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「つどい場」は腹の見える関係を築く場所

2016年11月15日(火)

きらめきプラス11月号には「つどい場」について書かせて頂いた。→こちら
人間、なかなか本音を話せる場所は少ない。
お互いの腹が見えて、いい関係を築ける場が、ひとつでもあれば幸せだ。



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今回は北海道稚内市在住のご主人と一緒に漁業を営んでいる63歳の女性、
お母様をご自宅で看取られた方からのご質問です。よろしくお願いいたします。
 
【質問】

先生の『在宅医療は健幸医療』、毎回楽しく読ませていただいております。私事ですが、2ヶ月前に母が他界し10年間の介護生活が終わりました。いろいろ後悔もありますが、母の安らかな微笑みと周りの人たちの励ましの言葉が唯一の救いでした。今、主人(64歳になります)と二人で近くの介護で悩んでいる方たちの為に、先生が以前お話しされていた丸尾さんの「つどい場さくらちゃん」のような交流の場を自宅でつくろうと考えています。一緒にお茶を飲んだり愚痴を聞いたりするぐらいしか出来ないと思いますが、母も喜んでくれると思います。交流の場をつくるにあたり、何かアドバイスなどいただければ幸いです。どうぞよろしくお願い致します。
 
【回答】

「つどい場」に興味を持って頂き、ありがとうございます。「つどい場」とは兵庫県西宮市のNPO法人つどい場さくらちゃんの丸尾多重子さんの造語です。私もそこの理事を拝命しております。世の中には「カフェ」や「サロン」や「○○の家」とか様々な呼び名の場がありますが、まずは「つどい場」とどう違うのかからお話しましょう。

 
なぜ“つどい場”なのか

「つどい場」とは、認知症の介護をする側もされる側も一緒に集まりお茶だけでなく食事をする場です。つどい場は食事や時間帯によってはお酒も飲みます。食事内容にウエイトを置いているのがつどい場です。というのも介護者は残りものを食べることが多く栄養不足になり体調を崩します。また認知症本人は認知機能がかなり低下して食欲が無くなったように見えても本当に美味しいものは食べます。だからバランスが取れて美味しい食事がなにより大切だというのです。
つどい場には、介護者以外に医療職、介護職、ケアマネ、行政、教職員、学生、宗教者、外国人、ボランテイアなど様々な人が集まり本音で自由に語りあう場です。カフェがお茶を飲みながら「顔の見える関係」を構築する場であるならば、つどい場は食事や酒を飲みながら「腹の見える関係」を築く場所です。丸尾さんの口癖は「情報とは、○○だけを集めていてではダメ」です。たとえば、認知症ケアの知識を得る場はえてして介護者だけ、医療者だけ、ケアマネだけとなりがちです。しかしそうではなく、いろんな人が“まじくる”ことが大切であると丸尾さんは説いています。
実は“まじくる”も丸尾さんの造語で、「ごちゃまぜになる」、あるいは「交わって狂う」「マジで狂う」という意味です。医療者や介護者や行政はややもすると「上から目線」になりがちです。しかしこれからの時代、それではうまく事が運びません。みんなが対等な立場、フラットな関係性になってはじめて認知症になっても住み慣れた町で暮らせることができるという想いが込められている言葉が“まじくる”なのです。利用料は1回500円。介護保険事業とは一切無縁ですから、もちろん食事だけでも大赤字です。

 
「お出かけ隊」「学び隊」「見守り隊」という3つの機能

 つどい場には、3つの機能があります。「お出かけ隊」「学び隊」「見守り隊」です。単につどうだけでなく、こうした機能を持たせることも大切です。「お出かけ隊」とは文字通りスタッフやボランテイアによる外出支援です。要介護になると多くの介護者は外出を控えたり諦めてしまいます。しかしつどい場のメンバーはよくお出かけを支援しています。外出や外食が認知症を改善することをメンバー全員が身をもってよく知っているからです。だから要介護5の人たちを連れて毎年北海道や沖縄、そしてこの2年間は台湾まで団体で旅行しています。旅行先で美味しいご飯をたべて賑やかな雰囲気になると、認知症の人は活き活きしてきます。難しいことは分からなくなっても今が楽しい、美味しいは誰よりもよく分かっているのです。最近は航空会社も協力的だし車椅子のまま乗れるリフト付き観光バスもあります。実は台湾にもあります。

 よく「要介護5なのになぜ旅行なのか?」と聞かれますが、丸尾さんにしてみれば「要介護5だからこそ旅行!」なのです。そもそも人間の尊厳とは、食べること、排泄すること、そして移動することです。移動することは動物の尊厳そのものですが、理解されずにややもすると建物の中に「閉じ込め」がちです。しかし要介護者が街中を車椅子を使ってでも普通に移動することで、本人だけでなく街の人たちの意識もガラッと変わるのです。街も自然と認知症仕様になっていきますが、そうした発信も「つどい場」側からすべきです。

 次に「学び隊」です。おしゃべりや旅行に加えて賢い介護者にならないといけません。そのためには定期的に本物の(?)講師を招いて勉強会を開催しています。有料講演会ですが、わずかならがもお金が余れば、それが運営資金になります。つどい場は介護保険事業は一切していないので、運営資金が一番頭の痛いところです。そんな中、唯一の有料事業とも言えるのが「学び隊」になります。もしかしたら一番たいへんなのは資金面かもしれません。そのためには、医療法人や社会福祉法人などとも上手に関係性を構築すべきでしょう。現実には医療無しでは介護認定すら受けられませんから。そして「見守り隊」は介護者にちょうど用事ができてちょっと都合が悪くなった時に、「つどい場」の仲間の誰かが付き添う有償ボランテイアです。
 
