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開業医と遠隔医療

2016年10月05日(水)

医療タイムスの今週号の連載には「開業医と遠隔医療」について書いた。→こちら
好むと好まざるとに金輪らず、遠隔医療の可能性が年々高まっている。
特に開業医にとっても未来を見すえた「遠隔医療の時代」に突入した。

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医療タイムス9月号    開業医と遠隔医療    長尾和宏
 
 遠隔医療と聞くとなんとなく画像診断や手術指導などの病院医療を連想するが、実は将来的には開業医に一番関係するのではないか。たとえば、日々なにげなく行っている電話再診は健康保険で認められている立派な遠隔医療である。あるいは離島診療では、生活習慣病などに遠隔医療がすでに応用されている。今年新潟県の粟島という人口300人程度の離島を訪問する機会があった。島には一人の看護師がいて血圧を測り、テレビ電話を通じて対岸の村上市の病院の医師と対話して投薬していた。固定式のテレビ電話が無くても、スマホの動画による遠隔医療もやろうと思えばいくらでも可能である。在宅医療の現場では、スマホ画像による傷や皮疹の診断を行っている。看取りの際にも家族にスマホで“実況中継”してもらうことはいくらでもある。保険診療や保険請求としてまだ認められていなくても、実態として“遠隔医療的なもの”は普通に使っていることに気が付く。

 遠隔医療に一番向いているのは、なんといっても一番多い生活習慣病であろう。忙しい現代人にとって定期受診は難しい。もし症状が落ち着いているならば2回に1回でも遠隔診療を認めてあげた方が服薬コンプライアンスも上がる人は少なくない。そんな本音があちこちから聞こえてくる。あるいは通院を嫌がる認知症の人の診療は、再診以降は家族受診でもいいことになっているが、スマホ画像を利用した遠隔医療のほうが当然ながら診療の質は上がるだろう。また在宅患者さんが発熱や嘔吐した場合も訪問看護師がすぐに対応できない場合は、スマホ画像による遠隔医療が役に立つだろう。さらに訪問薬剤指導や訪問栄養指導にも遠隔医療が利用できれば、その恩恵にあずかれる患者さんも多い。

 政府の規制改革会議が遠隔医療の規制緩和について熱心な議論していると聞いている。リスクマネジメントの観点からは、遠隔医療が抱える様々なリスクも議論されているのだろう。しかし患者本位、利用者本位という視点で見た場合、遠隔医療の規制緩和はとても重要な課題だ。経済格差が健康格差になっている現実を考えた時、遠隔医療により受診のハードルを下げる工夫はやる気になればいくらでもやれるはずだ。

 話が変わるが人工知能(AI)の発達がめまぐるしい。一部のゲームにおいてはすでにAIは人間を上回っている。慶応大学では人工知能(AI)による医師国家試験自動回答プログラムが開発されている。現在、正答率は5割程度であるが医師になるための6割程度をクリアする日はそう遠くないだろう。しかしAIが医師の診療技術を上回ることは当面困難だろう。視診や触診などの五感を用いることは機械にはできないからだ。だからAIが医師を上回るのではなく、医師を補佐する存在になることが期待されている。さらにAIに学習機能を付加できればレセプト審査など診療に付随した業務は格段に効率化すると予測されている。そんな将来展望のなか「遠隔医療とAI」というまるでSF映画のような世界が現実化する可能性は高いと考える。

 遠隔医療には2つの側面があるだろう。ひとつは前段で述べた加速する地方消滅や医師不足への対応。もうひとつは後段で述べた医療の効率化だ。この2つの側面から国民皆保険制度を堅持するために遠隔医療をどう活かすのか。現場を含めた広い議論が急がれる。

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この記事へのコメント

AIが、日本の地域の医療に貢献出来る可能性は大ですね。
テレビで、地方のある島に50~60代の看護師さんが2名ほどいらっしゃって、広島かどこかの本土の医療機関の医師にX-Pや、CT画像を、送って診断を仰いで、結局本土の病院にヘリコプターで搬送すると言うドキュメントでした。
でもその看護師さん達自身も本土から単身赴任できているので、もう直ぐ退職して家族のところに帰りたいと仰っていました。
これからは、男性看護師さんが家族と一緒に、離れ小島に赴任する時代が来るかもしれませんね。

Posted by 匿名 at 2016年10月05日 09:14 | 返信

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