- << 週刊ポスト「薬のやめどき」
- HOME
- 発売1ケ月で2冊とも5刷りに >>
このたびURLを下記に変更しました。
お気に入り等に登録されている方は、新URLへの変更をお願いします。
新URL http://blog.drnagao.com
「咳ぜんそく」を知っていますか?
2017年01月26日(木)
産経新聞・呼吸器シリーズ第2回 長びく咳
「咳ぜんそく」を知っていますか?
「風邪やインフルが治って1ケ月以上もたつのにまだ空咳(からせき)が続く」と訴えて受診される人がたくさんおられます。胸に聴診器を当ててみても呼吸音は正常です。「たぶん咳喘息だと思いますが・・」と言うと、必ず「何ですか、それ?」と返ってきます。今日は咳喘息という病名をまず覚えてください。
よく似た病名である気管支喘息は誰でも聞いたことがあるでしょう。子供の時から喘息持ちで苦労してきたという人は少なくありません。気管支喘息の特徴は、あくまで「発作」であることです。呼吸がゼーゼーいう発作の時期が時々あっても、普段はまったく正常です。あくまで発作性の呼吸困難で、それに咳が伴います。アレルギー機序や冷気の吸入により起こる気管支の痙攣や炎症が本質ですが、発作と改善を繰り返す病気です。
一方、咳喘息は風邪やインフルの後の長びく空咳が特徴。熱も無ければ食欲も良好。しかし人と話す時に困ったり、布団に入ると咳が止まらなくなり安眠の障害になったりします。2週間以上続く咳はまずは結核を疑うのが医療機関の常識。だから必ず胸部レントゲン写真を撮りますが何も所見が無いのが特徴。これは気管支喘息も同様。医師は咳喘息や肺結核以外にもいくつかの病気を疑います。まず頭に浮かぶのはマイコプラズマ肺炎や百日咳です。気管支喘息や咳喘息は炎症ですが、マイコプラズマや百日咳は感染症ですから両者の病態は異質です。マイコプラズマは肺炎なので発熱や激しい咳とレントゲン上の陰影が特徴です。百日咳は周囲での流行情報も参考になります。両者とも遺伝子診断や血液検査で抗体価を測定して診断を確定させていきます。マイコプラズマや百日咳にはマクロライド系の抗生剤が特効薬です。昨今、「風邪に抗生剤を処方する医者はヤブ医者だ」と週刊誌などに書かれていますがそのとおりです。風邪の大半はウイルス感染なので抗生剤は不要どころか時に有害です。しかしマイコプラズマや百日咳や一般の肺炎などは細菌感染症なので抗生剤が有効です。世界的な問題になっている抗生剤の過剰使用は特に日本において最も顕著で、国を挙げて不要な抗生剤投与を控える方向にあります。抗生剤に耐性の菌も増えているのも事実です。しかし使わねばならぬ時には使うべき薬です。
さて咳喘息の治療ですが、気道の過敏性を抑えるためにステロイドと気管支拡張剤を含んだ吸入薬が有効です。抗生剤は原則不要。つまり気管支喘息の治療とよく似ています。それもそのはず、咳喘息は気管支喘息の前段階であると考えられています。周囲の人に無用な心配を与えますから放置せずに医療機関を受診してください。呼吸器科を標榜している医療機関がベストですが一般医のなかにも熱心な人がおられます。私は咳喘息は非常にありふれた病気だと思っています。しかし実は気管支結核だった、肺がんだったということもあり得ます。また肺の病気ではなくて心不全だった、逆流性食道炎だったなんてこともあり得るので吸入薬の効果を慎重に見極める必要があります。「とにかく今夜の咳を止めて欲しい」という人にはひと晩の絶食(水分は可)としばしの禁酒、そして喫煙者には禁煙治療を指示します。生活習慣の改善も続々と発売される優れた吸入薬と並んで大切です。
キーワード 吸入薬
咳喘息の治療には気管支喘息に準じてステロイドや気管支拡張剤の吸入や内服が使われる。最近はステロイドと気管支拡張剤の両方の成分を混合した吸入薬による治療が主流である。
- << 週刊ポスト「薬のやめどき」
- HOME
- 発売1ケ月で2冊とも5刷りに >>
このたびURLを下記に変更しました。
お気に入り等に登録されている方は、新URLへの変更をお願いします。
新URL http://blog.drnagao.com
この記事へのコメント
いつも長尾先生の元気一杯の活動を、楽しみに、陰ながら応援している一人の者です。
私も一昨年の年末に風邪を引き、長引く咳に2ヶ月ほど悩まされたのですが、
ほんと止まらなかった~(><)。。。
と、咳のし過ぎで肋骨2本にヒビが入ってしまいました。
すぐ治る風邪だろうとなかなか内科を受診せず、ようやく行けば抗生剤やら漢方やら張り薬・・・。
もう、しばらく風邪は引きたくないぃぃぃ~
Posted by ぜんざい at 2017年01月26日 01:18 | 返信
咳喘息!
