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古くて新しい"肺結核"
2017年02月16日(木)
産経新聞呼吸器シリーズ第5話 肺結核
古くて新しい、侮れない感染症
「肺結核なんて昔の病気だろう」。多くの人がそう思っているかもしれません。しかし現在も肺結核で年間2000人が亡くなっている「古くて新しい感染症」です。町医者の私の頭の片隅にはいつも肺結核という文字があります。というのも時々「医療機関で肺結核が集団感染」という記事を見かけるからです。多くの人は「医者ならレントゲンを見れば肺結核かどうかすぐ分かるだろう」と思われるでしょう。もちろん典型的な結核なら分かりますが、「あら、こんな結核もあるんだ」という例もあるので決して侮れません。日本には過去に結核菌に感染したことがある人が約2000万人もいると推定されその多くが高齢者です。70歳代の4割、80歳代の7割が感染を経験しています。ただし今結核を発病している人は感染者の1割程度です。若い医師たちには「肺炎を見たら結核を疑え」、「胸水を見たら肺がんや中皮腫の前に結核を疑え」と指導しています。
どんな人が結核を患い易いのでしょうか。70歳以上の人で糖尿病、人工透析中、胃切除後、関節リウマチの注射薬や抗がん剤やステロイド薬などを投与中の人は要注意です。もし微熱と血咳があれば医療機関で胸部レントゲン検査と痰の検査を受けてください。出た痰を調べて多量の結核菌が認められたら、結核は届け出が必要な伝染病なので保健所に届けて結核病棟に入院となります。もし多量では無い場合は定期的な通院で加療します。
結核の治療は3~4種類の抗結核薬を併用し6~9ケ月間飲みます。1種類だけだとその薬が効かない耐性菌が現れやすくなります。最近はイソニアジドとリファンピシンに耐性を持つ患者さん用にデラマニドという抗菌薬が使用できるようになり治療成績が向上しました。結核の予防はまずは禁煙と充分な休養です。喫煙者の感染リスクは非喫煙者の2倍です。そして食事や歩行等による適切な血糖コントロールや良質な睡眠など免疫能を下げない生活を心がけて下さい。そして肺がん検診を兼ねて年に1度は胸部レントゲンを撮って下さい。だたし結核なのか肺がんなのかの鑑別が難しい場合が稀にあります。
「肺がんの専門医数名が画像で肺がんと診断して手術をしてみたら結核だった」という例を2人経験しました。1人は胸腔鏡で肺を取りましたが、術後に胸管損傷による乳び胸水という合併症で一時は死の淵をさ迷いましたが、幸い元気に回復され胸をなでおろしました。もう一人は私と同世代で検診のレントゲンでひっかかり、数名の専門医に「肺がん確実」と診断されました。この人も2回の気管支鏡検査で肺がん細胞が証明されなかったので当初は外科手術を拒否されました。しかし周囲の説得もあり担当医からも充分な説明を受けて同意されたので手術が行われました。しかし術後の病理検査の結果は、なんと結核でした。この2人は私も手術を勧めたので責任を感じました。これだけ医学が発達した現代医療においても結核の診断が困難なケースも現実にあります。「医療の不確実性」という言葉がありますが、医療現場には「常に正解、絶対安全」ということはあり得ません。医療は常に「リスク」と隣りあわせであることも知って頂きたくご紹介しました。というわけで肺結核は今も奥が深い、侮れない感染症なのです。
キーワード 抗結核薬
現在使われている抗菌薬は以下の数種類ある。イソニアジド、リファンピシン、ピラジナミド、エタンブトールないしストレプトマイシン、デラマニド。これらのうち3~4種類を併用する。
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この記事へのコメント
「どんな人が結核を患い易いのでしょうか。70歳以上の人で糖尿病、人工透析中、胃切除後、関節リウマチの注射薬や抗がん剤やステロイド薬などを投与中の人は要注意です」・・・・・
なんか、継続して病院に通っている人が結核リスクが大きいみたいな・・・病院の医療行為で感染してんじゃないの???
Posted by 匿名 at 2017年02月16日 02:39 | 返信
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