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受動喫煙防止ー医療界はどう向き合うー

2016年12月28日(水)

日本医事新報12月号の連載は「受動喫煙防止ー医療界はどう向き合う」で書いた。→こちら
兵庫県西宮市の市長のタバコ自慢発言に怒らない市民や医療界に失望している。
当院は禁煙治療にもっとも力を入れているクリニックでもある。

 
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日本医事新報12月号  受動喫煙防止 -医療界はどう向き合うー
 
世界最低レベルを知る

2020年の東京五輪・パラリンピックに向けて、厚労省は10月に受動喫煙防止対策法案を公表し現在関係団体からヒアリングを行っている。法案では医療機関は建物内だけでなく、敷地内を含めた全面禁煙が謳われている。しかしこれについて外傷で救急搬送される禁煙意識が低い患者や、予後の短いがん患者が多く入院する病院の関係者からは、喫煙室設置を可とする柔軟な対応を求める声が上がっている。一方、飲食業界も「全面禁煙による顧客離れ」を懸念している、国民が受動喫煙を経験した場所で最も多いのはその飲食店であるが、小規模飲食店への対応や、喫煙室の設置基準が今後の議論の焦点となっている。

 一方、WHOは受動喫煙防止への日本の対応について2014年の時点で「世界最低レベル」と酷評している。2003年に施行された健康増進法は学校や病院などに対して受動喫煙防止策を講じるように求めても努力義務にとどまり違反者への罰則規定が無い。受動喫煙を許容している現状こそが実は、世界の約170ケ国が批准するFCTC(タバコ規制枠組み条約)に完全に違反している。ちなみに国際「条約」は、今議論中のTPPという国際「協定」より上位の約束ごとである。なにはともあれ、日本は受動喫煙規制に関して世界最低レベルかつ国際条約違反であることをまずは医療者自身が知ることから始まる。蛇足だが、リビングウイルの法的担保が無いのも先進国のなかで日本だけである。なぜか日本の医学・看護教育ではこうした国際常識を教えない。己を知ることから、すべては始まる。
 
「騙されている日本の喫煙者」
 筆者は「禁煙で人生を変えようー騙されている日本の喫煙者」(エピック)という本を2009年に世に問うた。10代からニコチン中毒にされてお金と健康を国家に搾取されている患者さんが可哀そうで、なんとしても目覚めてもらいたくて敢えて「騙される」という言葉を使った。財務省からJTへの天下りの実態に加えて彼らの年収まで書いた。周囲から命の覚悟を忠告されたが7年経過してまだ生きているのでこの記事を書かせて頂いている。

 町医者がなぜこんな過激なタイトルの本を書いたのか。それは日々、COPDや肺がんや食道がんや咽頭がんなどのタバコ病で苦しむ人達と向き合っている立場だからだ。ただそれだけ。特に咽頭がんで20代の青年の在宅での最期に立ち会った時、強烈な怒りがこみ上げてきてそれが本を書く直接的な動機になった。その前から校医を拝命している夜間高校ではタバコの授業やがんや薬物依存の授業をボランテイアで続けている。幸いなことに、子供の喫煙率は7割から1割まで下げることができたが、肝心の教師の喫煙が課題として残る。また率先して禁煙外来を開設し禁煙学会専門医も取得して、根気よくタバコの害を説いてきた。一生の間に何人かでも禁煙のお手伝いできれば、それだけでも医師という職業に就いた意味があると思う。また禁煙指導は往診と同様に町医者の仕事であると信じている。

 しかし今も繰り返される悲劇の中でもがいている。その理由とは、「タバコは依存性の高い毒物である」という真実が日本では市民に充分に(意図的に)啓発されていないことにある。いまだに「ストレス発散によい」とか「嗜好品である」と公言している高い立場の医師もいるが、私は医師の職業倫理に反する行為だと思う。自分のことしか考えていないからだ。すなわち受動喫煙や3次喫煙被害をまったく無視している。3次喫煙とは衣服や部屋の壁紙に付着したタバコの健康被害のことだ。シックハウス被害と同様にニコチンホテルやニコチンレストランの被害にあう人は喫煙者の何倍もいる。依存症の怖さに加えてこうした周囲への悪影響を考えない医師に医師の資格が無い!そう言いたいところだが、気が弱いので現実にはいつもグッと我慢している。医師も人間だ。ニコチン依存症にもアルコール依存症にもなるだろう。タバコを憎んで人を憎まず。敵は無知だ。その医師もニコチン依存症という病気なので治療すべきことに気がつけばいいだけの話だ。禁煙は愛。自分にそう言い聞かせて、いつか上手に気がついてもらうのが匠のワザではないか・・・
 
JTは財務省の天下り先
 
受動喫煙防止に対して政府の腰が引けている理由はいくつかある。「タバコは財源」と位置づける考え方や葉タバコ農家が自民党の支持基盤であることなどだ。国会では超党派の議員連盟が規制強化のため新法制定に取り組んできたが、罰則の有無などについて折り合いがつかず法案提出ができていない。また自民党内には客離れを懸念する業界に理解を示す議員もいる。

