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認知症ケアと在宅療養

2016年11月29日(火)

医療タイムス11月号の連載は「認知症ケアと在宅療養」で書いた。→こちら
この半年間の認知症ケアに関する自分の活動を振り返る内容である。
でも私がいくら頑張っても、ほとんどなんの意味も無いような気もする。

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医療タイムス11月号   認知症ケアと在宅療養
 
 在宅療養というと末期がんをイメージする人が多いようだが、現実には年々認知症がメインになってきている。末期がん患者さんの平均在宅期間は1ケ月半なのであっと言う間に終わることが多いが、認知症の在宅療養は年単位に及ぶ。介護認定審査をしていても審査の大半が認知症がらみのケースである。いっそのこと「介護保険あらため認知症保険」と呼んだほうがいいのではと思う時さえある。

 末期がんの緩和ケアのスキルアップ講座は沢山あるが、認知症の在宅ケアのスキルアップ講座は少ない。これは認知症は薬物療法が主体と考える一部の専門家の偏った意識の影響も大きい。実際、抗認知症薬の講演会は山ほどあるが認知症ケアの講演会は少ない。抗認知症薬が認知症療養に寄与する割合についていろんな医師に質問したことがある。ある医師は8割と答え、ある医師は5割と、別の医師は3割と答えた。私自身はせいぜい5%であると何冊かの書籍に書いてきた。8割と回答した医師は「抗認知症薬を最大量投与することで施設入所を何年か遅らせるというエビデンスがあるんだ」と胸を張った。しかし果たして本当にそうだろうか?逆ではないのか。抗認知症薬は副作用が多く、もし使うのであれば上手にサジ加減をしないとマイナス面のほうが大きくなるからだ。抗認知症薬を減量・中止しただけで嘘のように穏やかになり在宅療養が継続可能になった人が沢山いる。

 本年6月1日に抗認知症薬の少量投与が容認され事実上、増量規定が撤廃され、患者さんに適した量の投与が可能になった。しかし製薬メーカーや医学会は連絡が出た事実をほとんど啓発していない。製薬企業がスポンサーになっている大手新聞も報道しない。せっかく抗認知症薬の個別化医療が容認されたのに、そうした事実や意義をまだ知らない医師が多いことが大変残念である。そこで11月18日に厚労省にて「抗認知症薬の適量処方を実現する会」の記者会見を行った。「これ以上抗認知症薬の副作用被害者を増やさないためにとにかく上記の事実をマスコミで広く啓発してほしい。適量処方の啓発に協力してほしい」と訴えたが、どこまで周知されるか。

 ようやくパーソンセンタードケアとかユマニチュードという言葉に関心を寄せる医師が増えてきた。しかし考えてみれば当たり前のことばかり。これまでどれだけ「パーソンがセンターでは無いケアが提供されてきたのか」、「認知の人の尊厳を重視しないケアばかりだったこと」の裏返しに過ぎない気がする。
そんな中、いわゆる一流病院において、現在でも身体拘束・抑制や鎮静が普通に行われている。「家族に承諾を得ているから」という言い訳で半ば常態化している病院もある。考えてみれば、医療者への認知症ケアや在宅医療の教育や研修の機会はあまりにも少ない。認知症ケアの大半は非薬物療法のはず。新・オレンジプランには認知症の人の社会参加や認知症カフェまで謳われているが、まだまだ少ない。私自身は地域の介護職員を集めて「国立(こくりゅう)かいご学院」を開講して教えている。こうした地域での認知症の人の受け皿造りへの本気度が問われている。来年4月に国際アルツハイマー病協会国際会議が日本で開催されるが、世界からかなり遅れた現状をどこまで取り戻せるか。介護離職ゼロの前に、介護職員の離職の多さに目を向けるべきだ。

