律用語は、なんだか難しそうですが、遺言状が法的に有効であることと対比すれば分かりやすいでしょう。ちなみに台湾では2000年に、韓国でもLWの法的担保がなされました。そもそも日本でもLWを普及啓発しようと結成されたのが日本尊厳死協会という市民団体です。今年、結成40周年を迎えます。40年前の1976年といえば、まったくの偶然ですが在宅死と病院死の割合が逆転した年でもあります。そして現在でも多くの病院で管だらけになって亡くなっている人が約8割である現状を考えると、1976年はなんだか因縁深い年のように思えます。


 
大認知症時代のLWとは?

年々、日本の医療技術は凄まじい進歩を遂げています。100歳を超えていても適応があれば、心臓の冠動脈のカテーテル手術がごく普通に行われる凄い国です。しかしそれに比例して「終末期」や「不治かつ末期」の定義も年々難しくなっているのも現実。大病院では様々な治療オプションが用意されています。しかしそれをどこまで続けるのか、どこでやめるのか、すなわち治療の“やめどき”が今後の医療の大きな課題になってきます。

 1976年当時は、多くの末期がん患者さんに人工呼吸器が装着されていました。この様子は1993年に公開された映画「大病人」(伊丹十三監督)にしっかり描かれています。それが絶対嫌だと思う人がLWを表明しました。しかし現在は大認知症社会を前に、認知症終末期の胃ろうが絶対に嫌だという人がLWを表明するケースが増えています。しかし肝心な時にはLWを持っていること自体を忘れるかもしれないので、是非ともLWに家族などの代理人のサインも添えて頂くと助かります。協会では日本LW研究会や日本LW検討会を重ねており、大認知症時代を前提としたより実用的なLWへの改定を議論していている最中です。
 
 
LW受容医と相談員制度

LWを表明した人の意思を尊重して尊厳ある最期を支えてくれる医師のことを「LW受容医」と呼んでいます。多死社会を目前に、まだまだ多いとは言えないかもしれませんが、年々、着実に増加しています。はやり在宅医関係が多いようですが、会員さんになれば協会のホームページで受容医を知ることができます。公益法人化を目指す中、受容医の増加、教育、そしてリストの一般公開が協会の大きなテーマになってきます。

一方、週刊朝日増刊号(ムック)「自宅で看取ってくれるお医者さん」という雑誌が2年毎に出版されています。ここには全国の在宅療養支援診療所が厚労省に届け出た在宅看取り数の実数がそのまま掲載されています。在宅での看とりはほぼすべてが尊厳死なので、こうしたデータブックからも尊厳死の願いを叶えてくれる医師について情報を集めてください。実はさまざまな病院でもLWに理解の深い医師はたくさんいるのですが、大きな組織に所属していると「リストには載りたくないけど叶えたい」的な勤務医、いわば「隠れ受容医」もかなり増えてきたことは知っておいてください。

ですから受容医という名称に拘らず、ちょっと勇気を出してLWカードをお医者さんに見せてください。「いいことですね」とか「叶えます」と言ってくれる医師なら最期を託してもいいでしょう。しかし「分からない」とか「知らない」という医師は敬遠したほうがいいかと考えます。また尊厳死協会本部では看護師や相談員が無料でLWに関する電話相談を適宜受けています。最近は明らかに認知症に関する相談が増えています。

 以上より、お父上さんには是非ともできるだけ早くLWを表明して下さい。そして大切な家族の意思を尊重できるよう普段から兄弟や親戚間で何度も話し合っておいてください。死はイヤなことですが、“こころづもり”が大切な時代なのです。
 
 
 

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この記事へのコメント

被後見人の自己決定や意思表示はとても大切なことに間違いないのですが、支援者や家族の意見に左右されたり、誘導尋問されやすいので、支援者は本人の本音を見極める力が必要です。

Posted by 社会福祉士河本健二 at 2016年07月20日 06:58 | 返信

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