 ところで、JTと財務省の関係をどこまでご存知だろうか。JT株式の3分の1は財務省が保有しているので、完全な政府のひも付きである。JTは1995年の民営化以降も、「民営」とは言葉だけで旧大蔵省、財務省から多数の天下りを受け入れてきた。民営とは名ばかりの「半国営企業」である。元財務事務次官の丹呉泰健氏が2014年からJT会長を務めている。欧米では国民の健康を司る政府がタバコ会社の株主であるような国は存在しない。しかし日本におけるJT法では「政府は常時、3分の1を超える株式を保有していなければならない」と規定されている。年間800億円ものJTの配当収入は外部から見えない特別会計に算出されるので、政府にとっては都合のいい「離れのすき焼き」となっている。

 タバコ増税や受動喫煙防止などの喫煙規制強化に対抗するためのJTの戦略は実に巧妙である。たとえば3月に「ブルーム・テック」という「蒸気タバコ」を発売し、非・燃焼式タバコを受動喫煙規制の対象から外すことを求めている。あるいはテレビCMで受動喫煙問題を「分煙」や「マナー」の問題にすり替えることに見事に成功している。政府はタバコによる健康被害を案じるフリをしながら、JTというオイシイタバコビジネスのほうを優先しているのが実態である。我々、健康のプロはそんなカラクリを見抜かないといけない。このような事実を知らないと、高校生からの「そんな悪いタバコを国はなぜ認めているの?」という素朴な疑問にさえ答えることができない。
 
 
 
医療界の「本気度」が決め手

 では受動喫煙対策の推進には誰がリーダーシップをとるべきだろうか。国会議員?厚労省?市民団体?医療界?答えはもう明らかだろう。私は医療界であると考える。いや医療界しかない、のである。医療界以外に受動喫煙対策に本気になれる組織や団体はこの国には無いと思う。なぜなら日本におけるJT法の存在自体が世界常識ではあり得ないから。だからFCTCに完全に違反しても平気でいられる。政府とJTがグルになり無知な国民の幸福や尊厳を巧妙に奪っている。個人的にはJT法自体が幸福追求権を定めた憲法13条に違反していると考える。「JTと財務省の切り離し」という政治マターは、まさに医系議員に課せられた最重要課題なので今後の国会での活躍に期待したい。

 一方、日本医師会や各医学会は、市民にタバコの害や受動喫煙の害をさらに啓発すべきだ。そしてニコチン依存症の病態や禁煙治療の実際も継続して啓発すべきだ。ニコチン依存症の救急搬送患者や末期がん患者にもヒステリックになりすぎず、段階的な対応策を練るべきだ。「禁煙に遅すぎることはない」と諦めないことも大切。とはいえ医師や看護師自身の喫煙問題という足元にも手をつけないといけない。同僚や上司の喫煙に口を出すことは現実には難しい。しかし何事も急いではいけない。世の中や職場の空気をジンワリ変えることしか手はないだろう。幸い2020年という大きな節目が定められているので、やり易い。半年ごとの具体的目標を定めて段階的に推し進めるべきだ。私は医療界全体の「本気度」が決め手だと思う。今こそ日本医師会、日本医学会、各医学会など関係団体が一致団結して受動喫煙対策に本腰を入れる時である。
 
 

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この記事へのコメント

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Posted by 尾崎 友宏 at 2016年12月28日 02:52 | 返信

受動喫煙防止ー医療界はどう向き合うー|Dr.和の町医者日記

100%正しい。

Posted by ロモラオ at 2016年12月28日 02:33 | 返信

禁煙の方向性は、たしか1970年代に政府決定されたように記憶しています。
政府に対し好意的に思考するならば、その当時にタバコ農家を継いだ息子さんたちが
引退する年齢に達する昨今、ようやく禁煙への動きが加速されているように感じます。
ほかの農産物の国内保護を緩める=海外産の輸入を拡大する動きについても同様です。
本件を担当した公務員に言わせれば、「40年という時間をかけてあなたたちの面倒を
見てやったんですよ」ということなのかもしれません。

Posted by 通行人 at 2016年12月28日 04:32 | 返信

知るところの精神障害者は、薬を服用していることにより安定を保っており、健常への狭間を
意識し、活動し、もがいています。どの程度までが病気で、どの部分が健常なのかを意識して
いたら会話なんてできません。別段、相手として、病気か否かを意識しない関係にならなければ
日常の接点は困難でしょう。彼らの浮彫りになる意識は、健常と障害の区切りの有無です。
こちらが「そんなものは無い」と断言したとしても、上だの下だの、敢えて区別を自ずから
口にします。話が遠回りになりましたが、強い薬を長年服用し続ける彼らの寿命も心配されます。
医師からのアドバイスもあってか、自力で禁煙を達成した人もあれば、「煙草も精神安定のための
一助になっているから、無理にどうとは言えない。」と禁煙相談をした患者に向かって、身をかわす
医師もあるようです。「少しずつでも減らそうよ」と促すだけで、素直に実行してくれる方なのに。

Posted by もも at 2016年12月28日 11:02 | 返信

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