@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@@

以上、思うままを30分で書いただけ。

そういえば最近、こんなことがあった。

親の認知症を在宅診療で診てくれと家族が頼みにきた。
さっそく伺うと、典型的なピック病であった。

そしていつものように認知症の専門家からアリセプト5mっが投与されていた。
私はそれをやめて、コウノメソッドに従い、ウインタミン10mgを投与した。

たったそれだけで、劇的に改善した。
興奮は収まり、穏やかになり、笑顔が見られ、言葉の語彙が増えた。

家族は大喜びだが、困ったのは時々ショートステイをお願いする施設の長。

家では穏やかだが、施設では夜に不穏になり寝ないのだという。
そして施設長は家族にこんなことを言う。

「他の人に迷惑だし、私たちも眠れない。
 あの薬(アリセプト)を中止したから寝ないのよ。
 そんな医者(=私のこと)をやめて、専門医にかかったら」

昔の私なら、その場でブチ切れていただろう。
しかし歳を取り、少しは怒らなくなった。

その施設も施設長も零点だ。
悪いのは認知症の人ではなく、何も勉強していない施設長のほうだ。

しかし、おそらくそんな施設はまだ一杯あって、
日本中で同じ薬害が繰り返されているのだろう。

そう思うと、「抗認知症薬」の話をまだまだしないといけないのかな、と思う。
この講演はボランテイア活動である。

先日記者会見をしたが、相変わらず、大手メデイアは取材しても報じない。
記者さんたちの親が酷い目にあってはじめて、自分の愚かさに気が気がつくのだろう。






 

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この記事へのコメント

抗認知生薬には、致命的な副作用がある。
低活動性せん妄になっていき、ADLが低下し嚥下障害を伴う事がある。このため食事を十分食べる事が出来なくなる。
副交感神経刺激作用により、除脈などの影響で心停止になるケースすらある。
これらの副作用情報は、厚労省に届いている。私自身2例ほど、致命的な副作用について報告した。その時のエーザイの担当者は、私の報告2例が、厚労省に届いていると言っていた。
厚労省が、認知症の適量処方を認める前に、共同通信の記差の取材を受けた。この時上記の致命的な副作用が厚労省まで届いている事を伝え、確認してみるように言った。
おそらく、今回の厚労省の対応は、致命的な副作用の存在を無視できなくなったっためであろう。この副作用に対して、国の責任が問われる事を回避する目的で、適量処方を認める通知を出したと思う。
通常このような重篤な副作用が報告された場合、製薬メーカーに周知徹底とその対応策を取らせる事が多い。
今回、厚労省の適量処方の承認を受けて、製薬会社が全く動かないのは、厚労省が今までの施策の継続を容認しているからと考えた方が良いであろう。適量処方を国が認めれば、そこから後は製薬会社や処方した医師の責任となり、国の責任を問うことは難しくなる。厚労省の適量処方の容認を受けて、各メーカーがどう動くかは、メーカーの自主性に任せていた。と言えば国の責任を問うことは、難しくなる。
今回の厚労省の決定により、規定量以下の処方でも査定されにくくなった事は、喜ぶべきであろう。しかし医療行政は、前期のようなマインドで動いている。薬害訴訟におびえた厚労省の幹部が、書いたシナリオに従って社会が動いているのである。
厚労省の幹部にとって、守るべきは自分たちと自分の組織・および自分たちの老後を支えてくれる製薬会社である。一般国民の事は、考えていないと思う。個人的に考えているかも知れないが、組織としては前期のような考えであろう。

Posted by 小関 洋 at 2016年11月29日 06:38 | 返信

 ピック病の症状が劇的に改善され、ショートステイの時に(逆に?)夜寝れなくなった。との事。
この場合は、家族は何か協力〈対応)出来ることはありますか?
 施設(施設長)はどう対応すればよかったのでしょうか?

 又、(最後の)記者さんたちの件。
私が思うに、記者さんたちは取材により(長尾先生によって)ちゃんと勉強されて自分の親には適切な対応をしているのではないかと思う。(ただ、組織として記事をあげたり報道するところにいけな(いかない)だけなのであろうなと。)

