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安楽死議論の前に尊厳死議論を

2017年01月31日(火)

週刊誌などが「安楽死」を大きく取り扱っている。
しかしその前に「尊厳死についてちゃと議論すべきだ。
日本はほぼ尊厳死できる国だから安楽死しなくても大丈夫なのだ。
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尊厳死の議論から始めよう

 ー 10km泳ぐ前に10mを泳げるのか -


橋田寿賀子さんの安楽死宣言に想う
 
月刊文藝春秋2016年12月号に脚本家の橋田寿賀子さんによる「私は安楽死で逝きたい」という手記が掲載された。「もし認知症になったら、スイスの安楽死組織デイグニタスに行き安楽死したい」という内容であった。この手記は多くの国民に大きな共感を呼び昨年最も多くの読者が支持した第78回文藝春秋読者賞を受賞された。さらに週刊新潮2017年1月19日号にも同氏による同様の趣旨の文章が発表され多くの市民が賛意を表した。ちなみに2015年の週刊文春の調査によるとなんと7割の日本人が安楽死に賛成しているという。一方、2016年12月19日に放映されたTBSテレビの「坂上忍の好きか嫌いか言う時間」では一般市民たちにより安楽死について熱い議論が繰り広げられた。このように昨年末からメデイアにおいて安楽死の話題がにわかに盛り上がっている。

 しかし私は「ちょっと待って!」と言いたい。尊厳死の議論を抜きにして安楽死の議論をするのは、10mも泳げない人がどうやって10km泳ごうかという話と同じである。約200人の超党派の国会議員から成る「人生の最終段階の医療における患者意思の尊重を考える議員連盟」は12年前から人生の最終段階の医療の核心であるリビングイルの法的担保について議論を重ねてきた。しかしこの2~3年は議論が停滞している。その最大の理由は、リビングイルの法的担保に反対する団体が多いからだ。つまり日本医師会も法曹界も宗教界も団体もこぞって反対してきた。それどころか後述する公益認定委員会の意見書(2016年12月8日)は「尊厳死が殺人罪に問われる可能性」を示している。たとえリビングウイルがあっても尊厳死(平穏死)は殺人罪の可能性があるというのが現政府の公式見解なのだ。「尊厳死が殺人罪だって?」。多くの国民は首をかしげるだろう。また私のような在宅医は年間100人の在宅看取りに立ち会うが、殺人罪に問われる疑いがある行為を生業にしていることになる。国は在宅看取りを謳う一方、それは犯罪行為であるかもと脅かすという極めて矛盾した態度を続けている。いや、縦割り行政のために矛盾に気がついていないのだろうか。まさに現場や市民感覚からまったく遊離した論理である。

 リビングウイルに基づいた尊厳死が殺人罪疑いという根拠とはなんと明治時代の刑法である。しかしその時代にはもちろん胃ろうも人工呼吸器も無い。日本における人生の最終段階の医療はまだ明治時代に作られた刑法に囚われている。私はまず「リビングウイルの法的担保がなぜ日本だけできないのか」という議論から始めるべきだと思う。日本は世界レベルから見ればまだ10m、いや1mも泳げないのだ。ならばそこから議論を始めないと混乱するだけでは、と強く危惧する。
 
 
 
リビングウイル啓発の意味

 11万人余の会員が加入する世界最大のリビングウイル管理団体である一般財団法人・日本尊厳死協会は昨年、創立40年を迎えた。同協会は一昨年、内閣府に公益認定申請を提出するも却下された。その理由とは定款のひとつにリビングイルの法的担保という文言がありいまだに国会承認されていない事項を掲げる団体に公益性を認めない、という判断であった。しかしリビングウイルの普及啓発は多くの国民の利益に寄与すると考え、昨年、再度公益認定を求めるたが2度目も却下された。その理由とは「延命措置の中止が刑事上等の責任を問われる」であった。しかしこれではリビングウイルを尊重して尊厳死した場合、殺人罪に問われる可能性があると言わんばかりである。それどころか厚労省や日本医師会や各医学会が出している終末期ガイドラインとも相反する内容である。そもそも現在我が国で議論されている「尊厳死」とは本人が文書で「延命処置を拒否する」というリビングイルを表明している場合の終末期医療を指している。本人意思が不明な場合の議論には及んでいない。また日本尊厳死協会は安楽死に反対していることも強調しておきたい。

