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措置入院よりも警察

2016年08月02日(火)

相模原事件を受けて、措置入院の延長や精神科医療が問題視されている。
しかしこの犯人のような人間に対しては警察がもっと対応すべきではないか。
以下、精神科医の和田秀樹先生のブログから転載をさせて頂く。
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相模原事件に思う
 
相模原の45人殺傷事件は、殺傷した人数の多さやあるいは襲われたのが障害者だったというようなこともあり、今後も相当センセーショナルに報じられ続けるだろうが、その前の言動の異常さや措置入院を受け、その解除後の事件だったこともあり、私のところにもかなりの取材依頼がきているし、現にワイドショーのようなものにも出ることになった

ただ、テレビという媒体はさまざまな自主規制がある上、時間の制約もあるので、言いたいことが言えていたわけではない

あえて、原点に返って「テレビで言えない」話をしたい

一つは、この手の人のもつ異常な信念や妄想と、実際の事件の結構は、大きな溝があるということである

テレビも含めて、マスコミの人間は、この容疑者の異常心理がどう形成されたかとか、心理の異常性などを問題にしたがるが、「障碍者などいなくなってしまえばいい」「障碍者などに税金を使うのは無駄」というのは、確かに異常な心理であるが、私の印象では、1万人に一人くらいはそう思っている人はいるだろう(もっと多い気もする)。だとすると、この容疑者と同じようなことを考えている人間が、日本中に1万人くらいはいることになる
(そういう意味では、マスコミが騒ぎすぎることで模倣犯のようなものが1件でもでる危険性は決して小さくない)

世の中に恨みを持っている人だって相当するいるだろう

その中で、このような実行に移す人間が多い年でも年に2,3件だということは忘れてはならない

統合失調症の患者さんは約100万人くらいいるはずだが、そのうち100人に一人くらいは、特定の相手に「殺さないと殺される」というような妄想をもっていたり、「殺せ」「殺せ」というような幻聴が聞こえているのではないかとされている。要するに1万人くらいが殺人をしないと不安で仕方がない状態にいるのだが、それでも実行に移すのは100人に一人程度だ

統合失調症はともかくとして、世を恨んでいる人を実行に駆り立てるのは、やはり薬物の影響が大きい

池田小事件、秋葉原事件、ドン・キホーテ放火事件、全日空ハイジャック殺人、これらの容疑者はすべてSSRIを服用していたことがわかっている

うつ病の薬としては悪い薬ではないが、ある観念を持っている人の背中を押す作用があるようだ

実際、死にたいと思っている人が、この手の薬を飲むことで決行に移すことも多いようで、自殺率も上げるという報告が相次いでいる

自殺に関しては、アルコールも決行を促すということで、うつ病患者にはアルコールは禁忌とされている

今回は、おそらく決行の背中を押したのは、大麻と違法薬物だろう

危険思想狩りをするより、この手の薬物の取り締まり(このケースでも大麻の尿反応が出たのに、警察に通報もなかったようだ)のほうが、「決行」の阻止という点では意味があるかもしれない

実際、障碍者を殺してもいいというのは今のところ危険思想扱いされているが、寝たきりの高齢者とか、もうどうせ治らないとみなされる末期の患者さんについては、「かわいそうだから治療を打ち切って、死なせてやれ」というような言動がむしろ当たり前になっている

たまたま一昨日、私が尊敬する老年専門医と話をしていたら、この事件の主犯の思想と、今の治療打ち切りの思想は、ほとんど根が同じという話になった

私もそう思う

こういう思想が蔓延することは危険なのだが、やはり言論の自由は守らないといけない

今回、早すぎる措置解除が問題になっている

ただ、私が見ることろ、この容疑者が措置入院になったのは、「危険思想」の持ち主だからではない

ストーカーであれ、危険思想の持ち主であれ、原則的に強制入院の対象にならない

おそらくは、ものすごくラリっているから、薬物中毒を考えたのだろう

だから、すぐに尿の検査をした

そして反応が出たから、措置入院になったのだろう

人を殺してやりたいという人は確かに異常だが、そういう人を強制入院の対象にはしていない

だから、薬が抜けたら措置解除というのは、当たり前のことなのだ

問題は、大麻時半だったのに、面倒がって、警察に引き渡さなかったことだ

家に帰れば、間違いなしに、また大麻に手を染めるだろうし、この手の異常思想をもっていることが明らかなのだから、背中を押す危険も大きいことは予想できたはずだ

ついでにいうと、防犯カメラを16台つけたように、この施設は危険を察知していたし、警察にも相談していたようだ

警察がもっとまともに警備していたら、防げた可能性も大きい。これは最近のストーカーによる女優殺害事件でも同じことだ

警察は人手不足というが、渋滞を引き起こすだけで、接触事故は少し減らせても、暴走してくる車には(彼らが身を挺して止めるとは思えない)まったく無意味な交通取り締まりに膨大な人員を割くくらいなら、本来の治安のために警察が働くべきだろう

ただ、世論はもっと措置入院の患者さんを閉じ込めておけという声が強い

おそらく、他害の可能性のある精神障碍者の多くは、その直前にかなり言動がおかしくなる

今回だって、サインが出てきたから、監視カメラを増やしたりしているのだろう

措置入院の患者さんを長期入院にさせるには、莫大な公費がかかるし、精神障碍者の多くが、それを恐れて受診しなくなり、かえって悪い結果にもなりかねない

危険を察知した人からの被害届を警察がもっとまじめに対応するほうがはるかに効率的だと私は信じる


@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@


長尾も和田先生の意見に賛成だ。
措置入院で、犯罪は予防できない。

警察の仕事であろう。

しかしその警察があまりにも酷い状態であることを
再三、、このブログでも指摘してきた。

繰り返すが、警察と検察の犯罪が酷すぎる。
村木事件は氷山の一角だ。

私の主張は、そこまで堕落した警察と検察を更生させるために
警察と検察の教育に、国はもっと投資すべきである。

さらに警察署にも警察官にも投資を大きくして、彼らの士気と地位向上に
もっと力を入れるべきである。

相模原事件を振り返っても、2月に施設が警察に連絡したときに、なぜ
警察は措置入院ではなく、逮捕・取り調べをしなかったのかという素朴な疑問がある。

警察は、少しでも自信が無くなるとすぐに責任を医者に負わそうとする。
しかし犯罪捜査は警察マターなので、自信をもって捜査にあたって欲しい。

医療には予防医療という概念があるが、警察には犯罪予防という視点は乏しい。
何か起こってからはじめて動くというのが警察だ。

犯罪構成要素に拘ってばかりでは、犯罪を未然に防ぐことはできない。
警察官ももっと精神科医療と犯罪構成要件見直し、という気概を持って欲しい。

警察官さま、毎日、御苦労さまです。

そんな真面目な警察官をしっかり評価して、士気と知恵を蓄えて頂くことが必至。
もし自分が権力者であれば、今回の事件を機に警察改革にただちに取り組むだろう。

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この記事へのコメント

[この事件の主犯の思想(障碍者を殺してもいい)と、今の(寝たきり高齢者や末期がん患者の)治療打ち切りの思想は、ほとんど根が同じ]・・・なのでしょうか?

Posted by 匿名 at 2016年08月03日 01:03 | 返信

さすがの完全に納得できるコメント。
ベンゾジアゼピン依存性よりも、SSRIの衝動性の方がヤバい。パーキンソン治療薬も衝動性は少なくない。
脱法ハーブや覚醒剤など禁止薬物は言わずもがなですね。
危険思想を持っていても多くの人間は凶行には及ばないが、その人間の理性のハードルを越えさせてしまうのがクスリ、DRUGであることを強調すべき。認知症治療薬で家族に暴力振るうのもまったく同じです。
神経に作用するクスリはどんなクスリでも多大なるリスクを孕んでいるということを医者も薬剤師も家族も
けっして忘れてはいけない。

Posted by マッドネス at 2016年08月03日 07:23 | 返信

ここまで たいへんな事件になる前に なんとかできなかったんでしょうか…と思ってしまします
何か不思議な渦が巻き込んでいたんでしょうね…


わたしは ポケモンGOの発売日 夜間 公園で
たくさんの人たちが 集まり ウロウロしているテレビ映像に 何かの映画のワンシーンかと思いました
宇宙から電波が発信されて 突然 ウロウロする人間〜?
まさに コントロールされていますよね…笑

Posted by 訪問看護師 宮ちゃん at 2016年08月07日 08:45 | 返信

関西 特に 大阪 では
いまの ところ 怒り えない 事件
と 言うのは
大阪の 障がい者 解放
運動 が 70年代に あって
ハンディ ある ひと 子どもたち
も (^o^) みんなといっしょ
校区の
学校へ
徹底 した、運動の 先頭に たって
くれた のが 楠 敏雄さん
ある意味 行政 が 全盲の
彼を とりまいて いやな 想いも
したり なお 楠さんの ひとすじさは
死を 迎えるまで
変わりなかった
おぎようこ
おこらんど
墨あそび詩あそび土あそび

Posted by おこ at 2016年08月12日 04:00 | 返信

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