Posted by ヨーン at 2016年11月29日 09:20 | 返信

認知症の人が、地域であたりまえのように暮らすことがあたりまえでない現在。あたりまえに生きることができるのは、いつのことやら。

Posted by 社会福祉士河本健二 at 2016年11月29日 02:58 | 返信

製薬会社とその太鼓持ち医者は、一般人のアタマに次の5ヶ条を植え付けることに成功した。
---------------------------
1. 認知症は治らない恐ろしい病気だから早期発見早期治療が大切
2. 認知症は認知症専門医を受診しなさい
3. 認知症専門医が処方する認知症治療薬を指示通りに飲み続けなさい
4. もし悪化しても本来の症状が進行しているだけです、薬のせいではありません
5. お薬を飲まないともっとひどくなりますよ
-------------------------------------
日本人の95%がこの「すり込み」を信じている。

先日も、火災保険の更新で話をした保険代理店の担当者は、身内が認知症でその任意後見人をやっている、と得意そうに話すので、「へぇ、認知症なんですか? 下手に医者にかかると何でも認知症にして薬を飲ませたがるから、気を付けたほうがいいですよ。飲んじゃいけない薬を飲まされて廃人にされてる人達がたくさんいるのですよ。」と言ったら、「え?」とびっくりしていました。
「大丈夫ですよ、ちゃんとした医者に診せていますから。」というので、「へぇ、ちゃんとした医者ってどういう医者ですか?」と聞くと黙りこくるので、話を火災保険に戻しました。
認知症の誤解やクスリの有害無益について、身近な人達に、普段の会話の中で少しづつ話していきませんか? ただし、あまり突っ込まないことです。逆にこちらがヘンに思われるから。相手の心に薬に対する疑問を生じさせるだけでも成功です。

Posted by 匿名 at 2016年11月29日 04:09 | 返信

知り合いのお母様…
90代の認知症…
ずーっと抗認知症薬を服用し続けていました…
困っていたところ…私に相談があった…
毎晩のように、何度も何度も、電話をかけてくるようだ…
知人も、毎晩不眠不眠…
うちのだんなさんのおばあちゃんも以前飲んでいた…アリセプト…
興奮が冷めやまぬ…
暴れて暴れて…ベッドから、車椅子から転落…
皮膚めくれ…多発…
そんな時…やめてみたら…とやめてみたんです…
途端に、暴れることはなく、転落も無くなったんです…
その知人にも、こんなケースもあるよ…と
話をしたら、医師に相談できたようです…
効果がないようなので、やめてみたいです…と
アリセプトをやめた時から、夜間の電話が無くなったようです…
娘である、知人もハッピー…
お母様も、良眠できて、ハッピー…
薬を重ねることしか知らない、Dr…
やめるという選択…勇気…大切です…

Posted by 訪問看護師池ちゃん at 2016年11月29日 11:24 | 返信

私の母は、直接の死亡原因は大動脈解離による心タンポナーデなんだそうですけど、死ぬ1~2年前から歩けなくなって、半年前から口がきけなくなって、右手でお箸を持てなくなって、フォークや手で食べていました。大動脈解離になったのも私(介護者)が買物に出ている時にトイレに行こうとしてベッドに端座位になった時発作がでたらしいです。
後になってそれら一連の病状はパーキンソン症候群だったと気が付きました。
時々アリセプト3mgをハサミで切って1.5mg以下にして飲ませたのがいけなかったのではないかと思われます。早く名古屋の河野和彦先生のような認知症にお詳しい先生に、見てもらいたかったと思います。

Posted by 匿名 at 2016年11月30日 04:20 | 返信

国流介護学院に、4回受講させて頂きまして、今頃になって良くわからないのですけど、普通「興奮する」と言うと、副交感神経に伝達物質アセチルコリンより、交感神経伝達物質アドレナリンを、想定してしまうのですけれど、副交感伝達物質でも、量が多すぎると、易怒性の興奮状態が現れるということでしょうか?
レビー小体型認知症の場合は、アリセプトは服用しない方が良いというのは、臨床上分かったことであって、理論的には何故服用しない方が良い野かは、まだ解明されていないのでしょうか?
私の母なんかパーキンソン症候群だったので、シロスタゾールを検索すると血流促進剤と書いてあるし、銀杏の葉とかお米の何とかが良いとかお伺いしますと、鍼灸治療をして血流をよくして、玄米か胚芽米でも食べた方がアリセプトを飲むよりよっぽど良いのかと思いました。

Posted by 大谷佳子 at 2016年12月18日 06:02 | 返信

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