 蛇足ながら英国では意思決定能力が低下したり不明な場合における意思決定支援のために家族や周囲の人が代理や推定した本人利益(Best Interest)の法的担保を2005年に終え、来るべき大認知症時代に備えている(Mental Capacity Act意思決定能力法)。一方、日本の後見人制度は財産面の後見に限定され、医療やリビングウイルの後見や代理に関する法的整備の動きはない。それどころか本人が署名・押印したリビングウイルすら法的に認められていない先進国中で唯一の国で完全にガラパゴス化している。アジアにおいても2000年には台湾でそして昨年は韓国におけるリビングウイルの法的担保がなされた事はほとんど報道されない。亡くなった後の財産処分の関する本人意思(=遺言状)は法的に有効であるのに、生きている間に自分が受ける医療に関する文書は有効ではないのだ。

 ユネスコの生命倫理宣言には「本人意思の尊重が最優先」と謳われている。日本以外の国ではその大原則を重んじた法律整備が進んでいる。しかし世界中で日本のみが明治時代の刑法を理由に本人意思の尊重に関する活動に公益性を認めない。日本はユネスコの生命倫理の基本理念と真反対を向いたままである。いずれにせよ、日本はリビングイルそのものやリビングウイルを有する人の尊厳死さえも法的には認められていない国であるという現実を飛び越して、橋田氏をはじめ種々のメデイアが安楽死を報じていることを指摘しておきたい。つまり「10km泳ぐという前に10mを泳げるのか?」と問いたい。安楽死議論の前に「リビングイルがあっても尊厳死(平穏死)がなぜ違法なのか?」を市民レベルで議論を重ねたい。市民は賛成でも各種団体は反対だ。ならば各種団体は多くの市井の声に真摯に耳を傾けるべきだ。

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リビングウイルの普及啓発のために活動している一般財団法人日本尊厳死協会が
二度にわたり、内閣府から公益不認定を受けた。

その理由とは、
日本のトップである安倍総理から私たちへの手紙とは。→ こちら

尊厳死はまだ日本では容認されていない。
完全にグレーであることをメデイアはちゃんと報じてから安楽死を論じるべきだ。

日本は、明治時代の刑法にある殺人罪の適応を免れるための医療が行われている。
ちゃんと読んで頂ければ、あまりの滑稽さに気がつくであろう。

これが現実である。
国家の認識。。

市民のみなさんと一緒に考えたい。
医療は患者さんのためにあるから。


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この記事へのコメント

政府は、日本尊厳死協会を公益法人にしたくない理由は、「終末期の患者の意思の扱い」について、日本尊厳死協会に主導権を取られたくない、からではないかと。
政府が決めたいのでしょうね、たぶん。
政府は誰に、どこに主導権を与えたいのか?
何らかのロビー活動があるのかも。
何らかの裏取引や利益供与があるのかも。
それとも単に、厚労省のメンツ、かな?
と、読み取った部分はアクロバットファイル4の(3)です。抜粋しておきます。

(3)終末期の患者の意思の扱い(終末期の患者が受ける医療にいかに反映させるか等)については、関係機関で研究が進められているほか、医療現場においても、厚生労働省の「人生の最終段階における医療の決定プロセスにおけるガイドライン」(平成19年5月作成、平成27年3月改訂)等に基づく実績が積み重ねられている。
一方で、終末期医療における延命措置の中止等について明確な法的位置づけがなされていない現状においては、医師等医療関係者は常にその行為が刑事上その他の責任に問われる可能性2を付度し、慎重な判断を求められているものと考えられる。

Posted by 匿名 at 2017年01月31日 02:44 | 返信

安楽死議論の前に尊厳死議論を|Dr.和の町医者日記
尊厳死

この波動は、よい。エネルギーは、右回り小。

Posted by ロモラオ at 2017年01月31日 08:36 | 返信

いつも、健保証と会員証はワンセットにしています。
樋口恵子さんによれば、おつれあいが「プロダクティブ(生産的)でなくなったら生きていたくない」と
言っていたとのことですね。
「優生思想」は、かように根深い。
医療、介護をめぐり広がる「嫌老」感、乱暴狼藉きわまる国会状況・・を省みると、
「尊厳死法制化」より、「リビングウイル」運動がしずかにすすめられていくのがいいのでしょうか。

異常気象やトランプ登場で、情緒不安をうったえる人が、ふえています。
トランプ大統領令に「コメント」もできない、われらの首領さま。
指定7か国国民の入国拒否に、日本では、在日アメリカ人以外だれも声をあげません。
反「自由」、反「人権」、反「法の支配」という日米共通の価値観。
2.11は、こうした「日米同盟」を世界に「発信」することになるのでしょう。恥ずかしい!

トランプ登場で、バルト三国のひとびとは、おびえているとか。
プーチンの命で、ロシア機の領空侵入がふえ、緊張が高まっている。
午後3時には暗くなるリトアニアで、徴兵間近の青年たちがカフェで難解クイズに挑む。
「クーカイはなんのためにダイエット?」「答え。●身仏。」

Posted by 鍵山いさお at 2017年01月31日 04:11 | 返信

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