 

各地で増えている”つどい場“で”まじくる“

 丸尾多重子さんの活動に触発された人たちが全国各地で「つどい場」を続々と開設しています。「一緒にお茶を飲んだり愚痴を聞いたりするぐらいしか出来ない」と謙遜されていますが、現代においてそれができる場がいったいどれくらいあるのでしょうか?介護者は経験者に相談するだけでなく、誰かに聞いて欲しいのです。そして時には「泣ける場」も必要なのです。私だって誰かに聞いて欲しいことが沢山あるのですが、なかなか吐き出せる場がないので日々のブログやこうした連載で想いを吐き出しているのです。そして吐き出したあとは、いろんなヘンな人としっかり“まじくって”下さい。これからは“ヘン”な人の時代です。やがてそれが地域の力になります。

 「つどい場」の増殖は私にとってもとても嬉しいことです。全国各地に増えているつどい場の主宰者が集まって“まじくるフェスタ”なんて催しもやっているそうです。丸尾さんの「つどい場」も普通の小さな一軒屋を借りて運営していますが、どこも小規模です。10人も入れば満員御礼のような小さな「場」であっても、本音を言えて愚痴をこぼせる場であり、なおかつ食事や酒が旨いとなれば必ず地域の人々に必要とされる場になるでしょう。仕事をしながら週末だけ、自宅のガレージを改装して“つどい場”をやっている人もいます。

 「つどい場さくらちゃん」ではこの10年間、毎年1回、「かいご楽快(がっかい)」という大規模なイベントを開催しています。か=介護、い=医療、ご=ご近所さんが三位一体となることを目指すイベントには全国各地からいろんな人たちが来られて“まじくって”おられます。来年1月9日(祝)に西宮文化会館アミテイホールで開催されます。出演者は、三好春樹氏、鳥海房江氏、中矢暁美氏、上田諭氏などたいへん豪華です。この組み合わせは全国どこにもありません。全国で「つどい場」をやっている人もたくさん来阪されます。もちろん私も歌ったり踊ったり、話したり、だと思います。懇親会も充実していますが人気が高いので事前申し込みが必要です。もしご都合がつけば是非関西に遊びに来て下さい。詳しくは「つどい場さくらちゃん」のホームページをご覧ください。

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今夜は、「国立かいご学院」で、「認知症の種類と対応」についてお話した。
終了後、美味しい鍋を食べた。

1月9日のかいご楽快のご案内はこちら → こちら


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※本ブログは転載・引用を固くお断りいたします。

この記事へのコメント

なぜ “つどい場” なのか ・・・・・・・ を読んで


人間、なかなか本音を話せる場所は少ない。
・・・・・・ という事実が、がんや認知症に罹って
いる患者本人、そしてその介護者・支援者の置
かれている現実で、そのことでどこにも支援を
求めることが出来ずに固まって行く〔or 崩壊
して行く〕事例は多いと思っています。

そんな中で、“本音が言えて愚痴をこぼせる場”
“一緒に笑える場” そして何よりも、 “一緒に
泣ける場〔溜まったエネルギーを発散出来る場〕”
があれば、誰でもほっとすることが出来、危機
を脱することが出来るのではないか? と常々
考えています。

そんなほっとすることが出来る場として、国の
新オレンジプランでも推奨されている、 “認知症
カフェ〔オレンジカフェ/お元気カフェ〕” 系
の “カフェ” と、今回紹介のあった “つどい場”
があります。

私の住んでいる地域にも、 “認知症カフェ(お元
気カフェ)” は、いくつかありますが、 “つどい場”
はありません。

そこで、 “つどい場さくらちゃん” に寄せて戴いた
折、丸ちゃん〔丸尾さん〕に、 “つどい場” と “認
知症カフェ” の違いをお聞きしたところ ・・・・・・・
『カフェ : お茶とお菓子だけでは、 “会議” となっ
てしまう! ・・・・・ 肝心の “本音” が出ない!』 、一方
『つどい場:食卓を囲み、美味しい食事を一緒に食
べることで、・・・・・・ はじめて腹を割った関係性が築け、
共に笑い、共に泣くことが出来る!』 と思っている。
❝ 特に、この共に泣ける! ・・・・・ ことが重要 ! ❞ 
との説明を受け、妙に納得したことを思い出しています。

“つどい場” と似たようなコンセプトの場所として、
“マギーハウス” というものがあります。
西村元一先生(金沢)が設立に意欲を燃やされている
“金沢マギーハウス” 、その金沢より一足早く、本年
〔2016年〕10月10日 に東京に開設された “マギーズ
東京” ・・・・・ やはりどちらも “食事” を共に摂れる
施設になっています。

二人に一人ががんに罹り、三人に一人が認知症に
罹る時代です。 現在は他人ごとの人でも、明日
は当事者になっているかも知れません。

もし私にがんが見つかった時、或いは、認知機能
に不安を感じた時のことを考えると、私には駆け
込み寺ならぬ、 “つどい場さくらちゃん” がある!
と想うだけで、心に安心感を持つことが出来てい
ます。

今国が進めている、 “地域包括ケア” の一つの核
は、各地域々々に “つどい場” 或いは “マギーハ
ウス” が設立さることではないか? と思ってい
ます。 

私の住むまち、ここ神戸の地に、 “つどい場” or
“マギーハウス” が出来て欲しいと切実に願って
います ・・・・・・。

Posted by 小林 文夫 at 2016年11月16日 02:35 | 返信

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