私は「異所性子宮内膜症」で所謂、排卵期になると呼吸苦を伴う咳に苦しめられています・・・
月経日になると、何事もなかったかのようにピタっと止むのです。
咳のサイクルがぴったり一致し、数ヶ所の呼吸器内科、産婦人科で相談しても「そんなものはない、気のせいだ」と言われ続け、ようやく経験のあるDrにたどり着き、治療を開始することが出来ました
(咳止めと浮腫み止めですが)
こんな一例もあります。
Posted by ままさん at 2017年01月26日 07:06 | 返信
咳喘息は、10年位前から増えている気がします。それまで細菌性の気管支炎の治療をきちんとすれば、それで咳は治って居ました。10年位前から、細菌性の気管支炎の治療をキチンと行っても、痰は出なくなっても頑固な乾性の咳嗽が残るように成りました。
咳喘息と区別が難しいのは、百日咳だと思います。疑って検査しないと診断できませんね。
あとは、逆流性食道炎の関与もよくありますので、この点も理解して居ない医師にかかると、難治化する事が有るので、注意した方が良いですよ。咳をすると胃液が霧になって逆流します。これを肺に吸い込むと、気管支の炎症が著しく悪化します。
もう一つ咳喘息は、抗原の吸入を抑えないと症状を抑えることが、難しいと言うことです。私も、咳喘息で苦しんで居ました。色々治療をしても、中々良くなりませんでした。マスクで抗原の吸入をブロックすることで、咳喘息の発作は激減しました。もっとも、12月から5月の連休明けまで、マスクが必需品になってしまいました。
マスクの着用は、別のメリットが有りました。インフルエンザに掛かりにくくなったのです。それまで、毎年インフルエンザにかかって居ましたので、嬉しい副産物でした。
Posted by 小関 洋 at 2017年01月26日 08:16 | 返信
これを読み、正にあの方は咳喘息だろうなァと思う心当たりが身近かに居ました。
12月から咳をし続けていて、インフルエンザでもなく、大事に至らずに何よりでしたが、
今尚、咳が残っておられます。お仕事柄が医療に通じるとなると、助言が難しいものです。
「よくなってきた。」とは本人の弁。レントゲンは撮ったのだろうか。
長く続く咳は、心配なものです。
Posted by もも at 2017年01月26日 10:07 | 返信
鍼や灸をしても、なかなか治らない主婦がいました。
結局来なくなったので、何だったんだろうといつも考えます。
結核という事もあるのですね。マイコプラズマ肺炎と言うのは菌なのですか?
たけしのテレビタックルでは「カビ」が原因の人もいると言っていました。
そう言えば、と我が家の台所のホコリやカビを掃除しました。
気のせいか、何となく咳が出なくなったような気がします。
Posted by 匿名 at 2017年01月30日 09:39 | 返信
コメントする
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL: